北朝鮮のプロパガンダを骨抜きにした「韓流と林秀卿」

「処刑されるから帰らない方がいい」

韓国に帰ろうとする林秀卿氏を、北朝鮮の人々は必死で引き留めた。「韓国に戻れば処刑される」と信じていたからだ。しかし、裁判で彼女に下された判決は懲役5年。それも3年半で仮釈放された。

「我が国だったら、少なくとも収容所送りになっている」と考えていた北朝鮮の人々は、またもや衝撃を受けた。さらに、彼女が2012年の選挙に出馬、当選して国会議員になったことも北朝鮮の人にとっては衝撃だったようだ。

最近、北朝鮮を訪れた日本人観光客は、案内員(ガイド)との会話のなかで林秀卿の話が出てきたという。

「板門店からの帰りの車の中で、ガイド(30代女性)とおしゃべりしていたところ、林秀卿の話が出た。そこで、彼女が国会議員になった話をしたところ、ガイドは驚きのあまりしばらく言葉を失っていた。そして何度も『本当か?』と聞いてきた。信じられないようだった」

彼女の訪朝やその後の行動をめぐっては、韓国国内でも未だに評価が別れる。しかし、たった一人で多くの北朝鮮のプロパガンダにヒビを入れたことは否定できない。