【実録 北朝鮮ヤクザの世界(下)】社会主義国で「経済ヤクザ」が誕生するまで

「主なシノギは砂金や古銭を含む骨董品の密売だった。これを北朝鮮の全国から買い集めて華僑や元在日朝鮮人帰国者に売って利ざやを稼ぐ。俺がいた安州にはパッキ派、カマギ(カラス)派、ケスンニャンイ(朝鮮狼)派、ヒョンサ(刑事)派の四つの組織があり、少し離れた新安州にはケントル(悪党)派を名乗る一派もあった」

このことからわかるように、白氏は、自らのシノギについて独特の美学を持っていたようだ。そうした裏ビジネスで稼いだ金で白氏は、さらに組織を拡大させていく。

社会の隅々まで監視が行き届いている北朝鮮で、果たしてそのような組織が存在しうるのかという疑問も出てこようが、1980年代には「表の社会」と「裏の社会」、すなわち「表の労働党」と「裏のヤクザ」が、うまく棲み分けられていたという。

金正日の弾圧

ところが、この紳士協定は1992年に破られる。