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  • 「金正恩は最初に何人か処刑する」独特の統治ノウハウの落とし穴

    「金正恩は最初に何人か処刑する」独特の統治ノウハウの落とし穴

    恐怖政治、再び(5)

    デイリーNKの内部情報筋や米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えるところによると、北朝鮮当局は、しばらく控えていた公開処刑を今年に入り再開したものと見られる。

    これまでに処刑が伝えられているのは、薬物密売人や占い師など、いわゆる「非社会主義的行為」を行ったとみなされた人々だ。金正恩氏は、これらの行為に加え売買春、賭博、韓流コンテンツの流入・流布などを厳しく取り締まる姿勢を見せてきた。

    (参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

    それにもかかわらず、こうした行為に走るのは、金正恩氏と彼が率いる体制の権威に対する挑戦と見られているのかもしれない。北朝鮮においては、これより重い罪はない。

    (参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

  • 「報復殺人」で警察官70人死亡…秩序崩壊に向かう北朝鮮社会

    「報復殺人」で警察官70人死亡…秩序崩壊に向かう北朝鮮社会

    恐怖政治、再び(3)

    北朝鮮当局が、ひところ手控えていた公開処刑を再開している。背景として気になるのは、国際社会からの制裁によって深刻化している経済難だ。

    北朝鮮の社会主義経済システムが崩壊した1990年代の大飢饉「苦難の行軍」の時代、北朝鮮社会は経済難により秩序が悪化。当局はこれを恐怖で抑止すべく極刑で臨み、窃盗犯なども次々に銃殺した。

    (参考記事:「死刑囚は体が半分なくなった」北朝鮮、公開処刑の生々しい実態

    では、最近の北朝鮮はどうか。内部の情報筋からは、やはり治安の悪化が伝えられている。

  • 「金正恩印」のお菓子作りに失敗した5人の悲惨な運命

    「金正恩印」のお菓子作りに失敗した5人の悲惨な運命

    平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、今月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)に合わせ、北朝鮮当局は先月末までに子どもたちに「お菓子セット」をプレゼントすることにしていた。ところが、道内の粛川(スクチョン)、文徳(ムンドク)、寧遠(ニョンウォン)など一部地域では、期日までにお菓子の生産ができなかった。

    これは、金王朝の始祖である金日成氏、そして現在の最高指導者である金正恩党委員長の権威を傷つける重大な過誤だ。北朝鮮では、万死に値する重罪である。

    (参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

    朝鮮労働党平安南道委員会、人民委員会(道庁)などが検閲(査察)を行った結果、工場に電力がまともに供給されなかったことが原因と判明した。

  • 【写真】金正恩氏のヘア・スタイルの変化

    タバコを指に挟んで現地指導

    2014年4月。2年前の同時期の写真と比べると顔の太り具合だけでなく、髪型にも変化が見られる。また眉毛も短くしている。

    2014年7月28日労働新聞
    2014年7月28日労働新聞

    2014年7月。タバコを指に挟みながら朝鮮人民軍訓練を現地指導する金正恩氏。1年前の写真と比べるとその差は歴然としている。

    2014年11月28日労働新聞
    2014年11月28日労働新聞

    ヘア・スタイルにも変化が…

    2014年11月。この頃になるとこの体型で落ち着きつつある。

    2015年2月19日
    2015年2月19日

    2015年2月。ヘアスタイルにまたもや変化があった。米CNNは「角刈り風のシビアなスタイルへと一新」したと報道した。

    2015年6月9労働新聞
    2015年6月9労働新聞

    体調不安説も

    2015年6月。戦争史跡地を現地指導した金正恩氏だが、髪の毛に白髪が見られるとして韓国メディアは「体調不安説」を報じた。

    写真でわかるように3年間で、かなり肥満が高くなった金正恩氏。贅沢な食事をしていることが原因と見られがちだが、それ以外にも日頃のストレスやプレッシャーなどからくる精神的な不安定さが肥満につながっているという説もある。

  • 【写真】体重増加の金正恩氏

    体重増加は明らか

    2013年12月14日。張成沢氏の処刑を報じた翌日の労働新聞に掲載された現地指導の様子。外叔父を処刑した直後にも関わらず、笑みを浮かべている。

    2014年2月4日
    2014年2月4日

    2014年2月。児童施設を訪れ、子どもたちと戯れる金正恩氏。泣いている子どもを抱きかかえてあやしているようだ。

    2014年4月10日労働新聞
    2014年4月10日労働新聞

    (関連記事:【写真】金正恩氏のヘア・スタイルの変化

  • 【写真】叔父の処刑直後、笑う金正恩氏

    叔父の処刑直後に笑み

    2013年10月、「美林乗馬クラブ」を視察した金正恩氏。いつもと違って前髪を垂らしている。

    政治局拡大会議
    政治局拡大会議

    2013年12月8日。朝鮮労働党政治局拡大会議に出席した金正恩氏。この会議で張成沢氏の解任が決定されたせいか、表情がこわばっている。

    朝鮮人民軍設計研究所
    朝鮮人民軍設計研究所

    (関連記事:【写真】体重増加の金正恩氏

  • 【写真】徐々に太り始める金正恩氏

    徐々に太り始める金正恩氏

    2012年9月、李雪主夫人と平壌大同江タイル工場を現地視察。体型、とりわけあご周りや首回り、そして髪型もスッキリしている。

    金正恩(キム・ジョンウン)氏
    金正恩(キム・ジョンウン)氏

    2013年7月。同年27日に開かれた「祖国解放戦争(朝鮮戦争)勝利60周年記念閲兵式」に出席した金正恩氏。前年に比べると、少し太り始めたようだ。

    2013年10月21日美林乗馬クラブ視察
    2013年10月21日美林乗馬クラブ視察

    (関連記事:【写真】叔父の処刑直後、笑う金正恩氏

  • 【写真】金正恩氏の最高指導者への歩み

    スッポン工場視察
    スッポン工場視察

    2011年10月、金正日氏が死去する2カ月前、親子で訪問した「大同江スッポン養殖工場」での一枚だ。同工場は、今年5月に金正恩氏が視察した際に激怒した工場として知られている。

    金正恩(キム・ジョンウン)氏
    金正恩(キム・ジョンウン)氏

    2012年の太陽節(金日成氏の生誕記念日)を前にして公開された写真。髪型やストライプのネクタイなど、明らかに故金日成氏のスタイルを踏襲しているのがわかる。

    平壌大同江タイル工場
    平壌大同江タイル工場

    (参考記事:【写真】徐々に太り始める金正恩氏

  • 「自力更生で敵対勢力に打撃を」党総会で金正恩氏

    「自力更生で敵対勢力に打撃を」党総会で金正恩氏

    北朝鮮の朝鮮労働党は10日、党中央委員会第7期第4回総会を開催し、国際社会の経済制裁に自力更生で対抗する方針を打ち出した。朝鮮中央通信が伝えた。

    総会では、金正恩党委員長が報告を行い「最近行われた朝米首脳会談の基本趣旨と党の立場について明らかにし、わが国の条件と実情に合い、われわれの力と技術、資源に依拠した自立的民族経済に基づいて自力更生の旗印高く社会主義建設をいっそう力強く前進させていくことで、制裁によってわれわれを屈服させられるとして血眼になって誤った判断をする敵対勢力に深刻な打撃を与えるべきであると述べた」という。

    ただ金正恩氏は、「敵対勢力」が具体的に誰であるかは明示せず、米国に対する直接的な非難も行わなかった。核兵器や弾道ミサイル開発についても言及していない。

    総会ではまた、11日の最高人民会議第14期第1回会議に提出する国家指導機関構成案が決定されたほか、党中央委員らの人事も発表された。

    人事では金才龍(キム・ジェリョン)、李萬建(リ・マンゴン)、崔輝(チェ・フィ)、朴太徳(テ・ドクス)、金秀吉(キム・スギル)、太亨徹(テ・ヒョンチョル)、鄭京擇(チョン・ギョンテク)の各氏が党中央委員会政治局委員に、趙甬元(チョ・ヨンウォン)、金徳訓(キム・ドックン)、李龍男(リ・リョンナム)、朴正男(パク・チョンナム)、李煕用(イ・ヒヨン)、趙春龍(チョ・チュンリョン)の各氏が同政治局委員候補に補欠選挙された。

    また朴奉珠(パク・ポンジュ)、李萬建(リ・マンゴン)の両氏が党中央委員会副委員長に選挙された。

    同通信の報道全文は次のとおり。

    朝鮮労働党中央委員会第7期第4回総会に関する報道

    【平壌4月11日発朝鮮中央通信】朝鮮労働党中央委員会第7期第4回総会が10日、党中央委員会本部庁舎で行われた。

    朝鮮労働党の金正恩委員長が、総会を指導した。

    総会には、朝鮮労働党中央委員会の政治局常務委員会委員と政治局委員、委員候補、党中央委員会の委員、委員候補、党中央検査委員会委員が参加した。

    党中央委員会の一部の部署の副部長とその他のメンバーが、オブザーバーとして出席した。

    党中央委員会政治局の委任によって、朝鮮労働党の金正恩委員長が司会した。

    総会には、次のような議案が上程された。

    1.社会主義建設で自力更生の旗印をより高く掲げていくことについて

    2.最高人民会議第14期第1回会議に提出する国家指導機関構成案について

    3.組織問題

    総会では、第1の議案が討議された。

    金正恩委員長が、第1の議案に対する報告を行った。

  • 核兵器より「親の仕送り」が頼みという北朝鮮軍の凋落

    核兵器より「親の仕送り」が頼みという北朝鮮軍の凋落

    先月27日、北朝鮮の平壌で「朝鮮人民軍第5回中隊長、中隊政治指導員大会」が開催された。金正恩党委員長も大会に参加し、「現在の革命情勢は、これまでのいずれの時期よりも人民の軍隊の軍事力強化を求めている」などと述べるなど、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)に対する期待を示した。

    しかし、今の北朝鮮軍はこうした期待に応えられるような「立派な軍隊」ではない。軍紀はすでに乱れきっており、上官が一種のワイロとして女性兵士に「性上納」を強要することも横行している。

    (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

    総兵力120万人と推定されている北朝鮮軍だが、長引く経済難で弱体化し、その実態は「飢える軍隊」と揶揄されている。大規模訓練時以外、兵士の多くは農作業の現場にかりだされる。そこでは農民を襲撃する事件すら続発している。

    (参考記事:【スクープ撮】人質を盾に抵抗する脱北兵士、逮捕の瞬間!

    北朝鮮は、体制のプロパガンダに利用するため、故金日成主席および故金正日総書記の誕生日や朝鮮労働党、朝鮮人民軍などの創建記念日までに大型工事を終え、その当日に完成式典を行うことがよくある。この際、当局から求められた期日に間に合わせるため「速度戦」という突貫工事が行われるが、軍人たちが大量に動員される。しかし、安全対策を無視した工期短縮のせいで、1989年には500人以上の軍人が犠牲になる事故も起きている。

    (参考記事:【再現ルポ】北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図

    食糧不足による栄養失調や、危険な建設作業場への動員。こんな軍隊にわが子を送らなければいけない親たちは心配でたまらないだろう。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、親たちは毎月、または年に数回、入隊した子どもたちへ送金しているという。このいわば「仕送り」があってこそ子どもたちは飢えから逃れ、健康を維持することができる。仕送りが出来ない貧しい家庭出身の兵士たちが飢えに苦しむ軍隊生活を送っていることは想像に難くない。

    金正恩氏は、このような北朝鮮軍の惨状をあまり理解していないようだ。金正恩氏は度々北朝鮮軍の部隊を現地視察している。しかし、視察の際はあらかじめ調達してきた物資を部隊の倉庫にぎっしり詰めて、食事なども立派なものを並べるという。現地指導が終わったら、全ては車両に積まれてどこかへ消えていく。倉庫はガラガラになり、兵士たちの食卓にはトウモロコシのご飯と塩大根だけ残る。こうした悪弊は金正日総書記の時代からずっと続いているとRFAは指摘する。

    金正恩氏は冒頭に述べた大会で「人民軍を百戦百勝の最精鋭強兵に強化し、発展させるための跳躍台が築かれた」と強調したが実に空しい言葉である。

    (参考記事:ひとりで女性兵士30人を暴行した北朝鮮軍の中隊長

  • 北朝鮮が韓国の呼びかけに「だんまり」…文在寅政権が困惑

    北朝鮮が韓国の呼びかけに「だんまり」…文在寅政権が困惑

    北朝鮮と韓国の南北共同連絡事務所に1日、北朝鮮側の所長代理を務めるキム・グァンソン祖国平和統一委員会部長が復帰した。北朝鮮は先月22日、連絡事務所から一方的に撤収して韓国を慌てさせた。その後、北朝鮮は徐々に人員を復帰させ、業務を正常に行うまでになっているもようだ。

    しかし、これで韓国が安心できるわけではない。韓国軍は1日、朝鮮戦争の激戦地だった南北非武装地帯(DMZ)の「矢じり高地」(江原道・鉄原)で、戦死者の遺骨の発掘に着手した。本来、この発掘事業は、北朝鮮と韓国が共同で行うことが昨年9月の南北首脳会談を機に結ばれた軍事分野合意書で決められていた。ところが、北朝鮮が必要な手続きを踏まず、韓国が仕方なく単独で始めたのだ。

    これだけではない。韓国国防省は3月18日、遺骨発掘や漢江河口での民間船舶の自由航行など南北軍事合意の履行に向け将官級軍事会談の開催を提案したが、北朝鮮は「だんまり」を決め込んでいる。

    北朝鮮が、ハノイでの朝米首脳会談の失敗を受け、外交戦略の練り直しを進めているのは明らかだ。

    (参考記事:「約束も礼儀もなく無責任」北朝鮮が文在寅政権を猛批判する理由

    それでいちばん困るのが、韓国の文在寅政権である。国内経済の低迷から抜け出せない同政権としては、南北対話の進展がほとんど唯一のセールスポイントだった。歴史問題などを巡る日本との関係のこじれを支持率に結び付けようとの雰囲気も見られるが、韓国国民だって決してバカではない。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    何をやっても文在寅大統領の支持率が大きく上がらないことが、その現実を示している。

    こうなると、文在寅政権は北からのラブコールが欲しくて欲しくて仕方ない「飢餓状態」に陥るしかない。そして、北朝鮮からの要求に抵抗する余地が、どんどん狭まっているのである。

    すでにこの間においても、韓国は日米から、対北融和に前のめり過ぎると見られてきた。米朝の非核化対話が進まない以上、韓国もここで呼吸を整えるべきところなのだが、むしろ北朝鮮の巧みな心理戦にやられている印象だ。

    (参考記事:「韓国は欲張り過ぎだ」米国から対北朝鮮で厳しい声

    米国では、北朝鮮に配慮して最近あえて言及してこなかった同国の人権問題が、再び注目を集めそうな気配もある。

    (参考記事:北朝鮮女性、性的被害の生々しい証言「ひと月に5~6回も襲われた」

    この問題から露骨に目を背ける文在寅政権にはすでに多くの批判が集まっているが、今後いっそう、苦しい立場に追い込まれていく可能性もある。

  • 日本「ホメ殺し」のネタも枯れた、北朝鮮トンデモ言説のお粗末

    日本「ホメ殺し」のネタも枯れた、北朝鮮トンデモ言説のお粗末

    北朝鮮メディアがまたもや、日本の軍備増強に批判の矛先を向けている。しかしこの間、いろいろと難癖を付けすぎて「ネタ枯れ」したのか、今回はかなり強引な論法になっている。

    同国の内閣などの機関紙・民主朝鮮は26日、日本が中国の脅威を口実に軍事大国化に向かっていると非難する論評を掲載した。その中で、次のようなことを言っている。

    「事実上、日本の軍事力は世界的に先進国の隊列に堂々と入ったと言っても過言ではない」

    一見、日本の「強さ」を認めているかのような表現だが、これは一種の「ホメ殺し」とも言えるもので、このところ北朝鮮メディアがよく使っている手法だ。

    (参考記事:「自衛隊の攻撃能力は世界一流」と評価する金正恩氏の真意

    ただ、それもやり過ぎればネタは尽きる。そのせいか民主朝鮮の論評では、日本の軍備増強の事例のひとつとして、こんな言いがかりをつけている。

    「日本外相は、人工知能技術を導入した人工知能武器の活用に関連する論議に積極的に関与するという意向を表した」

    日本の河野外相が最近、人工知能を搭載した「AI兵器」について、国際的な議論に関わっていく意向を示したのは事実だ。だがそれは、AI兵器が暴走して制御できなくなり、世界戦争が引き起こされる可能性が指摘されているなか、公明党から「国際的な議論」を求める提言を受けてのことだ。つまり、河野氏が積極的に関与するとしたのは、AI兵器の規制の在り方などについての議論なのだ。

    最近の北朝鮮メディアは、単なる事実誤認のためか、あるいは故意によるものかはわからないが、このように強引に事実を捻じ曲げて、日本の軍事政策を非難する例が目立っている。

    仮に非核化を実行した場合、軍事力で東アジア最弱となる北朝鮮とすれば、日本のパワーが気になるのは当然だろう。

    (参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い

    ただ、ここまでして難癖を付ける裏には、宣伝戦略上の何らかの思惑が隠されている可能性もある。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    いずれにしても、同国のメディア戦略は金正恩氏が直接統括していると見られるものだ。今後の国際情勢の流れの中で、北朝鮮が本格的に日本と向き合う条件が整ったとき、金正恩氏がどのようなメッセージを投げてくるかは、今から気になるところだ。

    (参考記事:北朝鮮「日本の核武装化こそ問題」主張でドツボにはまる

  • 監禁され性売買強要…「売られる北朝鮮女性」の生々しい実態

    監禁され性売買強要…「売られる北朝鮮女性」の生々しい実態

    英国団体が実態報告書(上)

    米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、英国の対北朝鮮人権団体「コリア未来戦略」が新たな「性奴隷」報告書を発表したと伝えた。今月8日の国際女性デーに合わせて出されたこの報告書には、中国で過酷な状況に置かれた脱北女性の実態が生々しく記されている。

    中国で売春は違法だが、多くの北朝鮮女性たちが売春に従事させられていることは今回の報告書だけでなく、数多くの調査や取材によって明らかになっている。彼女たちの多くは、人身売買ブローカーによって売られた人々だ。ブローカーたちは、女性を騙して中国に脱北させ風俗業に従事させたり、結婚相手がいない中国人に売り払ったりする。

    (参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち

    ここ最近、北朝鮮当局が中朝国境の統制を強化していることなどにより、脱北者は減少。そのため人身売買の「相場」が上がり、ブローカーは1人でも多くの女性を売ろうと血眼になっている。

    (参考記事:「中国人の男は一列に並んだ私たちを選んだ」北朝鮮女性、人身売買被害の証言

    女性たちは1,000元(約16,000円)から50,000元(830,000円)で売られ、移住労働者が宿泊する施設に連れて行かれる。そして監禁されるような形で売春を強要される。たった数万円から数十万円で人として、女性としての人生を奪われるのだ。

    北朝鮮当局はブローカーに対し、死刑を含む厳しい態度で臨んでいる。しかし、被害は一向に後を絶たない。

    (参考記事:うっかり金正恩氏の「大事な女性」を売り飛ばしたブローカーの行く末

    そして中国を舞台とした北朝鮮女性の人身売買については、トランプ政権も問題視している。昨年11月には、北朝鮮政府が人身売買の被害を防止するための最低限の措置を講じていないことを理由に北朝鮮を資金援助の禁止対象に再指定した。

    今回の報告書は、今も中国でセックスワークを強要されている脱北女性からの長期間にわたる聞き取り調査や、かつて同様の被害に遭った韓国在住の脱北者たちからの聞き取りに基づいている。現在も中国で極秘に救援活動をおこなっている団体との共同作業による成果だ。

    報告書によると、中国でセックスワークに携わる北朝鮮女性たちが稼ぎ出すおカネは、年間1億ドル(約104億円)にも達するという。もちろん、本人たちの手に渡るお金はほんのわずかな額だ。被害者の中には、10代の少女たちが含まれていることもわかっている。(つづく)

    (参考記事:中国奥地で売られた「少女A」の前に現れた救世主

  • 北朝鮮で広がる「米朝会談は惨めな失敗」の噂、当局が吊し上げで封じる

    北朝鮮で広がる「米朝会談は惨めな失敗」の噂、当局が吊し上げで封じる

    厳しい情報統制が敷かれている北朝鮮においても、ハノイでの米朝首脳会談が「惨めな失敗に終わった」との情報は、すでにかなりの範囲で国民に共有されている。北朝鮮当局としては、それを放置しておくわけにはいかない。

    同国においては、最高指導者の名誉や権威をき損する行為は重罪とされているからだ。

    (参考記事: 金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

    北朝鮮当局は今回、国民の「毒舌」をけん制して金正恩党委員長の権威を守るために、「生活総和」を武器にしているようだ。

    生活総和とは、全国の学校、職場、軍隊などすべての単位において、少なくとも週1回集まって、自分の生活・思想上の間違った点を自己批判した上で反省するというものだ。さらに、隣人や同僚との相互批判も行われる。

    ソ連の独裁者スターリンが、1925年の著書「レーニン主義の基礎」で提議した自己批判だが、キリスト教の懺悔から由来したと言われ、反対派の吊し上げに使われるなど、共産主義抑圧体制を底辺から支えるものとして機能してきた。

    北朝鮮では、1962年3月から始まった。各職場や人民班(町内会)で10人から15人が一組となり、朝鮮労働党の党細胞書記や初級党書記が主幹して行われる。毎週土曜日の週生活総和、毎月最終土曜日の月生活総和、四半期と年末に行われる生活総和などがあるが、近年は形骸化が指摘されてきた。

    (参考記事:北朝鮮が「5大教養」を庶民に押しつけ 庶民「今さら聞かなくても中身はわかる」

    ところが、「最近になって、生活総和の雰囲気が以前とは比べものにならないほど緊張感のあるものとなり、大きな声で咳すらできないほど雰囲気が殺伐としている」と、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の情報筋が伝えている。

    中国で取材に応じた平壌在住のRFAの情報筋によると、社会の雰囲気がよかったころは、自己批判や相互批判が形ばかりのものとなり、1時間ほどでそそくさと済ませていた。

    (参考記事:北朝鮮の思想教育、出席率悪すぎで関係者やきもき

    ところが、つい最近になって状況が一変した。

    「自己批判を適当に済ませようとしたり、形ばかりの相互批判をしたりすれば、批判台に立たされ、総和参加者から集中的に批判を浴びせかけられる。同僚や隣人を厳しく批判しなければならない人たちも、批判を受ける人たち同様に気の毒だ」(情報筋)

    相互批判は事前に口裏合わせをしておき、適当なレベルでとどまるようにするのが慣行だったが、それも通じなくなった。厳しい批判を行ったせいで、仲良しだった人同士が生活総和の後に仲違いし、犬猿の仲になってしまうケースもある。

    平安北道(ピョンアンブクト)の別の情報筋は、「米朝首脳会談が失敗に終わった」とのうわさが急激に広まったことを受け、「当局が緊張感を煽るためにわざと生活総和を厳しくしている」との見方を示した。張成沢氏の処刑など大きな事件があるたびに、生活総和で締め上げて口を閉じさせるのが常套手段になっているようだ。

    (参考記事:「金正恩が手ぶらで帰って来た」…北朝鮮国民の毒舌に「うわさ話禁止令」

  • 金正恩氏も視察「国家科学院」に違法薬物疑惑という末期症状

    金正恩氏も視察「国家科学院」に違法薬物疑惑という末期症状

    米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、北朝鮮の「国家科学院」が、覚せい剤など違法薬物の原材料や製造機器を、密造業者に販売しているとの疑惑が持ち上がっているという。

    国家科学院は、平壌市の恩情(ウンジョン)区域に位置する北朝鮮内閣所属のれっきとした中央行政機関だ。昨年1月には金正恩党委員長も現地指導した、格式の高い機関である。そのような重要機関が製造に関与している可能性はあるのだろうか。

    北朝鮮はかつて、麻薬や覚せい剤を国家機関の主導で製造し、日本などに密輸していた経緯がある。しかし、各国当局の厳しい取り締まりにより、密輸は徐々に下火になった。皮肉なことに、それが北朝鮮国内で薬物が蔓延するきっかけとなる。薬物の「在庫」もあれば、製造技術も原材料もある。しかし売り先がなくなったため、自ずと国内で流通するようになったのだ。

    (参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

    RFAの平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、「国家科学院は中間実験工場で使用される試薬を薬物の密造業者に売っている。さらに、薬物の生産に必要な設備機器も国家科学院の実験器具の工場で製造している」と述べている。

    さらに、国家科学院が研究資金の不足に苦しんでいることも、疑惑の背景になっている。金正恩氏は国家科学院を視察した際、「科学技術人材との活動に大きな力を入れ、彼らを尊重し、(中略)科学研究部門への投資を引き続き増やすべきだ」と指示した。

    しかし金正恩体制は一連の核・ミサイル開発によって、国際社会から厳しい制裁を加えられている。国家が外貨不足で苦しむ中、国家科学院に十分な資金が供給されているかどうかは疑わしい。そして、たとえ研究資金が不足していても、成果は求められるのが北朝鮮のお国柄だ。そこに違法薬物の密造業者が目をつけ、自分たちのパートナーに引っ張り込んだ可能性は十分にある。

    厄介なことに、今でも北朝鮮では違法薬物の需要が高い。背景には北朝鮮社会において、覚せい剤などの違法薬物が人体に深刻な害を及ぼすという認識が徹底されていないことがある。先月の旧正月前後には、オルム(氷=覚せい剤を表す符丁)と呼ばれる覚せい剤の値段が高騰した。正月プレゼントとして需要が高まったからだ。

    (参考記事:「男女関係に良いから」市民の8割が覚せい剤を使う北朝鮮の末期症状

    日本に在住する脱北者のAさん(40代の女性)は、隣家の10代の学生が覚せい剤中毒になって大変な騒ぎとなったことをきっかけに、北朝鮮社会のモラル崩壊を目にし、絶望を感じて北朝鮮を逃れたという。

    (参考記事:「この国はもう終わり」北朝鮮を脱出した女性が見たモラル崩壊の極み

    金正恩氏は、少なくとも表向きには、薬物の蔓延を厳しく取り締まる姿勢を見せている。しかし自身が視察して期待を寄せた国家機関が薬物密造に関わっていたとするなら、これほど皮肉な話はない。

  • 「異常な女性遍歴」が原因か…実は「父親嫌い」だった金正恩氏

    「異常な女性遍歴」が原因か…実は「父親嫌い」だった金正恩氏

    北朝鮮の平壌で6、7の両日、朝鮮労働党の第2回党初級宣伝活動家大会が行われた。初級宣伝活動家とは、行政機関や工場など末端の職場単位で置かれた党組織で、思想教育やプロパガンダを担当する人々だ。

    金正恩党委員長はこの大会に「斬新な宣伝・鼓舞によって革命の前進原動力を倍加していこう」というタイトルの書簡を送っているのだが、その中に、実に衝撃的な内容が含まれている。何と、父である故金正日総書記を、婉曲な表現ながらも否定しているのだ。

    強烈な皮肉

    金正恩氏は、父の「異常な女性遍歴」を忌み嫌っていたとの説は以前からあるが、このような形で父親批判が出てくるとは思わなかった。
    (参考記事:夜な夜な金正日の「個人指導」に呼び出された天才美女の運命

    書簡には、次のように書かれている。

  • 空母化「いずも」は「水準がすごく高い!」…北朝鮮がやたらと高評価

    空母化「いずも」は「水準がすごく高い!」…北朝鮮がやたらと高評価

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信は11日、海上自衛隊の護衛艦「いずも」の空母化は「軍事大国化と海外膨張野望の明確な発露」であると非難する論評を配信した。

    北朝鮮メディアはこれまで、再三にわたり「いずも」の空母化に言及している。

    (参考記事:「世界は日本を警戒すべき」…北朝鮮が「いずも」空母化に猛反発する理由

    今回、同通信が配信した論評はまず、「先日、首相の安倍が衆議院の公開席上に現れて海上『自衛隊』の護衛艦いずもの空母化に関連して『いずもは空母に該当するものではない』と図々しく言いふらした」と指摘。これは、2月13日の衆院予算委員会での答弁を指すものと思われる。

    これに続いて論評は、「いずもはいろいろな面から現代の空母と類似したり、果ては先んじている。最多14機のヘリを搭載できるだけでなく、同時に5機を離着陸させられるいずもには、離着陸甲板、格納庫、飛行機昇降機など、空母に必要なものが備えられており、その現代化の水準もたいへん高い」などと、「いずも」の性能をやたらと高く評価している。

    北朝鮮と日本の海軍力を比較してみれば、当然といえば当然の反応ではある。

    (参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い

    しかしもちろん、何も北朝鮮は「日本はすごい!」と褒めちぎっているわけではない。論評は続けて、「先制攻撃能力を備えたいずもなど、再侵略熱気によって熱くなったサムライの後えいを乗せて20世紀のように『旭日旗』を翻し、銃弾・砲弾を撃ちながら世界を意のままにばっこしようとするのが、安倍一味の変わらぬ野望である」と決めつけている。

    北朝鮮メディアは少し前から、このような論調を張っている。当初、その目的は非核化のための米朝対話の中で、弾道ミサイルなどの戦力を維持するため、日本の軍備増強を口実にすることが目的と思われた。

    しかし、ハノイで行われた2回目の米朝首脳会談で米国は、「北に妥協するのでは」との事前の予想を覆し、弾道ミサイルと生物化学兵器の全廃要求にまで踏み込んだ。もはや、日本を口実に利用してゴネればどうにかなる次元ではなくなっているのである。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    それでも北朝鮮は、これまでの論調を捨てることはないだろう。米朝関係が結果的に上手く行くかどうかはわからないが、少なくとも多くの曲折を経ることになる。

    しかし金正恩党委員長とすれば、せっかくここまで来ながら、米国との対話ラインを断つのも簡単ではなかろう。北朝鮮メディアは今しばらく、米国に対する非難を控えるはずだ。

    となるとやはり、日本に対するこのような非難は続くことになるだろう。

    (参考記事:北朝鮮「日本の核武装化こそ問題」主張でドツボにはまる

  • 代議員選挙の結果 中央選挙委

    代議員選挙の結果 中央選挙委

    【平壌3月12日発朝鮮中央通信】中央選挙委員会は、チュチェ108(2019)年3月10日に実施した朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議第14期代議員選挙の結果に関する報道を12日に発表した。

    報道によると、朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議第14期代議員選挙は各級人民会議代議員選挙法に徹底的に準じて実施された。

    全ての選挙人は、われわれの人民主権を磐石のごとく打ち固めるための選挙にこぞって参加した。

    他国に居たり、遠海で作業中の選挙人は選挙に参加できなかった。

    選挙の結果を集計したところ、全国的に選挙人名簿に登録された全ての選挙人の99.99%が選挙に参加し、当該選挙区に登録された最高人民会議代議員候補に100%賛成投票した。

    中央選挙委員会は、朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議第14期代議員選挙のための全国の全ての区選挙委員会が提出した選挙の結果に関する報告を審議し、当選した687人の最高人民会議代議員の名前を発表した。---

  • 米朝決裂で金正恩氏「最愛の妹」の憂鬱なこれから

    米朝決裂で金正恩氏「最愛の妹」の憂鬱なこれから

    北朝鮮の朝鮮中央放送は12日、国会に相当する最高人民会議第14期代議員選挙(10日投票)で当選した687人の名前を発表した。その中には、金正恩党委員長の名前は入っていないもようだ。金正恩氏は、2014年3月に実施された前回選挙で当選しており、背景が気になる。

    もっとも、北朝鮮の選挙は国家が立てた候補に事実上、賛成票を投じるだけの仕組みだ。北朝鮮の最高指導者が代議員にならなかったのは史上初だが、だからといって、本質的な意味での「異変」とは言えない。

    一方、今回の選挙では金正恩氏の妹の金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長が当選した。前回選挙には出なかったが、2016年と17年に最高人民会議の会議に出席しており、欠員が生じた代議員のポストを引き継いでいたのかもしれない。

    今や、金与正氏が兄の最側近のひとりであることを疑う向きはないだろうが、彼女の今後については気になる部分もある。

    (参考記事:「急に変なこと言わないで!」金正恩氏、妹の猛反発にタジタジ

    金正恩氏が、昔から妹を大事にしてきたことはつとに知られている。大事にし過ぎて、彼女の友人を大量に失踪させる「事件」まで起こしたほどだ。

    (参考記事:金正恩氏実妹・与正氏の同級生がナゾの集団失踪

    金与正氏は現在、朝鮮労働党中央委員会の第1副部長の肩書を持っているが、これは日本で言うなら、中央省庁の事務次官とか官房長とかに匹敵する役職だ。そして、彼女が党内で籍を置いているのは、思想教育やプロパガンダ、対外宣伝を統括する宣伝扇動部であると見られている。

    実際、金正恩政権になって以降の北朝鮮の宣伝活動は、以前と比べて柔軟というか、あけっぴろげというか、とにかく金正日総書記の頃の神秘主義とは一線を画すものに変わった。そこにももしかしたら、金与正氏の若い感性が反映されているのかもしれない。

    (参考記事:北朝鮮が日本に異例の「ありがとう」伝達…金正恩氏ら兄妹のメディア戦略

    しかし、そのような路線が続くかどうかは、ひとえに北朝鮮を取り巻く国際情勢に関わっている。金正恩氏は、平壌で6、7日に開かれた党宣伝活動家大会に書簡を送り、「宣伝活動をもっと斬新に行え」と激を飛ばしたが、それも現在の米韓などとの対話ムードが維持されることが前提ではないのか。情勢が険悪化すれば、宣伝活動の自由度も狭まるかもしれない。

    (参考記事:金正恩氏から「責任追及され処刑」あぶない筆頭はこの人物

    ちなみにこの大会を主管したのは党宣伝扇動部である。部長を兼務する朴光浩(パク・クァンホ)党副委員長は、病気のためか長らく公の場に姿を現していない。そこで、もしかしたらこの大会で、金与正氏が中心的な役割を担い、国内における政治的な「格」をもう一段上げるかもしれないとも思ったのだが、そうはならなかった。

    金与正氏は金正恩氏にとって、日本の大阪にルーツを持つ血を分け合った数少ない家族のひとりである。今後も兄の側近としての地位は変わらないだろうが、その活躍の形は、今後の情勢に大きく影響を受けるはずだ。

  • 金正恩氏の「ポンコツ軍隊」が邪魔をする非核化の今後

    金正恩氏の「ポンコツ軍隊」が邪魔をする非核化の今後

    ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は3日、FOXニュースの報道番組に出演し、先月行われたハノイでの2度目の米朝首脳会談で、弾道ミサイルと生物化学兵器の全廃を北朝鮮に要求したことを明かした。

    会談は物別れに終わったが、それも当然と言えば当然だ。米国の要求はほとんど「武装解除」に等しく、北朝鮮としては受け入れられないだろう。

    米国の軍事専門メディアであるミリタリー・ドット・コムは2017年7月、「世界の軍隊ワースト10」と題した記事を掲載し、その中で北朝鮮の軍隊を第3位に挙げている。つまり、北朝鮮の軍隊は世界で3番目に弱いということだ。

    (参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い

    北朝鮮は、兵員や戦車などの数だけは軍事大国並みだ。しかし兵器のほとんどは骨とう品レベルで、規律も乱れきっている。

    (参考記事:ひとりで女性兵士30人を暴行した北朝鮮軍の中隊長

    かつてはベトナムや中東で米軍やイスラエル軍相手に死闘を繰り広げたが、それも今は昔の話だ。精強と言えるのは一部のエリート部隊だけで、全体としてはとても本格的な戦争に耐えられる状態にない。

    (参考記事:米軍機26機を撃墜した「北の戦闘機乗りたち」

    だからこそ、金正恩党委員長は核兵器開発に集中投資を行ったのだ。それを放棄する非核化は、北朝鮮としては「捨て身」の外交戦略とも言える。そのうえ、非核化後の「虎の子」となる弾道ミサイルと生物化学兵器まで廃棄させられたら、北朝鮮は「丸腰」同然になってしまう。

    つまり、金正恩氏は北朝鮮軍が弱すぎるが故に、米国の要求を飲むことができないのだ。

    米国とて、それぐらいの事情は見透かしているはずで、この要求を準備した時から、会談の決裂を見越していたのではないか。

    もしかしたら、ロシア疑惑などで窮地に立たされているトランプ政権は、「北朝鮮に安易な妥協をした」と非難されるのを避けるため、敢えてこのような要求を出し、北朝鮮が先に降りるよう仕向けたのかもしれない。

    しかし、困るのは今後の展開だ。上述したような北朝鮮の状況は、簡単には変わらない。また米国としても、一度出した要求を下げれば、それこそ文字通りの「妥協」となってしまう。

    果たして、非核化のための米朝対話はこの先、進展することがあり得るのだろうか。

    (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

  • 「金正恩が恥をかかされた!」首脳会談の失敗情報、北朝鮮で拡散

    「金正恩が恥をかかされた!」首脳会談の失敗情報、北朝鮮で拡散

    物別れに終わった2回目の米朝首脳会談。北朝鮮の国営メディアは会談の成果の有無には具体的に触れていないが、少しの時間差を置いて、北朝鮮国民の間にもその「中身」が伝わりつつある。

    「トランプだました」

    平安南道(ピョンアンナムド)の内部情報筋は、「今回の元帥様(金正恩党委員長)のベトナム訪問は、米国との会談が目的だったため経済制裁の解除という結果が出ると住民は期待していた」が、「会談終了から何日経っても、経済封鎖が解かれるという話がなく、人々は『交渉がうまく行かなかったのだな』と思うようになっている」と伝えた。

    (参考記事:「心配でしょうがない」首脳会談失敗で北朝鮮から失望と不安の声

    中国と取り引きのある貿易関係者を通じて、米朝間の立場の違いが大きかったという話が巷に広がりつつある。市民の間からは「残念だ」との反応と共に「1杯目の酒で腹が膨れようか」と次の会談に期待する声も上がっている。

    期待を持っているのは、情報筋も同じだ。

    「お上が元帥様の外国訪問を強調し、講演会も開いているので大きな成果があがるだろうと期待していた人もいる。私のように何かが変わるのではないだろうかと思っていた人もいた。(今回はダメでも)頻繁に会えばまた何かあるのではないか」

    一方で「個人対個人の取り引きも難しいのに、米国との取り引きが最初からうまくいくとは思っていなかった」と懐疑論を抱く人もいれば、「会談なんて自分とは関係ない」と興味を持とうとしない人もいたとのことだ。

    労働新聞が米国に対する批判記事を出さず、会談中の雰囲気は良好だったと伝えていることも、期待論を下支えしている。

    「労働新聞と放送で『新たな出会いを約束した』との話があったので、また会うものと考えている。庶民の頭には『米国は信じられない』という考えが根強いので、そう簡単にいくとは考えていない。ただ、経済制裁が早く解決してこそ、貿易を行う機関も市場も生き返る。密輸だけに頼っていては中国の業者に足元を見られ、安定性が担保されていない」(情報筋)

    米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋も、北朝鮮国内で「会談が完全に失敗した」との話が広がっていると伝えた。

    (参考記事:金正恩氏から「責任追及され処刑」あぶない筆頭はこの人物

    密輸業者から広まった話だが、市民は「最高尊厳が寧辺(ニョンビョン)の核施設まで差し出すと言ったのに、トランプ大統領がなぜ聞き入れなかったのかわからない」と疑問を持ち、「米国が北朝鮮を屈服させるために、わざとそんなことをしたのではないか」と疑っているとのことだ。

    RFAによれば、一部の人は「今回の会談が失敗に終わったのは、寧辺核施設以外にも北朝鮮が公開していなかった秘密核施設まで米国は知っていたのに、それをトランプ大統領に明かさず騙していたからだ」と見ている人もいる。

    他方、「最高尊厳が国際社会で恥をかかされた」と不快感を示す人や、「米国の経済制裁がさらに強化されるかもしれない」と不安感をのぞかせる人など、様々な異見が飛び交っている。

    噂の拡散を受けて、保衛部(秘密警察)は公式発表以外の情報が流布しないよう住民監視を強め、「真実」の拡散を抑えようとしていると平安北道(ピョンアンブクト)の別の情報筋が伝えている。

    (参考記事:首脳会談の失敗で「ホッとひと安心」している北朝鮮のお金持ち

  • 「関係改善を台無しにする気か」北朝鮮、韓国での軍事動向を非難

    「関係改善を台無しにする気か」北朝鮮、韓国での軍事動向を非難

    ベトナム・ハノイでの米朝首脳会談を前に、北朝鮮が韓国での軍事動向に対する警戒感を露わにした。

    北朝鮮は、これまでにもこの問題で韓国非難を繰り返しており、同国にとっては相当に重要な懸案となっていることがうかがえる。

    (参考記事:「破局的な結果を考えてみろ」北朝鮮、また韓国にブチ切れ

    北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は25日、米韓が来月4日から韓国での合同軍事演習「19-1演習」の実施を予定していることに対し、「朝米関係と北南関係改善の流れに背ちする危険な動き」であるとする論評を掲載した。

    「19-1演習」は従来、「キー・リゾルブ」の名称で行われていた合同指揮所演習だ。米韓は、毎年上半期に実施されていた大規模な合同野外機動訓練「フォールイーグル」の名称も今後は使わない方針とされる。

    前者はコンピューターを使ったシミュレーションだが、「フォールイーグル」には米本土などからも大量の兵力と武器が動員される。慢性的な経済難の中にある北朝鮮にとっては、これが実施されるだけで脅威なのだ。

    (参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い

    ただ、「フォールイーグル」は数十の陸・海・空軍、海兵隊の合同訓練を総合して付けられた呼称であり、まとめてこの呼称を使う必要は必ずしもない。そこで米韓は北朝鮮を刺激しないよう、統一の呼称を使うことを避け、それぞれの合同訓練を粛々と行う方針にしたのだろう。

    ところが、北朝鮮はそのようなやり方でお茶を濁されるつもりはないようだ。

    論評は「表では情勢緩和と平和について唱え、裏では戦争装備を引き入れながら合同軍事演習を再開しようとするのは内外の懸念をかき立てる」と主張。続けて「対話と戦争演習、平和と軍事的敵対行為、関係改善と軍事的圧迫は決して両立しない」と強調した。

    名称がなくなっても、合同演習が行われることに変わりはないではないか、との主張である。

    この言い分は、北朝鮮軍の弱体化を考えれば理解できないものでもない。米国の要求に沿って非核化してしまえば、北朝鮮の軍事力はさらに弱まる。

    (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

    今後、北朝鮮の非核化を進展させるためには、こうした通常兵力のバランス面でも駆け引きが必要になるということだ。

  • 北朝鮮「虐殺された芸術団」の美人歌手が生きて帰って来た

    北朝鮮「虐殺された芸術団」の美人歌手が生きて帰って来た

    2015年3月、北朝鮮の芸術関係者を震撼させる事件が起こった。金正恩党委員長の夫人である李雪主(リ・ソルチュ)氏も所属していた銀河水管弦楽団の複数のメンバーが処刑されたのだ。銀河水管弦楽団は、金正日総書記によって2009年に創設され2012年まで精力的に公演活動を行っていたが、2013年に解散させられていた。処刑は解散から2年後の2015年に行われた。同楽団のメンバー4人は、裸で立たされた上で、遺体が原形をとどめなくなるまで機関銃で乱射されるという実に残忍な方法で処刑された。

    (参考記事:遺体が粉々になり原型とどめず…金正恩氏の「銀河水管弦楽団員虐殺」事件

    解散、そして複数のメンバーが処刑される憂き目にあった銀河水管弦楽団だが、一部メンバーが復帰したようだ。

    先月、北朝鮮の友好芸術団が中国を訪問し、27日から28日にかけて北京の国家大劇院で公演した。韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使はこの公演で、銀河水管弦楽団に所属していた女性歌手のソ・ウニャン氏とファン・ウンミ氏の姿が確認されたと自身のブログで述べた。

    ソ・ウニャン氏、ファン・ウンミ氏は銀河水管弦楽団を代表する歌手だったが、確かに2013年の解散以降、表舞台から消えていた。太氏によると、2人は処罰を免れて芸術団と音楽大学の教員などを務めていたという。今回の公演で確認されたことから2人は表舞台に復帰し、さらに「銀河水楽団の他の俳優らも音楽大学や2部類芸術団から1部類芸術団に復帰した可能性が高い」と太氏は分析する。

    ちなみに、中国に派遣された友好芸術団の団長である玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏は、北朝鮮の朝鮮中央テレビで朝鮮労働党の副部長と紹介された。副部長とは、次官級に相当するだけに、玄氏はもはや金正恩氏の側近中の側近といってもいいだろう。

    金正恩氏の実妹である金与正(キム・ヨジョン)氏が朝鮮労働党第1副部長として、公私共々金正恩氏を支えているように、玄氏も元芸術家として重要な役割を担っているようだ。

    存在感を高める玄氏や、復帰したソ・ウニャン氏、ファン・ウンミ氏のように安泰な人生を歩む芸術家がいる一方で、文字通り「血の雨」を浴びながら葬り去られた芸術家もいる。

    (参考記事:金正恩氏「美貌の妻」の「元カレ写真」で殺された北朝鮮の芸術家たち

    銀河水管弦楽団のコンサートマスターだったムン・ギョンジン氏だ。ムン氏はモスクワにも留学し、ハンガリーのカネッティ国際ヴァイオリンコンクールで優勝するなど、華々しい経歴の持ち主だった。彼の才能にほれ込んだ金正日総書記は、1億7千万円相当の1716年製ストラディバリウスを購入し貸与したと言われている。しかし、金正日氏が愛し育てた素晴らしいヴァイオリニストを、息子の金正恩氏は容赦なく処刑した。

    (参考記事:金正恩氏は父が愛した「天才ヴァイオリニスト」を容赦なく殺した

    昨年の米朝首脳会談や南北会談を通じて、金正恩氏は「開かれた指導者」をアピールしている。しかし最高指導者になって以後、気に入らない幹部や芸術家をはじめ多くの国民を処刑した事実は消し去ることはできない。

    (参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認

  • 韓国の保守野党を沈没させる「歴史歪曲」のトンデモ言説

    韓国の保守野党を沈没させる「歴史歪曲」のトンデモ言説

    今月17日、韓国の国会である記者会見が開かれた。壇上に姿を見せたのは野党・正しい未来党の議員で北朝鮮人権運動を行ってきた河泰慶(ハ・テギョン)氏と、脱北者団体の代表ら。そこに光州民主化運動関連の団体関係者も加わった。一見、つながりのないようなこの顔ぶれだが、場を共にしたのにはそれなりのワケがある。

    日本では「光州事件」の呼び名で知られている1980年5月の光州民主化運動。民主化を求める韓国国民の声を押さえつけ、政権を掌握しようとした後の大統領、全斗煥氏ら「新軍部」がデモを武力で弾圧し、韓国政府が認定しただけでも死者165人、行方不明者76人、負傷者3515人を出す惨事となった。

    全氏の下野直後から今に至るまで、真相究明のための調査が続けられており、民主化を求めた運きであったことは明らかだ。その事実は法によって認められている。

    (参考記事:韓国軍の性暴力が白日の下に「被害証言、政府は黙殺してきた」

    1980年5月、光州一帯で起こったデモに対して、軍部などによる憲政秩序破壊犯罪と、不当な公権力行使で多数の犠牲者と被害者が発生した事件

    5·18民主化運動真相究明のための特別法第2条第1項

    ところが、光州民主化運動を巡る歴史修正主義とも陰謀論とも言える主張は、今に至るまでくすぶり続けている。その代表格と言えるのが、日本でも本を出版している軍事評論家の池萬元(チ・マノン)氏だ。池氏は、「光州民主化運動は北朝鮮軍の指図で行われた」という主張を十数年来続けている。

    池氏の手法は、民主化運動の現場で撮影された人物の写真と、北朝鮮軍の人物写真を照らし合わせ、「これは同一人物」だと決めつけ、北朝鮮軍の介入の論拠とするというものだ。まともな保守派からも疎んじられ、遺族団体などから複数回にわたり名誉毀損で訴えられ、有罪判決を受けてきた。池氏に「北朝鮮軍だ」とされた韓国市民が「あれは私だ」と名乗り出ても、池氏は自説を撤回しようとしない。

    そこで、池氏が自説の補強のために行ったのは、「北朝鮮から光州に派遣された」と証言する脱北者の動員だ。例えば、脱北者の李某氏は2013年5月にテレビに出演して、池氏の主張にそった証言を行った。テレビ局は世論の激しい批判を浴びて謝罪に追い込まれたが、証言の動画は未だにネット上を漂い続け、陰謀論を広めつづけている。

    池氏の陰謀論は、保守系野党の自由韓国党にも影響を与えている。

    今月8日に韓国国会で開かれた「518真相究明対国民公聴会」で、一部の同党議員が「親北左派が民主化運動の功労者という怪物集団をつくり上げ、税金を無駄遣いしている」などと主張した。さらには池氏も登場して自説を披露したことで、自由韓国党が激しい批判を浴びることとなった。そのせいで、ようやく回復しつつあった党の支持率が急落する事態となっている。

    (参考記事:17歳の女子高生ら被害も「氷山の一角」か…暴露された韓国軍の性暴力

    池氏の主張は、民主化運動当時に軍部の最高責任者だった全斗煥氏にさえ否定されている。全氏は2016年4月、雑誌「新東亜」のインタビューに側近の鄭鎬溶(チョン・ホヨン)氏、高明昇(コ・スンミョン)氏らと共に応じ、次のように語っている。

    高明昇:北朝鮮特殊軍600人という話についてコメントを出したことはありません。

    全斗煥:何だって?600人とは何かね?

    鄭鎬溶:北から600人が来たということです。池萬元氏が主張しています。

    全斗煥:どこから来たのか?

    鄭鎬溶:5.18のときに光州に。それで北朝鮮軍と光州の人たちが共に蜂起したから鎮圧したということだ。

    全斗煥:ほう、そうなのか…今日初めて聞いた。

    冒頭で言及した記者会見で、韓国のNGO・北韓戦略センターの姜哲煥(カン・チョラン)代表は「池氏は私が幼いころに光州に派遣され、スパイ活動を行ったと主張しているが、私は1977年から1989年までの12年間、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の政治犯収容所に収容されていた」とし、「最初は頭のおかしい人だと思い気にしなかったが、自由韓国党が518真相調査委員に(池氏を)推薦しようとしている有様は見るに堪えない」と述べた。

    ちなみに、姜氏は当時12歳である。池氏に北朝鮮軍呼ばわりされた脱北者の中で最年少の人物は、なんと当時3歳だったとのことだ。

    また、北朝鮮へのビラ散布を行ってきた北韓同胞直接援助運動のイ・ミンボク風船団長は「北朝鮮は私のことを嫌っているのに、なぜ私がスパイと言えるのか」と呆れた様子で語った。

    さらに、元朝鮮人民軍中尉で1993年に韓国に亡命、池萬元被害者対策委員会の共同代表を勤めるイム・ヨンソン氏は18日、公共放送KBSラジオの時事番組「最強時事」に出演。自らも池氏からスパイ呼ばわりされていると明らかにした上で、(1980年には)16歳の高等中学校の生徒で、人民軍に入隊もしていないのにどうやって光州に派遣されたというのか、と怒りをあらわにした。

    「北朝鮮から光州に派遣された」と「証言」した脱北者についてイム氏は、池氏にカネで雇われたと主張している。イム氏はこの人物を告訴しているが、光州の人々のもとに行ってすべてを告白してほしいとして、場合によっては告訴を取り下げる意思を示した。

    韓国では、貧しい暮らしを強いられている脱北者が、極右団体からカネを受け取って政治集会などに参加する事例が後を絶たない。

    (参考記事:「朴槿恵を守れ!」辞任要求に対抗する韓国民間団体の素性

  • 金正恩氏の「親密美女」が異例の出世…中央省庁の次官級に

    金正恩氏の「親密美女」が異例の出世…中央省庁の次官級に

    天国と地獄を見た北朝鮮の女性芸術家たち(上)

    北朝鮮の金正恩党委員長は、先月7日から10日にかけて中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。訪中真っ只中の8日は金正恩氏の誕生日だった。習氏が呼びつけたのか、それとも金正恩氏が誕生日を祝うことを返上して訪中を望んだのかについてはわからないが、中朝関係は以前に比べると着実に改善している。

    訪中後、金正恩氏は友好芸術団を中国に派遣した。友好芸術団は同月26~27日に北京の国家大劇院で公演を行い、習氏が彭麗媛夫人と鑑賞した。友好芸術団の団長は玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏だ。北朝鮮を代表するポップグループ・ポチョンボ電子楽団の看板歌手だった女性である。その後は、金正恩氏がポチョンボ電子楽団の後継として創設したモランボン楽団の団長を務めた。一時期、金正恩氏の元カノともいわれたこともあったが、単なる噂であり、金正日氏の愛人だったという説が有力だ。

    (参考記事:機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇

    玄氏は昨年2月、韓国の平昌冬季五輪に派遣された三池淵(サムジヨン)管弦楽団の団長も務めたが、今回の中国公演を通じてさらに出世していることが明らかになった。

    北朝鮮の朝鮮中央テレビが友好芸術団の訪中を報じ、「朝鮮労働党中央委員会副部長たちである、チャン・リョンシク同志、玄松月同志をはじめとする朝鮮民主主義人民共和国親善芸術代表団の主要メンバーたちが習近平同志と彭麗媛女史を迎えた」と伝えたのだ。

    朝鮮労働党の副部長は、日本の中央省庁の次官級に相当する。玄氏は一昨年に朝鮮労働党中央委員会候補委員に抜擢されている。歌手が党中央委員会のメンバーになるのも史上初だが、副部長職だとするなら異例中の異例だ。単に芸術家として優れているだけでなく、金正恩氏とプライベート面でもかなり親しい関係にあったからこそ党の候補委員、さらに副部長に抜擢されたと見るべきだ。そもそも金正恩氏の妻である李雪主(リ・ソルチュ)氏は銀河水管弦楽団の歌手だ。楽団は違うが二人とも看板歌手だった。

    米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、玄氏は北京駐在の北朝鮮外交官の間で「小さな王」と呼ばれていたという。それほど存在感を示しているということだろう。玄氏が労働党のどの部署に所属するかは明らかにされていないが、韓国の聯合ニュースは、「朝鮮労働党宣伝扇動部所属」ではないかと見ており、筆者もその可能性が高いと思う。宣伝扇動部とは、文芸作品を通じた最高指導者の偶像化や体制の宣伝、そして住民に対する思想教育を担当する。

    玄氏は元歌手だけに「喜び組」出身とされることがあるが、この表現は正確ではない。本来、喜び組とは最高指導者の身辺補佐をする女性たちの総称だ。喜び組の女性たちは、マッサージ、スポーツ、公演などの専門分野に別れており、夜の奉仕をする特別な組織も存在するとも言われている。

    (参考記事:北朝鮮の「喜び組」に新証言…韓国テレビ「最高指導層の夜の奉仕は木蘭組」

    玄松月氏は、もはや金正恩氏の最側近の一人と言っても過言ではない。玄氏や金正恩氏の夫人の座を射止めた李雪主氏のように芸術家として金正恩氏の寵愛を受ける女性がいる一方で、言葉どおり地獄を見た芸術家たちもいる。2015年3月には、銀河水管弦楽団の複数のメンバーが、裸で立たされた上で、遺体が原形をとどめなくなるまで機関銃で乱射されるという実に残忍な方法で処刑された。

    (参考記事:遺体が粉々になり原型とどめず…金正恩氏の「銀河水管弦楽団員虐殺」事件

    李雪主氏が所属していたにもかかわらず、楽団員は処刑され解散の憂き目にあった銀河水管弦楽団。しかし、今回の中国公演で、同楽団に所属していた歌手が復権したという。(つづく)

  • 「頭が腐った奴らは頭蓋骨から吹き飛ばせ」金正日は命令した

    「頭が腐った奴らは頭蓋骨から吹き飛ばせ」金正日は命令した

    北朝鮮の平安北道(ピョンアンブクト)では、大規模な検閲(査察)が行われている。それもかつてないほどの規模で長期間に渡っているとのことだ。

    現地の内部情報筋によると、朝鮮労働党の検閲委員会は昨年12月20日から、税関など国の機関、工場、企業所などに対して非常に厳しい検閲を行っている。検閲委員会とは、反党、反革命的宗派(分派)行為や党規約違反を摘発し、責任を追求する組織だ。

    北朝鮮ではこうして、特定地域に対する検閲が抜き打ちで行われる。過去に行われた同様の検閲で、最も厳しかったと言われるのが1995年に両江道(リャンガンド)に対して行われたものだ。

    当時、検閲を担当した軍の保衛司令部は、道内だけで少なくとも19人を公開銃殺にしており、非公開で処刑された人々も加えたら、いったいどれほどの犠牲者が出たかもわからないという。

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    北朝鮮の公開銃殺は、従来のやり方でも十分に残酷なのだが、保衛司令部のやり方は輪をかけてひどかった。普通は胴体を狙って9発の銃弾を撃ち込むのだが、保衛司令部はその全弾を頭部に浴びせたというのだ。

    (参考記事:機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇

    これについては以前にも本欄で触れているが、実は、保衛司令部がこのような銃殺方法を採用したのには伏線があった。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の解説記事によると、社会で思想の統制が乱れ、風紀が乱れているとの報告を受けた金正日総書記が「頭の腐った奴らは頭蓋骨から吹き飛ばしてしまえ!」と命令したというのだ。

    ちなみに息子の金正恩党委員長は、公開銃殺で大口径の4銃身高射銃を使用させ、頭どころか体ごと粉々にするやり方をさせている。この父にして、この子ありといったところだろうか。

    (参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認

    通常は20日程度で終了する検閲だが、今回は史上最長の3ヶ月に及ぶ見込みだという。

    情報筋によれば、市民は口々に「今回は厳しい」「恐ろしい」「捕まればヤバい」などと語り、町には緊張した空気が漂っている。北朝鮮で生きていくには、多かれ少なかれ法に触れる行為をせざるを得ないからだ。

    (参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

    今回は主に幹部が検閲対象となっているようだが、一般市民とて無事とは言えないからだ。密輸で生計を立ててきた人も、息を潜めて検閲が終わるのを待っているという。