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  • 「迷惑だ。余計なことを」プーチンからの「贈り物」にブチ切れ状態の北朝鮮国民

    ロシアのサンクト・ペテルブルグにあるオペラ、バレエの劇場のマリインスキー劇場は、チャイコフスキーの代表作「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」「白鳥の湖」が初演された劇場として、世界的に有名だ。沿海州のウラジオストクには別館もある。

    そんなマリインスキー劇場に所属する芸術団が北朝鮮を訪問し、平壌の万寿台(マンスデ)芸術劇場で「眠れる森の美女」の公演を行った。武器取引などで北朝鮮との親密さを深める、プーチン大統領からの「贈り物」と言える。

    「興味なし」

    ところが、平壌市民の反応は鈍い。いや、むしろ怒っている。めったに触れられない世界的なバレエのどこに不満があったのか。その裏には、現地におけるきわめて偏った「エンタメ事情」があると、デイリーNK内部情報筋が伝えている。

  • 北朝鮮の女子高生が「骨と皮だけ」にされた禁断の行為

    韓国政府は最近、脱北者500人余りの証言を基に作成した2023年版の北朝鮮人権報告書を公開した。

    同政府は北朝鮮人権法が制定された翌年の17年から同報告書を毎年発刊していたが、これまでは非公開だった。その理由については表向き「脱北者の個人情報漏えいの恐れや北朝鮮の反発を考慮したため」とされているが、北朝鮮との融和を掲げた文在寅前政権(2017~22年)が、金正恩総書記に忖度したためだろう。

    報告書は、北朝鮮の老若男女が様々な暴力にさらされている実態を明らかにしているが、未成年に対しても容赦なく死刑判決が下されている事実は注目される。例えば2015年に東部の元山で16~17歳の青少年6人が韓国の映像を視聴し、アヘンを使用したとして死刑を宣告され、すぐさま銃殺されたという。

    2年生の女子生徒が

    こうした未成年者に対する過酷な処罰は、現在も行われている。また刑罰だけでなく、取り調べの過程も残酷だ。

  • 女子高生ら20人が禁断の行為…北朝鮮「スポーツ合宿」の秘密

    同じ朝鮮語であっても、韓国で使われている言葉づかいの使用を厳しく禁止する北朝鮮の「平壌文化語保護法」が、最高人民会議(国会に相当)第14期第8回会議で採択されてから3カ月。

    北朝鮮では新法が制定された直後、法律の内容を知らしめるために取り締まりを強化して、違反者を血祭りにあげて、恐怖を煽るというやり方がしばしば使われる。

    今回取り締まりの対象となったのは、若者の「しりとりゲーム」だ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。
    (参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

    両江道(リャンガンド)の情報筋によると、今月3日の午後、恵山(ヘサン)駅前広場で「公開暴露の集い」――つまりは「吊し上げ大会」が開かれた。その場に引き立てられてきたのは、20人の若いスポーツ選手たちだ。

    道内の三池淵(サムジヨン)市では2月の1カ月間、道内の高級中学校に通う前途有望なスポーツ選手、市や郡の選手団などが一堂に会して、冬季訓練を行った。スケートで優秀な成績を残した高級中学校の卒業生は、両江道体育団の選手として指名され、入団が秒読み段階だった。

    そこで問題が起きた。辛い訓練の合間に開かれた娯楽会(お楽しみ会)で、しりとりをして楽しんでいたのだが、そこで「傀儡語」の単語が飛び出してしまった。ちなみに、娯楽会の場でどのような韓国風の言葉が使われたのか、情報筋は確認できないとしつつも、女性が男性の恋人を呼ぶ「オッパ」「チャギ」という言葉などを使ったのではないかと推測している。

    別の情報筋によると、参加した女子生徒がその様子を携帯電話で動画撮影していたが、それが問題の発端となってしまった。

    この女子生徒は、自宅に抜き打ちで踏み込んできた安全員(警察官)による所持品検査で、動画を見られてしまった。この件について中央からは「無慈悲な処分を下せ」との指示が下された。処分の対象になったのは20人。そのほとんどが権力のある幹部の家の子どもだったが、平壌文化語保護法の次の条文を社会に知らしめるにはもってこいの存在だった。

    第6条(傀儡語を流布する者に対する法的処罰の原則)
    国家は傀儡語を模倣したり、流布した者に対しては、傀儡語文化に汚染されたゴミ、犯罪者として認定し、彼が誰であれ、軽重を問わず極刑に至るまで厳しい法的制裁を加えるものとする。

    幹部は自分や家族が問題を起こしてしまっても、大抵はカネとコネの力でもみ消す。実際、今回の案件は、末端の安全員からの報告が朝鮮労働党両江道委員会(道党)に上がったのだが、道党ではもみ消しを図った。ところが、そのことまで含めて、朝鮮労働党中央委員会(中央党)に報告されてしまったのだ。
    (参考記事:金正恩が処刑…平壌医大「性的虐待」鬼畜グループと、ある母親の戦い

    いつも自分たちだけ助かろうとする幹部は、庶民から相当の恨みを買っている。そのため中央党は、彼らへの処分なら、住民世論の悪化を招くことなく、平壌文化語保護法への恐怖感を高めることができると踏んだのだろう。

    道安全局(地方警察本部)と検察所は、駅前広場に恵山市内の工場、企業所、団体の職員、学校の生徒などを動員した上で、公開暴露の集いを開き、娯楽会に参加した者、傀儡語が使われたことを知りながら通報しなかった者を含め、被告となった生徒20人に3年から5年の労働教化刑(懲役刑)の判決を下した。また、その親である幹部は撤職(更迭)され、恵山市内から40キロ離れた三水(サムス)郡の奥地の村に追放する処分が下された。

    金持ちである幹部とそのドラ息子連中を血祭りにあげた今回の公開暴露だが、市民の反応は予想外に悪い。

    「前途有望なスポーツ選手を言葉一つのせいで、教化所(刑務所)送りにするのはあまりにもひどい」
    「娯楽会に参加しただけで、南朝鮮(韓国)の言葉を使っていない選手まで、通報しなかったという理由だけで処罰するなんて」

    通報しなかったことだけでやりすぎとも言える処罰を下したことと、若者をターゲットにしたことへの反発が強いようだ。また、法律が非現実的だとの指摘もある。

    「(朝鮮労働)党が韓国の言葉を『傀儡語』と呼んで強力に取り締まっても、親しい人同士集まること(韓流ドラマを見ること)を根絶できまい」(情報筋)
    (参考記事:15年やっても効果ない「韓国語禁止令」を繰り返す北朝鮮

  • 女子大生200人が犠牲…北朝鮮「少女搾取」で死屍累々

    北朝鮮の平壌市安全局(警視庁)が最近、大規模な組織売春グループを摘発した事件についてはすでに本欄で述べた。40代男性のA氏をトップとするグループは、平壌郊外の平城(ピョンソン)、全国第2の都市である咸興(ハムン)、中朝国境の新義州(シニジュ)、リゾート地でもある元山(ウォンサン)、そして工業都市の沙里院(サリウォン)に拠点を置き、デリヘル業を営んでいた。

    客は朝鮮労働党や安全局、保衛局(秘密警察)、検察所など主要機関の高位幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)で、女性を客の自宅などに派遣し、数日単位で売春を行わせていた。

    女性は20代から、幼くは高級中学校(高校)を出たばかりの17〜18歳もいたという。

    大学教授が…

    北朝鮮では2年前にも、大規模な組織売春グループ「女子大生クラブ」が摘発されている。

  • 「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

    「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

    北朝鮮の人権問題を追及している民間団体が北朝鮮国内で公開処刑が行われた場所などを示したマップを作成し、15日に報告書を発表した。

    韓国・ソウルに本部を置く「転換期正義ワーキンググループ(Transitional Justice Working Group=TJWG)」は、北朝鮮の政権が行っている人権侵害を記録することで、そのような行為をやめるよう警告すると同時に、将来的な加害者の法的処罰の可能性を高める目的で、このプロジェクトを進めてきた。報告書の発表は、2017年7月と2019年6月に続き3回目。

    「金正恩期の処刑マッピング」と題された今回の報告書では、脱北者の証言442件を分析。国際社会の監視の目を避け、国境から離れた場所で公開処刑を行っていることなど、金正恩政権期になって見られるようになった特徴を列挙している。

    最も残虐な処刑

    その中に、いかにも金正恩総書記が好みそうな演出がなされた例がある。

    報告書で言及された目撃証言によると、その出来事は2013年頃のある日、首都・平壌の近郊で起きた。一度に16人が公開裁判に引き出されたことがあったというが、各自の罪状はつまびらかでない。

    いずれにせよ、死刑判決が予想される重罪だったようだ。公開処刑が頻繁に行われる河川敷などで判決が言い渡される場合、被告も見守る人々も、銃殺刑が即時執行されると考え緊張する。もしかしたら被告らも、それ以前に公開処刑を見せられたことがあったかもしれない。

    例えば同年8月、姜健総合軍官学校の射撃場で銀河水管弦楽団と旺載山(ワンジェサン)芸術団のメンバーら9人が銃殺された例がある。銀河水(ウナス)管弦楽団は、金正恩総書記の夫人である李雪主(リ・ソルチュ)氏がかつて所属していた楽団だ。

    機関銃でズタズタに

    処刑されたメンバーらは、ソルチュ氏に「元カレ」がいたことを示す「証拠写真」を回し見したとされ、これが、罪に問われたと言われている。

  • 激しい拷問に耐え続けた北朝鮮「レザーの女王」の壮絶な姿

    北朝鮮の流通の中心地、平安南道(ピョンアンナムド)の平城(ピョンソン)にある市場を今月1日、内閣商業局の取り締り班が急襲した。ターゲットは、外国製品のニセモノの製造、販売をしていた業者だ。

    平城は、ニセモノ製造技術が発達した地域の一つとして知られている。国家科学院平城分院など研究機関の技術者らが業者に雇われ、指導してきたためと言われている。

    ニセモノ産業繁栄の「成果」として、平城の市場には鞄、靴、コートなど安価で良質な革製品が多く出回った。本物と区別できないほどの精巧さで需要が高く、各地に出荷されていた。

    「名前を吐け」口を割らず

    ところが、そんな状況が一変した。

  • 中朝国境の川で4人射殺…「金正恩命令」実行の一部始終

    中朝国境の川で4人射殺…「金正恩命令」実行の一部始終

    大飢饉「苦難の行軍」により国中が大混乱に陥っていた1990年代後半、金正日総書記は犯罪者を法的手続き抜きでその場で射殺するチームを派遣するという荒っぽい治安対策を行っていた。

    (参考記事:強盗を裁判抜きで銃殺する金正日流の治安対策

    そんな時代を彷彿とさせる事件が、北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)で起きた。現地のデイリーNK内部情報筋によると、今年9月1月の深夜、道内の金亨稷(キムヒョンジク)郡を流れる鴨緑江から、激しい銃声が聞こえた。その詳細が最近になって明らかになった。脱北しようと川を渡っていた4人が射殺されたのだ。

    女性芸能人に「見学」強制

    事件の概要は次のようなものだ。

    脱北ブローカーの女性は前日夜、脱北希望者5人を連れて川を渡るため普天(ポチョン)郡に向かっていた。その途中で今回の脱北に加担していた国境警備隊員から「保衛部(秘密警察)の監視が異様に厳しい」との話を聞いた。

    そこでブローカーは急遽、川を渡る地点を150キロ下流の金亨稷郡に変更。現地に到着し、以前から連携している現地の国境警備隊員に5人を引き渡した。彼らが川に入るのを見て、ブローカーは現場を立ち去った。

    彼らが国境警備隊員に導かれ河原に降り、足を水に浸して対岸に歩き出したとき、銃声が響き渡った。保衛部の要員が彼らに向けて銃を乱射したのだ。

    4人が射殺され、なんとか中国側に逃げおおせたのは1人だけだった。ブローカーはその場で逮捕された。

    逮捕されたブローカーは、普天郡に駐屯する国境警備隊の中隊の政治指導員の妻だったが、実は保衛部のスパイだった。

    「警備隊指導員の妻は既に人身売買容疑で保衛部に逮捕されていて、スパイとなることを強制された。今回の計画は準備段階から保衛部に筒抜けだった」(情報筋)

    つまり、妻は保衛部から命じられるままに計画を進め、脱北希望者らを罠にかけたということだ。

    夫の指導員も逮捕され、二人とも保衛部の取り調べを受けた上で、2ヶ月に渡って予審(捜査終了後起訴までの追加捜査、取り調べ)を受けているという。2人がその後、どのような処遇を受けているかについては詳らかでない。

    (参考記事:北朝鮮、脱北女性を拷問した将校を厳重処分…人権問題を意識か

    事前警告も行わずにいきなり銃撃、射殺した今回の事件を知った地元民は怯えきっている。

    「当局は国境地帯で(わざと)銃声を鳴り響かせ、脱北する気が失せるようにしたようだ。国境を超える者は射殺しても良いという指示があった可能性がある」(情報筋)

    実際、金正恩党委員長は、脱北に対して射殺を含めた厳しい対処を取るように指示しており、今年5月には朝鮮労働党の大紅湍(テホンダン)郡副委員長の30代の息子と、同行していた2人の3人が脱北に失敗し、射殺されている。

    こうした残忍さにおいて、金正恩氏が父親に勝るとも劣らないことは、すでに国際社会でも広く知られている。自分が気に入らない部下たちを処刑する際、その場面を女性芸能人らに無理やり「見学」させた前科まである。

    (参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

    また、彼らが見せしめで殺されたことについて情報筋は、最終目的地が韓国だったことが影響した可能性があると指摘した。先に脱北して韓国に定住し、残りの家族を北朝鮮から呼び寄せる形の脱北が多いことを考えると、今回の件で亡くなった4人も家族だった可能性が考えられる。

    川の両側は中朝ともに人口希薄地帯が広がっており、手荒なことをしても、北朝鮮の人権状況を批判している国際社会に知られることはあまりない。実際の犠牲者は、知られているより遥かに多いだろう。

    (参考記事:脱北に失敗した家族を待つ過酷な運命

  • 「性的虐待を受けた女性兵士が男性宅に押しかけて…」北朝鮮軍の闇

    「性的虐待を受けた女性兵士が男性宅に押しかけて…」北朝鮮軍の闇

    北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)市に駐屯する高射砲部隊で、男性将校が女性兵士と「不適切」な関係を持ち、生活除隊(不名誉除隊)になる出来事があったと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

    北朝鮮の高射砲部隊は主に女性兵士で編成された部隊が多い。金正恩党委員長の祖父・

    北朝鮮では1962年 12月 10日,朝鮮労働党中央委員会第4期5次全員会議で「4大軍事路線」という方針が打ち出された。「全人民の武装化」「全国土の要塞化」「全軍幹部化」「全軍現代化」を目指そうというもので、これに基づき、女性兵士による高射砲部隊が数多く編成された。

    ただ、これらの部隊も指揮官は男性将校である場合が多い。そして、女性兵士の人権が軽んじられる風潮の中、高射砲部隊は性的虐待の温床にもなっているとされる。

    (参考記事:ひとりで女性兵士30人を暴行した北朝鮮軍の中隊長

    韓国の北韓人権情報センター(NKDB)2017年、「軍服を着た収監者~北朝鮮軍の人権実態報告書」と題した報告書を発表している。北朝鮮軍に勤務した経験を持つ脱北者70人を対象に調査したものだ。この調査では軍隊内での性暴力について、24人が経験したか、目撃したか、あるいは話を聞いたことがあると答えた。パーセンテージでは約34パーセントということになる。

    NKDBの調査に応じたある脱北女性は、次のように話している。

    「女性の中には妊娠して、自殺してしまう人も多い。旅団長や旅団政治委員に妊娠させられたとか、そういった噂が広がるんです。旅団内で、私が副分隊長への昇進を控えて士官学校に行ったとき、女性兵士が自殺した話を聞きました。妊娠してお腹が大きくなるのに、誰にも言えず悩んでいたらしいです」

    このような場合においても、性的虐待を加えた本人は、何ら制裁を受けないことがほとんどだという。

    (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

    ただ、冒頭で触れた今回の事件では、女性は自殺も泣き寝入りもしていない。男性将校は既婚者でありながら独身を騙っていたとのことで、女性は妊娠するや男性の家庭に押しかけ、妻に離婚を要求したという。

    そのようにして騒ぎが大きくなったことで、上層部としても男性将校を処分しないわけには行かなかったのだろう。

    (参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

    最近ではほかに、平安南道(ピョンアンナムド)の部隊で、性的虐待に耐えかねた女性兵士らの脱走が相次いでいるとの話もある。金正恩党委員長は、軍隊内における女性兵士の地位向上を厳命しているとされる。それが本当ならば、金正恩氏はこうした現象に目を配り、現状の抜本的な改善に取り組むべきだ。

  • AVウラ販売がバレた金正恩「拷問部隊」の絶体絶命

    AVウラ販売がバレた金正恩「拷問部隊」の絶体絶命

    北朝鮮社会に大きな影響を及ぼしている韓流ドラマ。平壌マダムの間では高級韓国製化粧品が流行、若者の間では韓国式の誕生日会が流行している。さらに韓流ドラマは、北朝鮮のマンションの構造すら韓国式に変えつつある

    当局は、韓流が体制を揺るがしかねない違法な映像であると見なして取り締まりを続けているが、一向に根絶される気配はない。それどころか、取り締まる側が、韓流に加えてアダルトビデオ(AV)を大々的に流布させていたことが発覚し、街全体が大騒ぎになっていると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

    事の発端は今年7月末のことだ。清津に住む保安員(警察官)は、AVがコピーされたUSBを手に入れ、友人を呼んで鑑賞会を行っていたところを摘発された。

    これだけでも大問題だが、多数の保衛員(秘密警察)が見ていたことも発覚し、事態を重く見た当局は大々的な検閲(監査)に乗り出した。保衛員は、管理所(政治犯収容所)の運営や公開処刑を担当する、金正恩党委員長の「拷問部隊」とも言える面々である。

    検閲の結果、保安員と保衛員は市民から没収したUSBを処分せずに持ち帰り、鑑賞した後で密売していたことが明らかになった。その数は数十人に及ぶ。

    彼らは、市内のある建物の地下室で取り調べを受けている。施設の詳細は明らかでないが、「そこに入れば無条件で管理所送りになる」(情報筋)と噂されているいわくつきの建物だ。

    (参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

    2012年に改正された北朝鮮の刑法183条で「退廃的、色情的で醜い内容を反映した海外、写真、図書、録画物、電子媒体などを許可なく外国から持ち込んだり制作したり違法に保管している者は1年以下の労働鍛錬刑に処す」と定めている。

    ただ、取締官が市民から没収した韓流ドラマを見るのは、今までもあったことだが、今回は少し事情が違うようだ。

    (参考記事:北朝鮮 取締官が韓流ドラマにハマる「夜通し見て昼は眠い」

    当局は韓流よりもAVをより有害なものとみなす。韓流でも、見せしめとして収容所送りになったり、死刑にされることすらあるのに、両方を持っていたとなれば極刑を免れないだろう。

    (参考記事:北朝鮮で「韓流」にまた死刑判決…14歳も「吊し上げ」

    今回の事件は、ある特殊な技術が使われたこと特徴でもある。

    「USBに保存されたファイルは最初は読み取れなかったが、電子製品に強い調査官がデータを復旧させ、別のUSBやCDにコピーした」(情報筋)

    破損または削除されたファイルを復旧させたように思えるが、実際は「ステルスUSB」が使われていたようだ。

    韓国の聯合ニュースは2011年2月、脱北したIT技術者が、検査の際には何もデータが記録されていないことを意味する「0バイト」と表示されるが、設定した時間の経過後には、自動的にコンテンツが見られるようになる「ステルスUSB」を開発し、北朝鮮に送り出したと報じた。

    今回使われたものがこれと同一のものかは不明だが、別の情報筋は「使い始めて数日が経つと、ファイルが見られるようになるUSBメモリが問題になり、当局が取り締まりをしている」と述べたことから、少なくとも似たような技術が使われているものと思われる。

    ちなみに、前述のステルスUSB技術の場合は、通常のやり方でデータを削除しても、必ず保存されて、また復活させられるとのことだ。つまり、北朝鮮に一度持ち込まれたデータは、コピーを繰り返されながら、しぶとく生き続けることになる。

  • 「ニセ夫婦の不倫行為を根絶せよ」当局方針に北朝鮮国民も驚愕

    「ニセ夫婦の不倫行為を根絶せよ」当局方針に北朝鮮国民も驚愕

    北朝鮮の金正恩党委員長は、2017年12月23日の朝鮮労働党第5回細胞委員長大会で演説し、「非社会主義的現象の根絶」を訴えた。非社会主義現象とは、文字通り北朝鮮が標榜する社会主義の気風を乱すあらゆる行為を指す。

    「サウナ不倫」が流行

    北朝鮮当局はそれ以来、非社会主義的行為の取り締まり――要するに風紀取り締まりに力を入れている。その範囲は密輸、賭博、売買春、違法薬物の密売や乱用、ヤミ金融、宗教を含む迷信などに加え、韓国など外国のドラマ・映画・音楽の視聴など、当局が考える社会主義にそぐわない様々な行為に及ぶ。

    庶民からは非難轟々だが、当局は一向にやめる気配がない。それどころか、その範囲がいっそう広がったと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

  • 外貨不足の北朝鮮、子どもたちを「アヘン栽培」に強制動員

    国際社会の制裁により外貨不足に陥っていることが伝えられる北朝鮮。ありとあらゆる策を講じてはいるようだが、結局は手っ取り早い「クスリ」に手を出したようだ。

    平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK情報筋によると、道内の高級中学1〜2年生(14〜15歳)の生徒の大半が、両江道(リャンガンド)、咸鏡道(ハムギョンド)の大規模なアヘン農場に動員されたと伝えた。彼らは、農場で朝鮮労働党と教師の指示に従ってアヘンのエキスを取ったり、アヘンの花を乾燥させて粉末にしたりする作業に従事させられている。

    アヘンの原料であるケシは毎年6〜7月に花が咲く。花が散った後になる実(ケシ坊主)が完全に熟す前の8月に、実に傷をつけると乳液状の物質が出てくる。それをかき集めた上で、60度以下の温度で加熱加工すると、ベトベトした茶色の塊となるが、これを「生アヘン」と呼ぶ。つまり、生徒たちはこのような「ヘラ掻き」の作業をやらされているというわけだ。

    北朝鮮は1980年代から金正日総書記の指示で「白桔梗(ペクトラジ)事業」と称し、咸鏡道、両江道、慈江道(チャガンド)などの北部山間地域に大規模なアヘン農場を作り、アヘンを栽培していた。

    (参考記事:金正日氏「麻薬で外貨を稼げ!」…コードネームは「白桔梗」

    農民たちは貧しさから逃れるため、国から言われるがままに、アヘン栽培に手を出したが、その見返りとして約束されたはずの食料配給は届かず、多くの農民が餓死した。

    (参考記事:「アヘンで儲かる」に騙された北朝鮮農民を救った党書紀のおじさん

    その後、アヘン栽培は廃止されたが、昨今の制裁による外貨不足を受け、再開されたものと思われる。

    (参考記事:一家全員、女子中学校までが…北朝鮮の薬物汚染「町内会の前にキメる主婦」

    アヘン栽培そのものも大問題だが、さらなる問題はそこに、多くの子どもたちが動員されていることだ。北朝鮮は憲法で、労働可能年齢を16歳としているが、国家が自らがそれを破っている形となる。

    国連子供の権利委員会は2009年、北朝鮮が子どもたちをアヘン栽培に動員しているとして、人権侵害行為の改善を勧告している。2016年の5回目の報告書に対して北朝鮮は「児童労働ははるか以前に根絶された」「理論と実務を結合するために、現地実習を組み合わせて、学生が農場や工場を訪問している」と主張した。

    (参考記事:国連の子どもの権利委員会、北朝鮮に人権侵害改善を勧告

    子どもたちが動員されているのは、アヘン栽培だけではない。

    黄海南道(ファンヘナムド)の情報筋は、道内の三泉(サムチョン)にある農場に生徒たちが20日間も寝泊まりさせられ、葉タバコの収穫をさせられていると伝えた。収穫は今月10日ごろから始まり、学校ごとに割り当てられたノルマを達成するために、収穫、運搬、乾燥などの作業に当たっている。9月に入ると、タバコの背が高くなるので、大学生が動員されるとのことだ。

    動員された生徒たちは自分たちが食べる分の食糧を持参しなければならないが、それができない生徒たちのために学校側は、金持ちの生徒から動員免除と引き換えに、6万北朝鮮ウォン(約780円)を徴収している。つまり、そのカネを貧しい生徒たちの食費にあてるのだ。

    情報筋は「三泉郡は金持ちより貧乏人が多く、農村支援に行かされるたびに食べ物を確保するだけのカネがなく心配する人が多い。結局は、他の生徒からもらったものを食べたり、農場が補助せざるを得ない。今年は去年より状況が悪く、教師たちも心配ばかりしている」と語っている。

    (参考記事:北朝鮮の強制建設ボランティア「金持ちは免除、貧乏人だけ行かされる」

  • 北朝鮮カップルを殺意に狂わせた「韓流AV不倫」の罪と罰

    北朝鮮カップルを殺意に狂わせた「韓流AV不倫」の罪と罰

    朝鮮民主主義人民共和国家族法は社会主義的結婚、家族制度を強固に発展させ、全社会を仲睦まじく、団結した社会主義大家庭にするのに貢献する(結婚法第1条)

    朝鮮労働党や北朝鮮の政府は、結婚を個人の結びつきではなく、革命を達成するための末端の細胞(組織)と見て、革命的に出会い、革命的に結婚し、革命的な家庭を作ることを求めている。

    しかし、北朝鮮に限った話ではないが、理想はあくまで理想に過ぎず、現実はかけ離れたところにある。

    (参考記事:北朝鮮で「サウナ不倫」が流行、格差社会が浮き彫りに

    革命とは縁もゆかりもない男女の不倫関係も当たり前に存在し、それが悲惨な結末を迎えることもある。北朝鮮北東部の清津(チョンジン)では最近、不倫関係にあったカップルが、女性の夫を殺害する事件が発生した。

    現地の情報筋によると、事件が起きたのは6月中旬のことだ。

    清津市保安署(警察署)所属の保安員(警察官)は、ある女性と不倫関係に陥った。

    女性の夫は穏やかな性格で知られ、二人の不倫関係について街の噂で知っていた。しかし、相手が保安員である上に、一家の生計を担っていたのは妻だったため、ひたすら耐えて暮らしていた。

    北朝鮮の一般男性は、国から割り当てられた企業などに籍を置く義務がある一方で、女性にはそれがない。その「自由」を利用して、女性は市場で商売に精を出す。ということで、女性は一家の財布の紐を握ることになる。

    (参考記事:妻に優しくなった北朝鮮の夫たち…亭主関白の末路は「餓死の恐怖」

    ある日のこと。夫が家に戻ったところ、カップルは情事の真っ最中だった。さすがの夫も激怒し、2人が見ていた韓国製のアダルトビデオを持って保安署に訴えると言い出した。北朝鮮では、韓流ドラマ・映画はご禁制の品だが、それ以上にアダルトビデオは厳しく取り締まられる。

    保安員は「許して欲しい」と許しを請い、妻も泣きながら謝ったが、夫は首を縦に振らない。そこで保安員は、夫を鈍器で殴り殺害してしまった。

    2人は夫の遺体を山に埋めた。妻は翌日、人民班長(町内会長)に「夫が帰ってこない」と伝えた。何日経っても夫が帰ってこないことから、町内では「不倫関係にあった2人が夫を殺した」という噂が立ち始めた。それを聞きつけたのか、夫の弟が保安署に通報し、保安署は職場、家の周辺、山で捜索を行った。しかし、保安署は「証拠がない」として、それ以上の捜査を行おうとしなかった。

    ところがやがて、噂は近隣地域にまで広がった。

    夫の兄弟たちは、平壌で1号飛行士(金正恩党委員長が乗る飛行機を操縦するパイロット)を務める兄に電話で事件のことを伝えた。それを聞いたパイロットは党に訴え、検察所による捜査が始まった。

    「パイロットの兄は、弟が『行方不明』として処理され、脱北した疑いなどがかけられたら成分(身分)に問題が生じ、パイロットをやめざるを得なくなる。党組織も1号飛行士のこととあり、無視できずに事件を処理することにした」(情報筋)

    平壌からの指示を受けた清津市検察所は、保安員と女性を逮捕した。当初は容疑を否認し、「(女性の)夫が理性を失い、襲いかかってきたので偶発的に殺害した、女性も夫を抑え込もうとして加勢した」と述べていたが、結局「韓流アダルトビデオを見ていたことを通報される」ことを恐れ、計画的に殺害したことを認めた。

    情報筋は言及していないが、取り調べの過程で暴言、暴行、拷問を受けたことは、想像に難くない。

    (参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…

    今回の事件を受けて、清津では韓流や外国の映像に対する取り締まりがより一層強化されたと情報筋は伝えている。

    ちなみに北朝鮮で不倫は、次のような法律で取り締まられる違法行為だ。

    行政処罰法第221条(不当な離婚、浮華放蕩な行為) 不当な目的と動機で離婚したり、常習的に浮華放蕩なな生活をしたり、結婚登録、離婚手続きを行わずに他の対象と夫婦関係を行った者には、罰金または3ヶ月以下の労働教養処罰を与える。罪状の重い場合には3ヶ月以上の労働教養処罰を与える。

  • 「強制学習」で児童が死亡…金正恩氏が主導「孤児政策」の闇

    「強制学習」で児童が死亡…金正恩氏が主導「孤児政策」の闇

    北朝鮮の金正恩党委員長が掲げる「愛民政策」の一環として、2016年に再建された孤児養育施設で最近、児童が死亡する事件が発生したことが分かった。

    無理な強制学習が死亡の直接的な原因とされるが、児童たちの栄養状態もひどいという証言が出ている。施設側が児童に供給されるはずの食料を横流し、現金を得る不正腐敗が横行しているようだ。

    平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は16日、「今月初め、平城(ピョンソン)中等学院で児童ら無理な強制学習をさせられ、学生1人が死亡する事件が起きた」と伝えてきた。

    情報筋によれば、「教師らが、基礎学力が不足している児童らに体罰を加えたところ、1人がめまいで倒れ、病院に運ばれたが息を引き取った」という。どのような体罰であったかは詳らかにされていないが、孤児たちの栄養状態が悪すぎたために、耐えることができなかったというのが情報筋の説明だ。

    情報筋はさらに、「平城市の教育当局は最近、中等学校の生徒をすべて最優等生にせよとの指示を出した。これを貫徹するという理由で、施設側は児童らにろくに睡眠もとらせず、毎日のように夜間強制学習をさせた」と説明する。担任教師が出す試験に合格した児童は寄宿舎に帰って眠ることができるが、そうでない児童は夜間学習への参加を強制されるという。

    北朝鮮の孤児養育施設を巡っては、性的虐待や暴力の横行などが報告されてきたが、強制学習で児童が死亡したという情報は初のケースだ。

    (関連記事:北朝鮮で孤児院教師が少女17人を性的虐待、怒る市民たち「厳罰を」

    そもそも近年、孤児養育施設の環境は改善されているとの情報も少なくなかった。改善の旗振り役となったのが、金正恩氏だ。

    金正恩氏は執権初期、孤児養育施設である育児園(1~4歳)、愛育園(5~6歳)、中等学校(6歳以の初中等教育)を複数回訪問。2015年に元山(ウォンサン)育児園を訪問した際には、「すべての園児たちを国の優れた担い手として育てようというのが私たちの党の確固たる決意だ」表明。同氏はその後、全国の20カ所の孤児教育施設の再建を指示した。

    これを受け、2016年に再建された平城中等学院はプール、芝生運動場、浴場、各種実習施設を備えた豪華で近代的な孤児総合学校として知られている。しかし、施設側は再建費用のために負債を抱え込み、借金を返すために行政から提供される食料を横流し、現金を調達しなければならなくなったという。

    こうした実情を知るある脱北者は、「孤児のための養育・教育施策を人気取りのためショーケースと化したことで、結局、子どもたちがツケを負わされる羽目になった。見てくれ重視で無理な事業を推進すれば、ボロが出るのは時間の問題だ」と嘆いた。

  • 北朝鮮で相次ぐ「無念の死」…金正恩氏「やめろ」命令も素通り

    北朝鮮で相次ぐ「無念の死」…金正恩氏「やめろ」命令も素通り

    北朝鮮ではよく、「速度戦」と呼ばれる突貫工事キャンペーンが行われる。指導者の記念日などに完成日を設定し、無理やり工事を進めて成果だけを追求する。そのせいで、手抜き工事や事故が相次いでいる。

    金正恩党委員長も、速度戦のやりすぎには警告を発している。2014年6月20日の北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、金正恩氏が当時建設中だったタワーマンション団地の現地指導を行った場で、「建設においては一にも二にも質の保証に優先的な関心を置くべき」「千年責任、万年保証のスローガンの元に、建築物を百点満点で完成させよ」と指示したと報じている。

    しかし、長年の習慣からはそう簡単に抜け出せないようで、またもや速度戦の犠牲者が発生してしまった。

    (参考記事:「事故死した98人の遺体をセメント漬け」北朝鮮軍の中で起きていること

    デイリーNKの内部情報筋によると、先月中旬に平壌と南浦を結ぶ高速道路の補修工事中に死亡事故が発生した。夜間作業にあたっていた人民武力省の道路局所属の兵士2人がセメントと水を混ぜた容器を運んでいたところ、橋の欄干の隙間に渡した板の上の歩いていた際に足を踏み外し、川に転落した。

    (参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故

    周囲にいた兵士たちは悲鳴を聞きつけ、救助に乗り出そうとしたが、辺りは真っ暗でどこにいるのか見当すらつけられなかった。夜が明けてからようやく本格的な捜索が始まり、数百メートル離れた川岸で2人を見つけたが、すでに事切れた後だった。

    夜間作業なのになぜ真っ暗なのか。それは照明設備がないからだ。

    一時は好天の兆しを見せていた北朝鮮の電力事情だが、国際社会の制裁で再び悪化し、首都・平壌ですらまともに電力が供給されなくなっている。

    (参考記事:長引く制裁で首都・平壌も電力難「一日に1時間しか電気来ない」

    そんな状況にもかかわらず、補修工事を請け負った人民武力省は、工期短縮のために作業時間を午前5時から午前0時まで行うことにした。つまり、速度戦だ。

    照明もなく真っ暗な状態で兵士は1日16時間も働かされていた。1日3回の食事に加え、夜食まで提供するなど、飲まず食わずの別の作業場に比べれば厚遇されていたようだが、照明設備が整っていたとしても無理がある長時間労働で、「夜になると居眠りしながら働く兵士が多い」(情報筋)状況となっており、事故は予見されていたも同然だった。

    (参考記事:「15万人の血と涙」で建設が進む金正恩氏の「ブラック・リゾート」

    また、情報筋は安全設備に問題があったことも指摘している。工事現場を覆う「安全膜」が、理由は定かでないが撤去されていたというのだ。これでは、危険な箇所がどこなのかもわからない。

    (参考記事:金正恩氏の背後に「死亡事故を予感」させる恐怖写真

    道路局は、安全規定を守らなかった2人の責任だと、責任回避に汲々としている。

    このような無責任体制は、北朝鮮全般に蔓延している。正直に責任を認めれば関係者の重罰は避けられない。また、連座制でどこまで累が及ぶかわからない。「死人に口なし」で亡くなった人をなすりつけておけば、生きている人が助かるという北朝鮮なりの「人を生かす」方法なのだ。

    (参考記事:「死人を処刑」して生きている人を救う北朝鮮の独特な人命尊重

    しかし、おそらくまともに補償を受けられないであろう兵士の遺族からするとたまったものではない。本当に人を生かすのは、国の体面や工期よりも、人の命を何よりも重要視する体制だ。「人間中心の主体(チュチェ)思想」はどこに行ったのか。

    (参考記事:金正恩氏、日本を超えるタワーマンション建設…でもトイレ最悪で死者続出

  • 壁に血で「死のメッセージ」…制裁不況の北朝鮮で治安悪化

    制裁不況にあえぐ北朝鮮内部から、治安悪化を伝える情報がもたらされている。

    両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、先月25日に金正淑(キムジョンスク)郡の龍河(リョンハ)労働者区で、商店を営んでいた老夫婦と孫娘の3人が、親戚に刺されて死亡する事件が起きた。犯人は遠い親戚の男だった。

    この老夫婦は長年に渡り店を営み、それなりの財産を持っていた。それを知った親戚の男は、カネを奪う目的で犯行を計画した。

    彼は事件当日、何食わぬ顔で店に入りビールを飲んでいたが、突如として3人に斬りかかり、カネを奪って逃げた。襲われた3人は現場で死亡したが、妻は最後の力を振り絞って「ダイイング・メッセージ」を残そうとした。血で犯人の名前を壁に書こうとしたが、「ソ」「ヨ」の2文字を書いたところで事切れた。

    翌朝、店を訪れた老夫婦の息子の妻が遺体を発見し、すぐに保安署(警察署)に通報した。3人が殺されるという重大事件の発生を受け、保安署は大々的な捜査に乗り出した。

    「夜に男が店に入っていくのを見たが、老夫婦は男が遠い親戚であることを知っていたため、気にしなかった」という目撃者の証言と、壁に残されたダイイング・メッセージを元に捜査を進めた。

    捜査班がまず逮捕したのは、第一発見者の息子の妻だった。しかし後日、真犯人ソ・ヨンチョルが逮捕された。妻は潔白が証明され、晴れて自由の身となった。

    (参考記事:美女2人は「ある物」を盗み銃殺された…北朝鮮が公開処刑を再開

    一方、首都・平壌の郊外でも人質殺人事件が起きていた。

    事件が起きたのは先月25日、船橋(ソンギョ)区域将忠洞(チャンチュンドン)でのことだ。

    平壌の情報筋によると、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)工兵局1旅団3大隊所属のチェ(24歳)は、平壌と両江道の恵山(ヘサン)を行き来しつつ送金業を営んでいたキムさん(29歳)の店を利用していた。両親からの仕送りを受け取るためだ。食糧事情が極めて悪い朝鮮人民軍では、兵士と言えども親のすねをかじらなければ生きていけないのだ。

    (参考記事:核兵器より「親の仕送り」が頼みという北朝鮮軍の凋落

    チェは、今年2月と5月に店を利用した際に、キムさんがかなりの財産を持っていることを知り、カネ目当てで犯行を計画した。

    チェは犯行当日、送金を受け取るためにキムさんの家に向かった。カネを受け取ったがすぐに帰らず「水が1杯飲みたい」と伝え、家の台所に上がりこんだ。チェはそこにあった包丁を持ち、キムさんの生後6ヶ月の娘を人質に取り、「ありったけのカネを出せ」と脅した。

    そして、キムさんとチェがもみ合いとなる中で娘が刺されて亡くなり、キムさんも怪我を負ったという。

    当局は捜査に乗り出したが、チェは部隊から逃亡し、今月14日の事件でも逮捕できていない。人民保安省(警察庁)と軍の保衛司令部はチェを指名手配し、行方を追っている。

    (参考記事:格差拡大の北朝鮮で増加する「ドル持ち老人」殺人事件

  • 「理不尽な処罰」の横行が暗示する金正恩の残念な未来

    北朝鮮の物価はすべて国が決めることになっている。いわゆる国定価格というものだ。かつて、生活必需品から住宅に至るまで生活に関わるほぼすべてのものを無償、または極めて低価格で国が配給していた時代には意味のある数字だった。

    しかし、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の発生と前後して、配給システムが崩壊してからは、ほとんどのものを市場で実勢価格で購入しなければならなくなった。国定価格は未だに発表され続けてはいるが、ほとんど有名無実と化している。

    その中で、数少ない国定価格が適用され続けているのが、公共交通機関の運賃だ。

    1962年5月に開通した平壌のトロリーバス。現在は6路線、56.7キロが平壌市旅客運輸連合企業所の無軌道電車(トロリーバス)事業所により運営されている。古い型のトロリーバスに乗って、市内をめぐるツアーも外国人に人気だ。

    (参考記事:北朝鮮ツアー、実は近くて普通に行ける北朝鮮旅行

    トロリーバスの料金は、わずか5北朝鮮ウォン(約0.06円)。1円にはるかに及ばない金額だ。コメ1キロが5000北朝鮮ウォン(約65円、平壌の市場での7月の価格)で取引されていることを考えると、ほとんどタダ同然と言える。

    ちなみに、「ソビ車」と呼ばれる民間人が営む営業車両の場合は4キロあたり2000北朝鮮ウォン(約26円)、タクシーの初乗り料金は2ドル(約112円)だ。

    安いからと言って、必ずしも便利なわけではない。電力難に加え、車体の老朽化が激しく、電力消費量と故障が非常に多く、運転見合わせが相次いでいる。

    金正恩党委員長は、李雪主夫人とともにトロリーバスの新型車両に試乗したが、平壌市内を走るトロリーバスがすべて新車に切り替わったわけではない模様で、当局は、メンテナンス費用を支給することなく、責任を事業所の職員に押し付けるばかりだった。

    (参考記事:金正恩氏、李雪主夫人と「新型トロリーバス」に試乗

    そんな状況を打開するために、ある現場責任者が改善策を発案して実行したのだが、表彰されるどころか、解任されてしまった。

    平壌のデイリーNK内部情報筋によると、無軌道電車事業所牡丹峰(モランボン)区域の職場長は、ラッシュアワーを除き、運賃を5北朝鮮ウォンから20北朝鮮ウォン(約0.24円)に値上げした。

    事業長は、当局の自力更生という政策にも符合し、収益を財源にして乗客へのサービス向上も図れるとして、値上げに踏み切った。4倍に値上げしても極めて安価なため、乗客の反応は「20北朝鮮ウォンは、生活が苦しい人でもさほど負担になる金額ではない」「まともに運行されるのなら20北朝鮮ウォン払ってもほとんど不満は出ない」(情報筋)といったものだった。

    ところが、当局はこれを問題視し、職場長を解任した上で、事業所の検閲(監査)を行う事態となった。それ以上の処罰がされたのかなど、詳しい状況はわかっていない。どうやらクレームを入れた乗客がいたようだ。

    「平壌では地方とは異なり、市民からの信訴(苦情)に当局が敏感に反応する。元帥様(金正恩氏)の身近で仕える平壌市民に不便を強いることは、党と大衆を仲違いさせる深刻な行為だと深刻にとらえるからだ」(情報筋)

    当局はクレームを取り上げて、不満の種になりうることを摘み取ったということだ。

    (参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

    一方、多くの住民からは今回の措置に残念だとの声が上がっている。

    「住民の出勤を保証するために料金を値上げしたのであり、私腹を肥やすためにしたわけではない。そのため、住民からは職場長に対する処罰を残念がる声が上がっている」(情報筋)

    職場長は解任され、料金の値上げは撤回されたが、事業所の収入が減ったことで、せっかく改善の兆しを見せていたトロリーバスのサービスは、悪化が避けられない見通しだ。

    実は、同じようにトロリーバスの運賃を値上げしたところがある。平壌郊外の平城(ピョンソン)では、トロリーバスの運行正常化と共に、料金を実際の物価水準に合わせた1000北朝鮮ウォン(約13円)に200倍値上げしたが、こちらは「高すぎる」として不満の声が上がった。これでも、事業所の儲けは決して多くない。こちらに関しては、電力難が再び悪化したことで、運行が止まってしまったようだ。

    (参考記事:北朝鮮のトロリーバス運賃「200倍値上げ」の背景

    極端に安いのは交通費だけではない。月々の一般的な電気料金は33北朝鮮ウォンで、これも1円に満たない。それを何千円もするメーターを買わせて、従量制料金に変更することにした。こちらは負担が大きいとして不満の声が上がっている。

    (参考記事:電気料金「2900倍値上げ」に静かに抵抗する北朝鮮庶民

    このような創意工夫が、処罰の対象となることはしばしばある。

    昨年、東大院(トンデウォン)区域のある洞事務所(末端の行政機関)が、マンションの下水管の詰まりを解消するために、上下水道事業所の労働者を動員することにしたが、彼らの昼食代を住民から集めたことが問題になり、事務長が問責された事件があった。

    せっかく出したアイディアが身を滅ぼすことにつながるのなら、革新も改善も一切期待できないだろう。

  • 北朝鮮で注目「赤い自転車の女」殺人事件の顛末

    北朝鮮で20代女性を殺害し、現金と持ち物を奪った容疑で逮捕された朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の元兵士に判決が下された。

    言い渡された刑は、一般的な量刑の相場より軽いものだった。このような場合には、市民の間から不満の声が上がるものだが、今回に関してはそうなっていないと、デイリーNKの内部情報筋が伝えた。

    情報筋によると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)に在住する元兵士は、25歳の女性を殺害し、自転車と現金を奪ったが、後に逮捕された。先月中旬に公開裁判が行われ、そこで言い渡されたのは教化刑(懲役)10年の刑だった。それに対して市民の大多数が「死刑になると思ったのに」と驚きを示しているという。

    大幅な減刑となった理由は、その不幸な身の上にある。

    この元兵士は、10年にも及ぶ兵役を終えて昨年、故郷の清津に戻ってきたが、家はもぬけの殻になっていた。兵役中に両親ともに亡くなっていたのだ。生まれ育った家で一人暮らしを始めた元兵士だが、食べものをいかに確保するかという問題にぶち当たった。

    兵役を終える前の兵士は、商売に手を出したり違法行為に手を染めたりして、今後の生活資金を稼いでから除隊する。除隊時に所属部隊から受け取るのは、わずかばかりの食べ物だけだからだ。

    (参考記事:北朝鮮「列車に乗っていたら飢え死に」その理由は

    しかし、充分な生活資金を準備できるのは、密輸や脱北を見逃す代わりに多額のワイロが受け取れる国境警備隊や、市場がある都市や近郊に駐屯している部隊の兵士くらいで、後はほぼ、着の身着のままの状態で軍隊から投げ出される。

    (参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

    この兵士は、清津市人民委員会(市役所)を訪ねて、就職口の斡旋と食料の配給を求めたが、うまく行かなかったようで、市場に出て物売りをしてその日暮らしをするようになった。

    彼は、輸城川(スソンチョン)の渡し船に乗って市場に出勤していたが、船で赤い自転車を持った20代の子連れの女性を見かけた。自転車を持っているくらいなのだから、ある程度財産があるだろうと思ったのか、元兵士は船から降りた女性の後をつけて襲いかかり、現金と自転車を奪おうとした。ところが、女性が叫び声を下げて激しく抵抗したため、顔と鼻を手で強く押さえつけて窒息死させてしまったという。

    通報を受けた清津市保安署(警察署)は捜査に乗り出し、被害女性のものと思われる赤い自転車に乗っていた元兵士がいるとのとの通報を受けて逮捕した。

    元兵士は取調べに素直に応じた。また、隣人たちも彼の普段の生活態度や気の毒な事情を語り減刑を求めた。

    予審(捜査終了後起訴までの追加捜査、取り調べ)を終えた保安署は、生い立ちや兵役、両親が亡くなったこと、生活苦の中にあったことを踏まえ、偶発的な犯行だとの報告を上げたようだ。その結果、大幅に減刑された懲役10年が言い渡されたというわけだ。

    通常、量刑相場から大きく外れた判決が出た場合、何らかの裏取引があると考えるのが一般的だが、今回の場合は、元兵士の苦しいながらも誠実な生活態度が反映された裁判結果だとして、市民は驚きつつも、不満の声は上げていないと情報筋は伝えた。もちろん、被害女性の遺族は別だが。

    (参考記事:わいろの額で「拷問メニュー」が変わる…北朝鮮「虐待収容所」の内幕

    この兵士は、咸鏡北道会寧(フェリョン)にある全巨里(チョンゴリ)教化所(刑務所)に移送され、現在服役中だ。減刑はされたものの、人権侵害の温床で衛生状態が極めて悪い上に、食べ物を差し入れする家族がいない彼が、生きて出所できるかは誰にもわからない。

    (参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

  • 「情勢緊張の主犯だ」金正恩氏が文在寅政権を猛非難する理由

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信は10日、韓国こそが「情勢緊張の主犯、平和と安定の破壊者である」であるなどと猛非難する論評を配信した。

    論評は、韓国が最近「『多様な安保脅威』をうんぬんして軽空母級の大型輸送艦と3隻の新型イージス艦など艦船の建造計画を推し進めている中、F35A戦闘機と空中目標打撃のための迎撃手段、高高度無人偵察機グローバルホークをはじめとする先端武装装備の搬入もエスカレートしている」と指摘。「朝鮮半島の情勢を軍事的緊張激化へと導く危険極まりない行為である」と非難。

    また、「F35A戦闘機の搬入問題だけを見ても、それが朴槿恵執権時代に軍部好戦狂らが『対北先制攻撃システム「キル・チェイン」』を構築するために立てた」ものであるなどとして強く反発した。

    論評が指摘する通り、韓国の文在寅政権が推進する軍備増強策の多くは、朴槿恵前政権で定められたものだ。「軽空母級の大型輸送艦」構想は日本の護衛艦「いずも」の空母化に対抗して最近浮上したものだが、これは今のところ実現性が乏しい。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    北朝鮮が最も神経質になっているのはやはり、論評も言及しているステルス戦闘機の導入ではないだろうか。なぜなら、朴槿恵前政権は金正恩党委員長に対する「斬首作戦」の推進を検討した経緯があり、ステルス戦闘機こそは、それを実行するための必須の兵器と言えるからだ。

    (参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

    論評はこうした前提の下、「(韓国の)対決狂らは自分らの武力増強策動について『防衛のためのこと』だの、『南北合意に違反しない』だのという詭弁(きべん)を並べ立てている」と反発。続けて「諸般の事実は、対話の相手を狙った武力増強に狂奔する南朝鮮当局こそ朝鮮半島の情勢緊張の主犯、平和と安定の破壊者であることをはっきり示している」と非難している。

    北朝鮮の反発の裏には、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)内部の混乱により、韓国側との通常兵器での戦力差がいっそう拡大することへの危惧もあるだろう。

    (参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

    とはいえ、北朝鮮の非核化の見通しが立っていない以上、文在寅政権としても一方的な軍縮に動く選択肢はない。昨年、朝鮮半島は対話と緊張緩和の雰囲気に包まれたが、それも実際には、こうした現実的課題から目を背けた上での一時的なものだったと言えるかもしれない。

  • 「盗人猛々しい」金正恩氏、文在寅政権との対話を拒絶

    北朝鮮は11日、米韓両軍が同日から合同指揮所演習を開始したことを受けて外務省局長の談話を発表し、米韓合同軍事演習を即時中止するか韓国が演習について誠意ある釈明を行うまでは「南北の接触自体が難しい」と表明した。

    一方、トランプ米大統領は10日、ツイッターで「北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が米韓合同軍事演習後に会い、(非核化)協議を始めたいと手紙で書いてきた」と明かした。金正恩氏はまた、7月下旬から続ける短距離ミサイル発射について「演習が終われば発射実験をやめる」と伝えてきたという。

    金正恩氏は、合同軍事演習を行ってはいても米国とは対話するが、韓国との対話は拒絶するという、あからさまな2重基準を持ち出してきたわけだ。なぜ、そんなことをするのか。北朝鮮の言い分にもう少し耳を傾けてみよう。

    談話は「演習の名称を変えたからといって訓練の侵略的性格が変わったり、またわれわれが難なく見過ごすと考えたりするなら誤算である」と主張した。

    また、最近のミサイル発射について「米大統領までがわれわれの通常兵器開発試験について、どの国でも行うたいへん小さなミサイル試験だと言って、事実上、主権国家としてのわれわれの自衛権を認めた」と指摘。対北朝鮮を想定して米軍との合同演習を進める韓国が発射の中止を求めていることについて「盗人猛々しい」と反発している。

    そして、「今後、対話に向かう良い気流が生じてわれわれが対話に出るとしても、徹底的にそのような対話は朝米間で開かれることであって、北南対話ではないということをはっきり知っておく方がよかろう」と強調しているのだ。

    このように展開された北朝鮮の主張を平たく解釈すると、金正恩氏は韓国に対し、「お前ら自分のことだけ棚に上げるなよ」と言っているのだ。韓国は北朝鮮に非核化を求め、ミサイル発射の中止を要求しているが、米軍との合同軍事演習を止めようとしない。ならば自衛のための兵器開発は当然必要であり、それに難癖をつける文在寅政権はけしからんと言いたいわけだ。

    とはいえ、北朝鮮側のこうした主張をまともに受け入れるのは間違いだ。北朝鮮は核武装しており、非核化も進展していない。まだまだ韓国が気を抜ける状況ではないのだ。

    問題は、文在寅大統領が持ち前の極端な楽観主義により、金正恩氏との間で軍事的緊張緩和のための安易な約束をしてしまったことにある。もちろん、その約束には北の非核化も含まれるはずなのだが、北朝鮮は核問題については米国とだけ話し合う態度を貫き、韓国に対しては「約束したものは守ってもらおうか」と圧迫しているのである。

    (参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感

    自らまいた種とは言え、文在寅政権は苦しい状況に追い込まれている。果たしてこの局面を打開し、北朝鮮を対話の場に引っ張り出す妙案をひねり出せるだろうか。

  • 文在寅には「脅迫状」を、トランプには「美しい書簡」を送った金正恩

    トランプ米大統領は9日、北朝鮮の金正恩党委員長から前日に「非常に美しい書簡」を受け取ったとホワイトハウスで記者団に明かした。書簡の中身については「(トランプ氏)個人に向けたもの」であり、「非常に前向き」と説明したが、詳細については言及していない。

    ただ、金正恩氏が書簡の中で5日から始まった米韓合同軍事演習への「不快感」を表明したことを明らかにしつつ、「私も(合同演習を)一度も好きだったことはない。なぜなら米国が費用を支払うのが気に入らないから」と述べ、金正恩氏に同調して見せた。

    さらには、「韓国は米国に(演習の経費を)返済すべきで、韓国にもそう伝達した」とまで言っている。

    韓国の文在寅大統領にとっては、たまった話ではないだろう。おそらく今、世界で最も金正恩氏に「同調したい」と思っているのは文在寅氏だろう。日本との関係悪化の中、「南北の経済協力で平和経済を実現すれば、(日本経済に)一気に追いつくことができる」と語っているくらいだから、北朝鮮との関係改善に大統領としてのすべてを賭けていると言って過言ではなかろう。

    しかし一方、金正恩氏は文在寅氏にしびれを切らしている。昨年の首脳会談で合意した南北経済協力に韓国が踏み出そうとせず、また重ねて「やめてくれ」と主張してきた米韓合同軍事演習を続けているからだ。

    文在寅氏としても、開城工業団地や金剛山観光の再開など、南北経済協力を開始したいのは山々なのだ。それでも出来ないのは、米国から「非核化まではダメ」と止められているからだ。それなのに、当の米国大統領が「オレも合同演習なんかイヤなんだ」と好き勝手なことを言っているのである。

    金正恩氏はもちろん、こうした状況をすべて承知している。それなのに、米韓合同軍事演習を巡って対韓国機関の祖国平和統一委員会に発表させた「真相公開状」では、米国には非難の矛先を向けず、ただ韓国だけを槍玉にあげ、「疲弊するほど高価な代償を払わせる」と脅迫している。

    金正恩氏がこうした態度を取る目的は、米韓の離間にあることはもちろんだが、韓国に無理難題を押し付けて、当事者能力を奪ってしまうことにあるのではないか。

    今や南北対話は、北朝鮮が望むとおりにしか動かなくなっている。北朝鮮は言いたいことを何でも言うが、韓国は言うべきことも耐えねばならない関係になっている。金正恩氏の残忍な人権侵害に言及すらできないのが端的な例だ。

    (参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

    金正恩氏はこれからもしばらく、韓国に対してこうした揺さぶりを続けるはずだ。違った動きを見せるようになるのは、2022年に予定される次期韓国大統領選に向け、主要な候補者たちの顔ぶれが出そろう頃ではないかと思われる。

  • 「同族への信義を捨てた」金正恩氏、文在寅氏の“排除”加速か

    北朝鮮の対韓国機関、祖国平和統一委員会の統一宣伝局は8日、米韓合同軍事演習を巡り韓国政府を非難する真相公開状を発表した。

    公開状はまず、「南朝鮮当局は、対話の場ではわれわれと『和解と平和』の握手をし、後ろでは『軍事的備え態勢においては抜かりがあってはならない』と力説し、外部勢力と共に同族に反対する合同軍事演習を引き続き強行している」と指摘している。

    そして、韓国政府が昨年から今年にかけて推進してきた米国との軍事協力や、軍備増強の事例を列挙しながら、「同族に対する信義を捨てて米国の対朝鮮圧殺策動に便乗してきた南朝鮮当局は、われわれをして国家安全の潜在的・直接的脅威を取り除くための対応措置を取らざるを得なくした責任から逃れられず、疲弊するほど高価な代償を払うことになるであろう」と警告している。

    注目すべきは、この公開状が米国には非難の矛先を向けず、ただ韓国だけを槍玉にあげている点だ。

    金正恩党委員長は今後もトランプ米大統領との対話を維持することを望む一方、韓国の文在寅大統領との個人的関係は「切る」腹を決めているのではないか。

    北朝鮮の対韓国宣伝サイトである「ウリミンジョクキリ(わが民族同士)」は6月28日付の記事で、南朝鮮の執権者――つまりは文在寅氏を「思考と精神がマヒしている」などとして、けちょんけちょんに罵っている。普通、何か気に食わないことがあっても、そのうち再会することを前提とするならば、ここまで口汚い言葉は使わないものだ。

    金正恩氏の中では文在寅氏に対し、「もう十分だ」との感情があるのではないか。

    しかしこのような状況が続くと、文在寅氏としても言われっぱなしではいられない。韓国側はこれまで、北朝鮮に配慮して、様々な問題に目をつぶってきた。特に、北朝鮮の人権問題からは意図的に目を逸らしており、そのせいで国内外の批判を浴びてきた。

    (参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

    南北対話がとん挫し、北から引き続き悪罵が飛んでくるようなら、文在寅政権としてもこれ以上、北朝鮮を大目に見れなくなるだろう。だが、それにより南北が完全に決裂すれば、文在寅氏にとって最大にして唯一のセールスポイントがなくなる。

    果たして文在寅氏はこの袋小路から、どのようにして抜け出すのだろうか。

  • 「米国の利益に深刻な被害」文在寅氏の“感覚のズレ”に募る警戒感

    訪日したエスパー米国防長官は7日、岩屋毅防衛相、安倍晋三首相と相次いで会談し、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が維持されることを「心の底から願う」と強調したという。

    エスパー氏は8日から訪韓しており、鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相らとの会談でも同様の意向を伝えると見られる。

    日韓関係が悪化の一途を辿る中、韓国政府は日本による半導体関連材料の輸出規制措置に対抗し、GSOMIAを破棄する可能性をチラつかせている。7日には世論調査会社のリアルメーターが、GSOMIA破棄の賛否を問う世論調査の結果を発表。賛成(47.7%)が反対(39.3%)を上回っており、雰囲気的にも破棄が現実味を帯びてきている。

    しかし、冒頭のエスパー氏の発言にもあるように、米国は絶対反対の立場だ。

  • 金正恩氏「最愛の妹」が幹部らを無慈悲に処罰…権力中枢で何が

    金正恩氏「最愛の妹」が幹部らを無慈悲に処罰…権力中枢で何が

    北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の妹・金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長が最近、複数の幹部に無慈悲な処罰を下す事件があったという。

    平壌の消息筋は7日、デイリーNKに対し、「首領様(金日成主席)逝去25周年の記念行事で、平壌市党委員会名義で寄せられた弔花の花かごの中に発泡スチロールが仕込まれていたことが発覚した。温室栽培の生花が足りず、発泡スチロールの詰め物でかさを増やしていたようだ」と伝えた。

    消息筋によると、発泡スチロールの詰め物は追悼行事の現場で、党宣伝扇動部の幹部によって見破られた。そして、ことはここで終わらず上層部にまで報告され、関係者の処罰に至ったというわけだ。そして、処罰を決済したのが、金与正氏だったという。

  • 「奇怪な醜態」金正恩氏が文在寅氏を罵倒した理由

    北朝鮮は6日、またもや短距離弾道ミサイル(あるいは大口径操縦ロケット砲)と見られる飛翔体を日本海へ向けて発射するとともに、米韓を激しく非難する外務省報道官の談話を発表した。

    米韓合同軍事演習が前日から開始されたことを受けて出された談話は、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の再開を示唆しながら「(米韓に)疲弊するほどの代価を払わせる」と警告している。

    韓国の文在寅大統領はこの前日、対立が深まる日韓関係を巡り「南北の経済協力で平和経済を実現すれば、一気に(日本に)追いつくことができる」と強調したばかりだった。金正恩党委員長は文在寅氏からの「平和のメッセージ」にまったく配慮することなく、無慈悲な「核の警告」で応じたわけだ。

    金正恩氏はそもそも、文在寅氏を個人的に見切っているフシがある。

  • 「南北平和経済で日本に追いつく」文在寅発言を北がミサイルで撃破

    韓国軍合同参謀本部は6日、「北朝鮮が今日未明、黄海南道(ファンヘナムド)一帯から東海(日本海)上に2回、未詳の発射体を発射した」と明らかにした。韓国の文在寅大統領が前日の首席秘書官・補佐官会議で、「日本の経済がわれわれの経済に比べて優位にあるのは経済規模や内需市場で、南北の経済協力で平和経済を実現すれば、一気に追いつくことができる」と強調した矢先のことだ。

    国際社会による対北制裁が解かれ、韓国と北朝鮮の全面的な経済協力が実現した場合、どれくらいの効果を生むかには様々な見方がある。最も理想的な展開が生まれれば、文在寅氏が語るような「バラ色の未来」ももしかしたら描けるかもしれない。

    しかしそれはあくまでも、文在寅氏が語る平和経済なるものが「実現したら」の話だ。現実は、全面的な経済協力どころか、開城工業団地の再開など限定的な経済協力する思うに任せない状況にある。

    文在寅氏はこのように、物事を都合よく解釈し、過度に楽天的な物言いをする癖がある。それによって世人を呆れさせた例も1度や2度ではない。

    (参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感

    現実をもう少し整理してみよう。北朝鮮の今回の発射は明らかに、5日から始まった米韓合同軍事演習に対する示威行為だ。昨年こそ、金正恩党委員長との蜜月を誇った文在寅氏だが、今や北から無視されるようになって久しい。

    北朝鮮が韓国との対話再開の条件として示しているのが、開城工業団地や金剛山観光再開などの南北経済協力の推進と、米韓合同軍事演習の中止、ステルス戦闘機導入など韓国軍の軍備増強の中止である。

    これらはすべて、米韓関係と深く関連している。北朝鮮の非核化が進展していない状況での南北経済協力には米国が反対しているし、米韓合同軍事演習や米国からの先端兵器導入は、韓国の安全保障の基礎とも言えるものだ。

    それに、文在寅政権は対日関係について米国に仲裁を頼むくらいだから、米韓関係がどれほど重要か、身に染みてわかっているはずだ。金正恩氏は、その重要な関係を韓国がなげうたない限り、南北関係発展の未来はないと言っているのである。

    これでは、南北の平和経済とやらを構築する道筋の、入り口に立つことすら難しい。それとも文在寅氏は、南北関係と引き換えに米韓同盟を放棄する覚悟でも決めたのだろうか。とうていそのようには見えないが、仮にわずかでも、文在寅氏の胸中にそのような考えが芽生えたとすれば、それは北朝鮮の独裁者たちが3代にわたり望んできたことが、実現に向けて大きく動き出したことを意味するだけだ。

  • 北朝鮮版「振り込むな詐欺」のあの国ならではの特徴

    警察庁の調べによると、2018年の特殊詐欺(オレオレ詐欺などの振り込め詐欺)の認知件数は計1万6493件に達した。様々な対策が功を奏したのか、4年連続で減少している。一方で、韓国の金融監督院の調べによると、同国内における2018年の振り込め詐欺の被害者数は4万8743人で前年比で5割以上増加した。

    北朝鮮でももちろん詐欺事件は起きているが、オレオレ詐欺のような事件は無縁のように思われてきた。しかし、最近では携帯電話を使った詐欺事件の被害の事例が急激に増えている。

    国際社会による制裁で経済の疲弊が進み、治安も悪化。当局は手控えていた公開処刑を再び始めるなど犯罪の抑え込みに躍起だが、効果は限られているようだ。

    (参考記事:美女2人は「ある物」を盗み銃殺された…北朝鮮が公開処刑を再開

    平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた詐欺事件の顛末は、次のようなものだ。