カテゴリー: 北朝鮮

  • 「肛門のない赤ちゃんが生まれた」北朝鮮核開発、被ばく労働の恐怖

    北朝鮮の相次ぐ核実験によって、実験場付近の住民が放射能汚染に侵されている可能性が指摘されている。9日付の毎日新聞は、北朝鮮の地下核実験場がある咸鏡北道(ハムギョンブクト)吉州(キルチュ)郡豊渓里(プンゲリ)付近に住んでいた脱北者2人に、染色体異常が生じているという調査結果を報じた。

    政治犯に強要

    金正恩党委員長が最高指導者になってから、北朝鮮は4回の核実験を強行した。とりわけ2016年から2017年の2年間には、3回もの核実験が行われている。実験は地下で行われたが、放射能による土壌汚染が進み核実験場付近に住む人々が何らかの悪影響を受けている可能性は十分にある。

    毎日新聞によると、染色体異常の調査結果は、韓国の研究者が収集したデータを日本の広島の専門家が確認して判明したものだという。

  • 「日本は百年の宿敵、中国は千年の宿敵」北朝鮮で反中感情

    北朝鮮当局は昨年末、全国各地で朝鮮民主女性同盟の会議を開催した。その場で飛び出したのは、中国に対する憎悪を煽る発言だった。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

    咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、昨年12月に政府の指示で清津(チョンジン)市の各洞(町)で女性同盟の会議が開かれた。続いて行われた政治学習では、国内外の情勢に関する講演会が開催された。

    壇上に上がった松坪(ソンピョン)区域の女性同盟幹部は「日本は百年の宿敵、中国は千年の宿敵」という表現を使い、中国への警戒心を高めるよう聴衆に求めた。この過激発言に会場からはどよめきが起きたという。

    現在の北朝鮮では、ほとんどの市民が中国製品を中国人民元で売り買いして生計を立てている。しかし北朝鮮当局には、生活苦による不満が自分たちに向かうのを避けるため、人々の目を外部に向けようとしているようだと情報筋は語った。

  • 【画像】遊園地を訪れた李雪主氏


    綾羅人民遊園地の竣工式に訪れた金正恩・李雪主夫妻(2012年7月26日付労働新聞より)
    【動画】金正恩夫妻とロッドマン
    李雪主カットが流行したことは、北朝鮮でアイドルグループ「モランボン楽団」のメンバーのヘアスタイルからもわかる(写真)。デイリーNKが行ったイマドキ10代のインタビューでも「李雪主氏の影響でショートカットは人気」という話が出た。
    李雪主氏は、2014年の夏頃から徐々に髪の毛を伸ばし始めた(写真)。2016年2月に錦繍山(クムスサン)太陽宮殿を参拝した時の写真からは、成熟した「国母」のイメージを目指していることが感じられる(写真)

  • 【写真特集】李雪主――金正恩氏の美貌の妻

    李雪主氏といえば、2012年に初登場して以来、それまでの北朝鮮ではあまり見られなかったスタイリッシュなショートカットと色鮮やかなモダンな装いで、平壌女性たちを魅了。北朝鮮のファッションシーンをリードしてきた。
    【画像】遊園地を訪れた李雪主氏
    【動画】金正恩夫妻とロッドマン
    李雪主カットが流行したことは、北朝鮮でアイドルグループ「モランボン楽団」のメンバーのヘアスタイルからもわかる(写真)。デイリーNKが行ったイマドキ10代のインタビューでも「李雪主氏の影響でショートカットは人気」という話が出た。
    李雪主氏は、2014年の夏頃から徐々に髪の毛を伸ばし始めた(写真)。2016年2月に錦繍山(クムスサン)太陽宮殿を参拝した時の写真からは、成熟した「国母」のイメージを目指していることが感じられる(写真)
    【画像】閲兵式に参加した李雪主氏

  • 金正恩氏が意のままにする「美人妻利権」の現場写真

    1989年生まれとされる李雪主氏は、一般家庭の出身とされる。彼女が卒業した金星学院はエリート校ではあるが、女学生たちは時々「いやな仕事」を押し付けられたりもする。
    (参考記事:北朝鮮「秘密パーティーのコンパニオン」に動員される女学生たちの涙

    北朝鮮と韓国は9日、板門店で高位級会談を行う。2月9日から始まる平昌冬季五輪に北朝鮮代表団が参加するための実務問題が議題の中心になると見られる。金正恩党委員長は1日、施政方針演説「新年の辞」で、南北関係改善の前提として韓国にとってかなり厳しい条件を提示したが、とりあえず、今回の五輪には参加しそうな雰囲気だ。

    仮に北朝鮮が冬季五輪に参加する場合、気になるのが「美女応援団」を韓国に送るかどうかだ。北朝鮮は、美女応援団の韓国に対する宣伝効果を熟知していると見られ、すでに送り込むことを検討しているかもしれない。

    美女応援団と聞いてすぐに思い浮かぶのが、金正恩氏の美貌の妻で、何かと噂の的になってきた李雪主(リ・ソルチュ)氏だ。
    (参考記事:金正恩氏「美貌の妻」の「異性問題」で殺された北朝鮮の芸術家たち

  • 美人タレントを「全身ギプス」で固めて連れ去った金正恩氏の目的

    韓国で「脱北美女」タレントとして活動していたイム・ジヒョンさんが突然消息を絶ち、昨年7月に北朝鮮の対外向けプロパガンダメディア「わが民族同士」に登場したことで、韓国社会には波紋が広がった。

    彼女がいかにして北朝鮮に戻ったかは、未だミステリーのままだ。脱北して中国に潜伏していた当時、生き伸びるために出演したアダルトビデオチャット映像が流出したことなどを苦に、自主的に帰国したという見方がある一方で、北朝鮮の諜報機関に拉致されたという見方もある。

    この件について、李潤傑(イ・ユンゴル)北朝鮮戦略情報センター代表は、韓国のタブロイド紙・日曜新聞への寄稿文で、複数の情報筋の証言から彼女が拉致されたことを確認したと述べている。

    非公然組織のアジト

    李氏が、「拉致の過程についてよく知っている」という北朝鮮国内の関係者から聞いた話によると、イムさんは今年4月、中国遼寧省瀋陽の七宝山ホテルに入った。

  • 「炎で焼かれる兵士の動画」も…金正恩氏の危ない話

    北朝鮮の金正恩党委員長は1月1日、施政方針演説に当たる「新年の辞」の中で、次のように述べている。

    「まさに1年前、私はこの席で党と政府を代表して、大陸間弾道ロケット試験発射の準備が最終段階で推進されているということを公表し、この1年間、その履行のための数次にわたる試験発射を安全かつ透明に行って確固たる成功を全世界に証明しました」

    たしかに、北朝鮮が数次にわたるミサイル試射を成功させ、金正恩氏が1年前に語った言葉を証明して見せたのは事実だ。しかし1点、引っかかる部分がある。試射が「安全」に行われたとした言葉だ。

    北朝鮮が過去に実施したミサイル発射実験においては、事故が多発していた様子が観測されている。(問題場面の画像
    (参考記事:【画像】「炎に包まれる兵士」北朝鮮 、ICBM発射で死亡事故か…米メディア報道

  • 金正恩氏の新年の辞「平昌に参加も」表明はワナである

    北朝鮮の金正恩党委員長はどうやら、韓国の文在寅政権のことを「やりやすい相手」と見ているようだ。理由は色々ありそうだが、文在寅大統領が北朝鮮の人権侵害についてうるさく言わないのは、金正恩氏にとって重要なポイントだろう。

    なぜなら北朝鮮の核・ミサイルの暴走の裏には、国際社会から人権侵害を追及されている問題があるからだ。

    (参考記事:北朝鮮「核の暴走」の裏に拷問・性的暴行・公開処刑

    文氏はもともと人権派弁護士であるにも関わらず、彼の率いる政権は、北朝鮮の人権問題追及に非常に慎重なのである。

  • 昨日の処刑人が、今日は罪人に…北朝鮮の権力中枢「一寸先は闇」

    2017年の北朝鮮を振り返る(6)

    北朝鮮は今年、米国からの軍事的圧力と国連安保理による経済制裁を受けながら、核実験を1回、長距離弾道ミサイルの発射実験を3回、中距離弾道ミサイルの発射実験を2回行った。強硬姿勢を貫いた金正恩党委員長は、自信を深めているかもしれない。

    一方で、北朝鮮の内政には異変が感知されている。最近になり、黄炳瑞(ファン・ビョンソ)朝鮮人民軍(北朝鮮軍)総政治局長と金元弘(キム・ウォノン)同第1副局長が粛清されたとされているのだ。

    「ポルノ撮影」の情報

    この情報は11月、韓国の情報機関・国家情報院(国情院)によって明らかにされた。国情院は、朝鮮労働党組織指導部が朝鮮人民軍総政治局に対して20年ぶりとなる検閲を進め、その過程で黄氏と金氏など相当数の幹部が処罰されたもようだと述べた。

  • 【写真】仲の良さそうな金正恩氏と与正氏の兄妹

    朝鮮少年団第8回大会参加者から花束を受け取る金正恩氏。右端が金与正氏。(2017年6月8日付朝鮮中央通信より)
    朝鮮少年団第8回大会参加者から花束を受け取る金正恩氏。右端が金与正氏。(2017年6月8日付朝鮮中央通信より)

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信は22日、朝鮮労働党の末端組織の幹部を集めた「第5回党細胞委員長大会」の写真を多数配信。そのうちの数枚に、金正恩党委員長の実妹・金与正(キム・ヨジョン)氏の姿が映っている(写真)

    過去のこうした催しでは、与正氏が裏方として動いたり(写真)、客席に座ったりしていた。しかし今回の写真で初めて、与正氏が壇上の最前列に座っている姿が確認された。

    与正氏は兄の視察に頻繁に同行。労働新聞の写真などを見ると、与正氏はいつも明るい笑顔を浮かべており、いかにも仲の良さそうな兄妹だ(上の写真)。

    また、その自然体の表情は、「話の通じる人物なのではないか」との期待を、一部の北朝鮮ウォッチャーに抱かせていたりもする。

    与正氏は実際、かつて学生時代の友人らが些細な言動のために「大量失踪」した際には、ショックを受け深く傷ついたとされる。

    (参考記事:金正恩氏実妹・与正氏の同級生がナゾの集団失踪

    与正氏は、2016年5月の党中央委員会第7期第1回総会(全体会議)で党中央委員となり、今年10月の同第2回総会では政治局委員候補に選任された(写真)

    また、与正氏は党中央委員会副部長の肩書を持っている。北朝鮮の党副部長は、日本で言えば中央省庁の局長から次官クラスに当たる高級官僚だ。

  • 【写真】兄の金正恩氏を補佐する金与正氏

    行事で金正恩氏を補佐する妹の金与正氏
    行事で金正恩氏を補佐する妹の金与正氏

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信は22日、朝鮮労働党の末端組織の幹部を集めた「第5回党細胞委員長大会」の写真を多数配信。そのうちの数枚に、金正恩党委員長の実妹・金与正(キム・ヨジョン)氏の姿が映っている(写真)

    過去のこうした催しでは、与正氏が裏方として動いたり(上の写真)、客席に座ったりしていた。今回の写真で初めて、与正氏が壇上の最前列に座っている姿が確認された。

    与正氏は兄の視察に頻繁に同行。労働新聞の写真などを見ると、与正氏はいつも明るい笑顔を浮かべており、いかにも仲の良さそうな兄妹だ。

    また、その自然体の表情は、「話の通じる人物なのではないか」との期待を、一部の北朝鮮ウォッチャーに抱かせていたりもする。

    与正氏は実際、かつて学生時代の友人らが些細な言動のために「大量失踪」した際には、ショックを受け深く傷ついたとされる。

    (参考記事:金正恩氏実妹・与正氏の同級生がナゾの集団失踪

    与正氏は、2016年5月の党中央委員会第7期第1回総会(全体会議)で党中央委員となり、今年10月の同第2回総会では政治局委員候補に選任された(写真)

    また、与正氏は党中央委員会副部長の肩書を持っている。北朝鮮の党副部長は、日本で言えば中央省庁の局長から次官クラスに当たる高級官僚だ。

  • 【写真】金与正氏の存在感が増している…正恩氏の実妹

    朝鮮労働党第5回細胞委員長大会。金正恩氏(中央)の左5人目が金与正氏(2017年12月22日付朝鮮中央通信より)
    朝鮮労働党第5回細胞委員長大会。金正恩氏(中央)の左5人目が金与正氏(2017年12月22日付朝鮮中央通信より)

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信は22日、朝鮮労働党の末端組織の幹部を集めた「第5回党細胞委員長大会」の写真を多数配信。そのうちの数枚に、金正恩党委員長の実妹・金与正(キム・ヨジョン)氏の姿が映っている(上の写真)。

    過去のこうした催しでは、与正氏が裏方として動いたり(写真)、客席に座ったりしていた。今回の写真で初めて、与正氏が壇上の最前列に座っている姿が確認された。

    与正氏は兄の視察に頻繁に同行。労働新聞の写真などを見ると、与正氏はいつも明るい笑顔を浮かべており、いかにも仲の良さそうな兄妹だ(写真)

    また、その自然体の表情は、「話の通じる人物なのではないか」との期待を、一部の北朝鮮ウォッチャーに抱かせていたりもする。

  • 韓国アイドルの「遺書全文」公開。朝日新聞はどうかしている

    韓国の男性アイドルグループSHINee(シャイニー)のメンバー、ジョンヒョンさん(27)が18日、死亡した。遺体がみつかった宿泊施設の室内からは練炭が見つかっており、自殺したと見られる。

    これを受けて、朝日新聞が19日、ジョンヒョンさんの遺書全文を和訳して公開した。筆者はこれに、強い違和感と胸騒ぎを覚える。

    同紙によれば、遺書はジョンヒョンさんの「知人の韓国人歌手が画像投稿SNS『インスタグラム』で、『遺族と相談した結果』として公表した」ものだという。それならば新聞が載せずとも、遺書はジョンヒョンさんを偲ぶ人々の間で広く読まれることになったはずだ。翻訳も、語学力のあるファンの手で素早く行われたことだろう。

    それなのに、新聞がわざわざこれを公開する意味はどこにあるのか。

  • 金正恩氏「叔父殺し」の裏で動いた2人の女性

    北朝鮮「女人天下」の知られざる深奥(4)

    4年前の12月12日、北朝鮮の金正恩党委員長の叔父・張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長が「国家転覆陰謀の極悪な犯罪を働いた」として処刑された。金正日総書記の妹・金慶喜(キム・ギョンヒ)氏の夫で、金正恩体制の後見人のひとりと目された張氏が殺されたのは、大きな驚きだった。

    張氏が殺された背景については、今も謎が残る。北朝鮮国内で張氏の支持勢力が伸長していたのを金正恩氏が危険視し、側近グループを動かして粛清に及んだというのが大方の見方だ。また、張氏が中国と親密であったことも、理由のひとつになったと考えられている。

    これらは北朝鮮の公式報道が示唆している内容でもあり、分析としては正しいものと言えるだろう。しかし、一時は北朝鮮で「実力ナンバー2」とさえ言われた張氏を除去するのは、簡単なことではなかったはずだ。下手に動けば、狙った側が張氏にやられてしまう。張氏もまた、自分の政敵を冷酷に抹殺してきた人物だからだ。

    (参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認

    7人もの愛人と

    ならば、張氏の粛清は誰がいつ、何がきっかけで決断し、どのように計画され実行されたのか――これらはいまだ詳らかになっていない。

    しかし一部には、その経過についてなかなか具体的なレポートを発表している専門家もいる。推測も交えたもので裏付けが取り切れているとは言えないが、興味を引く内容ではある。

    脱北者で平壌中枢の人事情報に精通する李潤傑(イ・ユンゴル)北朝鮮戦略情報センター代表によれば、張氏の除去を決断したのは金正日氏だったという。

    同氏は2008年8月に脳卒中で倒れるが、回復して見ると、自分が病床に伏している間に張氏の人脈が朝鮮労働党内で立場を強めていることに気づいた。とくに内政と人事のいっさいを掌握する党組織指導部に対する浸食が激しく、2010年には李済剛(リ・ジェガン)、李容哲(リ・ヨンチョル)という党組織指導部の2人の第一副部長が相次いで亡くなった。この2人は、張氏の派閥による暗殺説が根強く囁かれている。

    それでも、金正日氏もすぐには張氏の除去を決断できなかった。若年の金正恩氏がある程度、権力継承を終えるまでは、経験豊かな張氏の後見が必要だったからだ。

    そして、自分の死期が迫っていることを感じていた金正日氏は、ごく少数の人間に張氏の監視を命じた――。

    これが、李氏が主張する「張氏粛清の内幕」の概要である。ちなみに金正日氏が張氏の監視を命じた人物とは、ひとりは池在龍(チ・ジェリョン)駐中国大使、もうひとりは自身の次女である金雪松(キム・ソルソン)氏である。

    池氏は張氏の腹心中の腹心と言われた人物だ。それにもかかわらず、張氏の粛清後も現職にとどまっていることで、「金正恩氏に張氏を売った」との説が根強く囁かれている。たしかに、池氏の中国赴任は2010年であり、李氏の主張と時期的には符合する。

    一方、デイリーNKジャパンは先日、李氏の協力を得て金雪松氏の写真を世界で初めて公開するとともに、彼女が党組織指導部の幹部としてキャリアを重ねてきた事実を伝えた。父親の秘書役も兼ねていたとされる彼女ならば、張氏の動向を監視し、父親に報告を上げるには適任だっただろう。もしかしたら、張氏の不穏な動きを父親に伝えたのは彼女だったのではないか。

    (参考記事:金正恩氏の「美貌の姉」の素顔…画像を世界初公開

    そして、張氏粛清を巡って残るもうひとつの謎は、妻である金慶喜氏がどのような立場を取ったかだ。金慶喜氏は2012年4月に開かれた党第4回代表者会で組織担当書記に就任している。李氏によれば、彼女はこのとき党組織指導部長も兼務していたという。事実であれば、彼女の裁可なしに張氏粛清の実行は考えられない。これについて李氏は、次のように説明している。

    「もともと病苦の中にあった金慶喜氏は2013年初め、体調が著しく悪化します。しかしそのとき、張氏は一度も妻を見舞わず7人もの愛人と享楽にふけっていた。それが金慶喜氏にも報告され、彼女を激怒させたのです」

    北朝鮮の男性権力者たちの身勝手は今に始まったことではない。ただ、この話が事実なら、張氏にそもそも北朝鮮を引っ張る実力があったかどうか、疑わしくなる。

    (参考記事:機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇

    いずれにしても、張氏粛清で金慶喜氏や金雪松氏が一定以上の役割を果たしたことは確かだろう。また、張氏粛清なくして、金正恩氏が現在のような独裁権力を手にすることはなかったように思われる。

    そう考えてみると、金正恩体制においてこの2人の女性の存在感は、相当に大きかったことがわかるのだ。(了)

  • 金正恩氏も認めた核ミサイル開発の「欠陥と教訓」とは何か

    北朝鮮では11~12日の2日間にわたり、「第8回軍需工業大会」が開かれた。過去の北朝鮮メディアの報道を見た限りでは、軍需工業大会開催の情報が明らかにされたのはこれが初めてだ。北朝鮮メディアの報道を分析したところ、いくつか気になる点がある。

    まず、北朝鮮はなぜ、今大会の情報を公開したのだろうか。その目的は、金正恩氏による核・ミサイル開発の成果を強調し、今後も継続していく意志を国内外に強くアピールするためだろう。

    現場では事故多発

    そして気になったのは、大会に本来なら参加していて当然の2人の人物が見えなかった。その人物とは黄炳瑞(ファン・ビョンソ)軍総政治局長と、金元弘(キム・ウォノン)同第一副局長だ。いずれも朝鮮労働党中央軍事委員会のメンバーとされており、大会のひな壇に座ってもおかしくない。

    この2人については粛清説が伝えられている。現時点で真偽は不明だが、大会に欠席したのは粛正説を裏付ける一つの材料といえるだろう。

    (関連記事:北朝鮮で「大量粛清」の懸念…「軍幹部を追放、収容所送りも」韓国紙報道

    金正恩党委員長は今大会で「国家核戦力の完成」を宣言した。米国を攻撃することが可能な核兵器の開発に成功したということだ。これについては「なお課題を残している」との指摘があるが、北朝鮮のミサイル技術が日増しに進歩していることは間違いない。

    特に2017年は、核実験を1回、長距離弾道ミサイルの発射実験を3回、中距離弾道ミサイルの発射実験を2回強行するなど、核兵器開発のスピードを加速させた。

    その一方、大会を報じた朝鮮中央通信の記事には、次のような一文がある。

     

    「欠陥と教訓」とは一体、何を指すのか。素直に読めば、核ミサイル開発においてまだまだ解決すべき課題があるという意味に思える。米国のマティス国防長官も、北朝鮮が先月29日に発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」型は、今すぐ脅威にはならないと見ているとの分析を明らかにしている。

    それとも現場の技術部門に対して、より高いレベルの核開発を進めることを促す意味合いかもしれない。北朝鮮がこのような表現を使う場合、思想的な問題を指していることが少なくない。核ミサイル開発の現場にいる科学者たちは、合理的思考の持ち主であるはずだ。だからこそ、たとえば「現在の条件下では、達成可能なのはここまでだ」という判断を下すこともあるだろう。

    しかし北朝鮮の体制は、そのような考え方を「敗北主義」として排撃する。その上で現場に「思想戦」を求め、無理難題をふっかけるのだ。そのようなやり方が「成果」につながることもあるが、それと引き換えに、現場は様々な犠牲を強いられることになる。実際、北朝鮮のミサイル開発の現場では、事故が多発している様子が観測されている。

    (参考記事:「炎で焼かれる兵士」映像も…北朝鮮、ミサイル発射実験で事故多発

    そして、「欠陥と教訓」の「教訓」がどのようなものであるかと言えば、このような犠牲さえ甘受すれば、どのような課題も達成できるとする考え方のことであろう。

    どんなに苦しく、どんな犠牲を払おうとも核兵器開発を完成させる――軍需工業大会の報道で言い表されたのは、まさにこのことではなかろうか。

  • 【画像】「炎に包まれる兵士」北朝鮮 、ICBM発射で死亡事故か…米メディア報道

    【画像】「炎に包まれる兵士」北朝鮮 、ICBM発射で死亡事故か…米メディア報道

    北朝鮮の独裁体制においては、核・ミサイル実験に対する国際社会の経済制裁がいかに容赦なくとも、金正恩氏ら支配層が最終的に損失を負うことはない。そういった損失はすべて大衆に押し付けられるからだ。

    エンジンの火炎に焼かれ

    それは、核・ミサイル開発の現場にいる軍人たちも同じだ。北朝鮮が最近、実施したミサイル発射実験においては、事故が多発していた様子が観測されている。

    北朝鮮が先月29日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」型を発射した際、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士と思しき人物が、エンジンから噴出された火炎に焼かれて死亡したとの情報が出ている。しかも北朝鮮が公開した映像に、その場面が映っていたという。

  • 金正恩氏の「美貌の姉」の素顔…画像を世界初公開

    北朝鮮「女人天下」の知られざる深奥(3)

    北朝鮮の朝鮮労働党は、10月7日に開いた党中央委員会第7期第2回総会で、金正恩党委員長の妹である金与正(キム・ヨジョン)氏を党中央委員会政治局委員候補に選出した。金与正氏は、正恩氏の現地視察に同行する姿が北朝鮮の公式メディアにより写真や動画で伝えられており、今後、兄の国家運営の補佐役となっていくことが予想されていた。政治局委員候補への選出は、その見方を裏付けるものと言える。
    父である故金正日総書記を、妹の金慶喜(キム・ギョンヒ)元党書記が支えたのと同じ構図である。

    似顔絵でわかる顔立ち

    一方、金正日氏は妹に当てた遺書で「金雪松(キム・ソルソン)を正恩の幇助者(助言者)として準備させ後押しするように」と指示していたとされる。正恩氏の異母姉・金雪松氏が長らく父の秘書役となり、権力中枢で党官僚としての経験を積んできたのは、これまでに述べたとおりだ。(金雪松氏の写真)

    (参考記事:謎の長身美女「金雪松」のすべて

    ただそれでいて、金雪松氏はこれまで一度も北朝鮮の公式メディアに登場していない。金正日氏のロシア訪問時に随行したと言われているが、そのような限られた機会を除き、外国人が金雪松氏と接することはなかったと思われる。つまり、我々はほとんど誰も、金雪松氏の顔を知らないのだ。

    しかし、デイリーNKジャパンは今回、金雪松氏である可能性の極めて高い女性の写真を入手した。提供してくれたのは、脱北者で平壌中枢の人事情報に精通する李潤傑(イ・ユンゴル)北朝鮮戦略情報センター代表である。李氏はこの写真について、次のように説明する。(金雪松氏の写真)

  • 金雪松氏の写真

    赤く囲んだ女性が金雪松氏。隣が金玉氏(提供:李潤傑氏)
    赤く囲んだ女性が金雪松氏。隣が金玉氏(提供:李潤傑氏)

    「これは、金正日が死亡した2011年12月、遺体が安置された錦繍山記念宮殿(当時。現在の名称は錦繍山太陽宮殿)を党の高位幹部らが弔問した際の映像のキャプチャ画像です。一般には公開されておらず、幹部たちだけが見ることのできる記録映画として制作された映像を、北朝鮮国内の協力者から入手しました。ここに写っている右端の女性(赤い囲み)が金雪松です」

    「写真右端から2人目の女性(青い囲み)は、金正日の5人目の妻であったとされる金玉(キム・オク)です。彼女の顔は広く知られており、容易に確認することができます。さらに、彼女らと一緒に整列した幹部たちの中に、海外でも良く知られた人物の顔を見つけることができます(画像)。 1人は党組織指導部第1副部長の金京玉(キム・ギョンオク)、もう1人は李スヨン駐スイス大使(当時)です。金京玉はこのとき、北朝鮮の官僚機構の頂点にいた人物で、映像でも弔問を取り仕切っていた様子がわかります。また、李スヨンはその後、外相を経て党副委員長にまで上り詰めました。つまり、ここに揃った面々は文字通り、北朝鮮の最高幹部たちであるということです。 そして、その中にたった1人だけいる若い女性は誰なのか。しかも、金正日の妻だった金玉の隣に立っている。この状況で、この位置を占められる若い女性と言えば、金一族の一員であり、党幹部として活動していた金雪松以外には考えられません」

    (北朝鮮戦略情報センター(NKSIS)の李潤傑代表)

  • 金正恩氏「脱北兵士の射殺」を命令…亡命事件後、異例の早さで

    北朝鮮の金正恩党委員長が、先月13日に板門店で発生した兵士亡命事件を受け、「祖国に背を向けて逃れる者を見つけたら、即時射殺せよ」との指示を下したという。

    両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によれば、金正恩氏は事件発生から10日後となる先月23日、中国との国境を守る国境警備指令部にこのような指示を下した。その中で金正恩氏は、亡命事件にも言及。「国境地域全体が最前線である」「国境を鉄の城壁のように固く守らねばならない」と強調。加えて上記のとおり、「射殺命令」を下したという。

    金正恩氏が、兵士亡命からわずか10日後に事件に言及するのは、北朝鮮としては異例だ。北朝鮮当局は通常、このような事件を国民から徹底的に隠す。事実、北朝鮮メディアは同事件について、これまでまったく言及していない。

    そうした前例を破って金正恩氏が事件に言及したのは、隠してもいずれ知られてしまうと判断したものと思われる。韓国で放映された事件のニュース映像は、まず間違いなく、北朝鮮国内に秘密裏に持ち込まれる。そして、それを見た北朝鮮国民は、極めて大きな衝撃を受けるはずだ。

    (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

    とくに、国境を守る兵士たちは、外部情報との接触が早い。「それならば」と、先に事件に言及した上で射殺命令を下し、軍に緊張感を与えようと考えたのかもしれない。

    ただ、命令を受けた兵士たちが、逃げる同僚を本当に撃つかどうかは微妙だ。朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士たちは、ろくに食糧も供給されないなど、きわめて粗末に扱われている。軍紀の乱れ方もハンパではない。上層部の命令を、どれだけマジメに受け入れるか。ただ、やらなければ自分が危ないと判断すれば、ためらいなく引き金を引くかもしれない。

    (参考記事:必死の医療陣、巨大な寄生虫…亡命兵士「手術動画」が北朝鮮国民に与える衝撃

    いずれにしても、軍紀の立て直しは北朝鮮にとって大問題だ。2015年には、北朝鮮が軍事境界線に埋設した対人地雷に韓国軍兵士が接触、身体を吹き飛ばされる重傷を負い、南北間の軍事的緊張が高まった。

    (参考記事:【動画】吹き飛ぶ韓国軍兵士…北朝鮮の地雷が爆発する瞬間

    しかしこのとき、北朝鮮が地雷を仕掛けたのは、韓国軍を狙ったのではなく自軍兵士の脱北防止のためだった可能性が高い。

    おそらく今後も、北朝鮮兵士の亡命はなくならないだろう。その現場で何が起きるかによって、誰も予想していない大事件につながる可能性は、決して小さくはないのだ。

  • 金雪松氏と一緒に写っている北朝鮮の最高幹部たち

    白い囲みの中の人物が金京玉氏、黄色い囲みの中が李洙墉氏(提供:李潤傑氏)
    白い囲みの中の人物が金京玉氏、黄色い囲みの中が李洙墉氏(提供:李潤傑氏)

     

    上の写真は、金雪松氏が映っている同じ映像の、逆側から撮られた場面。

    「党組織指導部第1副部長の金京玉(キム・ギョンオク)はこのとき、北朝鮮の官僚機構の頂点にいた人物で、映像でも弔問を取り仕切っていた様子がわかります。また、当時は駐スイス大使だった李スヨンはその後、外相を経て党副委員長にまで上り詰めました。つまり、ここに揃った面々は文字通り、北朝鮮の最高幹部たちであるということです」(北朝鮮戦略情報センター(NKSIS)の李潤傑代表)

  • 悪徳警官に暴行され…それでも戦う北朝鮮女性

    日本ではさほど注目されないが、国際社会は核・ミサイル開発と並び、北朝鮮における著しい人権侵害を批判し、変化を促すために様々な施策を行っている。その成果によるものか、北朝鮮国民の間に人権意識が芽生えつつあり、当局の横暴に対抗する重要な武器となっている。

    北朝鮮国内の内部情報筋から寄せられた、ある事件に関する情報からは、そのような意識の変化が読み取れる。

    咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)に住むチェさんは、デイリーNKに2011年5月に平壌で起きた事件の顛末を伝えた。

    咸鏡南道(ハムギョンナムド)出身の女性、チョンさんは、咸興(ハムン)第1師範大学に通っていたが、その秀才ぶりを認められ、最高学府の金日成総合大学の哲学科に編入した。彼女は、大学にほど近い平壌市内の大城(テソン)区域にある家に間借りして勉学に励んでいた。国の将来を担う立場に立つという、将来が約束されたはずだった。

  • 似顔絵を初公開!金正恩氏の美貌の姉「金雪松」はこんな顔だった

    北朝鮮の金正恩党委員長の異母姉・金雪松(キム・ソルソン)氏の情報が韓国や日本で出回り始めたのは、2006年頃のことだった。

    韓国紙の朝鮮日報は同年2月25日、元朝鮮労働党幹部の脱北者の話として、「(金雪松氏は)目鼻立ちのはっきりした美人」「身長165センチで、北朝鮮の一般女性と異なり、腰まで届くような長髪」などと伝えた。

    さらに、父である金正日総書記の現地視察にしばしば動向しており、その際は朝鮮人民軍の軍服を着て中佐の階級章を付けているとも書いている。

    続いて翌月には時事通信がソウル発で、「党の思想や政策方針を国民に浸透させる労働党宣伝扇動部で活動し、副部長に就任したとされる」「2004年5月、元応熙(ウォン・ウンヒ)護衛司令官が死去。このため総書記の日程調整や護衛関係の業務も、雪松さんが掌握するようになったもよう」などと報じた。

    日韓のメディアはその後も散発的に、金雪松氏の役割に言及しているが、その人物像は謎のままだった。何より、北朝鮮の公式メディアへの登場は現在に至るも皆無である。

    「溺愛」受ける

    だが今回、は金雪松氏の「似顔絵」とされるものを入手した。

    【画像】金正恩氏の異母姉・金雪松氏の似顔絵

    提供してくれたのは、脱北者で平壌中枢の人事情報に精通する李潤傑(イ・ユンゴル)北朝鮮戦略情報センター代表である。李氏はこの似顔絵について、次のように説明する。

  • 北朝鮮で「大量粛清」の懸念…「軍幹部を追放、収容所送りも」韓国紙報道

    韓国紙・中央日報は12日、北朝鮮の内部事情に詳しい消息筋の話として、黄炳瑞(ファン・ビョンソ)朝鮮人民軍総政治局長が朝鮮労働党からの「出党」(追放)処分を受け、金元弘(キム・ウォノン)同第1副局長が政治犯収容所に収監されたと報じた。

    事実なら、金正恩党委員長の叔父・張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長の処刑に次ぐ「大型粛清」につながる可能性がある。

    黄炳瑞氏と金元弘氏については、韓国の情報機関・国家情報院(国情院)が11月20日、国会情報委員会で、朝鮮労働党組織指導部が軍総政治局の「不純な態度」を問題視して検閲を実施。その過程で、黄炳瑞(ファン・ビョンソ)総政治局長や金元弘(キム・ウォノン)第1副局長をはじめ、相当数の幹部が処罰されたもようだと報告していた。しかしどのような罰を受けたかは、詳らかにされていない。

    北朝鮮の高位幹部が「革命化(再教育)」などの処分を受けるのはよくあることで、一時的に過酷な体験をするとしても、場合によっては復帰も可能だ。実際、一時的に消息の途絶えていた金正恩氏の側近が、ガリガリに痩せた姿ながら、公式メディアに再登場した例もある。

    (参考記事:側近「激ヤセ写真」に見る金正恩式「再教育」の恐怖

    しかし、「出党」となると話は別で、政治生命はほとんど絶たれたも同然となる。その上、政治犯収容所に送られてしまうと、生きて出てこられる可能性はほとんどなくなる。ましてや、金元弘氏は収容所の運営や公開処刑を担当してきた国家保衛省(秘密警察)の元トップである。例えるなら、日本の警察庁長官が刑務所送りになった、いや、ナチスドイツの親衛隊トップがユダヤ人強制収容所に送られたようなものである。

    (参考記事:謎に包まれた北朝鮮「公開処刑」の実態…元執行人が証言「死刑囚は鬼の形相で息絶えた」

    また、軍総政治局長と元国家保衛相という大物2人に不正があったとすれば、そこに連座させられる人数はハンパな数ではなかろう。1980年代に2万人以上が粛清されたとされる「深化組事件」の再現すら懸念される。

    (関連記事:血の粛清「深化組事件」の真実を語る

    韓国政府は今のところ、メディアの取材に対し「確認された事実はない」とコメントしている。今後の北朝鮮内部の動向に注目である。

  • 金正恩氏の美貌の姉「金雪松」はこんな顔だった!

    北朝鮮「女人天下」の知られざる深奥(2)

    北朝鮮の金正恩党委員長の異母姉・金雪松(キム・ソルソン)氏の情報が韓国や日本で出回り始めたのは、2006年頃のことだった。

    韓国紙の朝鮮日報は同年2月25日、元朝鮮労働党幹部の脱北者の話として、「(金雪松氏は)目鼻立ちのはっきりした美人」「身長165センチで、北朝鮮の一般女性と異なり、腰まで届くような長髪」などと伝えた。

    さらに、父である金正日総書記の現地視察にしばしば同行しており、その際は朝鮮人民軍の軍服を着て中佐の階級章を付けているとも書いている。

    続いて翌月には時事通信がソウル発で、「党の思想や政策方針を国民に浸透させる労働党宣伝扇動部で活動し、副部長に就任したとされる」「2004年5月、元応熙(ウォン・ウンヒ)護衛司令官が死去。このため総書記の日程調整や護衛関係の業務も、雪松さんが掌握するようになったもよう」などと報じた。

    日韓のメディアはその後も散発的に、金雪松氏の役割に言及しているが、その人物像は謎のままだった。何より、北朝鮮の公式メディアへの登場は現在に至るも皆無である。

    「溺愛」受ける

    だが今回、デイリーNKジャパンは金雪松氏の「似顔絵」とされるものを入手した。提供してくれたのは、脱北者で平壌中枢の人事情報に精通する李潤傑(イ・ユンゴル)北朝鮮戦略情報センター代表である。李氏はこの似顔絵について、次のように説明する。

    金正恩氏の異母姉・金雪松氏の似顔絵(提供:李潤傑氏)

    「この似顔絵は金雪松の写真をスケッチしたもので、彼女を知る人々から『よく似ている』との評価を得ています。もちろん、その写真は私も見ています。しかし残念ながら、その写真そのものを公開することは出来ません。公開すれば、北朝鮮当局によって流出経路を辿られ、北朝鮮国内にいる情報提供者たちが命の危険にさらされてしまうからです」

    北朝鮮問題を取材している者ならば、そのような状況があり得ることは十分に理解できる。ただデイリーNKジャパンとしても、李氏の主張を鵜呑みにしてこの似顔絵を公開したわけではない。李氏からは、これが本当に金雪松氏であるかどうか、相当程度まで検証できる材料が提示されている。そちらについては、本連載の次の回で公開すべく準備中だ。

    ちなみに、金雪松の名前をインターネットで検索すると、ある女性の写真が出てくる(画像)。李氏によれば、これはまったくの別人であるということだ。

    金雪松氏とは、果たしてどのような人物なのか。前回は、彼女の生い立ちと成長過程について述べた。金正日総書記の子どもたちの家族関係は、父親の女性遍歴のせいで複雑である。

    (参考記事:金正日の女性関係、数知れぬ犠牲者たち

    しかし、正妻の子として生まれた金雪松氏は、一度も「日陰者」になったことがなかったようだ。とくに、祖父・金日成主席からは溺愛されたという。また、海外留学などで知性を磨き、国内では庶民ともふれあい、聡明な女性に育ったという。

    (参考記事:謎の長身美女「金雪松」のすべて

    一方、金日成氏は生前、正恩氏とは一度も会ったことがなかったとされる。

    (参考記事:金正恩と大阪を結ぶ奇しき血脈

    その後の金雪松氏の経歴について、李氏は次のように説明する。

    「金雪松は金日成総合大学に在学中の1993年12月30日、満21歳の誕生日に朝鮮労働党員になりました。そして、金日成が死亡した直後の翌年8月、党中央委員会宣伝扇動部の行事課長を皮切りに党幹部としてのキャリアをスタートさせました。その後の約24年間、党中央の核心部門で経験を積み、2011年12月に金正日が死亡した時点では党組織指導部副部長および秘書室副室長クラスにまで昇進していました」

    朝鮮労働党の組織指導部は、北朝鮮の統治機構の最中枢に位置する機関で、そのトップである部長は国内最強の権力者と言える。実際、金正日氏は存命中、自分でこのポストを兼務していた。部長の下には3人の第1副部長がおり、これが日本の中央省庁で言うところの次官クラスとなる。副部長はその下で、日本の官房長や局長よりやや高位にあると言える。

    このようなキャリアを踏み、父親の現地視察に同行してきた金雪松氏の頭の中には、膨大な数の幹部たちに関する「データベース」が構築されていたはずだ。そして前回も指摘したとおり、金正日氏は遺書において、「金雪松を正恩の幇助者(助言者)として準備させ後押しするように」と指示していたとされる。

    李氏はこの指示の真意について、次のように分析する。

    「金正日は国家を守る軍や国家安全保衛部(現国家保衛省)、偵察総局などの安全保障部門を正恩に、経済など国内行政に関わる部門は金雪松に託し、両者の均衡の下で国家が統治されるよう望んだのだと思います」

    次回はいよいよ、金雪松の実像を見せる証拠資料を検証する。(つづく)

    【北朝鮮「女人天下」の知られざる深奥(3)】金正恩氏の「美貌の姉」の素顔…画像を世界初公開

  • 金正恩氏の異母姉・金雪松氏の似顔絵

    金正恩氏の異母姉・金雪松氏の似顔絵(提供:李潤傑氏)

    「この似顔絵は金雪松の写真をスケッチしたもので、彼女を知る人々から『よく似ている』との評価を得ています。もちろん、その写真は私も見ています。しかし残念ながら、その写真そのものを公開することは出来ません。公開すれば、北朝鮮当局によって流出経路を辿られ、北朝鮮国内にいる情報提供者たちが命の危険にさらされてしまうからです」(北朝鮮戦略情報センター(NKSIS)の李潤傑(イ・ユンゴル)代表)。

  • 謎の長身美女「金雪松」のすべて

    北朝鮮「女人天下」の知られざる深奥(1)

    北朝鮮の金正日総書記が2011年12月17日に死亡してから、もうすぐ丸6年となる。その後継として誕生した金正恩体制はこの間、対外的には核兵器開発を巡り米国との対立を激化させ、国内では恐怖政治の刃を無慈悲に振るいながらも、統治の盤石化に成功しているように見える。

    金正恩党委員長は1984年1月生まれとされているから、国家の最高指導者になったときには30歳にもなっていなかったわけだ。それほどの若さで父親からの権力継承に成功できたのは、正恩氏の陰に強力な「後見役」がいたからであるのは間違いなかろう。ただ、それが誰であるかを外側からうかがい知るのは、簡単なことではない。

    そんな中、正恩氏の権力継承に最も大きく貢献した人物として、2人の女性の名前を挙げる専門家がいる。その女性とは、ひとりは金正日氏の実妹にして、正恩氏の叔母である金慶喜(キム・ギョンヒ)氏。もうひとりは、金正日氏の次女で、正恩氏の腹違いの姉である金雪松(キム・ソルソン)氏である。

    複雑な女性関係

    長らく朝鮮労働党幹部を務め、兄の統治を補佐した金慶喜氏は、北朝鮮の内外で広く知られた人物だ。一方、金雪松氏は謎に包まれている。金正日氏が外遊に出た際、彼女と思しき随行員の姿を見た外国人から「長身の美女」などとする証言が出たことはある。また、有能な秘書として父親から大きな信頼を得ていたとの情報も、漏れ伝わってはいる。しかし、その動静が公式に伝えられたことはなく、北朝鮮メディアへの登場も皆無だ。

    いったい、金雪松とはどのような人物なのか。

    上記2人の女性の重要度を強調しているのは、脱北者で、韓国のNGO・北朝鮮戦略情報センター(NKSIS)代表の李潤傑(イ・ユンゴル)氏だ。北朝鮮において護衛司令部傘下の青岩山(チョンアムサン)研究所に所属していた李氏は、平壌の中枢人事に精通。2012年に「金正日の遺書」を入手して公開するなど、北朝鮮の秘密の数々を暴いてきた。

    (参考記事:美貌の女性らが主導…北朝鮮芸術家「ポルノ撮影」事件の真相

    李氏は金雪松氏について、次のように語る。