北朝鮮「下り坂」暴走で死者続出…金正恩氏の「注意」もムダ
韓国の建設産業研究院の「朝鮮半島統一が建設産業に与える影響」(2016)という報告書によると、北朝鮮の幹線道路のうち、舗装されているのは全体の25%にも満たず、全体的に道路事情は極めて劣悪だ。舗装されていてもデコボコで、事故が多発している。
両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、道内の峠道でトラックが横転する事故が発生し、3人が死亡した。
北朝鮮の労働現場では、安全対策の欠如による大規模事故が繰り返し起きてきた。
(参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故)
その背景には、ムリな工期やノルマの達成を最優先する国家の体質がある。金正恩党委員長は最近になり、「安全に気をつけろ」と注意を呼び掛けているとも伝えられるが、なかなか現場には浸透していない。
事故が起きたのは今月2日のことだ。金正淑(キムジョンスク)郡長項里(チャンハンリ)のクパ峠で、下り坂を走っていた突撃隊(ボランティアの建設労働者)のトラックが横転した。この事故で乗っていた運転手、補助運転手、物資の引き受け担当者の3人全員が死亡した。
3人は、金正恩党委員長が旗振り役となって進めている三池淵(サムジヨン)の開発工事の現場に向かう途中だった。事故直後に現場に出動した保安署(警察署)の関係者は、峠の近辺で山菜採りをしていた人々の証言をもとに、「軍用トラックが下り坂を大きな音を立てて猛スピードで下ってきて道からはみ出して横転した」ものと見ている。
北朝鮮のドライバーは、ガソリンを節約するために下り坂で下り坂で特殊な運転方法をする傾向があり、それも事故の原因となったものと思われる。昨年4月には、同様の走り方をしていたと見られるバスが、平壌と開城(ケソン)を結ぶ高速道路を走行中に横転、36人が死亡する大惨事となった。
(参考記事:北朝鮮「36人死亡」のバス大惨事、燃料節約が原因か)
通常、事故を起こした当事者は法的責任を問われるが、今回は全員が死亡したため、誰も処罰されないものと思われる。しかし、近隣住民の間からは「道路担当機関は連帯責任を取るべきだ」との声が上がっている。
1000メートル級の山と、国境を流れる鴨緑江の支流に長津江(チャンジンガン)に囲まれた地域で、ここを走る新義州(シニジュ)と羅津(ラジン)を結ぶ1215.7キロに及ぶ幹線道路は峠道が多い上に、ほぼ全区間に渡って舗装されていない。
両江道では1日で300人が交通事故で死亡したこともあるほどだ。
(参考記事:あっという間に300人が死亡…北朝鮮の交通事故が壮絶な理由)
高速道路ですら状態は劣悪で、所々に穴が空いている。道をよく知るドライバーは巧みに穴を避けながら運転するが、それでも事故は発生する。