カテゴリー: 北朝鮮

  • 「金正恩が恥をかかされた!」首脳会談の失敗情報、北朝鮮で拡散

    「金正恩が恥をかかされた!」首脳会談の失敗情報、北朝鮮で拡散

    物別れに終わった2回目の米朝首脳会談。北朝鮮の国営メディアは会談の成果の有無には具体的に触れていないが、少しの時間差を置いて、北朝鮮国民の間にもその「中身」が伝わりつつある。

    「トランプだました」

    平安南道(ピョンアンナムド)の内部情報筋は、「今回の元帥様(金正恩党委員長)のベトナム訪問は、米国との会談が目的だったため経済制裁の解除という結果が出ると住民は期待していた」が、「会談終了から何日経っても、経済封鎖が解かれるという話がなく、人々は『交渉がうまく行かなかったのだな』と思うようになっている」と伝えた。

    (参考記事:「心配でしょうがない」首脳会談失敗で北朝鮮から失望と不安の声

    中国と取り引きのある貿易関係者を通じて、米朝間の立場の違いが大きかったという話が巷に広がりつつある。市民の間からは「残念だ」との反応と共に「1杯目の酒で腹が膨れようか」と次の会談に期待する声も上がっている。

    期待を持っているのは、情報筋も同じだ。

    「お上が元帥様の外国訪問を強調し、講演会も開いているので大きな成果があがるだろうと期待していた人もいる。私のように何かが変わるのではないだろうかと思っていた人もいた。(今回はダメでも)頻繁に会えばまた何かあるのではないか」

    一方で「個人対個人の取り引きも難しいのに、米国との取り引きが最初からうまくいくとは思っていなかった」と懐疑論を抱く人もいれば、「会談なんて自分とは関係ない」と興味を持とうとしない人もいたとのことだ。

    労働新聞が米国に対する批判記事を出さず、会談中の雰囲気は良好だったと伝えていることも、期待論を下支えしている。

    「労働新聞と放送で『新たな出会いを約束した』との話があったので、また会うものと考えている。庶民の頭には『米国は信じられない』という考えが根強いので、そう簡単にいくとは考えていない。ただ、経済制裁が早く解決してこそ、貿易を行う機関も市場も生き返る。密輸だけに頼っていては中国の業者に足元を見られ、安定性が担保されていない」(情報筋)

    米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋も、北朝鮮国内で「会談が完全に失敗した」との話が広がっていると伝えた。

    (参考記事:金正恩氏から「責任追及され処刑」あぶない筆頭はこの人物

    密輸業者から広まった話だが、市民は「最高尊厳が寧辺(ニョンビョン)の核施設まで差し出すと言ったのに、トランプ大統領がなぜ聞き入れなかったのかわからない」と疑問を持ち、「米国が北朝鮮を屈服させるために、わざとそんなことをしたのではないか」と疑っているとのことだ。

    RFAによれば、一部の人は「今回の会談が失敗に終わったのは、寧辺核施設以外にも北朝鮮が公開していなかった秘密核施設まで米国は知っていたのに、それをトランプ大統領に明かさず騙していたからだ」と見ている人もいる。

    他方、「最高尊厳が国際社会で恥をかかされた」と不快感を示す人や、「米国の経済制裁がさらに強化されるかもしれない」と不安感をのぞかせる人など、様々な異見が飛び交っている。

    噂の拡散を受けて、保衛部(秘密警察)は公式発表以外の情報が流布しないよう住民監視を強め、「真実」の拡散を抑えようとしていると平安北道(ピョンアンブクト)の別の情報筋が伝えている。

    (参考記事:首脳会談の失敗で「ホッとひと安心」している北朝鮮のお金持ち

  • 金正恩氏から「責任追及され処刑」あぶない筆頭はこの人物

    ベトナム・ハノイでの米朝首脳会談が物別れに終わったことで、準備に関わった北朝鮮側関係者が「粛清」の憂き目に遭うのではないか、との懸念が一部で出ている。

    先日の本欄でも紹介したが、中国駐在のある北朝鮮貿易関係者は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し次のように語っている。

    「拷問」の最高責任者

    「最高尊厳(金正恩党委員長)が平壌に戻れば、会談についての総和(総括)をしなければならない。罪のない人が会談失敗のスケープゴートにされ、粛清される事態が起きるかもしれない」

  • 首脳会談の失敗で「ホッとひと安心」している北朝鮮のお金持ち

    首脳会談の失敗で「ホッとひと安心」している北朝鮮のお金持ち

    すでに本欄でも伝えたとおり、北朝鮮の貿易関係者の間からは、米朝首脳会談の失敗に対する落胆の声が漏れ伝わっている。その一方、北朝鮮国内には、会談の失敗に安どのため息をついている人々もいるようだ。その人々とは「トンジュ(金主)」と呼ばれる新興富裕層の一部だ。

    北朝鮮では、社会主義計画経済と配給制度がほとんど崩壊し、なし崩し的な資本主義化が進んでいる。その主人公が、市場での商売や運送業などで資本を蓄え、あるいは権力と癒着して甘い汁を吸い、今や不動産投資や工場経営にも進出しているトンジュである。北朝鮮では今、ものすごいスピードで格差の拡大が進んでいるが、そこで「勝ち組」の座を占めているのもトンジュだ。

    (参考記事:「牛乳風呂」をたのしむ北朝鮮の上流階級)

    米朝首脳会談がうまく行って対北制裁が緩和されれば、ビジネス環境が改善し、トンジュも潤うのではないか――読者の中にはこのように考える向きもいるかもしれないが、どうやら、トンジュの国際情勢に対する感覚は相当にシビアなようだ。

    米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋の話として伝えたところでは、新義州(シニジュ)を本拠地にして外貨を稼ぎ全国の市場を牛耳っているトンジュたちは「最高尊厳(金正恩氏)が米国の大統領に会いにベトナムまで行ったのだから、ベトナム式改革開放を朝鮮に導入する可能性が高い」と期待を見せつつも、こんな不安ものぞかせた。

    「南朝鮮や米国など、国際的な投資が大規模に入ってくるのではないだろうか」(情報筋)

    新義州は現在、金正恩氏がぶち上げた都市再開発プロジェクトで不動産バブルに沸いている。現地のトンジュたちはその恩恵を十二分に受け、「濡れ手に粟」で潤っているだろうが、それでも世界的に見れば、自分たちの投資など「はした金」に過ぎないことをよく認識している。世界各国の巨大企業が北朝鮮に進出すれば、オイシいところは全て奪われてしまうのではないかと心配しているのだ。

    さらに別の情報筋によれば、トンジュは北朝鮮で改革開放が始まれば、国内に少なからぬ混乱や動揺が生じ、違法な手段で荒稼ぎしてきた自分たちが、命を危ぶむほどの状況に追い込まれるのではないかと心配しているというのだ。当局がゴタゴタを収拾して自分たちが生き残るために、トンジュを悪者扱いして粛清するのではないか、との懸念である。

    確かに北朝鮮社会には、傍若無人に振る舞うトンジュに対する「冷たい視線」が存在するのも事実だ。

    (参考記事:北朝鮮で「サウナ不倫」が流行、格差社会が浮き彫りに

    ある住民は、トンジュの不安を次のように語っている。

    「金持ちは戦争を怖がっている。今は金儲けするにはいい時代だが、情勢が変われば(すべてが)変わる。体制が変われば国はトンジュから先に処刑する」(ある一般庶民)

    (参考記事:「死刑囚は体が半分なくなった」北朝鮮、公開処刑の生々しい実態

    こんな不安を抱えたトンジュたちは今頃、会談失敗の報を耳にして、胸をなでおろしているかもしれない。

    (参考記事:北朝鮮「金持ち女性」たちの密かな楽しみ…お国の指示もそっちのけ

  • 「心配でしょうがない」首脳会談失敗で北朝鮮から失望と不安の声

    「心配でしょうがない」首脳会談失敗で北朝鮮から失望と不安の声

    全世界の注目を浴びつつベトナムのハノイで開催されるも、合意に至らないまま終了した2回目の米朝首脳会談。

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信は1日付の記事で、「敬愛する最高指導者(金正恩党委員長)とトランプ大統領は、朝鮮半島の非核化と朝米関係の画期的発展のために今後も緊密に連携し、ハノイ首脳会談で論議された問題解決のための生産的な対話を引き続きつないでいくことにした」と報じ、具体的な結果には触れないまま「新しい対面を約束しながら別れのあいさつを交わした」と記事を締めくくることで、合意に至らなかったことを示唆した。

    北朝鮮国内からの反応はまだ伝わってこないが、会談結果をリアルタイムで知った中国にいる北朝鮮の貿易関係者から失望の声が上がっていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。中には、責任追及による「粛清」を懸念する声もある。

    (参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認

    北朝鮮では過去、行政上の失敗などの責任を問われ、多くの人々が公開処刑や政治犯収容所送りになっている。

    (参考記事:北朝鮮、脱北者拘禁施設の過酷な実態…「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も」

    中国の丹東に駐在する北朝鮮の貿易関係者は、税関で新義州(シニジュ)に向けて発送する作業を行った後、オフィスに戻りネットをチェックしていたときに首脳会談のニュースを知ったとして、「2回目の会談が合意も署名もなく終わるとは思っていなかった、とても虚しい」と失望を隠しきれない様子だ。

    この関係者は、核・ミサイルの放棄と経済制裁をリンクさせて解決しようとする流れに対して、否定的な考えを持っていた。

    「率直に言って(我々)貿易担当者たちは、最高尊厳(金正恩氏)が非核化を前提にして、米国の経済制裁を解く目的で平壌から列車に乗って中国を経てベトナムのハノイに向けて出発したときから懐疑の目で見ていた」

    皆がひもじい思いをしながら作った核やミサイルを、あっさりと放棄するわけがないという見方をしていたこの関係者。ところが、会談を前にしてその考えに揺らぎが生じたようだ。

    「しかし、昨日(27日)に朝米首脳が晩餐会の席で笑顔で対話する様子をニュースで見て、もしかしたら良い結果が出るかもしれないとの期待を持った」

    そんな期待も失望に変わってしまった。

    「米国の大統領と会った席で、最高尊厳がすべての人が喜ぶ立派な結果を出すと発言したときには、今回は本当に核とミサイルの放棄を約束して、米国の経済制裁を解除させるという大胆な決断を下すかもしれないと思ったのに、今日の会談の結果を見て完全に拍子抜けした」

    中国駐在の別の北朝鮮貿易関係者は、会談が合意なしに終わったことについて、責任のない人がとばっちりを受けるかもしれないと懸念している。

    「最高尊厳が平壌に戻れば、会談についての総和(総括)をしなければならないのに、何よりも心配なのは、会談を行った実務者たちが今後、どんな責任を負わされるかということだ。罪のない人が会談失敗のスケープゴートにされ、粛清される事態が起きるかもしれない。心配でしょうがない」

    (参考記事:謎に包まれた北朝鮮「公開処刑」の実態…元執行人が証言「死刑囚は鬼の形相で息絶えた」

  • 北朝鮮「日本の核武装化こそ問題」主張でドツボにはまる

    北朝鮮「日本の核武装化こそ問題」主張でドツボにはまる

    北朝鮮の金正恩党委員長とトランプ米大統領とは28日、ベトナムの首都ハノイで2日目の首脳会談を行ったが、非核化の道筋で合意に至ることなく、日程を繰り上げて終了した。

    独裁国家と民主主義国家が、信頼関係を築くことの難しさを示した事例と言える。両首脳が友好関係を強調してはいるが、核以外でも人権問題などで火種は残り、しょせんは水と油なのだ。

    (参考記事:北朝鮮女性、性的被害の生々しい証言「ひと月に5~6回も襲われた」

    軍隊が虐殺

    しかしどうやら、金正恩氏はその重大さに気付いていない。そのことは、北朝鮮が首脳会談を狙いすまして繰り出した、日本非難の論調にも見て取れる。

  • 「日本は謝罪と賠償だけしていろ」北朝鮮、首脳会談当日に主張

    「日本は謝罪と賠償だけしていろ」北朝鮮、首脳会談当日に主張

    ベトナム・ハノイでの米朝首脳会談が初日を迎えた27日、北朝鮮が日本に対し、過去清算を迫る非難をぶつけた。

    北朝鮮のこのような主張は今に始まったものではなく、最近でもよく出されていたものだ。

    (参考記事:「日本軍が慰安婦を虐殺した映像ある」北朝鮮メディア報道

    しかし、米朝首脳会談のタイミングにストレートにぶつけてくるとは、今後の日朝関係を占う材料になりそうだ。

    朝鮮労働党機関紙・労働新聞は同日、日本が国連安全保障理事会の常任理事国を目指すのは「せん越で無分別」であるとする論評を掲載した。

    論評は、日本は第2次世界大戦の「戦犯国の中で唯一に過去清算を正しくしなかった国だ」としながら、「日本が図々しくも世界の平和と安全保障を使命とする国連安保理常任理事国のポストを欲しがること自体が国連憲章に対する露骨な無視であり、人類の良心に対する愚弄、挑戦である」と主張。

    そのうえで、「日本がやるべきことは、特大型反人倫犯罪に対する国家的・法的責任を認め、徹底した謝罪と賠償をすることだけ」だと強調した。

    最近の北朝鮮の対日非難には、大きく2つの流れがある。ひとつは今回のように歴史問題に言及し、日本に朝鮮半島支配の過去清算を迫る論調だ。そしてもうひとつの流れが、日本の軍備増強に対する非難だ。

    (参考記事:「自衛隊の攻撃能力は世界一流」と評価する金正恩氏の真意

    いずれも、その目的のひとつは、米国に対して「わが国にとって、日本は問題である」ということを強調することにあるのではないか。

    最も射程の長い大陸間弾道ミサイル(ICBM)は、米国との非核化対話の中で、当然廃棄の対象になる。しかし日本にとっての脅威は短・中距離弾道ミサイルであり、日本政府はそれらの全廃を主張している。

    だが北朝鮮としても、装備のほとんどが老朽化し、また軍紀のびん乱で軍が弱体化している現状では、「虎の子」の弾道ミサイル戦力をそう簡単に手放せないという事情もある。

    (参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い

    金正恩党委員長は、日朝の関係改善が進まない状況をトランプ米大統領に強調し、それを交渉のカードの1枚にしようとしているのかもしれない。

    (参考記事:【写真】北朝鮮、韓国「美人すぎる野党議員」を猛批判…「親日派を除去せよ」

  • 「関係改善を台無しにする気か」北朝鮮、韓国での軍事動向を非難

    「関係改善を台無しにする気か」北朝鮮、韓国での軍事動向を非難

    ベトナム・ハノイでの米朝首脳会談を前に、北朝鮮が韓国での軍事動向に対する警戒感を露わにした。

    北朝鮮は、これまでにもこの問題で韓国非難を繰り返しており、同国にとっては相当に重要な懸案となっていることがうかがえる。

    (参考記事:「破局的な結果を考えてみろ」北朝鮮、また韓国にブチ切れ

    北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は25日、米韓が来月4日から韓国での合同軍事演習「19-1演習」の実施を予定していることに対し、「朝米関係と北南関係改善の流れに背ちする危険な動き」であるとする論評を掲載した。

    「19-1演習」は従来、「キー・リゾルブ」の名称で行われていた合同指揮所演習だ。米韓は、毎年上半期に実施されていた大規模な合同野外機動訓練「フォールイーグル」の名称も今後は使わない方針とされる。

    前者はコンピューターを使ったシミュレーションだが、「フォールイーグル」には米本土などからも大量の兵力と武器が動員される。慢性的な経済難の中にある北朝鮮にとっては、これが実施されるだけで脅威なのだ。

    (参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い

    ただ、「フォールイーグル」は数十の陸・海・空軍、海兵隊の合同訓練を総合して付けられた呼称であり、まとめてこの呼称を使う必要は必ずしもない。そこで米韓は北朝鮮を刺激しないよう、統一の呼称を使うことを避け、それぞれの合同訓練を粛々と行う方針にしたのだろう。

    ところが、北朝鮮はそのようなやり方でお茶を濁されるつもりはないようだ。

    論評は「表では情勢緩和と平和について唱え、裏では戦争装備を引き入れながら合同軍事演習を再開しようとするのは内外の懸念をかき立てる」と主張。続けて「対話と戦争演習、平和と軍事的敵対行為、関係改善と軍事的圧迫は決して両立しない」と強調した。

    名称がなくなっても、合同演習が行われることに変わりはないではないか、との主張である。

    この言い分は、北朝鮮軍の弱体化を考えれば理解できないものでもない。米国の要求に沿って非核化してしまえば、北朝鮮の軍事力はさらに弱まる。

    (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

    今後、北朝鮮の非核化を進展させるためには、こうした通常兵力のバランス面でも駆け引きが必要になるということだ。

  • 韓国の保守野党を沈没させる「歴史歪曲」のトンデモ言説

    韓国の保守野党を沈没させる「歴史歪曲」のトンデモ言説

    今月17日、韓国の国会である記者会見が開かれた。壇上に姿を見せたのは野党・正しい未来党の議員で北朝鮮人権運動を行ってきた河泰慶(ハ・テギョン)氏と、脱北者団体の代表ら。そこに光州民主化運動関連の団体関係者も加わった。一見、つながりのないようなこの顔ぶれだが、場を共にしたのにはそれなりのワケがある。

    日本では「光州事件」の呼び名で知られている1980年5月の光州民主化運動。民主化を求める韓国国民の声を押さえつけ、政権を掌握しようとした後の大統領、全斗煥氏ら「新軍部」がデモを武力で弾圧し、韓国政府が認定しただけでも死者165人、行方不明者76人、負傷者3515人を出す惨事となった。

    全氏の下野直後から今に至るまで、真相究明のための調査が続けられており、民主化を求めた運きであったことは明らかだ。その事実は法によって認められている。

    (参考記事:韓国軍の性暴力が白日の下に「被害証言、政府は黙殺してきた」

    1980年5月、光州一帯で起こったデモに対して、軍部などによる憲政秩序破壊犯罪と、不当な公権力行使で多数の犠牲者と被害者が発生した事件

    5·18民主化運動真相究明のための特別法第2条第1項

    ところが、光州民主化運動を巡る歴史修正主義とも陰謀論とも言える主張は、今に至るまでくすぶり続けている。その代表格と言えるのが、日本でも本を出版している軍事評論家の池萬元(チ・マノン)氏だ。池氏は、「光州民主化運動は北朝鮮軍の指図で行われた」という主張を十数年来続けている。

    池氏の手法は、民主化運動の現場で撮影された人物の写真と、北朝鮮軍の人物写真を照らし合わせ、「これは同一人物」だと決めつけ、北朝鮮軍の介入の論拠とするというものだ。まともな保守派からも疎んじられ、遺族団体などから複数回にわたり名誉毀損で訴えられ、有罪判決を受けてきた。池氏に「北朝鮮軍だ」とされた韓国市民が「あれは私だ」と名乗り出ても、池氏は自説を撤回しようとしない。

    そこで、池氏が自説の補強のために行ったのは、「北朝鮮から光州に派遣された」と証言する脱北者の動員だ。例えば、脱北者の李某氏は2013年5月にテレビに出演して、池氏の主張にそった証言を行った。テレビ局は世論の激しい批判を浴びて謝罪に追い込まれたが、証言の動画は未だにネット上を漂い続け、陰謀論を広めつづけている。

    池氏の陰謀論は、保守系野党の自由韓国党にも影響を与えている。

    今月8日に韓国国会で開かれた「518真相究明対国民公聴会」で、一部の同党議員が「親北左派が民主化運動の功労者という怪物集団をつくり上げ、税金を無駄遣いしている」などと主張した。さらには池氏も登場して自説を披露したことで、自由韓国党が激しい批判を浴びることとなった。そのせいで、ようやく回復しつつあった党の支持率が急落する事態となっている。

    (参考記事:17歳の女子高生ら被害も「氷山の一角」か…暴露された韓国軍の性暴力

    池氏の主張は、民主化運動当時に軍部の最高責任者だった全斗煥氏にさえ否定されている。全氏は2016年4月、雑誌「新東亜」のインタビューに側近の鄭鎬溶(チョン・ホヨン)氏、高明昇(コ・スンミョン)氏らと共に応じ、次のように語っている。

    高明昇:北朝鮮特殊軍600人という話についてコメントを出したことはありません。

    全斗煥:何だって?600人とは何かね?

    鄭鎬溶:北から600人が来たということです。池萬元氏が主張しています。

    全斗煥:どこから来たのか?

    鄭鎬溶:5.18のときに光州に。それで北朝鮮軍と光州の人たちが共に蜂起したから鎮圧したということだ。

    全斗煥:ほう、そうなのか…今日初めて聞いた。

    冒頭で言及した記者会見で、韓国のNGO・北韓戦略センターの姜哲煥(カン・チョラン)代表は「池氏は私が幼いころに光州に派遣され、スパイ活動を行ったと主張しているが、私は1977年から1989年までの12年間、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の政治犯収容所に収容されていた」とし、「最初は頭のおかしい人だと思い気にしなかったが、自由韓国党が518真相調査委員に(池氏を)推薦しようとしている有様は見るに堪えない」と述べた。

    ちなみに、姜氏は当時12歳である。池氏に北朝鮮軍呼ばわりされた脱北者の中で最年少の人物は、なんと当時3歳だったとのことだ。

    また、北朝鮮へのビラ散布を行ってきた北韓同胞直接援助運動のイ・ミンボク風船団長は「北朝鮮は私のことを嫌っているのに、なぜ私がスパイと言えるのか」と呆れた様子で語った。

    さらに、元朝鮮人民軍中尉で1993年に韓国に亡命、池萬元被害者対策委員会の共同代表を勤めるイム・ヨンソン氏は18日、公共放送KBSラジオの時事番組「最強時事」に出演。自らも池氏からスパイ呼ばわりされていると明らかにした上で、(1980年には)16歳の高等中学校の生徒で、人民軍に入隊もしていないのにどうやって光州に派遣されたというのか、と怒りをあらわにした。

    「北朝鮮から光州に派遣された」と「証言」した脱北者についてイム氏は、池氏にカネで雇われたと主張している。イム氏はこの人物を告訴しているが、光州の人々のもとに行ってすべてを告白してほしいとして、場合によっては告訴を取り下げる意思を示した。

    韓国では、貧しい暮らしを強いられている脱北者が、極右団体からカネを受け取って政治集会などに参加する事例が後を絶たない。

    (参考記事:「朴槿恵を守れ!」辞任要求に対抗する韓国民間団体の素性

  • 金正恩氏の「親密美女」が異例の出世…中央省庁の次官級に

    金正恩氏の「親密美女」が異例の出世…中央省庁の次官級に

    天国と地獄を見た北朝鮮の女性芸術家たち(上)

    北朝鮮の金正恩党委員長は、先月7日から10日にかけて中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。訪中真っ只中の8日は金正恩氏の誕生日だった。習氏が呼びつけたのか、それとも金正恩氏が誕生日を祝うことを返上して訪中を望んだのかについてはわからないが、中朝関係は以前に比べると着実に改善している。

    訪中後、金正恩氏は友好芸術団を中国に派遣した。友好芸術団は同月26~27日に北京の国家大劇院で公演を行い、習氏が彭麗媛夫人と鑑賞した。友好芸術団の団長は玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏だ。北朝鮮を代表するポップグループ・ポチョンボ電子楽団の看板歌手だった女性である。その後は、金正恩氏がポチョンボ電子楽団の後継として創設したモランボン楽団の団長を務めた。一時期、金正恩氏の元カノともいわれたこともあったが、単なる噂であり、金正日氏の愛人だったという説が有力だ。

    (参考記事:機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇

    玄氏は昨年2月、韓国の平昌冬季五輪に派遣された三池淵(サムジヨン)管弦楽団の団長も務めたが、今回の中国公演を通じてさらに出世していることが明らかになった。

    北朝鮮の朝鮮中央テレビが友好芸術団の訪中を報じ、「朝鮮労働党中央委員会副部長たちである、チャン・リョンシク同志、玄松月同志をはじめとする朝鮮民主主義人民共和国親善芸術代表団の主要メンバーたちが習近平同志と彭麗媛女史を迎えた」と伝えたのだ。

    朝鮮労働党の副部長は、日本の中央省庁の次官級に相当する。玄氏は一昨年に朝鮮労働党中央委員会候補委員に抜擢されている。歌手が党中央委員会のメンバーになるのも史上初だが、副部長職だとするなら異例中の異例だ。単に芸術家として優れているだけでなく、金正恩氏とプライベート面でもかなり親しい関係にあったからこそ党の候補委員、さらに副部長に抜擢されたと見るべきだ。そもそも金正恩氏の妻である李雪主(リ・ソルチュ)氏は銀河水管弦楽団の歌手だ。楽団は違うが二人とも看板歌手だった。

    米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、玄氏は北京駐在の北朝鮮外交官の間で「小さな王」と呼ばれていたという。それほど存在感を示しているということだろう。玄氏が労働党のどの部署に所属するかは明らかにされていないが、韓国の聯合ニュースは、「朝鮮労働党宣伝扇動部所属」ではないかと見ており、筆者もその可能性が高いと思う。宣伝扇動部とは、文芸作品を通じた最高指導者の偶像化や体制の宣伝、そして住民に対する思想教育を担当する。

    玄氏は元歌手だけに「喜び組」出身とされることがあるが、この表現は正確ではない。本来、喜び組とは最高指導者の身辺補佐をする女性たちの総称だ。喜び組の女性たちは、マッサージ、スポーツ、公演などの専門分野に別れており、夜の奉仕をする特別な組織も存在するとも言われている。

    (参考記事:北朝鮮の「喜び組」に新証言…韓国テレビ「最高指導層の夜の奉仕は木蘭組」

    玄松月氏は、もはや金正恩氏の最側近の一人と言っても過言ではない。玄氏や金正恩氏の夫人の座を射止めた李雪主氏のように芸術家として金正恩氏の寵愛を受ける女性がいる一方で、言葉どおり地獄を見た芸術家たちもいる。2015年3月には、銀河水管弦楽団の複数のメンバーが、裸で立たされた上で、遺体が原形をとどめなくなるまで機関銃で乱射されるという実に残忍な方法で処刑された。

    (参考記事:遺体が粉々になり原型とどめず…金正恩氏の「銀河水管弦楽団員虐殺」事件

    李雪主氏が所属していたにもかかわらず、楽団員は処刑され解散の憂き目にあった銀河水管弦楽団。しかし、今回の中国公演で、同楽団に所属していた歌手が復権したという。(つづく)

  • 「頭が腐った奴らは頭蓋骨から吹き飛ばせ」金正日は命令した

    「頭が腐った奴らは頭蓋骨から吹き飛ばせ」金正日は命令した

    北朝鮮の平安北道(ピョンアンブクト)では、大規模な検閲(査察)が行われている。それもかつてないほどの規模で長期間に渡っているとのことだ。

    現地の内部情報筋によると、朝鮮労働党の検閲委員会は昨年12月20日から、税関など国の機関、工場、企業所などに対して非常に厳しい検閲を行っている。検閲委員会とは、反党、反革命的宗派(分派)行為や党規約違反を摘発し、責任を追求する組織だ。

    北朝鮮ではこうして、特定地域に対する検閲が抜き打ちで行われる。過去に行われた同様の検閲で、最も厳しかったと言われるのが1995年に両江道(リャンガンド)に対して行われたものだ。

    当時、検閲を担当した軍の保衛司令部は、道内だけで少なくとも19人を公開銃殺にしており、非公開で処刑された人々も加えたら、いったいどれほどの犠牲者が出たかもわからないという。

    (参考記事:「死刑囚は体が半分なくなった」北朝鮮、公開処刑の生々しい実態

    北朝鮮の公開銃殺は、従来のやり方でも十分に残酷なのだが、保衛司令部のやり方は輪をかけてひどかった。普通は胴体を狙って9発の銃弾を撃ち込むのだが、保衛司令部はその全弾を頭部に浴びせたというのだ。

    (参考記事:機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇

    これについては以前にも本欄で触れているが、実は、保衛司令部がこのような銃殺方法を採用したのには伏線があった。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の解説記事によると、社会で思想の統制が乱れ、風紀が乱れているとの報告を受けた金正日総書記が「頭の腐った奴らは頭蓋骨から吹き飛ばしてしまえ!」と命令したというのだ。

    ちなみに息子の金正恩党委員長は、公開銃殺で大口径の4銃身高射銃を使用させ、頭どころか体ごと粉々にするやり方をさせている。この父にして、この子ありといったところだろうか。

    (参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認

    通常は20日程度で終了する検閲だが、今回は史上最長の3ヶ月に及ぶ見込みだという。

    情報筋によれば、市民は口々に「今回は厳しい」「恐ろしい」「捕まればヤバい」などと語り、町には緊張した空気が漂っている。北朝鮮で生きていくには、多かれ少なかれ法に触れる行為をせざるを得ないからだ。

    (参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

    今回は主に幹部が検閲対象となっているようだが、一般市民とて無事とは言えないからだ。密輸で生計を立ててきた人も、息を潜めて検閲が終わるのを待っているという。

  • 金正恩が韓国の熱望を「スルー」…対日独立運動記念に「関心なし」

    金正恩が韓国の熱望を「スルー」…対日独立運動記念に「関心なし」

    北朝鮮が、韓国政府が熱望していた共同行事の開催を「スルー」した。韓国の文在寅大統領は昨年9月の首脳会談で、日本による植民地時代に起きた独立運動「3.1運動」の100周年を記念する行事を、共同で開催することを北朝鮮側に提案。金正恩党委員長がこれを受け入れ、南北共催は「9月平壌共同宣言」にも盛り込まれた。

    ところが3月1日の当日を目前に控え、北朝鮮は韓国側に「今回の開催は難しい」と公式に知らせてきたのだ。理由については「時期的に難しい」としているようだが、北朝鮮は「3.1運動」に対し、韓国ほどには思い入れがない。さらに、南北対話もあくまでマイペースで進めようという北朝鮮側の姿勢の表れとも言える。

    (参考記事:「韓国は正気なのか!?」文在寅政権に北朝鮮から非難

    このところ、南北は親密さを増しているように見えるが、人権問題や軍事に関しては、北朝鮮は韓国側に強い不信感を示すことがある。韓国との付き合いは、あくまで是々非々なのだ。

    (参考記事:「韓国が下心さらけ出した」北朝鮮が猛批判する理由

    今回の件も同様と言える。韓国統一省は21日、北朝鮮側が同日、李善権(リ・ソングォン)祖国平和統一委員会委員長の名義で趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相宛てに通知文を送り、今回の開催は難しいと公式に通知があったと明らかにした。

  • もうすぐ「『終わり』の始まり」を迎える北朝鮮の逃れられない運命

    もうすぐ「『終わり』の始まり」を迎える北朝鮮の逃れられない運命

    トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩党委員長との2回目の首脳会談が、5日後に迫っている。日米韓のメディアの中には、トランプ氏が今回の会談で、制裁緩和に応じるなど北朝鮮に妥協する可能性があるとする分析が見られる。そうなれば金正恩氏にとっては儲けものだが、中長期的に見れば、それが北朝鮮の体制にとっての「『終わり』の始まり」になる可能性もある。

    金正恩体制は、恐怖政治で国民の動向を統制し、社会主義の体裁を取り繕っている。

    (参考記事:機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇

    しかし実のところ、同国の計画経済はすでに崩壊しており、なし崩し的な資本主義化が進行。貧富の差が拡大し、良い意味でも悪い意味でも「自由」の拡大が始まっている。

    (参考記事:北朝鮮で「サウナ不倫」が流行、格差社会が浮き彫りに

    それを後押ししてきたのは、実は金正恩氏自身でもある。市場に対する統制を緩めたり強めたりを繰り返した父の故金正日総書記と異なり、金正恩氏は放任主義を続けてきた。この間、「トンジュ(金主)」と呼ばれる新興富裕層の存在感はいっそう大きなものとなり、彼らなしでは北朝鮮の経済は成り立たなくなっている。

    北朝鮮で民主化が起きるなら、虐げられた民衆が暴政を倒す「革命」として実現するのが望ましいと思ってきた。政治犯収容所などにおける現在進行形の人権侵害を止めるには、それしか方法がないからだ。

    しかし、北朝鮮の体制はそれほどやわではない。民衆が本気で権力に歯向かう兆候を見せたら、当局はすぐさま残忍に弾圧してしまうだろうことを、歴史が証明している。

    (参考記事:抗議する労働者を戦車で轢殺…北朝鮮「黄海製鉄所の虐殺」

    その一方、北朝鮮の体制は「利権」の浸食にめっぽう弱い。北朝鮮社会では、当局の各部門が持つ大小様々な権限が利権化している。北朝鮮経済は、利権の集合体であると言っても過言ではないほどで、その仕組みは「ワイロ」という名の潤滑油で回っている。軍隊の中にすら、同じような仕組みが存在するほどだ。

    (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

    ただ、国際社会による経済制裁に頭を抑えられているため、その仕組みはなかなか大きく成長することができなかった。しかし、ここで制裁が緩和されたらどうなるか。韓国や中国から流れ込む投資は、北朝鮮の経済の成長を促し、同国の人々が見たこともないような巨大な利権を生み出すだろう。また、利権の数自体も爆発的に増え、利害関係の錯綜も複雑さを増す。もはや、ひとりの独裁者の権力の下に、すべての利害を従えることなど不可能になるのだ。

    そして、無数の利害関係を最大公約数的に調整する多数決の仕組み――つまりは民主主義が必要になるわけだ。

    いずれにしても、北朝鮮経済のなし崩し的な資本主義化の流れは止まらない。あの国は遅かれ早かれ、上述したような道を辿る。もしかしたら今回の首脳会談が、その号砲を鳴らしたと歴史に書かれる可能性があるということだ。

  • 北朝鮮が「正常国家の日本」を激しく警戒する理由

    北朝鮮が「正常国家の日本」を激しく警戒する理由

    北朝鮮の主要メディアである労働新聞と民主朝鮮、朝鮮中央通信は19日、揃って日本を非難する論評を出した。金正恩党委員長が米韓との対話に舵を切って以来、北朝鮮メディアが非難する対象は日本と韓国の保守派ぐらいになっている。

    (参考記事:【写真】北朝鮮、韓国「美人すぎる野党議員」を猛批判…「親日派を除去せよ」

    それにしても、3メディアが一斉に日本を非難するのは初めてのことではないが、対日攻勢は強まっていると言える。特に朝鮮中央通信は次のように述べ、日本の今後に対する警戒感を露わにした。

    「改憲を一日も早く実現させて合法的に日本を交戦権を持つ正常国家、侵略戦争を意のままに行える国につくろうというのが、安倍政権の野望である」

    北朝鮮が、日本の軍事力強化を懸念するのは当然のことだ。

    (参考記事:「自衛隊の攻撃能力は世界一流」と評価する金正恩氏の真意

    金正恩氏は先日、人民武力相で行った演説で軍の「道徳強兵化」を打ち出した。敢えて「道徳」を強調するのは、横流しや性的虐待などにより、軍の規律が乱れきっていることの反証と言える。

    (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

    金正恩氏は今月末にトランプ米大統領との2回目の首脳会談を控えている。日米などのメディアでは、トランプ氏が北朝鮮に妥協する可能性も指摘されており、国際政治における金正恩氏の旗色は悪くないはずだ。

    それでいて日本への警戒を強めるのは、米朝合意により、北朝鮮の軍事的弱体化に拍車がかかってしまうからだろう。非核化が前進すれば、通常戦力で周辺各国に大きく後れを取る北朝鮮は、「東アジア最弱」の地位に固定されかねない。

    (参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い

    ちなみに、労働新聞の同日の論評は、「日本の外交的孤立は彼ら自身がもたらしたものである」と主張。「地域で日本が独りぼっちの境遇から免れるための前提条件は一にも、二にも、三にも誠実な過去清算である」などと述べた。また民主朝鮮の論評は、日本政府に過去の植民地支配の「反省」を迫る内容だった。

    これら2紙の論調には、ハッキリ言って、国際政治の現在の局面に切り込む鋭さがない。やはり朝鮮中央通信の主張に表れた警戒感こそが、北朝鮮の日本に対する現在の視線であると見るべきかもしれない。

  • 欧州から北朝鮮に強制送還された「ある女子高生」が辿る運命

    欧州から北朝鮮に強制送還された「ある女子高生」が辿る運命

    韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使は18日に公開された月刊誌・新東亜(インターネット版)のインタビューで、昨年11月に消息を絶ったチョ・ソンギル駐イタリア北朝鮮代理大使の娘が本国に強制送還されたもようだと伝えた。

    チョ氏は現在、妻とともにイタリア情報当局の保護を受けており、米国亡命を希望して待機中だという。太永浩氏によれば、現在高校生の娘は両親とともにイタリアで暮らしていたが、何らかの手違いがあり、いっしょに脱出できなかったもようだ。

    韓国在住の他の脱北者はこうした場合の娘の処遇について、「良くて山間僻地への追放。悪ければ政治犯収容所に送られる」と解説している。北朝鮮の収容所は、あらゆる形の人権侵害が横行していることで知られる。

    (参考記事:北朝鮮、脱北者拘禁施設の過酷な実態…「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も

  • 何でも「カネカネ」の北朝鮮、ついには選挙も「有料」に

    何でも「カネカネ」の北朝鮮、ついには選挙も「有料」に

    北朝鮮の国会にあたる最高人民会議の代議員選挙が、来月10日に行われる。選挙と言っても、極めて形式的なものに過ぎない。選挙期間になると、町のあちこちに貼り出されるのは候補者のポスターではなく、「全員が賛成投票しよう!」という奇異なものだ。

    投票は、候補者の名前がスタンプで押された投票用紙を投票箱に入れるだけだ。反対票を投じるなら用紙にバツ印を書いて投票するが、そんなことをしたらどうなるかは火を見るより明らかだ。下手をすれば公開処刑もありうる。

    (参考記事:「死刑囚は体が半分なくなった」北朝鮮、公開処刑の生々しい実態

    そんな形ばかりの選挙だが、準備にはそれなりの費用がかかる。しかし、政府はその費用を有権者に肩代わりさせている。

    咸鏡北道(ハムギョンブクト)の内部情報筋によると、清津(チョンジン)、穏城(オンソン)、慶源(キョンウォン)など道内各地では、最高人民会議代議員選挙の投票所の設置と、宣伝活動が行われている。

    清津市内の通りには投票を呼びかけるポスターが貼られ、学生たちは冬休み返上で投票所の清掃を行ったり、選挙の雰囲気を盛り上げる歌を歌ったりしている。洞事務所(末端の行政機関)や学校などに作られた投票所には国旗やスローガンなどが掲げられ、中央選挙管理委員会の規定に従って様々な選挙用品が準備された。

    選挙を前にして人民班(町内会)では会議が行われた。そこで人民班長(町内会長)が伝えたのは、「投票の有料化」とも言うべき状況だ。

    「労働党は『人民の主権を守るべき政府が人民の懐からカネを取って投票所を設置してもいいのか。人民にそんなものを要求するな』と指示した。しかし、金がないのにどうやって投票所を設置するのか」(人民班長)

    人民班長は、さらにこんな話も付け加えた。

    「(清津の)水南(スナム)区域に住むある人は『主権の行使なのに何のカネが惜しかろう』と選挙管理委員会に10万北朝鮮ウォン(約1300円)を寄付したらしい」

    横並び意識やプライドをくすぐってカネを出させようとする、当局の常套手段だ。

    こうして、投票所を準備する費用として1500北朝鮮ウォン(約20円)から2500北朝鮮ウォン(約32円)の募金が集められた。大した金額ではないので不平不満が飛び出すこともなく、住民はおとなしく支払った。人民班長はさらに、選挙管理委員に振る舞うコメと食事の提供も要求。「募金のことは外部に漏らさないように」と念押しした。

    選挙は政治と関連することであるため、下手なことをすると政治犯になりかねない。北朝鮮で、政治犯は最も重い罰を受ける。人々はそれを恐れておとなしく従うのだ。

    (参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

    「選挙と関連した問題で人民班長と口げんかなどしたら、すぐに保衛部(秘密警察)が乗り出して政治的な問題になりうる。是非はともかく、素直に従う姿を見せなければならない」(情報筋)

    (参考記事:「何かがおかしい…」国のやり方を疑い始めた北朝鮮の人々

    実際、保安員(警察官)や保衛員(秘密警察)が人民班に頻繁にやってきて、選挙関連の会議に誰が出席したかをチェックするという。

    また、選挙に際して、住民が登録した場所に住んでいるかどうかのチェックも合わせて行われ、もし住んでいないことがわかれば、脱北者扱いされ様々な不利益がしょうじる。そのため、商売の理由で遠隔地に出かけている人も大慌てで帰ってくるとのことだ。

  • 14歳「隠れ韓流ファン」が人民裁判で問われた罪と罰

    14歳「隠れ韓流ファン」が人民裁判で問われた罪と罰

    北朝鮮の恵山(ヘサン)市で今月3日、大規模な住民暴露会が開かれ、14歳の中学生を含む17人が吊るし上げられたと、デイリーNKの内部情報筋が伝えてきた。彼らが問われた罪は、韓流ドラマや映画をこっそり視聴し、映像ソフトを流布したというものだ。北朝鮮当局はこれまで、拷問などの手段も動員しながら韓流の拡散を取り締まってきた。

    (参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…]

    最近でこそ、そのような極端な手段を用いることは減っているとされるが、依然として韓流を目の敵にしていることがわかる。

    住民暴露会は、いわゆる「人民裁判」の一種だ。役場の前や学校の運動場に舞台を設置。当局の意に沿わない言動を見せた人々をそこに上がらせ、他の住民たちに糾弾するよう強要するのだ。ほかに住民総会と呼ばれるものもあり、こちらは終了後に司法機関が容疑者を逮捕する。

    住民暴露会は、逮捕するほどでもない軽微な「過ち」を対象としたものだされていたが、今回は様相が異なり、17人は保安署(警察署)に連行されたもようだ。「地元の住民たちは、6カ月から2年の労働鍛練刑(懲役)に処せられるものと見ている」と情報筋は語る。

    住民暴露会は、金日成・正日時代にも同様のことが行われていたが、金正恩時代に入り頻度が増加。小学生から老人まで、あらゆる人々が糾弾の対象にされるようになったという。

    恵山では、2年前にも大規模な住民総会が行われ、薬物使用の容疑者4人と賭博容疑者4人、売春の容疑者1人の計9人が吊るし上げられた。いずれも、金正恩氏が神経を尖らせているとされる違法行為の容疑者たちである。

    (参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち]

    北朝鮮ではかつて、金正恩氏の祖父である金日成主席が、政敵を掃滅することに血道を上げた。ソ連派や延安派などのライバルたちを、党の公式会議の場で「反党反革命分子」「宗派分子」と決めつけて排撃。治安機関に一族郎党を逮捕させ、文字通り社会から消し去った。

    その息子の金正日総書記が権力を実質的に継承した1980年代までには、彼の政敵となり得る勢力はいなくなっていた。それに替わり、当局の警戒対象となったのが国民の「心」だ。東欧社会主義圏で起きた政変の影響が、国内に及ぶことを恐れたのだ。それを食い止めるため、彼は秘密警察などを使って国民の思想を絶えず「点検」し、動揺や反抗心のうかがえる者は政治犯収容所に送るなどした。

    住民総会や住民暴露会などの手段を用いる金正恩氏のスタイルは、父の路線を踏襲したものと言える。しかし、その強硬な姿勢にも関わらず、当局の旗色は良くない。いくら取り締まっても、韓流の拡散と視聴は止まらないからだ。

    (参考記事:北朝鮮の少年少女が恐れる「少年院送り」…それでも止められない遊びとは]

    人間の「心」を統制するのは、それほど難しいことなのだ。金正恩氏もいいかげん、その辺の真理に気づいた方が身のためだろう。

  • 北朝鮮を手玉に取った「100歳老人」の痛快エピソード

    北朝鮮を手玉に取った「100歳老人」の痛快エピソード

    100歳を迎えた北朝鮮の長寿老人に、同国のテレビ記者たちがほとほと困らされたというエピソードが聞こえてきた。

    食糧難や経済の混乱が続く同国で、100歳まで長生きできる人は極めて珍しい。そのため、国営の朝鮮中央テレビは体制宣伝のための格好の素材と考えたようだが、老人はインタビューで「将軍様のご配慮のおかげで長生きできた」との言葉を最後まで口にしなかったという。北朝鮮でこのような態度は「不敬罪」に問われかねないものだが、老人はどうやら「ボケたふり」をして記者や当局を手玉に取ったようだ。

    (参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

    デイリーNKの内部情報筋によれば、この出来事は1月中旬頃、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の穏城(オンソン)郡で起きた。

  • 北朝鮮版「不正腐敗との闘い」の致命的な盲点

    社会主義ではなく「拝金主義」に国の根幹を占められつつある北朝鮮。「ワイロさえ払えば何でもできる」という腐敗ぶりに対し、金正恩党委員長が大鉈(おおなた)を奮っている。

    北朝鮮の平安北道(ピョンアンブクト)では、大規模な検閲(査察)が行われている。それもかつてないほどの規模で長期間に渡っているとのことだ。

    平安北道のデイリーNK内部情報筋によると、朝鮮労働党の検閲委員会は昨年12月20日から、税関など国の機関、工場、企業所などに対して非常に厳しい検閲を行っている。

    検閲委員会とは、反党、反革命的宗派(分派)行為や党規約違反を摘発し、責任を追求する組織で、趙然俊(チョ・ヨンジュン)元党組織指導部第1副部長が指揮している。

    検閲の結果、新義州(シニジュ)税関の税関員2人、市人民委員会(市役所)都市経営事務所の支配人、企業所の党書記などが摘発、更迭されたとの噂が流れている。通常は20日程度で終了する検閲だが、今回は史上最長の3ヶ月に及ぶ見込みだという。

    不正腐敗の根絶は、金正恩氏が、施政方針演説にあたる「新年の辞」で取り上げるほど重要視しているものだ。

    北朝鮮が国是とする「党と大衆の混然一体」を破壊し、社会主義制度をむしばむ権柄と官僚主義、不正腐敗行為は、大小をとわず一掃するための闘争の度合いを強めなければなりません。
    金正恩氏が発表した「新年の辞」全文

    金正恩氏は、不正腐敗が経済発展という目標達成の障害になっていると見ており、今回の厳しい検閲もそのような認識が反映されたものと見られる。

    朝鮮人民軍(北朝鮮軍)に対しても、厳しい検閲が実施されている。別の情報筋によると、「食糧などの物資を将校が横流しし、私腹を肥やす行為」に対して警告がなされ、一部の部隊には兵士に与えられる食事の量をチェックするために中国製の電子秤が導入された。

    軍に対しては協同農場から食料が配給されるが、部隊の幹部らによる横流しで目減りし、兵士が飢えに苦しむ事態が続いてきた。それを防ぐために給食の供給状況を監視するというわけだ。

    ちなみに、2002年に改定された後方供給規定(配給に関する規定)によると、兵士1人あたり1日に穀物600グラム、食用油60グラム、野菜と山菜1キロ、水産物600グラム、肉類300グラムを配給することになっている。

    (参考記事:金正恩氏の「おかず大作戦」が救った北朝鮮軍の危機

    ただ、チェックされるのは重さだけなので、横流しをしている幹部らは、コメの一部を売り払い、より安いトウモロコシや豆を買って差額を着服するという以前から行われてきた手法で対処している。コメを市場に持ち込めば、トウモロコシなら2倍、豆なら2.5倍にしてもらえるのだ。

    その結果、兵士が得られるのはコメ3割トウモロコシ7割のご飯と、沢庵3〜4切れだ。暖房用の薪もなく、兵士たちは氷点下20度の寒さを、貧弱な食事でしのいでいる。

    今回の厳しい検閲について市民は口々に、「今回は厳しい」「恐ろしい」「捕まればヤバい」などと語り、町には緊張した空気が漂っている。北朝鮮で生きていくには、多かれ少なかれ法に触れる行為をせざるを得ない。今回は主に幹部が検閲対象となっているようだが、一般市民とて無事とは言えないからだ。密輸で生計を立ててきた人も、息を潜めて検閲が終わるのを待っている。

    一方で、「検閲を頻繁に行って、人民のために奉仕しない幹部は追い落として新しい人に替わればいい。懲らしめてやってほしい」(情報筋)という意見も聞かれるようだ。

    中国の習近平国家主席は、深刻な公務員の不正腐敗を根絶するため、給料を上げる代わりに違法行為には厳罰をもって対処する「アメとムチ」を使い分ける手法を取っている。

    金正恩氏は習近平氏のやり方を見て不正腐敗の根絶に乗り出したのかもしれないが、中国とは大きく条件が異なる。中国の公務員は薄給ではあるが、住宅や福祉の面で非常に優遇されている。一方で北朝鮮の公務員は、給料は子どもの小遣い銭程度にしかならず、安定的な食糧配給もなければ老後の保証も心もとない。私腹を肥やす以前に、給料だけでは生きていけないのだ。

    彼らの生活を安定させない限り、いくら取り締まりを行っても、ほとぼりが冷めれば元の木阿弥だ。

    (参考記事:ワイロ激減で「国民の御用聞き」に転落した北朝鮮幹部たち

  • 軍隊内の「性の乱れ」に悩みを深める金正恩氏

    軍隊内の「性の乱れ」に悩みを深める金正恩氏

    朝鮮人民軍(北朝鮮軍)は今月8日で創建71周年を迎えた。米国との非核化対話の流れを反映してか、軍事パレードなどは行われず、金正恩党委員長が人民武力省(日本の防衛省に相当)を訪問して演説するなど地味な行事だけで終わった。

    ただ、はた目には地味に見えても、演説の中身はなかなか意味深なものだった。北朝鮮の軍は近年、物資の横流しや性的虐待が横行するなど、規律が乱れきっている。

    (参考記事:ひとりで女性兵士30人を暴行した北朝鮮軍の中隊長

    そのような実情に対する金正恩氏の「悩み」が、演説に表れた形となったのだ。同氏は演説で、次のように述べた。

    「人民軍の党組織と政治機関で、思想と道徳は何とも替えられない革命軍隊の絶対的優越性であり、必勝不敗の保証であることを銘記し、政治・思想強兵化、道徳強兵化を二つの柱として思想活動を攻勢的に、多角的に、立体的に展開していくことによって、全軍を党と血脈が通じて思想と志、運命を共にする思想的純潔体、運命共同体にしなければならない」

    北朝鮮の最高指導者が、軍に対して「政治」と「思想」の重要さを強調するのはいつものことだ。朝鮮人民軍は「党の軍隊」であり、党の政治思想に従うのは原理原則である。

    気になるのは、それらの言葉に「道徳」が続いていることだ。道徳の大切さが改めて強調されるのは、現状においてそれが、軍内で蔑ろにされていることを金正恩氏が認識しているからだろう。

    (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

    しかし、特に女性兵士に対する性的虐待の問題は、北朝鮮の権力構造や女性蔑視、男性本意の風潮と複雑に絡み合っている。金正恩氏が演説で遠巻きに指摘したくらいでは、抜本的な改善がなされるとも思えない。

    一方、金正恩氏は同じ演説で核兵器には言及せず、「人民軍の最精鋭化は革命武力の建設においてわが党の一貫した方針である」と表明。「思想革命、訓練革命、武装装備の現代化、軍紀確立に朝鮮革命武力の最精鋭化をさらに早める根本秘訣がある」と強調した。

    軍事力の維持・強化の方針に言及した言葉だが、実に曖昧な表現である。果たして金正恩氏は、仮に本当に非核化を行うとして、その後の軍事政策をどのように考えているのか。

    (参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い

    それが見えてこないことがむしろ、同氏の非核化への意思を疑わせる要素にもなっているかもしれない。

    (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「書類整理」と呼ばれる性虐待行為

  • 「独島(竹島)強奪を公式表明」北朝鮮が対日攻勢を強める

    「独島(竹島)強奪を公式表明」北朝鮮が対日攻勢を強める

    昨年、金正恩党委員長が米韓との対話路線に舵を切って以来、北朝鮮メディアは日本に対して集中的に非難を浴びせてきた。

    (参考記事:「世界は日本を警戒すべき」…北朝鮮が「いずも」空母化に猛反発する理由

    それがこのところは、韓国の軍備増強や、保守派の動きにナーバスな反応を示していた。

    (参考記事:【写真】北朝鮮、韓国「美人すぎる野党議員」を猛批判…「親日派を除去せよ」

    しかしここへ来て、またもや日本への非難を強めている。北朝鮮国営の朝鮮中央通信は11日、「独島(竹島)を強奪しようとする日本の挑発が続いている」とする論評を配信。河野太郎外相が「竹島は日本の固有の領土」とした発言に言及し、次のように主張した。

    「これは、日本が今年も独島強奪を基本政策課題に定めていっそう露骨に取り掛かるということを公式に表明したこととして、わが民族の尊厳と自主権に対する乱暴な挑戦であり、重大な侵略行為である」

    この問題を巡っては、朝鮮労働党機関紙の労働新聞も13日付に、北朝鮮外務省傘下にある日本研究所のリ・ハクナム研究員による、似たような内容の論説を掲載している。さらには日韓の「レーダー照射」問題を巡っても、原因は「日本側の軍事的挑発」にあるとする記事が、各メディアから相次いで出ている。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    ここへ来ての日本非難は、27~28日にベトナム・ハノイで予定されている2回目の米朝首脳会談が念頭にあるものと考えざるを得ない。北朝鮮はこの会談で、米国から制裁緩和などの譲歩を引き出せると確信しているのではあるまいか。

    仮にそうなれば、韓国と中国はすぐさま、対北経済支援に動くだろう。そうすれば、北朝鮮の立場は強まり、日本に対して過去清算を迫る姿勢も積極的になるかもしれない。

    (参考記事:「日本軍が慰安婦を虐殺した映像ある」北朝鮮メディア報道

    もちろん、北朝鮮が首脳会談で、思惑通りの成果を得られるかどうかは未知数だ。しかし、北東アジアの情勢が、ある種の「流動化」に向かっているのは確かだろう。北朝鮮が今後、日本に対して具体的に何を仕掛けてくるかが注目される。

  • 北朝鮮、韓国の「美人すぎる野党議員」を猛批判…「親日派を除去せよ」

    北朝鮮、韓国の「美人すぎる野党議員」を猛批判…「親日派を除去せよ」

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信は13日、このところ険悪化している日韓関係の改善を訴える韓国の保守系議員らを「醜悪な親日逆賊」と非難する論評を配信した。

    北朝鮮は、対話の相手である韓国の文在寅政権に対しては、時にブチ切れて見せるものの、基本的には蜜月と言える関係にある。しかし、北の独裁体制を容認しない自由韓国党など保守勢力は目の敵にしており、北朝鮮メディアが最も口汚く攻撃するのも彼らだ。

    (参考記事:【写真】元人気女子アナが韓国政府を猛批判「北が敵じゃないって…」

    今回の論評が真っ先に攻撃したのは、同党の院内代表で「美人過ぎる国会議員」としても知られる羅卿ウォン(ナ・ギョンウォン)氏だ。

    (参考記事:【写真】文在寅批判の「美人過ぎる」野党議員…過去には「親日派」報道も

    論評は、彼女が「『北の非核化を導くうえで日本は重要な友邦』『政府が外交的無能を覆い隠すために反日感情をあおり立てている』と言い散らした」などと指摘。

    続けて「これは、民族の尊厳と利益は眼中になく、ひたすら同族対決と外部勢力追従から活路を見い出そうとする親日逆賊らの醜悪な本性をありのままさらけ出した反民族的売国行為」であるなどと罵倒した。

    もっとも、こんな口汚い誹謗中傷が、韓国世論に影響を与える可能性はゼロに近い。むしろ、北朝鮮が「親日」への攻撃を強めることで、現在の南北関係に懐疑的な人々は日韓関係についても冷静な見方をしようとするかもしれない。

    北朝鮮としては、韓国に対して歴史的な「優位性」を持っているつもりなのかもしれない。北朝鮮と日本は、過去の植民地統治について何ら「清算」を行っていない。日韓の間では、1965年に日韓基本条約および日韓請求権協定を結びながら、いまだに歴史問題が噴出する。そこで北朝鮮は韓国に対し「弱者だったお前らは足元を見られた。日本からのケジメはオレが取る」などという思いを抱いているのかもしれない。

    だが、国際政治で重視されるのは歴史問題だけではない。それよりもむしろ、世界は北朝鮮の人権問題を重視しているとも言える。

    歴史問題でも人権問題でも、大事なのは民主的な解決だ。北朝鮮は、自分こそがそこから最も遠いところにいることを知らねばなるまい。

    (参考記事:「韓国は正気なのか!?」文在寅政権に北朝鮮から非難

  • 新築住宅が同時多発的に崩壊…500人死亡の恐怖もよぎる

    新築住宅が同時多発的に崩壊…500人死亡の恐怖もよぎる

    将泉野菜専門協同農場の農村文化住宅(画像:朝鮮の今日)
    将泉野菜専門協同農場の農村文化住宅(画像:朝鮮の今日)

    北朝鮮で先月、建てたばかりの住宅が同時多発的に崩壊する事故が起きた。幸いにして死者は出なかったものの、地域住民は戦々恐々としている。

    手抜き工事が原因と見られるが、北朝鮮ではこうした事故が繰り返し起きている。2014年5月、平壌では完成したばかりの23階建ての高層マンションが崩壊し、住民や工事関係者など最大で500人が犠牲になる大惨事が起きている。こうした事実を知る住民らの恐怖はハンパではないだろう。

    (参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故

    事故が起きたのは今年1月ごろのことだ。黄海南道の松禾(ソンファ)と白川(ペチョン)など複数の地域で、建てたばかりの家が崩れ落ちる事件が相次いで発生した。現地の情報筋によると、ある村では2割から3割の家で壁が崩れ落ちた。幸いにして死者はいなかったものの、多くの人が負傷し、家を失って寒空の下に放り出されてしまった。

    住宅は、当局が昨年夏に繰り広げた「農村文化革命」キャンペーンの一環として建てられた「農村文化住宅」だ。このキャンペーンの目的は、古ぼけた農村の姿を一新させ、生活水準を向上させることにあった。

    郡内の機関、企業所などから動員された人々は、まだ十分に住むことのできる家を引き倒し、新しい住宅を建てた。そんな新築の家が、1軒だけでなく何棟もが次々に崩壊したのだ。その原因について情報筋は、「万里馬速度で建てたからだ」との見立てを述べた。

    「万里馬」とは、1950年代に行われた大増産運動「千里馬運動」をもじったものだ。「速度戦」とも言われるこの運動だが、増産と時間短縮ばかりが優先され、質がないがしろにされがちだ。そのため成果よりは、弊害ばかりを生み出す結果となった。

    (参考記事:【再現ルポ】北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図

    旧共産圏では1960年代に辞めているが、北朝鮮では今に至るまで続けている。とは言え、多少の修正も行われている。

    2014年6月20日の北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、金正恩党委員長が当時建設中だったタワーマンション団地の現地指導を行った場で「建設においては一にも二にも質の保証に優先的な関心を置くべき」「千年責任、万年保証のスローガンの元に、建築物を百点満点で完成させよ」と指示したと報じている。

    今までのやり方を踏襲しつつも、質を重視することを強調した発言だが、黄海南道の現場では全く守られていなかった。

    例えば、日干しレンガをきちんと乾燥させないまま積み上げて壁を作ったとされる。水分を含んだままのレンガが、冬になって暖房で暖かくなった室内と、氷点下の室外の温度差に耐えきれず、亀裂が入り、崩壊に繋がったのだ。

    また、木製の柱も規定通りに入っていなかったため、瓦の重さに耐えられなかったようだ。おそらく、柱用に供給された木材は横流しされたのだろう。オンドル(床暖房)やコンクリート壁の工事もいい加減なものだったという。

    動員された人々は給料ももらえない仕事に熱心に取り組む義理などないのに、当局が「さっさと建てろ」とうるさいので、やっつけ仕事で済ませてしまった模様だ。

    地域住民は今回の事件を受け「ふらふらする千里馬も乗りこなせなかったのに、万里馬をよこされてもどうしようもない」と嘆いているという。

    (参考記事:金正恩氏、日本を超えるタワーマンション建設…でもトイレ最悪で死者続出

    北朝鮮との病弊とも言うべき速度戦と手抜き工事だが、もし当局が「やめる」といい出したとしても、拝金主義、横行する横流しなどと複雑に絡まり合っていることもあり、すぐにはなくならないだろう。

    (参考記事:河原で500人死亡の地獄絵図…「速度戦」と呼ばれる殺人キャンペーン

  • 米朝合意で「日本が孤立する」は本当なのか

    米朝合意で「日本が孤立する」は本当なのか

    問われるのは「独自の力」

    昨年6月に続き2回目となる米朝首脳会談が、27~28日にベトナムで開催される。ここで米朝が何らかの合意に達し、米国が北朝鮮の非核化を待たずに制裁緩和を認めた場合、「制裁の旗を振ってきた日本は、孤立してしまうのではないか」との懸念が一部で出ている。

    少し前には、対北融和になる韓国に対する「パッシング(素通り)」が指摘されていた。

    (参考記事:日米の「韓国パッシング」は予想どおりの展開

    「最弱」の北朝鮮軍

    それが気付いてみたら、素通りされていたのは日本だった、という状況が現実に起こり得るのだろうか?

    結論から言えば、日本が外交的に「孤立」するような事態は絶対にないと筆者は考える。政治・経済・軍事的な日本の存在感は、そんなに小さなものではない。それは、北朝鮮も韓国もよくわかっている。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    ただ、米朝対話に向ける日本の政治家やメディアの目が、米国一辺倒で曇り過ぎているのではないかとは思う。

    米国は、北朝鮮の「完全な非核化」までは制裁を維持すると一貫して言ってきたし、現在も言い続けている。だがそれは、単なる米国が考えているだけのことだ。米国のパワーは偉大だが、世の中のすべてが彼らの思い通りに動いているわけではない。米国にも弱点があればミスもするし、妥協もする。米国と「歩調」を合わせていれば、良い結果がついてくるわけではない。米国は国益のためなら、時には北朝鮮とも韓国とも中国とも「歩調」を合わせるからだ。

    日本の「独力」で

    まさにその点を突かんとして、北朝鮮は核開発に賭けたわけだ。米国が万能ならば、北朝鮮に核開発を許してしまうこともなかっただろう。実際、金正恩党委員長の「核の暴走」を、指をくわえて見守り、核兵器の「完成」を許してしまった。そのあげくに話し合いの場に出てきたわけだから、対話の場で米国が北朝鮮を圧倒するなどと言うことは、そもそもない展開なのだ。

    そもそも論を言うならば、米国が掲げていた「CVID」――完全かつ検証可能で不可逆的な非核化――などというものは、ほとんど実現不可能な構想だ。特に「不可逆的」はあり得ない。どのような検証を行っても、北朝鮮には核開発のデータとノウハウは残ると見るべきだ。しかも同国には天然ウランがある。独裁体制が続き、最高指導者が「もう一度やるぞ」と決断すれば、いつでも核武装プログラムは再始動できる。

    金正恩氏は、非核化は約束したが、無条件降伏をしたわけでも武装解除にも応じたわけでもない。米国が、自国に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の廃棄を優先し、日本を射程に収める短・中距離弾道ミサイルは残ってしまうのではないか――日本国内には、これを懸念する声もある。

    しかし北朝鮮は、それぐらい残すのは当然だと考えているだろう。周辺の国々は、世界最強レベルの軍備を整えている。非核化後の自国の軍隊の貧弱さを考えたら、いざという時の「飛び道具」は残しておかなければ不安だ。

    (参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い

    日本は決して、東アジアで「軍縮」をリードしているわけではない。それは主権国家の権利だし、その行動にはそれなりの理由があるだろう。だが、それは北朝鮮も同じだ。

    (参考記事:「世界は日本を警戒すべき」…北朝鮮が「いずも」空母化に猛反発する理由

    結論を繰り返すが、米朝首脳会談でどのような合意が生まれようとも、日本が「孤立」するようなことは絶対にない。ただ、北朝鮮に弾道ミサイルを撤去させたり、拉致被害者を取り戻したりしたければ、それは米国に頼るのではなく、自分の力で実現させるしかないというだけのことだ。

  • 北朝鮮で超人気の就職先。理由は「銃殺されないから」

    北朝鮮で超人気の就職先。理由は「銃殺されないから」

    かつて、北朝鮮で人気のある就職先と言えば、人民保安省(警察庁)、国家保衛省(秘密警察)などの司法機関、朝鮮労働党などの権力機関だった。一般庶民が飢えに苦しんでいても、特別配給を得られ、権限を利用してワイロを搾り取るなど、オイシい思いができたからだ。しかし、ここ数年で事情が変わった。

    (参考記事:濡れ衣の女性に性暴行も…悪徳警察官「報復殺人」で70人死亡

    今、いちばん人気の就職先は合弁企業であると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

    咸鏡北道の情報筋によると、多くの人が合弁企業への就職、転職を希望しており、待機者リストに登録しても、就職できるのはその2〜3年後になるという。

    合弁企業と言ってもどこでもいいというわけではない。転職を希望する人々は、企業の業務内容、投資、今後の展望などを把握した上で、第一志望の企業に就職するためにワイロを渡したりありとあらゆる手段を動員する。

    別の情報筋によると、国営のアパレル工場や食品加工工場に務める労働者も、安定性が保証され賃金の高い合弁企業に転職しようとするという。また、貿易会社直営の工場も人気で、数百人待ちだとのことだ。

    「ワイロを出せば不可能なものはないので、転職が流行している。一部の合弁企業は、従業員にコメ100キロと月給300元(約4900円)を支給している。保安員(警察官)ですら辞職して合弁企業に入ろうとする」(情報筋)

    人々が合弁企業に殺到するのは、一般的な労働者の月給4000北朝鮮ウォン(約52円)をはるかに超える月給だけではない。

    当局は、国家的建設事業の建設や政治集会などの名目で、一般労働者を動員する。国営企業の工場は電気や原材料が不足して稼働していないため、労働力を駆り出すには格好の場となっている。

    一方で合弁企業勤務ならそれらの動員に行くことはあまりない。会社が当局にワイロを掴ませ、従業員の動員を免除させるからだ。国営企業と異なり合弁企業の工場はよほどのことがない限りは稼働を続けているため、従業員に頻繁に留守にされると困るのだ。

    これが従業員の満足度を非常に高めているという。建設現場への動員は長期間に渡り、命を落とすことすらあるので、誰も行きたがらないのだ。

    (参考記事:【再現ルポ】北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図

    かつては花形の職場だった司法機関など国の機関の人気はジリ貧だ。頻繁な検閲(監査)、無差別な粛清、更迭で、いつ命を落とすかわからないからだ。「今ほど、人々が自分の職業について深刻に考えたことはなかった」(情報筋)ほどだという。

    (参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導

    北朝鮮は個人の生活を充実させることよりも、国や労働党、そして最高指導者のために何ができるかを求められるお国柄だ。就職は、本人の希望より当局の都合が優先され、勝手に割り振られるものだった。嫌な職場であってもしがみつくしかなかった。国営企業や国の機関に所属せずにいれば「無職」として処罰の対象となり、食糧や住宅配給も受け取れなかったからだ。

    しかし、北朝鮮の人々は何もしてくれない国や最高指導者に忠誠を尽くすのではなく、自分がいかに豊かになるかを重要視するようになった。とりわけ、チャンマダン(市場)世代と呼ばれる若者たちにそのような傾向が強い。

    様々な形の動員で国を維持してきた北朝鮮だが、なし崩し的に進む動員力の低下に国のシステムの再構築は避けられないだろう。

    (参考記事:北朝鮮の思想教育、出席率悪すぎで関係者やきもき

  • 「破局的な結果を考えてみろ」北朝鮮、また韓国にブチ切れ

    「破局的な結果を考えてみろ」北朝鮮、また韓国にブチ切れ

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信は8日、韓国が南北対話を進める一方で軍備を増強していることについて「二重的振る舞いは許されない」とする論評を配信した。この問題を巡っては、すでに他の主要メディアも「(韓国が)下心をさらけ出した」(労働新聞6日付)、「破局的結果について熟考すべき」(民主朝鮮7日付)などとする論評を掲載している。北朝鮮はどうやら、「非核化後」の北東アジアにおける軍事バランスを痛く気にしているようだ。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    本欄でも繰り返し指摘してきたことだが、現在の朝鮮人民軍(北朝鮮軍)に、本格的な戦争を戦う力はない。ベトナムや中東の戦場にまで派兵し、米軍やイスラエル軍と死闘を繰り広げたのも今は昔の話である。

    (参考記事:米軍機26機を撃墜した「北の戦闘機乗りたち」

    だからこそ、北朝鮮は核兵器開発に賭けてきたわけだが、近くベトナムで行われる2回目の米朝首脳会談では、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や一部の核・ミサイル施設の廃棄で合意が成立するのではないかと見られている。仮にそれが履行されれば、北朝鮮は改めて北東アジアの「最弱国」が確定してしまうわけだ。

    (参考記事:金正恩氏の「ポンコツ軍隊」は世界で3番目に弱い

    そのような環境の中、北朝鮮が韓国の軍備増強に神経を尖らせるのは当然と言えば当然だ。そもそも、両国は対話を進めてはいるが、それはあくまでいくつかの「タブー」に目をつぶりながらのものでしかない。韓国に対する北朝鮮の不信感は、決して消えていないのだ。

    (参考記事:「韓国は正気なのか!?」文在寅政権に北朝鮮から非難

    もちろん、北朝鮮が警戒しているのは韓国だけではない。軍事力の面で言えば、日本の方がよほど気になる存在だろう。

    だから北朝鮮は米朝首脳会談においても、ICBM以外の中・短距離弾道ミサイルの廃棄には頑強に抵抗するかもしれない。ほかにも特殊部隊やサイバー部隊など、「虎の子」と呼べる戦力が残っているとはいえ、海の向こうの国に目に見える脅威を与えられるのは、やはり弾道ミサイルだろう。

    非核化の行方とともに、日本の安全保障に大きく影響する問題と言える。

  • 大学生も住民も「死にそう」…北朝鮮の酷寒「超ブラック事業」

    大学生も住民も「死にそう」…北朝鮮の酷寒「超ブラック事業」

    戦中の日本では、様々な日用品を「慰問袋」と呼ばれる袋に詰めて、戦地に出征した兵士あてに送っていた。新聞社がキャンペーンを行い、食品会社が販促活動の一環として利用するものだったが、戦争が激化するにつれ強制性が高まっていった。慰問袋とは別に、コメ、金属、家で飼っていたペットの供出も行われた。

    当時、日本の植民地支配下にあった朝鮮でも同様のことが行われていたのだが、その名残だろうか。北朝鮮当局は、国家的建設事業に従事する労働者に送る支援物資と称して、国民から半強制的に様々な物品を徴収している。

    両江道(リャンガンド)の内部情報筋によると、最近の政治講演会は「三池淵(サムジヨン)の開発工事を物心両面で支援しよう」とする内容が増えたという。

    金正恩氏は今、北朝鮮で「革命の聖地」として知られる三池淵群郡の観光開発プロジェクトを最重視していると見られる。しかし、こうした事業の建設現場の安全対策は劣悪で、深刻な事故が後を絶たない。

    (参考記事:【再現ルポ】北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図

    特に、冬の三池淵は氷点下20度を下回り、極寒の建設現場での工事は危険が伴う。健康だった若者が病気になって、故郷にたどり着く前に命を落とすという悲劇も起きている。

    (参考記事:氷点下20度の野外でタダ働き、若者の命を奪う「ブラックな現場」

    それでいて、国家による支援体制も十分でないから、その負担が国民に向かうというわけだ。

    各地の朝鮮労働党の幹部は政治講演会の内容に基づき、「三池淵の建設に動員された大学生の食料を支援せよ」と住民から食べ物を供出させている。内訳は、1世帯あたり大豆200グラム、トウモロコシ500グラム、コチュジャン1キロ、キムチ1キロ、手袋5対だ。

    すべて市場で買い集めても数百円程度だが、その日暮らしをしている庶民が「死にそうだ」とぼやくのは無理もない。

    動員された大学生の苦労もハンパではない。

    北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は先月14日、金日成総合大学、金策(キムチェク)工業大学、元山(ウォンサン)農業総合大学など全国の大学生が三池淵の建設現場に向かったと報じた。

    記事は「数多くの青年大学生たちが自らの精神的故郷を守り輝かしめるという一心で胸を熱くたぎらせ、熱烈に嘆願した」と報じているが、実際は「冬休みに入った学生を集めて、三池淵建設の重要性を説いた上で(建設工事の支援に)参加するかどうかを確認した」(情報筋)という。つまり、「イヤだ」とは言えない状況に追い込んで半強制的に約束を取り付けたということだ。

    多くの大学生が、学費や学用品、生活費を稼ぐためにアルバイトをしているが、長期間の動員でそれも難しいだろう。つまり、次の学期は食うや食わずのキャンパスライフを過ごすはめになるということだ。

    (参考記事:北朝鮮の大学生は「妊娠中絶ビジネス」も…若者は思想よりカネ