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  • 金正恩が韓国の熱望を「スルー」…対日独立運動記念に「関心なし」

    金正恩が韓国の熱望を「スルー」…対日独立運動記念に「関心なし」

    北朝鮮が、韓国政府が熱望していた共同行事の開催を「スルー」した。韓国の文在寅大統領は昨年9月の首脳会談で、日本による植民地時代に起きた独立運動「3.1運動」の100周年を記念する行事を、共同で開催することを北朝鮮側に提案。金正恩党委員長がこれを受け入れ、南北共催は「9月平壌共同宣言」にも盛り込まれた。

    ところが3月1日の当日を目前に控え、北朝鮮は韓国側に「今回の開催は難しい」と公式に知らせてきたのだ。理由については「時期的に難しい」としているようだが、北朝鮮は「3.1運動」に対し、韓国ほどには思い入れがない。さらに、南北対話もあくまでマイペースで進めようという北朝鮮側の姿勢の表れとも言える。

    (参考記事:「韓国は正気なのか!?」文在寅政権に北朝鮮から非難

    このところ、南北は親密さを増しているように見えるが、人権問題や軍事に関しては、北朝鮮は韓国側に強い不信感を示すことがある。韓国との付き合いは、あくまで是々非々なのだ。

    (参考記事:「韓国が下心さらけ出した」北朝鮮が猛批判する理由

    今回の件も同様と言える。韓国統一省は21日、北朝鮮側が同日、李善権(リ・ソングォン)祖国平和統一委員会委員長の名義で趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相宛てに通知文を送り、今回の開催は難しいと公式に通知があったと明らかにした。

  • もうすぐ「『終わり』の始まり」を迎える北朝鮮の逃れられない運命

    もうすぐ「『終わり』の始まり」を迎える北朝鮮の逃れられない運命

    トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩党委員長との2回目の首脳会談が、5日後に迫っている。日米韓のメディアの中には、トランプ氏が今回の会談で、制裁緩和に応じるなど北朝鮮に妥協する可能性があるとする分析が見られる。そうなれば金正恩氏にとっては儲けものだが、中長期的に見れば、それが北朝鮮の体制にとっての「『終わり』の始まり」になる可能性もある。

    金正恩体制は、恐怖政治で国民の動向を統制し、社会主義の体裁を取り繕っている。

    (参考記事:機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇

    しかし実のところ、同国の計画経済はすでに崩壊しており、なし崩し的な資本主義化が進行。貧富の差が拡大し、良い意味でも悪い意味でも「自由」の拡大が始まっている。

    (参考記事:北朝鮮で「サウナ不倫」が流行、格差社会が浮き彫りに

    それを後押ししてきたのは、実は金正恩氏自身でもある。市場に対する統制を緩めたり強めたりを繰り返した父の故金正日総書記と異なり、金正恩氏は放任主義を続けてきた。この間、「トンジュ(金主)」と呼ばれる新興富裕層の存在感はいっそう大きなものとなり、彼らなしでは北朝鮮の経済は成り立たなくなっている。

    北朝鮮で民主化が起きるなら、虐げられた民衆が暴政を倒す「革命」として実現するのが望ましいと思ってきた。政治犯収容所などにおける現在進行形の人権侵害を止めるには、それしか方法がないからだ。

    しかし、北朝鮮の体制はそれほどやわではない。民衆が本気で権力に歯向かう兆候を見せたら、当局はすぐさま残忍に弾圧してしまうだろうことを、歴史が証明している。

    (参考記事:抗議する労働者を戦車で轢殺…北朝鮮「黄海製鉄所の虐殺」

    その一方、北朝鮮の体制は「利権」の浸食にめっぽう弱い。北朝鮮社会では、当局の各部門が持つ大小様々な権限が利権化している。北朝鮮経済は、利権の集合体であると言っても過言ではないほどで、その仕組みは「ワイロ」という名の潤滑油で回っている。軍隊の中にすら、同じような仕組みが存在するほどだ。

    (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

    ただ、国際社会による経済制裁に頭を抑えられているため、その仕組みはなかなか大きく成長することができなかった。しかし、ここで制裁が緩和されたらどうなるか。韓国や中国から流れ込む投資は、北朝鮮の経済の成長を促し、同国の人々が見たこともないような巨大な利権を生み出すだろう。また、利権の数自体も爆発的に増え、利害関係の錯綜も複雑さを増す。もはや、ひとりの独裁者の権力の下に、すべての利害を従えることなど不可能になるのだ。

    そして、無数の利害関係を最大公約数的に調整する多数決の仕組み――つまりは民主主義が必要になるわけだ。

    いずれにしても、北朝鮮経済のなし崩し的な資本主義化の流れは止まらない。あの国は遅かれ早かれ、上述したような道を辿る。もしかしたら今回の首脳会談が、その号砲を鳴らしたと歴史に書かれる可能性があるということだ。

  • 北朝鮮が「正常国家の日本」を激しく警戒する理由

    北朝鮮が「正常国家の日本」を激しく警戒する理由

    北朝鮮の主要メディアである労働新聞と民主朝鮮、朝鮮中央通信は19日、揃って日本を非難する論評を出した。金正恩党委員長が米韓との対話に舵を切って以来、北朝鮮メディアが非難する対象は日本と韓国の保守派ぐらいになっている。

    (参考記事:【写真】北朝鮮、韓国「美人すぎる野党議員」を猛批判…「親日派を除去せよ」

    それにしても、3メディアが一斉に日本を非難するのは初めてのことではないが、対日攻勢は強まっていると言える。特に朝鮮中央通信は次のように述べ、日本の今後に対する警戒感を露わにした。

    「改憲を一日も早く実現させて合法的に日本を交戦権を持つ正常国家、侵略戦争を意のままに行える国につくろうというのが、安倍政権の野望である」

    北朝鮮が、日本の軍事力強化を懸念するのは当然のことだ。

    (参考記事:「自衛隊の攻撃能力は世界一流」と評価する金正恩氏の真意

    金正恩氏は先日、人民武力相で行った演説で軍の「道徳強兵化」を打ち出した。敢えて「道徳」を強調するのは、横流しや性的虐待などにより、軍の規律が乱れきっていることの反証と言える。

    (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

    金正恩氏は今月末にトランプ米大統領との2回目の首脳会談を控えている。日米などのメディアでは、トランプ氏が北朝鮮に妥協する可能性も指摘されており、国際政治における金正恩氏の旗色は悪くないはずだ。

    それでいて日本への警戒を強めるのは、米朝合意により、北朝鮮の軍事的弱体化に拍車がかかってしまうからだろう。非核化が前進すれば、通常戦力で周辺各国に大きく後れを取る北朝鮮は、「東アジア最弱」の地位に固定されかねない。

    (参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い

    ちなみに、労働新聞の同日の論評は、「日本の外交的孤立は彼ら自身がもたらしたものである」と主張。「地域で日本が独りぼっちの境遇から免れるための前提条件は一にも、二にも、三にも誠実な過去清算である」などと述べた。また民主朝鮮の論評は、日本政府に過去の植民地支配の「反省」を迫る内容だった。

    これら2紙の論調には、ハッキリ言って、国際政治の現在の局面に切り込む鋭さがない。やはり朝鮮中央通信の主張に表れた警戒感こそが、北朝鮮の日本に対する現在の視線であると見るべきかもしれない。

  • 欧州から北朝鮮に強制送還された「ある女子高生」が辿る運命

    欧州から北朝鮮に強制送還された「ある女子高生」が辿る運命

    韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使は18日に公開された月刊誌・新東亜(インターネット版)のインタビューで、昨年11月に消息を絶ったチョ・ソンギル駐イタリア北朝鮮代理大使の娘が本国に強制送還されたもようだと伝えた。

    チョ氏は現在、妻とともにイタリア情報当局の保護を受けており、米国亡命を希望して待機中だという。太永浩氏によれば、現在高校生の娘は両親とともにイタリアで暮らしていたが、何らかの手違いがあり、いっしょに脱出できなかったもようだ。

    韓国在住の他の脱北者はこうした場合の娘の処遇について、「良くて山間僻地への追放。悪ければ政治犯収容所に送られる」と解説している。北朝鮮の収容所は、あらゆる形の人権侵害が横行していることで知られる。

    (参考記事:北朝鮮、脱北者拘禁施設の過酷な実態…「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も

  • 何でも「カネカネ」の北朝鮮、ついには選挙も「有料」に

    何でも「カネカネ」の北朝鮮、ついには選挙も「有料」に

    北朝鮮の国会にあたる最高人民会議の代議員選挙が、来月10日に行われる。選挙と言っても、極めて形式的なものに過ぎない。選挙期間になると、町のあちこちに貼り出されるのは候補者のポスターではなく、「全員が賛成投票しよう!」という奇異なものだ。

    投票は、候補者の名前がスタンプで押された投票用紙を投票箱に入れるだけだ。反対票を投じるなら用紙にバツ印を書いて投票するが、そんなことをしたらどうなるかは火を見るより明らかだ。下手をすれば公開処刑もありうる。

    (参考記事:「死刑囚は体が半分なくなった」北朝鮮、公開処刑の生々しい実態

    そんな形ばかりの選挙だが、準備にはそれなりの費用がかかる。しかし、政府はその費用を有権者に肩代わりさせている。

    咸鏡北道(ハムギョンブクト)の内部情報筋によると、清津(チョンジン)、穏城(オンソン)、慶源(キョンウォン)など道内各地では、最高人民会議代議員選挙の投票所の設置と、宣伝活動が行われている。

    清津市内の通りには投票を呼びかけるポスターが貼られ、学生たちは冬休み返上で投票所の清掃を行ったり、選挙の雰囲気を盛り上げる歌を歌ったりしている。洞事務所(末端の行政機関)や学校などに作られた投票所には国旗やスローガンなどが掲げられ、中央選挙管理委員会の規定に従って様々な選挙用品が準備された。

    選挙を前にして人民班(町内会)では会議が行われた。そこで人民班長(町内会長)が伝えたのは、「投票の有料化」とも言うべき状況だ。

    「労働党は『人民の主権を守るべき政府が人民の懐からカネを取って投票所を設置してもいいのか。人民にそんなものを要求するな』と指示した。しかし、金がないのにどうやって投票所を設置するのか」(人民班長)

    人民班長は、さらにこんな話も付け加えた。

    「(清津の)水南(スナム)区域に住むある人は『主権の行使なのに何のカネが惜しかろう』と選挙管理委員会に10万北朝鮮ウォン(約1300円)を寄付したらしい」

    横並び意識やプライドをくすぐってカネを出させようとする、当局の常套手段だ。

    こうして、投票所を準備する費用として1500北朝鮮ウォン(約20円)から2500北朝鮮ウォン(約32円)の募金が集められた。大した金額ではないので不平不満が飛び出すこともなく、住民はおとなしく支払った。人民班長はさらに、選挙管理委員に振る舞うコメと食事の提供も要求。「募金のことは外部に漏らさないように」と念押しした。

    選挙は政治と関連することであるため、下手なことをすると政治犯になりかねない。北朝鮮で、政治犯は最も重い罰を受ける。人々はそれを恐れておとなしく従うのだ。

    (参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

    「選挙と関連した問題で人民班長と口げんかなどしたら、すぐに保衛部(秘密警察)が乗り出して政治的な問題になりうる。是非はともかく、素直に従う姿を見せなければならない」(情報筋)

    (参考記事:「何かがおかしい…」国のやり方を疑い始めた北朝鮮の人々

    実際、保安員(警察官)や保衛員(秘密警察)が人民班に頻繁にやってきて、選挙関連の会議に誰が出席したかをチェックするという。

    また、選挙に際して、住民が登録した場所に住んでいるかどうかのチェックも合わせて行われ、もし住んでいないことがわかれば、脱北者扱いされ様々な不利益がしょうじる。そのため、商売の理由で遠隔地に出かけている人も大慌てで帰ってくるとのことだ。

  • 「この国はもう終わり」北朝鮮を脱出した女性が見たモラル崩壊の極み

    「この国はもう終わり」北朝鮮を脱出した女性が見たモラル崩壊の極み

    今月5日に旧正月を迎えた北朝鮮で、オルム(氷=覚せい剤を表す符丁)と呼ばれる覚せい剤の値段が高騰しているという。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、覚せい剤を買い求める人が多すぎて売り切れ状態になったためだという。

    (参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

    違法薬物、とりわけ覚せい剤の蔓延は北朝鮮社会が抱える深刻な問題の一つだ。北朝鮮で麻薬や覚せい剤は国家機関の主導で製造され中国や日本に密輸された。ところが、各国当局の厳しい取り締まりによって徐々に減少。それが北朝鮮国内で薬物が蔓延するきっかけとなる。薬物の「在庫」もあれば、製造技術も原材料もある。しかし売り先はない。自ずと国内で流通しはじめたのだ。

    (参考記事:一家全員、女子中学校までが…北朝鮮の薬物汚染「町内会の前にキメる主婦」

    覚せい剤が蔓延する背景として、違法薬物が深刻な害を及ぼすという認識が国民の間で徹底されていないことがある。旧正月前後に覚せい剤の需要が高まったのも、「正月のプレゼント」として覚せい剤が贈られるからだというのだ。

    覚せい剤が贈り物として扱われるようになったのは、今にはじまったことではない。2014年に脱北した薬物密売人は、「当時、会寧(フェリョン)市に住む成人の70~80%ぐらいはオルムをやっていたと思う。私の客は、ごく普通の人々だった。警察官、保衛員、朝鮮労働党員、教師、医師たち。オルムは誕生日のパーティーや高校の卒業祝いのための、非常に良い贈り物だった」と述べている。

    さらに懸念すべきは、覚せい剤の購入層として中高生の割合が高くなっていることである。RFAの情報筋は「以前は、周囲の顔色を窺いながらオルム(覚せい剤)を入手していたが、最近では気にせずに購入している」と述べる。

    日本に在住する脱北者のAさん(40代の女性)は、薬物の蔓延が北朝鮮を離れる決定的なきっかけだったという。

    「隣家の10代の学生が覚せい剤中毒になって大変な騒ぎとなった。それをきっかけに薬物について独自で調べたところ、あまりにも薬物が蔓延する実情を見て、この国(北朝鮮)はもう終わりだと思い、脱北を決意した」

    薬物の蔓延については、金正恩党委員長も深刻な問題としてとらえているようだ。RFAの消息筋によると、「覚せい剤の製造、販売で摘発されたら死刑も覚悟しなければならない」という。それでも大金を稼ぐことができるのが、覚せい剤ビジネスなのだ。また、北朝鮮の厳しい現実があるからこそ、覚せい剤に手を染める人々がいる。

    違法薬物に対する北朝鮮社会全体の意識を変えない限り、薬物が蔓延する状況は改善しそうにない。このままだと、薬物蔓延が金正恩体制を脅かす可能性すらある。

    (参考記事:「男女関係に良いから」市民の8割が覚せい剤を使う北朝鮮の末期症状

  • 14歳「隠れ韓流ファン」が人民裁判で問われた罪と罰

    14歳「隠れ韓流ファン」が人民裁判で問われた罪と罰

    北朝鮮の恵山(ヘサン)市で今月3日、大規模な住民暴露会が開かれ、14歳の中学生を含む17人が吊るし上げられたと、デイリーNKの内部情報筋が伝えてきた。彼らが問われた罪は、韓流ドラマや映画をこっそり視聴し、映像ソフトを流布したというものだ。北朝鮮当局はこれまで、拷問などの手段も動員しながら韓流の拡散を取り締まってきた。

    (参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…]

    最近でこそ、そのような極端な手段を用いることは減っているとされるが、依然として韓流を目の敵にしていることがわかる。

    住民暴露会は、いわゆる「人民裁判」の一種だ。役場の前や学校の運動場に舞台を設置。当局の意に沿わない言動を見せた人々をそこに上がらせ、他の住民たちに糾弾するよう強要するのだ。ほかに住民総会と呼ばれるものもあり、こちらは終了後に司法機関が容疑者を逮捕する。

    住民暴露会は、逮捕するほどでもない軽微な「過ち」を対象としたものだされていたが、今回は様相が異なり、17人は保安署(警察署)に連行されたもようだ。「地元の住民たちは、6カ月から2年の労働鍛練刑(懲役)に処せられるものと見ている」と情報筋は語る。

    住民暴露会は、金日成・正日時代にも同様のことが行われていたが、金正恩時代に入り頻度が増加。小学生から老人まで、あらゆる人々が糾弾の対象にされるようになったという。

    恵山では、2年前にも大規模な住民総会が行われ、薬物使用の容疑者4人と賭博容疑者4人、売春の容疑者1人の計9人が吊るし上げられた。いずれも、金正恩氏が神経を尖らせているとされる違法行為の容疑者たちである。

    (参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち]

    北朝鮮ではかつて、金正恩氏の祖父である金日成主席が、政敵を掃滅することに血道を上げた。ソ連派や延安派などのライバルたちを、党の公式会議の場で「反党反革命分子」「宗派分子」と決めつけて排撃。治安機関に一族郎党を逮捕させ、文字通り社会から消し去った。

    その息子の金正日総書記が権力を実質的に継承した1980年代までには、彼の政敵となり得る勢力はいなくなっていた。それに替わり、当局の警戒対象となったのが国民の「心」だ。東欧社会主義圏で起きた政変の影響が、国内に及ぶことを恐れたのだ。それを食い止めるため、彼は秘密警察などを使って国民の思想を絶えず「点検」し、動揺や反抗心のうかがえる者は政治犯収容所に送るなどした。

    住民総会や住民暴露会などの手段を用いる金正恩氏のスタイルは、父の路線を踏襲したものと言える。しかし、その強硬な姿勢にも関わらず、当局の旗色は良くない。いくら取り締まっても、韓流の拡散と視聴は止まらないからだ。

    (参考記事:北朝鮮の少年少女が恐れる「少年院送り」…それでも止められない遊びとは]

    人間の「心」を統制するのは、それほど難しいことなのだ。金正恩氏もいいかげん、その辺の真理に気づいた方が身のためだろう。

  • 北朝鮮版「不正腐敗との闘い」の致命的な盲点

    社会主義ではなく「拝金主義」に国の根幹を占められつつある北朝鮮。「ワイロさえ払えば何でもできる」という腐敗ぶりに対し、金正恩党委員長が大鉈(おおなた)を奮っている。

    北朝鮮の平安北道(ピョンアンブクト)では、大規模な検閲(査察)が行われている。それもかつてないほどの規模で長期間に渡っているとのことだ。

    平安北道のデイリーNK内部情報筋によると、朝鮮労働党の検閲委員会は昨年12月20日から、税関など国の機関、工場、企業所などに対して非常に厳しい検閲を行っている。

    検閲委員会とは、反党、反革命的宗派(分派)行為や党規約違反を摘発し、責任を追求する組織で、趙然俊(チョ・ヨンジュン)元党組織指導部第1副部長が指揮している。

    検閲の結果、新義州(シニジュ)税関の税関員2人、市人民委員会(市役所)都市経営事務所の支配人、企業所の党書記などが摘発、更迭されたとの噂が流れている。通常は20日程度で終了する検閲だが、今回は史上最長の3ヶ月に及ぶ見込みだという。

    不正腐敗の根絶は、金正恩氏が、施政方針演説にあたる「新年の辞」で取り上げるほど重要視しているものだ。

    北朝鮮が国是とする「党と大衆の混然一体」を破壊し、社会主義制度をむしばむ権柄と官僚主義、不正腐敗行為は、大小をとわず一掃するための闘争の度合いを強めなければなりません。
    金正恩氏が発表した「新年の辞」全文

    金正恩氏は、不正腐敗が経済発展という目標達成の障害になっていると見ており、今回の厳しい検閲もそのような認識が反映されたものと見られる。

    朝鮮人民軍(北朝鮮軍)に対しても、厳しい検閲が実施されている。別の情報筋によると、「食糧などの物資を将校が横流しし、私腹を肥やす行為」に対して警告がなされ、一部の部隊には兵士に与えられる食事の量をチェックするために中国製の電子秤が導入された。

    軍に対しては協同農場から食料が配給されるが、部隊の幹部らによる横流しで目減りし、兵士が飢えに苦しむ事態が続いてきた。それを防ぐために給食の供給状況を監視するというわけだ。

    ちなみに、2002年に改定された後方供給規定(配給に関する規定)によると、兵士1人あたり1日に穀物600グラム、食用油60グラム、野菜と山菜1キロ、水産物600グラム、肉類300グラムを配給することになっている。

    (参考記事:金正恩氏の「おかず大作戦」が救った北朝鮮軍の危機

    ただ、チェックされるのは重さだけなので、横流しをしている幹部らは、コメの一部を売り払い、より安いトウモロコシや豆を買って差額を着服するという以前から行われてきた手法で対処している。コメを市場に持ち込めば、トウモロコシなら2倍、豆なら2.5倍にしてもらえるのだ。

    その結果、兵士が得られるのはコメ3割トウモロコシ7割のご飯と、沢庵3〜4切れだ。暖房用の薪もなく、兵士たちは氷点下20度の寒さを、貧弱な食事でしのいでいる。

    今回の厳しい検閲について市民は口々に、「今回は厳しい」「恐ろしい」「捕まればヤバい」などと語り、町には緊張した空気が漂っている。北朝鮮で生きていくには、多かれ少なかれ法に触れる行為をせざるを得ない。今回は主に幹部が検閲対象となっているようだが、一般市民とて無事とは言えないからだ。密輸で生計を立ててきた人も、息を潜めて検閲が終わるのを待っている。

    一方で、「検閲を頻繁に行って、人民のために奉仕しない幹部は追い落として新しい人に替わればいい。懲らしめてやってほしい」(情報筋)という意見も聞かれるようだ。

    中国の習近平国家主席は、深刻な公務員の不正腐敗を根絶するため、給料を上げる代わりに違法行為には厳罰をもって対処する「アメとムチ」を使い分ける手法を取っている。

    金正恩氏は習近平氏のやり方を見て不正腐敗の根絶に乗り出したのかもしれないが、中国とは大きく条件が異なる。中国の公務員は薄給ではあるが、住宅や福祉の面で非常に優遇されている。一方で北朝鮮の公務員は、給料は子どもの小遣い銭程度にしかならず、安定的な食糧配給もなければ老後の保証も心もとない。私腹を肥やす以前に、給料だけでは生きていけないのだ。

    彼らの生活を安定させない限り、いくら取り締まりを行っても、ほとぼりが冷めれば元の木阿弥だ。

    (参考記事:ワイロ激減で「国民の御用聞き」に転落した北朝鮮幹部たち

  • 「独島(竹島)強奪を公式表明」北朝鮮が対日攻勢を強める

    「独島(竹島)強奪を公式表明」北朝鮮が対日攻勢を強める

    昨年、金正恩党委員長が米韓との対話路線に舵を切って以来、北朝鮮メディアは日本に対して集中的に非難を浴びせてきた。

    (参考記事:「世界は日本を警戒すべき」…北朝鮮が「いずも」空母化に猛反発する理由

    それがこのところは、韓国の軍備増強や、保守派の動きにナーバスな反応を示していた。

    (参考記事:【写真】北朝鮮、韓国「美人すぎる野党議員」を猛批判…「親日派を除去せよ」

    しかしここへ来て、またもや日本への非難を強めている。北朝鮮国営の朝鮮中央通信は11日、「独島(竹島)を強奪しようとする日本の挑発が続いている」とする論評を配信。河野太郎外相が「竹島は日本の固有の領土」とした発言に言及し、次のように主張した。

    「これは、日本が今年も独島強奪を基本政策課題に定めていっそう露骨に取り掛かるということを公式に表明したこととして、わが民族の尊厳と自主権に対する乱暴な挑戦であり、重大な侵略行為である」

    この問題を巡っては、朝鮮労働党機関紙の労働新聞も13日付に、北朝鮮外務省傘下にある日本研究所のリ・ハクナム研究員による、似たような内容の論説を掲載している。さらには日韓の「レーダー照射」問題を巡っても、原因は「日本側の軍事的挑発」にあるとする記事が、各メディアから相次いで出ている。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    ここへ来ての日本非難は、27~28日にベトナム・ハノイで予定されている2回目の米朝首脳会談が念頭にあるものと考えざるを得ない。北朝鮮はこの会談で、米国から制裁緩和などの譲歩を引き出せると確信しているのではあるまいか。

    仮にそうなれば、韓国と中国はすぐさま、対北経済支援に動くだろう。そうすれば、北朝鮮の立場は強まり、日本に対して過去清算を迫る姿勢も積極的になるかもしれない。

    (参考記事:「日本軍が慰安婦を虐殺した映像ある」北朝鮮メディア報道

    もちろん、北朝鮮が首脳会談で、思惑通りの成果を得られるかどうかは未知数だ。しかし、北東アジアの情勢が、ある種の「流動化」に向かっているのは確かだろう。北朝鮮が今後、日本に対して具体的に何を仕掛けてくるかが注目される。

  • 北朝鮮、韓国の「美人すぎる野党議員」を猛批判…「親日派を除去せよ」

    北朝鮮、韓国の「美人すぎる野党議員」を猛批判…「親日派を除去せよ」

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信は13日、このところ険悪化している日韓関係の改善を訴える韓国の保守系議員らを「醜悪な親日逆賊」と非難する論評を配信した。

    北朝鮮は、対話の相手である韓国の文在寅政権に対しては、時にブチ切れて見せるものの、基本的には蜜月と言える関係にある。しかし、北の独裁体制を容認しない自由韓国党など保守勢力は目の敵にしており、北朝鮮メディアが最も口汚く攻撃するのも彼らだ。

    (参考記事:【写真】元人気女子アナが韓国政府を猛批判「北が敵じゃないって…」

    今回の論評が真っ先に攻撃したのは、同党の院内代表で「美人過ぎる国会議員」としても知られる羅卿ウォン(ナ・ギョンウォン)氏だ。

    (参考記事:【写真】文在寅批判の「美人過ぎる」野党議員…過去には「親日派」報道も

    論評は、彼女が「『北の非核化を導くうえで日本は重要な友邦』『政府が外交的無能を覆い隠すために反日感情をあおり立てている』と言い散らした」などと指摘。

    続けて「これは、民族の尊厳と利益は眼中になく、ひたすら同族対決と外部勢力追従から活路を見い出そうとする親日逆賊らの醜悪な本性をありのままさらけ出した反民族的売国行為」であるなどと罵倒した。

    もっとも、こんな口汚い誹謗中傷が、韓国世論に影響を与える可能性はゼロに近い。むしろ、北朝鮮が「親日」への攻撃を強めることで、現在の南北関係に懐疑的な人々は日韓関係についても冷静な見方をしようとするかもしれない。

    北朝鮮としては、韓国に対して歴史的な「優位性」を持っているつもりなのかもしれない。北朝鮮と日本は、過去の植民地統治について何ら「清算」を行っていない。日韓の間では、1965年に日韓基本条約および日韓請求権協定を結びながら、いまだに歴史問題が噴出する。そこで北朝鮮は韓国に対し「弱者だったお前らは足元を見られた。日本からのケジメはオレが取る」などという思いを抱いているのかもしれない。

    だが、国際政治で重視されるのは歴史問題だけではない。それよりもむしろ、世界は北朝鮮の人権問題を重視しているとも言える。

    歴史問題でも人権問題でも、大事なのは民主的な解決だ。北朝鮮は、自分こそがそこから最も遠いところにいることを知らねばなるまい。

    (参考記事:「韓国は正気なのか!?」文在寅政権に北朝鮮から非難

  • 新築住宅が同時多発的に崩壊…500人死亡の恐怖もよぎる

    新築住宅が同時多発的に崩壊…500人死亡の恐怖もよぎる

    将泉野菜専門協同農場の農村文化住宅(画像:朝鮮の今日)
    将泉野菜専門協同農場の農村文化住宅(画像:朝鮮の今日)

    北朝鮮で先月、建てたばかりの住宅が同時多発的に崩壊する事故が起きた。幸いにして死者は出なかったものの、地域住民は戦々恐々としている。

    手抜き工事が原因と見られるが、北朝鮮ではこうした事故が繰り返し起きている。2014年5月、平壌では完成したばかりの23階建ての高層マンションが崩壊し、住民や工事関係者など最大で500人が犠牲になる大惨事が起きている。こうした事実を知る住民らの恐怖はハンパではないだろう。

    (参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故

    事故が起きたのは今年1月ごろのことだ。黄海南道の松禾(ソンファ)と白川(ペチョン)など複数の地域で、建てたばかりの家が崩れ落ちる事件が相次いで発生した。現地の情報筋によると、ある村では2割から3割の家で壁が崩れ落ちた。幸いにして死者はいなかったものの、多くの人が負傷し、家を失って寒空の下に放り出されてしまった。

    住宅は、当局が昨年夏に繰り広げた「農村文化革命」キャンペーンの一環として建てられた「農村文化住宅」だ。このキャンペーンの目的は、古ぼけた農村の姿を一新させ、生活水準を向上させることにあった。

    郡内の機関、企業所などから動員された人々は、まだ十分に住むことのできる家を引き倒し、新しい住宅を建てた。そんな新築の家が、1軒だけでなく何棟もが次々に崩壊したのだ。その原因について情報筋は、「万里馬速度で建てたからだ」との見立てを述べた。

    「万里馬」とは、1950年代に行われた大増産運動「千里馬運動」をもじったものだ。「速度戦」とも言われるこの運動だが、増産と時間短縮ばかりが優先され、質がないがしろにされがちだ。そのため成果よりは、弊害ばかりを生み出す結果となった。

    (参考記事:【再現ルポ】北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図

    旧共産圏では1960年代に辞めているが、北朝鮮では今に至るまで続けている。とは言え、多少の修正も行われている。

    2014年6月20日の北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、金正恩党委員長が当時建設中だったタワーマンション団地の現地指導を行った場で「建設においては一にも二にも質の保証に優先的な関心を置くべき」「千年責任、万年保証のスローガンの元に、建築物を百点満点で完成させよ」と指示したと報じている。

    今までのやり方を踏襲しつつも、質を重視することを強調した発言だが、黄海南道の現場では全く守られていなかった。

    例えば、日干しレンガをきちんと乾燥させないまま積み上げて壁を作ったとされる。水分を含んだままのレンガが、冬になって暖房で暖かくなった室内と、氷点下の室外の温度差に耐えきれず、亀裂が入り、崩壊に繋がったのだ。

    また、木製の柱も規定通りに入っていなかったため、瓦の重さに耐えられなかったようだ。おそらく、柱用に供給された木材は横流しされたのだろう。オンドル(床暖房)やコンクリート壁の工事もいい加減なものだったという。

    動員された人々は給料ももらえない仕事に熱心に取り組む義理などないのに、当局が「さっさと建てろ」とうるさいので、やっつけ仕事で済ませてしまった模様だ。

    地域住民は今回の事件を受け「ふらふらする千里馬も乗りこなせなかったのに、万里馬をよこされてもどうしようもない」と嘆いているという。

    (参考記事:金正恩氏、日本を超えるタワーマンション建設…でもトイレ最悪で死者続出

    北朝鮮との病弊とも言うべき速度戦と手抜き工事だが、もし当局が「やめる」といい出したとしても、拝金主義、横行する横流しなどと複雑に絡まり合っていることもあり、すぐにはなくならないだろう。

    (参考記事:河原で500人死亡の地獄絵図…「速度戦」と呼ばれる殺人キャンペーン

  • 米朝合意で「日本が孤立する」は本当なのか

    米朝合意で「日本が孤立する」は本当なのか

    問われるのは「独自の力」

    昨年6月に続き2回目となる米朝首脳会談が、27~28日にベトナムで開催される。ここで米朝が何らかの合意に達し、米国が北朝鮮の非核化を待たずに制裁緩和を認めた場合、「制裁の旗を振ってきた日本は、孤立してしまうのではないか」との懸念が一部で出ている。

    少し前には、対北融和になる韓国に対する「パッシング(素通り)」が指摘されていた。

    (参考記事:日米の「韓国パッシング」は予想どおりの展開

    「最弱」の北朝鮮軍

    それが気付いてみたら、素通りされていたのは日本だった、という状況が現実に起こり得るのだろうか?

    結論から言えば、日本が外交的に「孤立」するような事態は絶対にないと筆者は考える。政治・経済・軍事的な日本の存在感は、そんなに小さなものではない。それは、北朝鮮も韓国もよくわかっている。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    ただ、米朝対話に向ける日本の政治家やメディアの目が、米国一辺倒で曇り過ぎているのではないかとは思う。

    米国は、北朝鮮の「完全な非核化」までは制裁を維持すると一貫して言ってきたし、現在も言い続けている。だがそれは、単なる米国が考えているだけのことだ。米国のパワーは偉大だが、世の中のすべてが彼らの思い通りに動いているわけではない。米国にも弱点があればミスもするし、妥協もする。米国と「歩調」を合わせていれば、良い結果がついてくるわけではない。米国は国益のためなら、時には北朝鮮とも韓国とも中国とも「歩調」を合わせるからだ。

    日本の「独力」で

    まさにその点を突かんとして、北朝鮮は核開発に賭けたわけだ。米国が万能ならば、北朝鮮に核開発を許してしまうこともなかっただろう。実際、金正恩党委員長の「核の暴走」を、指をくわえて見守り、核兵器の「完成」を許してしまった。そのあげくに話し合いの場に出てきたわけだから、対話の場で米国が北朝鮮を圧倒するなどと言うことは、そもそもない展開なのだ。

    そもそも論を言うならば、米国が掲げていた「CVID」――完全かつ検証可能で不可逆的な非核化――などというものは、ほとんど実現不可能な構想だ。特に「不可逆的」はあり得ない。どのような検証を行っても、北朝鮮には核開発のデータとノウハウは残ると見るべきだ。しかも同国には天然ウランがある。独裁体制が続き、最高指導者が「もう一度やるぞ」と決断すれば、いつでも核武装プログラムは再始動できる。

    金正恩氏は、非核化は約束したが、無条件降伏をしたわけでも武装解除にも応じたわけでもない。米国が、自国に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の廃棄を優先し、日本を射程に収める短・中距離弾道ミサイルは残ってしまうのではないか――日本国内には、これを懸念する声もある。

    しかし北朝鮮は、それぐらい残すのは当然だと考えているだろう。周辺の国々は、世界最強レベルの軍備を整えている。非核化後の自国の軍隊の貧弱さを考えたら、いざという時の「飛び道具」は残しておかなければ不安だ。

    (参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い

    日本は決して、東アジアで「軍縮」をリードしているわけではない。それは主権国家の権利だし、その行動にはそれなりの理由があるだろう。だが、それは北朝鮮も同じだ。

    (参考記事:「世界は日本を警戒すべき」…北朝鮮が「いずも」空母化に猛反発する理由

    結論を繰り返すが、米朝首脳会談でどのような合意が生まれようとも、日本が「孤立」するようなことは絶対にない。ただ、北朝鮮に弾道ミサイルを撤去させたり、拉致被害者を取り戻したりしたければ、それは米国に頼るのではなく、自分の力で実現させるしかないというだけのことだ。

  • 「破局的な結果を考えてみろ」北朝鮮、また韓国にブチ切れ

    「破局的な結果を考えてみろ」北朝鮮、また韓国にブチ切れ

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信は8日、韓国が南北対話を進める一方で軍備を増強していることについて「二重的振る舞いは許されない」とする論評を配信した。この問題を巡っては、すでに他の主要メディアも「(韓国が)下心をさらけ出した」(労働新聞6日付)、「破局的結果について熟考すべき」(民主朝鮮7日付)などとする論評を掲載している。北朝鮮はどうやら、「非核化後」の北東アジアにおける軍事バランスを痛く気にしているようだ。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    本欄でも繰り返し指摘してきたことだが、現在の朝鮮人民軍(北朝鮮軍)に、本格的な戦争を戦う力はない。ベトナムや中東の戦場にまで派兵し、米軍やイスラエル軍と死闘を繰り広げたのも今は昔の話である。

    (参考記事:米軍機26機を撃墜した「北の戦闘機乗りたち」

    だからこそ、北朝鮮は核兵器開発に賭けてきたわけだが、近くベトナムで行われる2回目の米朝首脳会談では、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や一部の核・ミサイル施設の廃棄で合意が成立するのではないかと見られている。仮にそれが履行されれば、北朝鮮は改めて北東アジアの「最弱国」が確定してしまうわけだ。

    (参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い

    そのような環境の中、北朝鮮が韓国の軍備増強に神経を尖らせるのは当然と言えば当然だ。そもそも、両国は対話を進めてはいるが、それはあくまでいくつかの「タブー」に目をつぶりながらのものでしかない。韓国に対する北朝鮮の不信感は、決して消えていないのだ。

    (参考記事:「韓国は正気なのか!?」文在寅政権に北朝鮮から非難

    もちろん、北朝鮮が警戒しているのは韓国だけではない。軍事力の面で言えば、日本の方がよほど気になる存在だろう。

    だから北朝鮮は米朝首脳会談においても、ICBM以外の中・短距離弾道ミサイルの廃棄には頑強に抵抗するかもしれない。ほかにも特殊部隊やサイバー部隊など、「虎の子」と呼べる戦力が残っているとはいえ、海の向こうの国に目に見える脅威を与えられるのは、やはり弾道ミサイルだろう。

    非核化の行方とともに、日本の安全保障に大きく影響する問題と言える。

  • 大学生も住民も「死にそう」…北朝鮮の酷寒「超ブラック事業」

    大学生も住民も「死にそう」…北朝鮮の酷寒「超ブラック事業」

    戦中の日本では、様々な日用品を「慰問袋」と呼ばれる袋に詰めて、戦地に出征した兵士あてに送っていた。新聞社がキャンペーンを行い、食品会社が販促活動の一環として利用するものだったが、戦争が激化するにつれ強制性が高まっていった。慰問袋とは別に、コメ、金属、家で飼っていたペットの供出も行われた。

    当時、日本の植民地支配下にあった朝鮮でも同様のことが行われていたのだが、その名残だろうか。北朝鮮当局は、国家的建設事業に従事する労働者に送る支援物資と称して、国民から半強制的に様々な物品を徴収している。

    両江道(リャンガンド)の内部情報筋によると、最近の政治講演会は「三池淵(サムジヨン)の開発工事を物心両面で支援しよう」とする内容が増えたという。

    金正恩氏は今、北朝鮮で「革命の聖地」として知られる三池淵群郡の観光開発プロジェクトを最重視していると見られる。しかし、こうした事業の建設現場の安全対策は劣悪で、深刻な事故が後を絶たない。

    (参考記事:【再現ルポ】北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図

    特に、冬の三池淵は氷点下20度を下回り、極寒の建設現場での工事は危険が伴う。健康だった若者が病気になって、故郷にたどり着く前に命を落とすという悲劇も起きている。

    (参考記事:氷点下20度の野外でタダ働き、若者の命を奪う「ブラックな現場」

    それでいて、国家による支援体制も十分でないから、その負担が国民に向かうというわけだ。

    各地の朝鮮労働党の幹部は政治講演会の内容に基づき、「三池淵の建設に動員された大学生の食料を支援せよ」と住民から食べ物を供出させている。内訳は、1世帯あたり大豆200グラム、トウモロコシ500グラム、コチュジャン1キロ、キムチ1キロ、手袋5対だ。

    すべて市場で買い集めても数百円程度だが、その日暮らしをしている庶民が「死にそうだ」とぼやくのは無理もない。

    動員された大学生の苦労もハンパではない。

    北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は先月14日、金日成総合大学、金策(キムチェク)工業大学、元山(ウォンサン)農業総合大学など全国の大学生が三池淵の建設現場に向かったと報じた。

    記事は「数多くの青年大学生たちが自らの精神的故郷を守り輝かしめるという一心で胸を熱くたぎらせ、熱烈に嘆願した」と報じているが、実際は「冬休みに入った学生を集めて、三池淵建設の重要性を説いた上で(建設工事の支援に)参加するかどうかを確認した」(情報筋)という。つまり、「イヤだ」とは言えない状況に追い込んで半強制的に約束を取り付けたということだ。

    多くの大学生が、学費や学用品、生活費を稼ぐためにアルバイトをしているが、長期間の動員でそれも難しいだろう。つまり、次の学期は食うや食わずのキャンパスライフを過ごすはめになるということだ。

    (参考記事:北朝鮮の大学生は「妊娠中絶ビジネス」も…若者は思想よりカネ

  • 「銃弾ぜんぶを頭部に撃ち込んだ」金正日時代の公開処刑

    「銃弾ぜんぶを頭部に撃ち込んだ」金正日時代の公開処刑

    来月10日の最高人民会議(国会に相当)代議員選挙を控え、北朝鮮では軍の各部隊に保衛司令部の検閲部隊が派遣され、選挙期間中の不法行為の取り締まりに乗り出していると、デイリーNKの内部情報筋が伝えてきた。

    保衛司令部は、いわば軍内の秘密警察だ。一般社会の監視を担当する国家保衛省と並ぶ、泣く子も黙る存在である。かつて、保衛司令部はその残忍な公開処刑の手法により、国家保衛省にも増して国民から恐れられていた時代があった。

    (参考記事:「死刑囚は体が半分なくなった」北朝鮮、公開処刑の生々しい実態

    北朝鮮が未曽有の大飢饉「苦難の行軍」の最中にあった1990年代後半、同国内では粛清の嵐が吹き荒れていた。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の解説記事によれば、金正日総書記はこの当時、激しい不安の中にあったという。1994年に父である金日成主席が死亡すると、時を同じくして大飢饉が発生。国民の反発が自分に向かい、体制が崩壊するのではないかと恐れたというのだ。

  • 「韓国が下心さらけ出した」北朝鮮が猛批判する理由

    「韓国が下心さらけ出した」北朝鮮が猛批判する理由

    北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は6日、韓国政府が軍事費を大幅に増額していることについて「同族と力で対決しようとする下心をさらけ出した」と非難する論評を掲載した。蜜月にも見える南北関係だが、互いの友好姿勢はあくまで「条件付き」であり、ここで改めて北朝鮮のホンネが出た形と言える。

    (参考記事:「韓国は正気なのか!?」文在寅政権に北朝鮮から非難

    韓国軍の悩み

    韓国国防省が11日に発表した「2019―2023国防中期計画」によれば、向こう5年間の軍事は総額270兆7000億ウォン(約26兆2000億円)で、同期間の年平均の増加率は前年比7.5%と、直近10年間の年平均増加率(4.9%)を大きく上回る。

    これは、米国との非核化対話の途上にある北朝鮮には、とうてい看過できない動きだ。朝鮮人民軍(北朝鮮軍)は、軍内での飢餓や虐待の横行など軍紀のびん乱により、現代の戦争に耐えられる状態ではない。

    (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

    核兵器など一部の「虎の子」だけが頼みの状況なのだ。それを今まさに「捨てる」ための交渉をしているわけだが、そこへ持ってきて、ただでさえ通常兵器で圧倒的に優勢な韓国軍が強化されたら、彼我の戦力差はさらに広がってしまう。

    しかし韓国軍とて、北朝鮮だけを念頭に軍事力を整備していくわけにはいかない。最近も、「レーダー照射」問題で日本と険悪な関係になってしまった。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    筆者は、日韓関係がいかに悪化しても、軍事衝突などという愚かな事態に発展することはないと確信している。しかし日本以外の周辺大国は、国益のためなら積極的な武力行使をためらわない国々だ。

    かつて日本の侵略により主権を完全に失った経験のある朝鮮半島の国家としては、「二度とあのような目に遭ってたまるか」と身構えるのも、故なきことではない。

    それでも北朝鮮と韓国にとって、軍事的には互いの存在が、当面して最大の警戒対象であることもまた事実だ。この重い事実は、まだまだ表面的な域を出ない対話では、簡単に崩せるものではないのである。

    (参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い

  • 第2回米朝首脳会談を大胆予想…会場と金正恩氏の宿泊場所は?

    第2回米朝首脳会談を大胆予想…会場と金正恩氏の宿泊場所は?

    米国のトランプ大統領は5日夜(現地時間)に行った一般教書演説で、2回目の米朝首脳会談を今月27日と28日にベトナムで開催することを明らかにした。開催地がベトナムのどこになるかは明らかにされていないが、同国中部のリゾートであるダナンが有力だという。この情報が正しいとしたら、会場はどこになるのだろうか。

    ベトナム戦争で激突した米朝

    ベトナム在住の情報筋によると、首脳会談の場所は「アリヤナ・コンベンションセンター(Ariyana Danang Exhibition & Convention Centre:ADECC)」が最有力だという。同センターはベトナム最大のセミナー施設であり、2017年に開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の会場として新設された。

    昨年6月の米朝首脳会談は、史上初ということもあり、開催場所となったシンガポールに世界各国のメディアが集まった。2回目の今回は、昨年ほど注目度は高くないかもしれない。ただし、米朝首脳会談が行われるタイミングで、中国の習近平国家主席がベトナムを訪れるのではないかという噂もある。報道陣や各国の当局者が集まることから、施設の整ったアリヤナ・コンベンションセンターで米朝首脳会談が行われる可能性が高いというのも頷ける。

    筆者は昨年の米朝首脳会談もシンガポールで現地取材したが、金正恩党委員長の宿泊先となった「ザ・セントレジス・シンガポール」には報道陣だけではなく地元の人々、そして観光客たちが「北朝鮮の若き独裁者」を一目見ようと大勢集まっていた。今回、金正恩氏はどこに泊まるのだろうか。

    金正恩氏は昨年の米朝首脳会談に際しても、大型の専用ベンツをわざわざシンガポールまで空輸するほどセキュリティに神経を遣っている。そのベンツには、金正恩氏が一般人と同じトイレを使えないという苦しい事情を抱えるため、それをカバーするための装備が積まれているというのだ。

    (参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

    それだけに、セキュリティ面でしっかりとしたホテルが選ばれると見られるが 、ベトナム事情に詳しい人物によると「インターコンチネンタル・ダナン・サン・ペニンシュラ・リゾート(InterContinental Danang Sun Peninsula Resort)」がそれに相応しいだろうという。

    同ホテルの公式サイトによると、最も高額なスイートルームは日本円で約45万円。首脳陣などのVIPが泊まるような部屋は一般開放されていないことから、もし金正恩氏が宿泊するとなれば、より高額な部屋になるだろう。同ホテルからアリヤナ・コンベンションセンターまでは、車で30分ほどの距離だ。

    以上はあくまでも予想にすぎない。

    会談場所も宿泊先はともかく、ベトナムでの会談は米朝両国にとって重要な意味合いをもつだろう。ベトナムはかつて、米国との戦争に勝利した。死闘を繰り広げた間柄にもかかわらず、米国とは現在良好な関係を築いている。ちなみに、ベトナム戦争には北朝鮮も派兵している。

    (参考記事:かつてベトナム戦争で死闘を演じていた米軍と北朝鮮空軍

    米越関係は北朝鮮からしてもお手本にすべきものであり、米国のポンペオ国務長官は昨年の米朝首脳会談後に、北朝鮮はベトナムの例に倣うべきだと述べている。

    ベトナムは1979年の中越戦争で、中国からの侵攻も撃退している。私感だが、米中2大国との戦争に勝利し、自国の利益のためにかつての仇敵と握手するしたたかさをもつベトナムは第2次世界大戦後の、「最強の国家」と呼ぶにふさわしい存在だと思う。金正恩氏が外交関係でベトナムほどのしたたかさを発揮できるかどうかは、未知数だ。

  • 北朝鮮で「ダム崩壊」の危機…軍兵士らの死亡事故も多発

    北朝鮮で「ダム崩壊」の危機…軍兵士らの死亡事故も多発

    両江道(リャンガンド)の内部情報筋によると、道内の三水(サムス)発電所で、ダム壁の隙間から水漏れが起き、発電できなくなってしまった。ダム壁はコンクリートではなく、砂利と小石を積み上げただけのもので、少しの亀裂がダムの崩壊に繋がりかねない。

    こうした問題の原因は、質より工期を重要視し、人命被害すら気にかけない北朝鮮版やっつけ仕事「速度戦」にあると思われる。

    (参考記事:【再現ルポ】北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図

    たとえば、北朝鮮史上最大のプロジェクトとなる端川(タンチョン)発電所建設でも動員された兵士や民間人の死亡事故が相次いでいる。

    (参考記事:若者の命を次々と飲み込む…北朝鮮「呪われた巨大発電所」の実態

  • 北朝鮮が日本に異例の「ありがとう」伝達…金正恩氏ら兄妹のメディア戦略

    北朝鮮が日本に異例の「ありがとう」伝達…金正恩氏ら兄妹のメディア戦略

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信は4日、同国の朝鮮赤十字会中央委員会が「近年、遭難したわが船員たちが無事に帰国できるように数回にわたって人道的援助を提供した日本当局に当該のルートを通じて謝意を表した」と伝えた。

    実の妹の「役割」

    北朝鮮が、日本への謝意表明を国営メディアで明らかにするのは極めて異例だ。

    北朝鮮メディアのこうした変化は金正恩政権ならではのものと言える。金正恩氏は、メディア戦略に相当に力を入れている。父親の金正日総書記は、自らの「神秘性」を守ることを重視していたのか、自国メディアにおいてもあまり色々な表情を見せなかった。

    それに比べ金正恩党委員長は、自分の「ヘンな写真」までバンバン公開してしまうほど開けっ広げだ。

    (参考記事:金正恩氏が自分の“ヘンな写真”をせっせと公開するのはナゼなのか

    あるいは、こうしたメディア戦略には、金正恩氏の妹である金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長が関わっているかもしれない。彼女が籍を置く党宣伝扇動部は、国内メディアの指導・検閲も担当する。

    また、金正恩氏に遠慮なく何でも進言できるという彼女なら、「日本に対しても、お礼を言うべきときは言わなくちゃ」とでも提案できるかもしれない。

    (参考記事:「急に変なこと言わないで!」金正恩氏、妹の猛反発にタジタジ

    日本海沿岸では近年、北朝鮮漁民と見られる遺体の漂着が後を絶たない。これについては、金正恩氏らも問題視しているふしがうかがえる。

    デイリーNKジャパンの取材によれば、金正恩氏は昨年5月、GPSを搭載したプラスチック(おそらくFRP)製の漁船を2万隻調達せよとの命令を下したとされる。というのも、遭難が続発する最大の原因は、「日本なら100年前のシロモノ」と言われる粗末な木造船による強引な出漁にあると見られているからだ。

    (参考記事:「板子一枚下は地獄」北朝鮮漁民の悲鳴が聞こえる…「百年前の船」で大量死

    いずれにせよ、北朝鮮側が日本への謝意表明を公開したことは、わずかではあるが好ましい動きと言える。もちろん、普通の国であれば当たり前のことなのだが、最近の北朝鮮メディアが日本非難一色であることを考えると、「あれも是々非々でやっているのかな」という気もする。

    (参考記事:「世界は日本を警戒すべき」…北朝鮮が「いずも」空母化に猛反発する理由

  • 韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    日韓の「レーダー照射問題」が混迷の度を深めている。さらには他の歴史問題も重なり、日韓関係は改善の糸口さえ見えない。

    韓国紙・世界日報の軍事専門記者であるパク・スチャン氏が同紙1日付(インターネット版)で、険悪な日韓関係を巡り、「一部には、世界各国の軍事力レベルを分析するグローバルファイヤーパワー(GFP)が昨年『2018年 潜在的な戦争遂行能力』で韓国を136の評価対象国のうち7位、日本を8位としたことを根拠に、韓国の軍事力が強いと主張する向きがある」と指摘。

    北朝鮮の方が「謙虚」

    さらに、これに続けて次のように解説している。

  • やってられない…金正恩氏の「独り占め」に北朝鮮で不満増幅

    やってられない…金正恩氏の「独り占め」に北朝鮮で不満増幅

    北朝鮮当局はこれまで、外貨獲得のために様々な「危ないモノ」を密かに輸出してきた。代表的なのが、兵器だ。

    北朝鮮は第4次中東戦争に空軍を派兵したり、アフリカに軍事顧問団を送ったりしながら、紛争当事国との関係を強化。そうしたつながりから、多種多様な兵器を輸出してきたのだ。

    (参考記事:第4次中東戦争が勃発、北朝鮮空軍とイスラエルF4戦闘機の死闘

    覚せい剤もまた、主な密輸品のひとつだった。北朝鮮の特殊機関が日本の暴力団と手を結び、覚せい剤を日本国内に送り込んでいたことはつとに知られている。その後、日本政府の取り締まり強化を受けて、覚せい剤の密輸は停止。そのあおりで国内が覚せい剤に汚染される「自業自得」に陥っている。

    (参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

    金正恩党委員長はこのような過程を辿りながら、もはや「危ないモノ」の密輸は割に合わないと考えているのかもしれない。経済制裁によって紛争地への兵器輸出も出来なくなった。米国などとの関係改善を目指していくなら、兵器輸出は今後も自粛せざるを得ないだろう。

    そこで金正恩氏は、完全に「まともな商品」の輸出に力を入れることにしたもようだ。国営の朝鮮中央通信は1月25日、「最高人民会議常任委員会が人参法を採択、発表した」と伝えた。同法は、北朝鮮の名産品である朝鮮人参(高麗人参)の生産と加工、流通などについて細かくルールを定めたものだ。

    (参考記事:北朝鮮が「人参法」制定…生薬ビジネスで外貨獲得か

    金正恩党委員長は1月の訪中時に、中国の代表的な生薬メーカーである同仁堂を視察しており、北朝鮮もこの分野での外貨獲得に注力していくものと見られる。

    紛争地に兵器を売ったり、覚せい剤を密輸したりするのと比べればまことに結構なことだ。しかし米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、北朝鮮国内ではこうした動きに対し、各方面から強い反発が出ているという。

    中国の丹東に出張した平壌市の幹部がRFAに語ったところでは、「一部の幹部は高麗人参の輸出産業を当局が独占する意図から法を制定したものであると非難している」という。

    同幹部はさらに、「誰が見ても、この法律は体制維持に必要な党資金を調達するため、当局の独占権を強化したものだ」と指摘。次のように続けた。

    「高麗人参の栽培は、土壌が適切な開城(ケソン)だけで可能なので、開城市人民委員会の最も重要な外貨稼ぎ部門になっていた。しかし人参法が発効して以降、開城の人参畑には、中央党の許可なしには誰も入れなくなった。もはや人参に触れることもできない」

    また、平安北道(ピョンアンブクト)の貿易関係者もRFAに対し、「これまでは党や軍所属の貿易会社が、開城で買い入れた人参を平壌に運び、人参茶など数多く製品に加工。平壌市内の高級ホテルや海外市場で販売してきた。しかしもはや、人参栽培と流通市場は首領(最高指導者)の唯一管理システムで囲いこまれてしまった。人参から生まれる外貨を国がすべて持っていくということであり、貿易会社の幹部たち『もうやってられない』と不満を募らせている」と話している。

    (参考記事:一家全員、女子中学校までが…北朝鮮の薬物汚染「町内会の前にキメる主婦」

  • 金正恩氏「実の叔父」処刑後の大粛清をいまだに継続中

    金正恩氏「実の叔父」処刑後の大粛清をいまだに継続中

    韓国紙・朝鮮日報は先月末、北朝鮮の代表的な米国通と知られていた韓成烈(ハン・ソンリョル)外務次官の失脚が確認されたと伝えた。韓国統一省が最近発行した「2019北朝鮮人名録」から、韓成烈氏の名前が消えており、これについて韓国政府の消息筋が「昨年下半期に、韓成烈氏の身辺に異常があったという情報を関係機関から伝えられ、これを反映した」と説明したという。

    おぞましい実態

    同紙はこれを巡り、「韓成烈の失脚を連座という観点から分析する見方もある」と伝えた。

    韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使は、2017年2月に行われた北朝鮮戦略センターのインタビューで「2013年に処刑された(金正恩委員長の叔父に当たる)張成沢(チャン・ソンテク)氏の事件に連座して、韓成烈次官の姻戚が粛清された。娘婿と孫も収容所へ送られた」と語っている指摘。「『張成沢の残党』を一掃する作業は現在進行形ということだ」と解説しているのだ。

    張成沢元党行政部長の処刑に続き、北朝鮮では大規模な粛清が行われた。その過程では、北朝鮮権力層のおぞましい実態も明らかになった。

    (参考記事:「幹部が遊びながら殺した女性を焼いた」北朝鮮権力層の猟奇的な実態

    北朝鮮では、有名女優が権力者の妻になったり愛人になったりすることが多いが、目立つ存在であるだけに、粛清の巻き添えになって命を落とすことが少なくない。

    (参考記事:機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇

    張成沢氏の処刑に際してはそれに加え、彼の「ライン(系列)」とみなされた外交官も数多く粛清された。そうした人々が復権したという話は聞こえてこないから、大粛清はいまだに続いているということになる。

    朝鮮日報は、北朝鮮の事情に詳しい消息筋の話しとして「昨年9月、韓成烈氏が局長級の幹部5人と共に『革命化処罰』を受け、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の剣徳(コムドク)鉱山で思想教育中」であるとも伝えた。

    革命化とは再教育のことで、農村に下放されたり党学校で思想教育漬けにされたりと様々な形があるが、鉱山送りはなかなか厳しい処分だ。

    失脚の理由として、同紙は他にも「金正恩労働党委員長に上げた朝米首脳会談関連の提案書が、党の方針に背いていると批判されたらしい」 「対米窓口役を長く務め、『米帝のスパイ』のような疑いをかけられやすかった」などの説を紹介しているが、米朝関係がこれだけ大きく動いている時期に、外交当局の中枢がそれほど荒れた状況になるとはなかなか想像しにくい。

    同紙はさらに、別の消息筋の話として、かつて北朝鮮外交のエースだった姜錫柱(カン・ソクチュ)が死亡して以降、韓成烈氏ら彼の系列だった外交官らの地位が下がり、今は李スヨン党副委員長の系列が主流派を占めていると指摘。両者の間で勢力争いが起きているとの情報も伝えている。

    ただ、李スヨン氏が北朝鮮権力層の中でも特別に洗練された人物として知られ、部下への気配りも欠かさないとされていることを考えると、これもまた容易には納得しにくい。やはり、金正恩氏の個人的な怨恨が込められている、張成沢氏の一件が何らかの影響を与えているようにも思えるのだ。

    (参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認

  • お客から恐喝して荒稼ぎする北朝鮮「恐怖のコンビニ」

    お客から恐喝して荒稼ぎする北朝鮮「恐怖のコンビニ」

    「北朝鮮には数多くのコンビニが存在する」と言えば、驚く向きが少なくないのではないだろうか。

    市場経済化が進む北朝鮮では、国営企業がファングムポル(黄金原)商店というチェーン店形式のコンビニを展開する一方で、個人が国営企業の名義と路上のプレハブを借りて営業するものもあれば、自宅の一部を改造して開業する「家売台」(チンメデ)に至るまで、様々な形の「コンビニ」が存在する。

    (参考記事:北朝鮮で新手の商店「家売台」が大人気 「コンビニ」のように24時間営業

    そんなコンビニが教化所(刑務所)の中にもオープンしたが、他のコンビニと違って利用者から反発を招いていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

    平安南道(ピョンアンナムド)の价川(ケチョン)教化所には、元々小規模な売店が存在したが、昨年末に大規模なコンビニに生まれ変わった。犯罪の増加に伴い、教化所に収監される人が増えたことを受けてのことだ。

    (参考記事:濡れ衣の女性に性暴行も…悪徳警察官「報復殺人」で70人死亡

    ところが、このコンビニは「面会に来た家族を圧迫し、カネを搾り取る手段として利用されている」という(現地の情報筋)のだ。

    北朝鮮の教化所は、受刑者に対する暴行、劣悪な環境など人権侵害の温床になっているが、ひどいのはそれだけではない。食糧事情も劣悪で、最も少ない受刑者には1日100グラムにも満たないトウモロコシ飯しか出されない。

    (参考記事:北朝鮮の刑務所「教化所」の実態(2)

    教化所で飢え死にせず生きて出所するには外部からの差し入れが欠かせないが、受刑者の家族はその食べ物や生活必需品をすべて教化所内のコンビニで買うように強いられる。例えば、水を混ぜてこねるとお団子になる「ポンポンイ粉」というトウモロコシ粉は、命をつなぐ大切な食べ物だが、教化所内のコンビニで買ったものしか差し入れが認められない。ちなみに、コンビニの店員は全員が教化所幹部の家族だ。

    幹部に渡すタバコや酒などのワイロもここで買うことを強いられる。もちろん、市場より値段が高いが文句は言えない。下手に抗議などすると受刑者がどんな目に遭わされるかわからないからだ。

    そればかりか、教化所で使う事務用品などの差し入れも強要される。

    「教化所の幹部は、受刑者が面会室に行く前にかならず『宿題』を出す。教化所で共同で使うとの名目で、ソーラーパネル、レーザー、A4用紙などを買うことを強いられる。『宿題』は、面会室で家族に頼み、コンビニで買って渡す。できなければ昼食の時間にひどい暴行を受ける」(情報筋)

    これはまさに「恐喝」である。

    両江道(リャンガンド)に住む別の情報筋は、教化所幹部のあまりの非道ぶりに怒りをぶちまけた。

    「数日前、价川教化所に入れられた弟から『栄養失調になった』と連絡を受け、面会に行ってきた。ところが、幹部から『面会は四半期に1回しかダメ』『コンビニで買った食べ物を差し入れだけしろ』と言われケンカになった。教化所の劣悪な実態についての噂が広がることを恐れ面会を拒否するくせに、コンビニの売り上げばかりに気にする態度が気に食わなかった」(情報筋)

    受刑者が、健康に過ごせるように食事や環境に配慮し、医療アクセスを保証することは当たり前のことだが、教化所幹部は受刑者の命と人権をネタにして暴利を貪っているのだ。

  • 「男女関係に良いから」北朝鮮社会を退廃させた違法ドラッグ

    「男女関係に良いから」北朝鮮社会を退廃させた違法ドラッグ

    北朝鮮「アブナイ男女の文化」(4)

    日本国内で、たとえば芸能人などが薬物乱用で摘発される際には、かなりの割合で「男女関係」が絡んでいる。そして、こうした分野に強いジャーナリストによれば、「男女間の快楽目的で薬物を使用する人ほど、使うのを止めるのは難しい」という。

    これは、覚せい剤汚染が深刻な北朝鮮においても同様だ。

    (参考記事:家庭も平気で破壊する「アレに狂った主婦たち」の暴走

    米紙ワシントン・ポストは2017年11月17日、様々な年齢と職業の男女25人から聞き取りを行った脱北者のインタビュー特集を掲載した。その中で、2014年に脱北した薬物密売人が、次のように語っている。

    「(覚せい剤は)気持ちよくしてくれて、ストレスを発散させてくれるし、男女の関係にも大きな助けになる」

    (参考記事:一家全員、女子中学校までが…北朝鮮の薬物汚染「町内会の前にキメる主婦」

    また、この密売人は次のように語っている。

    「私の主な仕事は、オルム(氷=覚せい剤を表す符丁)を売ることだった。当時、会寧(フェリョン)市に住む成人の70~80%ぐらいはオルムをやっていたと思う。私の客は、ごく普通の人々だった。警察官、保衛員、朝鮮労働党員、教師、医師たち。オルムは誕生日のパーティーや高校の卒業祝いのための、非常に良い贈り物だった」

    (参考記事:北朝鮮で少年少女の「薬物中毒」「性びん乱」の大スキャンダル

    あくまで個人の推定ではあるが、市内に住む成人の8割が覚せい剤を使用していたとは、実にショッキングな証言である。会寧市の人口は13~15万人前後とされているから、その8割が成人だとすると、ひとつの市で8万人強~9万人強が覚せい剤を使用しているということになる。

    北朝鮮では1990年代、金正日総書記の指導の下、外貨獲得を目的に覚せい剤を国家ぐるみで生産。特殊機関などが海外への密売に力を入れ、外貨稼ぎ競争を繰り広げた。

    ところが、思わぬ事態が生じた。労働者が工場から原材料や製品を横流しするのはよくあることだが、覚せい剤も例外ではなかったのだ。国内に横流しされた覚せい剤で中毒者が続出すると、金正日氏は覚せい剤の製造を中止し、組織を解散するように命じた。

    これにより、覚せい剤製造技術を持った人々が野に放たれてしまう。仕事を失い、食べるのに困った技術者たちが、国内での覚せい剤の密造・密売に乗り出したのだ。

    その後、当局は厳罰を持って取り締まっているものの、実際には摘発する側の保安員(警察官)までが覚せい剤を乱用しており、汚染が止まる気配はない。そしてそこに、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」をきっかけにした売買春の拡大などが重なることで、北朝鮮社会の退廃はいっそう進むことになってしまったのだ。

    (参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

  • 金正恩氏の親筆文書で明かされた「乱れた性」産業化の実態

    金正恩氏の親筆文書で明かされた「乱れた性」産業化の実態

    北朝鮮「アブナイ男女の文化」(3)

    北朝鮮の金正恩党委員長が、売買春の横行など国内の「乱れる性」に神経をとがらせている様子は、彼が自らサインした内部文書からも読み取ることができる。

    脱北者で平壌中枢の人事情報に精通する李潤傑(イ・ユンゴル)北朝鮮戦略情報センター代表は、2016年9月9日に出された金正恩氏の「チンピル」指示書を入手した。「チンピル」とは、漢字で書くと「親筆」となり、金正恩氏が直接決裁のサインを書いたという意味だ。

    権力者の「やりたい放題」

    指示書のタイトルは、「奉仕網で起きている退廃的で変態的な行為をなくすための闘争を強く繰り広げるための対策案」となっている。奉仕網とは、朝鮮労働党や軍などが運営するレストラン、カフェ、スーパー銭湯などの収益事業(奉仕機関)を一括りにした呼び方だ。

    (参考記事:北朝鮮で「サウナ不倫」が流行、格差社会が浮き彫りに

    指示書は「変態的行為」の実態について、次のように嘆いている。

    「食堂、清涼飲料店などの一部の奉仕機関では、個室、マッサージ室、サウナなどを利用し、夜間奉仕などの違法な奉仕活動を行い、売淫(売春)、賭博行為など退廃的で変態的な行為を助長している。奉仕員たちの色情的で醜い行為で客をひきつけていることをはじめとして、奉仕機関では社会主義制度のイメージを乱す現象が少なからず起きている」

    (参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

    李代表が北朝鮮国内の関係者の話として伝えたところでは、このような現象は首都平壌のみならず、南浦(ナムポ)、平城(ピョンソン)などの平壌周辺の都市、清津(チョンジン)、咸興(ハムン)、新義州(シニジュ)などの地方の大都市や、さらには郡部にまで広がっているという。

    (参考記事:「夫が軍隊で酷い目に」…北朝鮮「巨大風俗街」で聞かれる悲しい話

    それにしても、独裁者である金正恩氏が自ら懸念を募らせるこうした実態が、どうしていつまでも一掃されないのか。それは、こうした売春ビジネスの多くが、有力機関の大幹部たちの庇護を受けているためだ。奉仕網は党や軍、行政機関の収益事業として営まれている。それはつまり、売春ビジネスが党・軍・行戦機関の収入源になっているということだ。

    また、そもそも北朝鮮国内におけるこうした「性の乱れ」は、権力者たちのやりたい放題が発端になった部分もある。

    (参考記事:美貌の女性の歯を抜いて…崔龍海の極悪性スキャンダル

    1990年代の大飢饉「苦難の行軍」に前後した計画経済の崩壊と、その後のなし崩し的な市場経済化、そしてその結果としての極端な格差拡大により、同国社会には拝金主義がはびこってしまった。その中で、権力とカネを握る有力者たちは、自らの欲望を満たす仕組みを社会に生み出させたのだ。

    (参考記事:「あまり美人に育たないで」北朝鮮の親たちが娘の将来を案じる理由

  • うっかり金正恩氏の「大事な女性」を売り飛ばしたブローカーの行く末

    うっかり金正恩氏の「大事な女性」を売り飛ばしたブローカーの行く末

    北朝鮮で横行している女性の人身売買。女性を騙して中国に脱北させ風俗業に従事させたり、結婚相手がいない中国人に売り払ったりするのが一般的な手法だ。当局は厳しく対応しているものの、一向に後を絶たない。

    (参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち

    両江道(リャンガンド)の内部情報筋によると、今月18日に恵山(ヘサン)市内にある両江道裁判所の前で、公開裁判が行われた。被告6人のうちの1人、40代のパク被告は有名な脱北ブローカーだった。

    パク被告は、脱北幇助と人身売買で荒稼ぎし、その裕福な暮らしぶりは地元で知らぬ人がいないほどだった。何度も逮捕の危機に直面したが、そのたびに保衛部(秘密警察)にワイロを渡して事件をもみ消してきた。ところが、今回ばかりはそうはいかなかった。