北朝鮮空軍「エジプト極秘派兵」はイスラエルに見破られていた

この時、シャーズィリーもエジプト大統領のメディア対策補佐官であるアシュラフ・グルーバルから、「この情報は本当か」と質問されている。北朝鮮のパイロットがエジプトに派兵されていることはエジプト政府内でも秘密であったのである。

ただし、北朝鮮のパイロットは隔離されていたわけではない。彼らは空軍司令官であるムバラクの指揮下にあり、北朝鮮のパイロットが所属した基地には約3000名のエジプト人が働いていた。レーダーや防空、地上警護、行政事務も全てエジプト人が行っていたのだ。

しかし、北朝鮮のパイロットは自立的であり、住居も自分たちで整え、あらゆることを自分の力で行おうとした。訓練でも学習でも体育でもそうだ。そして、彼らは余暇というものがなかった。周囲とトラブルを起こした者は1人もおらず、シャーズィリーは「北朝鮮とエジプトの関係は望みうる最高のものであった」と回顧している。(つづく)

(宮本 悟 聖学院大学教授)

【連載】朝鮮人民軍 海外戦記
中東編(6) 第4次中東戦争が勃発、北朝鮮空軍とイスラエルF4戦闘機の死闘