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  • 脱北費用の高騰で大儲けする、北朝鮮の「悪いヤツら」

    脱北費用の高騰で大儲けする、北朝鮮の「悪いヤツら」

    「最近、中国を通じて韓国に行く方法を尋ねる人が増えた」(デイリーNK内部情報筋、今年7月)

    近年、脱北して韓国入りする人の数は減る傾向にある。韓国統一省の集計によると、今年1月から6月までに韓国に入国した脱北者は546人。昨年同期(487人)とほぼ同水準だが、以前と比べるとかなり減っている。国境警備の強化、ブローカーの摘発などが影響しているものと思われる。

    ところがここに来て、脱北を考える人が再び増えているという。直接の理由は、国際社会の制裁による経済の苦境だ。また、脱北の傾向にも変化が生じつつある。今まで、脱北者を最も多く出しているのは北朝鮮北東部で中国と国境を接している咸鏡北道(ハムギョンブクト)、次いでその西隣の両江道(リャンガンド)だったが、前述の情報筋によれば国境から離れた内陸地方からの問い合わせが増えているという。それも、韓国や中国に縁故のない人からの問い合わせだ。

    しかし、脱北したい気持ちはあっても、おいそれと実行するわけには行かない。莫大な費用がかかるからだ。

    米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の咸鏡北道の情報筋が伝えた最新の脱北費用は、1人あたり6万元(約90万円)。平均的な4人家族の1ヶ月の生活費が50万北朝鮮ウォン(約6500円)であることを考えると、これでも目の飛び出るほどの高額だが、平壌市民の場合は、1人あたり13万元(約195万円)で、倍以上かかる。

    なぜ平壌市民だけこんなに高いのか。それはリスキーだからだ。

    平壌では、市場などで生計を立てている人が多い地方と異なり、国家機関に務めている人が多い。また、特権階層の数も地方とは比べ物にならないほど多い。つまり、当局が外部に知らせたくない機密情報を抱えている人が多いということだ。そんな平壌市民を脱北させようとして摘発でもされれば、公開処刑などの極刑に処されかねない。

    (参考記事:「死刑囚は体が半分なくなった」北朝鮮、公開処刑の生々しい実態

    そもそも首都・平壌に住むことができるのは、成分(身分)に問題がなく、忠誠心が高いとされた人々だけだ。1970年代から「問題のある」市民が次から次へと追放され、半分がいなくなったとの証言もある。

    (参考記事:北朝鮮最高の身分は平壌の「一線道路」の住民

    保衛部(秘密警察)や軍の関係者の間では、脱北を幇助して濡れ手で粟を掴もうとする人が後をたたない。

    咸鏡北道の情報筋によると、司法機関(警察、秘密警察など)では、国境地域に配属されるための競争を繰り広げているという。脱北希望者やブローカー、密輸業者から多額のワイロを得て、それを上部に納めると、昇進や今後の配置に有利に働く。

    「渡江(脱北)、違法通話、違法送金、密輸などの違法行為はすべて司法機関の関係者のカネ儲けのネタにある。保衛員(秘密警察)の間では『国境地域で3年間勤務すれば一生安泰』という話がおおっぴらに交わされている」(情報筋)

    (参考記事:脱北計画で逮捕された北朝鮮女性、多額のワイロを払い釈放

    また、違法な携帯電話の通話を現場で摘発した場合のワイロの相場は1万元(約15万円)。脱北幇助で得られるワイロよりは安いとはいえ、頻度を考えるとかなりの儲けになる。

    別の情報筋によると、国境地域に配属された保衛員は、まず管轄地域に脱北者家族や密輸業者がどれだけいるかを確認する。どれほど儲かるかを確認するのだ。内部では「脱北者家族が9世帯ほどいれば一生暮らせる」との話が交わされている。

    しかし、以前からいる人は頑として動こうとせず、新しく配属されたいという人は後をたたない。両者の間で、ワイロなどありとあらゆる手段を使った熾烈な競争が起きているのは言うまでもない。

  • 女性芸能人の「公開処刑」見学を強制…金正恩氏の消せない過去

    10月10日の世界死刑廃止デーに際し、各国の人権団体が北朝鮮当局による人権侵害に対し非難の声を上げたと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

    RFAによれば、アムネスティ・インターナショナルの死刑制度の専門家であるキアラ・サンジョルジオ氏は、次のようにコメントしている。

    「北朝鮮では、明白な証拠や弁護人もなしに死刑が速やかに宣告されているとの脱北者証言と、関連資料があります。それだけでなく、時には北朝鮮の国内法上も死刑に当たらない軽微な事案においても公開処刑が執行されていることを、強く憂慮しています」

    またRFAによると、ロンドンに拠点を置く世界基督教連帯は、北朝鮮では聖書を持っていただけで処刑されることもあると指摘している。

    北朝鮮におけるこのような実態は、恐怖政治によって国民を統制している金正恩党委員長の権力構造と直結するものだ。核と大陸間弾道ミサイルをカードにうまくトランプ米大統領との関係を築き、なんだか世界のメジャーな国家指導者の仲間入りを目前にしているかのような金正恩氏だが、公開処刑を乱発してきた経歴がある限り、国際社会から温かく迎える日は決して来ないだろう。

    特に、祖父や父親をもしのぐ残忍な処刑方法が捕捉されている事実が、金正恩氏のそのような運命をいっそう強く決定づけていると言える。

    (参考記事:「死刑囚は体が半分なくなった」北朝鮮、公開処刑の生々しい実態

    米国の人権団体、北朝鮮人権委員会のグレッグ・スカラチュー事務総長はRFAの取材に対し、北朝鮮が大口径の高射銃を使って公開処刑を行っていた事実に言及している。これは、衛星写真によってその状況が確認されているものだ。

    (参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認

    また、2013年8月に銀河水管弦楽団と旺載山(ワンジェサン)芸術団のメンバーら9人の公開処刑が行われた際には、最前列で「見学」することを強制された女性芸能人の中に、失禁しなかった女性はいなかったと言われる。

    (参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

    今後、金正恩氏が国際社会に何をアピールしようとも、こうした過去が消えることは決してない。果たして本人はそのことを、どのくらい深刻に認識しているのだろうか。

  • 金正日をズタズタに…北朝鮮「消えた一家」の危険なウワサ

    金正日をズタズタに…北朝鮮「消えた一家」の危険なウワサ

    北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)で、夫婦と子ども2人の家族4人が忽然と姿を消す事件が起きた。その後も行方知らずの状態が続いているが、町ではこの家族がなぜ消えたのかについて「ある噂」が立っていると、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

    家族の夫は、羅南(ラナム)陶磁器工場に運転手として籍を置きながら、実際は出勤せずにガソリン販売で生計を立てていた。無断欠勤は有罪だが、上役にワイロまたは罰金を支払うことで堂々と欠勤できるという「制度」を利用したものだ。そこそこ儲かっていたようで、家族は3階建ての家を建てて暮らしていた。

    (関連記事:北朝鮮、理不尽な「罰金制度」が慣習に 欠勤の罰金として給料数ヶ月分

    ところが、今年7月の末ごろ、家族は突然姿を消した。住民の移動を把握する役割を担う人民班長(町内会長)ですら、どのような事情があったのか見当がつかないと言っているという。

    やがて、こんな噂が立ち始めた。

    「息子のせいで家族は反動分子にされて、政治犯収容所に連れて行かれたらしい」

    この息子は、知的障害を抱えていた。北朝鮮で障碍者は単に冷遇されるにとどまらず、追放の対象になる。金日成主席がかつて優生思想に基づき「(障碍者を指して)あのような種が広がるのは良くない。1カ所に集めろ」との指示を下したと言われている。また、金正日総書記は「障碍者が革命の首都平壌にいると、外国人に不快な印象を与えるから、追放せよ」との指示を下したとの話がある。

    障碍を持った娘のせいで一家全員が平壌から追放されそうになったため、娘だけを郊外の祖母の家に送ったという脱北者の証言もある。彼女は、祖母の家から一歩も出ず学校も通えないまま、家で針仕事をして祖母の面倒を見ながら生計を立てていたという。

    (参考記事:障碍者という理由だけで追放される「革命の首都」平壌

    しかし、今回の「追放」は、息子が障碍者であることが直接の原因ではない。

    夫婦は商売に忙しく、息子の面倒を見る時間がなかったため、市場にいたコチェビ(ストリート・チルドレン)を雇い、息子の世話をさせていた。留守の間に何か問題を起こすのではないか、夫婦は常にヒヤヒヤしていたが、その予想が的中してしまった。

    息子が、壁にかかっている金日成主席と、金正日総書記の肖像画をむちゃくちゃにし、「3大偉人」(金日成氏、金正淑氏、金正日氏)のカレンダーをハサミで切ってしまったのだ。

    北朝鮮で最も神聖なものとされるのが、最高指導者に関連するすべてのものだ。肖像画を災害や事故から救うために、命を投げ出した人は称賛される一方で、傷つけたりした場合は、重大な政治犯罪に問われる。

    (参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

    コチェビはすぐ保衛部(秘密警察)に通報した。家に駆けつけてきた保衛部は、ゴミ箱からズタズタになった3大偉人のカレンダーを発見し、一家は夜中に連れ出され収容所送りになったというのが、噂の内容だ。

    一方で、「カネ持ちだから捕まった」と見る人もいる。北朝鮮では、いくらカネを持っていても暮らしぶりから気づかれないようにするものだ。ワイロや募金をせびられたり、財産を奪おうと悪事を働く保安員(警察官)、保衛員(秘密警察)、幹部のターゲットになりかねないからだ。そんなリスクを犯して、この一家が3階建ての家を建てた理由は不明だ。

    (参考記事:「将軍様の肖像画」と一緒に高校生を溺死させる北朝鮮の思想教育

  • 文在寅の空母が「浮かぶ標的」になる可能性

    文在寅の空母が「浮かぶ標的」になる可能性

    韓国紙・中央日報は10日、同国の次世代戦闘機(FX)2期事業で米国製F35A戦闘機の導入が有力となる中で、青瓦台(大統領府)が敢えてF35B戦闘機導入の可能性を検討するよう空軍に指示したと報じた。すると翌日、青瓦台はこれを否定。「事実無根」だとして強く反発した。

    韓国軍の武器調達は、陸海空軍の要請と合同参謀本部の承認を経て、防衛事業推進委員会が審議し、妥当との判断が出れば防衛事業庁が推進する、という流れになっている。個別の武器調達に、青瓦台は絡めない決まりになっているわけだ。

    だから青瓦台の反発は当然の反応なのだが、気になるのはこうした報道が出た背景だ。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

  • 金正恩氏は「喜び組アンダーウェア」、富裕層はブランドバッグ…制裁下の北朝鮮

    「本当の金持ちはシャネルを好む。(金正恩党委員長夫人の)李雪主(リ・ソルチュ)氏もシャネルが大好き。私の妻はバッグ、化粧品はもちろん、パジャマまでシャネルだ。もちろん偽物ではない。触ってみればすぐにわかる(中略)平壌には存在しないブランド品はほとんどないが、意外なことに『ルイ・ヴィトン』は少ない。偽物なら多いが」

    チュ・ソンハ著『平壌資本主義百科全書』より。

    人名が出ていなければ、一体どこの国の話かわからないが、これは紛れもない北朝鮮での話だ。

    国際社会の制裁で深刻な不況に苦しめられている北朝鮮だが、富裕層の消費動向にはさほど影響が出ていないようだ。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、トンジュ(金主、新興富裕層)の高級ブランド品志向について伝えた。

    平壌郊外にある北朝鮮随一の卸売市場、平城(ピョンソン)市場のバッグ売り場には、女性用、男性用問わず高級バッグが山積みにされている。金持ちは自慢するかのようにバッグを手にとって選んでいるのだとか。

    北朝鮮の市場では、物が売れなくなったことで、商人の数が激減しているというが、富裕層を対象にした売り場は不況など「どこ吹く風」のようだ。金持ちは相変わらず、財力を見せつけるかのように高級バッグを購入し、周囲の人々は眉をひそめている。

    (参考記事:北朝鮮の市場に異変「商人の数が激減している」

    「丸一日商売したところでいくらも稼げない商人も多いというのに、一方ではコメ100キロ以上買えるほどの値段のバッグをあれこれ選ぶ人もいて閉口する。野菜や雑貨を売っている人たちは、そんな金持ちを睨みつける」(情報筋)

    国連安全保障理事会が2006年に採択した制裁決議1718号には、ぜいたく品の北朝鮮への輸出を禁じる条項があるが、禁輸品目が明示されていない。一方、欧州連合(EU)は2017年11月の独自制裁で北朝鮮へのぜいたく品の輸出を品目を明示した。それでもあまり効果がなく、北朝鮮国内ではあいかわらずぜいたく品が売買されている。

    たとえば英紙デイリー・メールは以前、金正恩党委員長が「喜び組」のために、多額の金を費やして「セクシーアンダーウェア」を輸入していると報じたことがある。

    (関連記事:金正恩氏が大金をつぎ込む「喜び組」の過激アンダーウェア

    ぜいたく品は密輸されているケースもあるが、海外を訪れた人が友人から頼まれて高級ブランド品を持ち帰るケースもあるという。それらが市場に直接流入することもあれば、使ってはみたものの気に入らなかったとの理由で市場で売り払うこともあるようだ。ちなみに平壌では新品、地方では中古品がよく売れるそうだ。

    当局は、非社会主義、反社会主義現象の取り締まりと称して、ヘアスタイルやファッションの取り締まりを行っているが、富裕層の高級ブランド品に関しては口うるさく言わないようだ。

    ぜいたく品を扱っている国営商店は、当局が富裕層のタンス預金から外貨を使わせるためのものだ。また、市場でぜいたく品を売る側も買う側も、バックに高級幹部がいる可能性があるため、下手に取り締まろうとすると、どんなしっぺ返しを食らうかわからないという事情もあるのだろう。

    (参考記事:金正恩氏の「風紀取り締まり」に北朝鮮庶民が強く反発

  • 竹島問題を巡る韓国・北朝鮮の「自爆行為」と日本の自制心

    竹島問題を巡る韓国・北朝鮮の「自爆行為」と日本の自制心

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は8日、日本が「わが民族の領土である独島(竹島)を自国の領土であると強弁を張っている」と非難する論評を配信した。

    北朝鮮メディアは何かある度に同じような論評を出しているのだが、今回は日本の2019年版防衛白書に反発する内容だ。そこには、次のような記述がある。

    「看過できないことは、今年の防衛白書に独島上空で武力衝突が発生する場合、航空『自衛隊』戦闘機のスクランブルがありうるという文言を初めて明記したことである。(中略)

    独島上空への『自衛隊』戦闘機のスクランブルを通じて武装衝突を挑発し、それをきっかけにして20世紀に遂げられなかった『大東亜共栄圏』の昔の夢をなんとしても実現しようとする日本の野望はとうとう危険極まりない実行段階に入った」

    しかし実際のところ、防衛白書には、この論評が指摘したような「文言」は「明記」などされてない。正確には、「領空侵犯に備えた警戒と緊急発進(スクランブル)」について解説した3ページにわたる項の最初と最後で、次のように述べているまでだ。

    「空自は、わが国周辺を飛行する航空機を警戒管制レーダーや早期警戒管制機などにより探知・識別し、領空侵犯のおそれのある航空機を発見した場合には、戦闘機などを緊急発進(スクランブル)させ、その航空機の状況を確認し、必要に応じてその行動を監視している。さらに、この航空機が実際に領空を侵犯した場合には、退去の警告などを行う」(273ページ)

    「年7月には、中国H-6爆撃機2機及びロシアTu-95長距離爆撃機2機が、日本海から東シナ海までの長距離にわたる共同飛行を実施した。また、Tu-95長距離爆撃機の飛行を支援していたとされるロシアA-50早期警戒管制機1機が、島根県竹島の領海上空を侵犯する事案が生起した。その際、韓国の戦闘機が当該ロシア機に対し警告射撃を行った。わが国は、領空侵犯を行ったロシア政府及びロシア機に対し警告射撃を行った韓国政府に対して外交ルートを通じて抗議した」(275ページ)

    ひとつの項でこれら2点に言及しているのを見れば、「竹島上空に外国機が来たらスクランブルするぞ」と示唆しているようでもあるが、敢えて離して記述したとろころ見ると、敢えて言明を避けたと言えば言えるだろう。

    ではなぜ、KCNAの論評はこんな内容になっているのか。執筆者はまず間違いなく、インターネットで誰でも見ることのできる防衛白書の閲覧を許されていない。その代わりに、防衛白書の同じ部分について報道した韓国メディアの記事を読んだのだろう。

    たとえば東亜日報(日本語版)は9月28日付で、「日本、独島上空での衝突時に戦闘機出撃の可能性示唆」と報じており、他のメディアも同様の伝え方をしている。「示唆」としているところが、KCNAと違って正確だ。

    ちなみに韓国軍制服組トップの朴漢基(パク・ハンギ)合同参謀本部議長は8日の国政監査で、与党議員から「日本の戦闘機が独島(竹島)上空など韓国領空を侵犯した場合はどう対応するか」問われ、「定められたマニュアルに従って断固たる立場を示す」と答えている。

    公の場で軍の制服組トップがこのような質問をされたら「断固たる立場を示す」と答えるのは当たり前であり、むしろ聞くまでもないことと言える。おそらく前述した韓国メディアの報道に触れた与党議員は、こうした質問を軍にぶつけることで、自らのいわゆる「愛国心」を有権者にアピールしたかったのだろう。

    厄介なのは、ここから「断固たる立場とはどのようなものか」という議論が転がり出てくる可能性があることだ。現実に責任を持たない無責任な世論は、韓国軍に無理難題を押し付けてしまいかねない。

    日本にも、同じような危険がある。これまで自衛隊が竹島上空へのスクランブルを控えてきたのは、まさしく「自制心」のなせる業だろう。しかし、北朝鮮や韓国でこのような騒ぎがひっきりなしに沸き起こると、日本としても「自制心」を試されることになりかねないだろう。

    そうなれば、北朝鮮も韓国も、そして日本も、今よりさらに大きな安全保障上の負担にさらされる。まさに自爆行為だ。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    これこそが、ナショナリズムを背景にした関係悪化の怖い所だ。

  • 韓国イージス艦、北朝鮮のミサイル探知失敗…11回中の5回で

    韓国イージス艦、北朝鮮のミサイル探知失敗…11回中の5回で

    韓国海軍イージス駆逐艦が今年、北朝鮮が実施した11回のミサイル発射のうち、5回について探知できていなかったことが分かった。野党・自由韓国党のチョン・ジョンソプ議員は10日に行われた海軍本部の国政監査で「イージス艦が、5月4日と9日、7月25日、8月2日、9月10日に発射された北朝鮮のミサイルを正確に探知できなかった」と指摘した。

    これに対して海軍側は、5月4日と7月25日には、合同参謀本部から事前の出動命令が出ておらず、5月9日にはミサイルがイージス艦の探知可能範囲から脱していた説明。また8月2日には、イージス艦の戦闘システムのアップロードが遅れて2発のうち1発だけを探知できたとした。

    一方、北朝鮮が9月10日に超大口径ロケット砲を発射した際には、イージス艦は2発を探知した。しかし次の日、北朝鮮が公開した写真に3発を発射した様子が映っており、物議を醸した。

    イージス艦といえども、概ねどの方角からミサイルが飛んでくるかを事前に察知できていなければ、正確に探知するのは難しいだろう。

    ただ、それは北朝鮮も承知していることで、だからこそ様々な飛行特性を持つミサイルを複数開発し、かつ、移動式発射台に搭載して発射位置を特定できないように努めているのだ。特に、先日試射された潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載した新型潜水艦が日本海に配備されたら、発射位置の把握はいっそう難しくなる。

    韓国では最近、日本に刺激を受けたのか軽空母導入構想なども持ち上がっているが、経済状況が苦しい中、果たしてそんな余裕があるのか。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    韓国政府が北朝鮮との対話に積極的なのは悪いことではないが、北からの軍事的脅威への備えが盤石でなければ、足元を見られるのは言うまでもない。

  • 金正日命令で「健康な人も廃人に」北朝鮮刑務所の実態

    金正日命令で「健康な人も廃人に」北朝鮮刑務所の実態

    世界最悪の人権国家と言われる北朝鮮。その中でも、さらに著しい人権侵害が起きているのは、管理所と呼ばれる政治犯収容所、次いで教化所と呼ばれる刑務所だ。

    韓国などに住む脱北者の多くは、教化所などに収監された経験を持ち、国際社会でその酷さを訴えている。それが多少の効果があったのか、最近ではわずかばかり改善されたとの話もあるが、想像を絶する状況であることに変わりはない。

    (参考記事:K-POPを歌ったら飢え死に…北朝鮮刑務所の知られざる実態

    米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、脱北者を家族に持つ男性が、些細なことで逮捕され、教化所に入れられ、看守に暴行を受け半身不随になった件の一部始終を伝えている。

    (参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

    ことの始まりは今年8月に遡る。

    脱北し韓国に住む家族を持つ平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、道内の甑山(チュンサン)教化所から、服役中の54歳の弟Aさんを連れて帰れとの電話連絡を受けた。

    この教化所について、韓国のNGO・北韓戦略センターの姜哲煥(カン・チョラン)代表は朝鮮日報の記事で「いくら健康な人でも廃人になって帰ってくるところ」と表現した。金正日総書記の「社会の綱紀を乱す犯罪者は10年を1年のように鍛錬せよ」という指示に基づくものだ。つまり、厳しく痛めつけろということだ。

    (参考記事:強盗を裁判抜きで銃殺する金正日流の治安対策

    教化所に向かったところ、Aさんは脳出血で意識のない状態だったが、教化所側から「病気で保釈したからともかく連れて帰れ」と押し付けられたという。

    詳細を説明しようとしない教化所の職員。ところが、面会室にいた別の受刑者から事実を告げられた。

    「Aさんは看守から暴行されて脳に大きな衝撃を受けた。クラクラすると言って嘔吐を繰り返した末に倒れた」

    さらに、教化所は男性を治療せずに独房に監禁したが、手足が麻痺したのを見て「死ぬかもしれない」と思い、家族に慌てて連絡したようだ。教化所内で死なれては、あとが面倒だからだ。

    ことの一部始終を知った家族や村人は、男性を半身不随にしても責任を取ろうとしない教化所幹部に対して怒りを露わにした。

    脱北した韓国に住むAさんの息子はRFAの取材に、Aさんは今年3月に電波の通じる両江道まで来て、ブローカーの手助けで、自分に電話してきて金の無心をした。それが電波探知機に捉えられたことで、保衛部に逮捕され、懲役5年の判決を受けて甑山教化所に入れられたと明かした。

    Aさんが看守から暴行を受けた理由についてこの男性は、韓国に住む家族が北朝鮮に残してきた親戚を通じて差し入れた現金を隠し持っていたためだという。北朝鮮の刑務所は環境が非常に劣悪で、食糧や現金の差し入れをしてもらえなければ生き残れない。

    面会に来た家族は、教化所が経営する割高なコンビニで差し入れの品を購入することを強いられている。

    (参考記事:お客から恐喝して荒稼ぎする北朝鮮「恐怖のコンビニ」

    当局は、この責任を取るどころか、むしろ一家に対する監視を強めている。

    平安南道の成川(ソンチョン)の情報筋は、Aさんの家族は全員脱北して韓国にいるため、前述の親戚の家で治療も受けられずに寝たきりになっていると伝えた。

    Aさんは両足が麻痺して歩けない状況だが、地域の保安署(警察署)は、この親戚にAさんを毎日保安署に出頭させ、「脱北していない」という書類に判子を押させる作業を毎日強いている。厳しい監視と懲罰のような要求に、親戚も村人も「罪のないひとを半殺しにしたくせに、補償はおろか犯罪者扱いするばかり」だと激怒している。

    別の情報筋によると、近隣には家族の多くが脱北して取り残された人がいて、保安署、保衛部(秘密警察)のみならず、人民班(町内会)、勤め先の工場、学校でも彼らの行動を逐次報告するよう非常連絡網が作られていて、少しの間でも居所がわからなくなれば大騒ぎするという。

    (参考記事:北朝鮮当局の嫌がらせに脱北者家族「山奥への追放がまだマシ」

  • 「北の潜水艦探知で致命的」韓国のGSOMIA破棄に米国から懸念

    「北の潜水艦探知で致命的」韓国のGSOMIA破棄に米国から懸念

    韓国政府の「終了(破棄)」決定により、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が11月22日に失効する流れとなっていることに対し、米国の専門家からなおも懸念の声が上がり続けている。

    特に、北朝鮮が新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の試射を行ったことで、対潜水艦作戦におけるGSOMIAの重要性が指摘されている。

    「韓国の主張ではダメ」

    米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)は9日、「GSOMIAの終了は、(対潜水艦)作戦の側面で、米韓日の3国すべてに致命的なダメージを与える」とするジェームズ・ホームズ米海軍参謀大学の書面インタビューを伝えた。

    ホームズ氏は「(GSOMIAの失効を受けて)ソウルと東京が米国を経由して情報交換を行うなら、我々は時間の無駄と錯誤、作戦の非効率性に見舞われ、それは韓国と日本、米国のいずれにも不利益をもたらす」と指摘。また、「対潜水艦作戦は水中で行われるために、技術的・科学的に難しい特性がある。水中にいる標的を探知して追跡することだけでなく、(3カ国の)対潜部隊間の通信も、それぞれの上層部間で意思疎通を図るのも難しい」と強調している。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    さらに同氏は、北朝鮮の潜水艦を侮り過ぎないよう警鐘を鳴らしている。

    「我々は、我々の対潜水艦戦能力について自信過剰になるべきではない。確かに、北朝鮮の潜水艦が比較的老朽化していることは事実だ。しかし冷戦後、もう二度と海中で(旧ソ連海軍のような)深刻なライバルと対峙することはないと信じた米海軍が、対潜水艦戦能力を衰退させたことも事実なのだ」

    つまり、対潜水艦戦におけるこうした不確実性を最小化するためにも、GSOMIAを通じた日米韓の円滑な情報共有と意思疎通が重要であるというわけだ。

    この点の重要性については、イアン・ウィリアムズCSISミサイル防衛プロジェクト副局長もVOAで同様の指摘をしている。同氏によれば、1982年にイギリスとアルゼンチンが戦ったフォークランド紛争においても、アルゼンチン軍の旧式潜水艦は騒音が非常に大きかったにも関わらず、英国海軍はこれを容易に探知できなかったとされ、北朝鮮の潜水艦を巡っても同様の状況が起きうるとしている。

    こうしたリスクを低減するためにも日米韓の情報共有は必須であり、また日頃からの訓練を通じた意思疎通の円滑化も大事だ。

    ちなみに日米韓は日韓がGSOMIAを締結した後の2017年4月、韓国・済州島の近海で初の合同対潜作戦演習を実施している。VOAの取材にコメントした米ハドソン研究所の村野将(ムラノ・マサシ)研究員は、GSOMIAが失効すると、こうした取り組みも法的根拠を行う可能性があると指摘している。何故なら、韓国政府がGSOMIA失効の穴埋めになると主張している日米韓の「情報共有に関する取り決め」(TISA)は、対象となる情報が北朝鮮の核とミサイルに限定されているためだという。

    (参考記事:「韓国外交はひどい」「黙っていられない」米国から批判続く

  • 農業勤労者の詩朗誦会

    【平壌10月8日発朝鮮中央通信】金正日同志の朝鮮労働党総書記推挙22周年と朝鮮労働党創立74周年祝賀農業勤労者の詩朗誦会が8日、平安南道平原郡院和協同農場で行われた。

    朗誦会で各出演者は、朝鮮労働党を百戦百勝の鋼鉄の党に強化して発展させ、革命と建設を勝利と栄光の道に導いた総書記の業績をたたえた。

    朗誦会では、朝鮮労働党を永遠の生の懐、革命の母に格調高く謳歌し、農業生産において大革新を起こしていくという勤労者の思想精神世界を盛り込んだ詩が朗誦された。

    女声独唱「党をうたう」、男声独唱「党よ わたしの母よ」をはじめ、朝鮮労働党に対する賛歌も響き渡った。

    朝鮮農業勤労者同盟(農勤盟)中央委員会の金昌葉委員長、関係部門、農勤盟の活動家、農業勤労者が、これに参加した。---

  • 北朝鮮が「男女の不倫関係」を摘発…あるジャガイモ農場での出来事

    北朝鮮が「男女の不倫関係」を摘発…あるジャガイモ農場での出来事

    北朝鮮当局は昨年初めから、非社会主義的行為の取り締まり――要するに風紀取り締まりに力を入れているが、その対象は男女の不倫関係にも及んでいる。

    最近、取り締まりの舞台となったのは、北朝鮮の北部山間地にある両江道(リャンガンド)の白岩(ペガム)郡だ。平均海抜は1550メートルで朝鮮半島全体で最も高く、冬は極寒の地だ。農耕に適しておらず、住民は長らく極貧生活を強いられていた。

    そんな地を大きく変えたのは、金正日総書記が提唱した「ジャガイモ革命」だ。ジャガイモの一大産地となった両江道(リャンガンド)大紅湍(テホンダン)だ。稲作ができない荒れた土地が広がっていたこの地を開墾、ジャガイモ農場を作らせ、大成功させたというものだ。

    (参考記事:ジャガイモ大豊作も浮かない表情の北朝鮮の農民

    国際社会の制裁で食糧不足が伝えられ、ジャガイモの重要性が増す中、北朝鮮当局は高級幹部を農場に送り込んだ。ジャガイモ栽培の陣頭指揮を取るのが目的だ。農業のことを農民に任せず、中央の官僚が指揮を取るのは、ソ連型の計画経済システムの名残りだが、幹部は仕事そっちのけで贅沢三昧にひたり、挙句の果てには不倫をしていたことが判明し問題になっていると、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

    高級幹部らが農場にやってきたのは今年春のことだ。当局は、農場に負担がかからないようにと彼らに食糧を配給したが、幹部らは農場に豚肉、魚、卵を出せと要求した。そればかりか、宿舎には管理人を置き、掃除と洗濯をさせろとの要求も突きつけた。

    情報筋は詳細に触れていないが、仕事そっちのけで毎晩毎晩宴会を繰り広げていたのだろう。農場はあいつぐ台風の襲来で被害を受けているが、その復旧で忙しいのに幹部の接待に農民を動員せざるを得ない状況だったという。

    (参考記事:「ある母子の貧しさゆえの悲劇」台風18号、北朝鮮でも洪水被害

    仕事もせずに農場に迷惑をかけるばかりの幹部に対して当然のことながら批判の声が上がったが、そんな中で中央党(朝鮮労働党中央委員会)による調査が始まった。それも、身内からの密告によるものだった。

    農場に派遣されたある幹部は、半年に及ぶ派遣期間の間、一度たりとも平壌の自宅に戻らず、電話一本入れなかった。やがて不倫をしているのではないかという噂が立ち始めた。それを聞きつけた妻は、離婚を決心した上で、中央党に信訴(通報)の手紙を送ったという。

    調査の結果、この幹部は農場で働く20代女性と不倫関係にあることが判明した。北朝鮮当局は、「家族は革命的であれ」などと言った高邁な理想を掲げてはいるものの、実際には不倫や、上下関係を利用して女性に性上納を強いる行為などが横行している。

    (参考記事:北朝鮮で「サウナ不倫」が流行、格差社会が浮き彫りに

    中央党は訴えを受けて、現地で幹部の行動を調査した上で、批判書の作成を指示した。今後、思想闘争(集団批判を受けるなどの厳しい思想教育)を受けるものと思われる。また、近日中に更迭されるとのことだ。

    平壌の機関に勤める幹部が問題を起こした場合、更迭された上で平壌から追放され、山奥の農場などの閑職に追いやられる。問題が政治的なものであれば、収容所に入れられることもある。妻は、自分自身や子ども、実家に累が及ぶのを避けて離婚するのが一般的だ。中には、当局から離婚を勧められることもあるという。

    (参考記事:男たちは真夜中に一家を襲った…北朝鮮の「収容所送り」はこうして行われる

  • 「言動を違えれば排斥されて当然」北朝鮮、文在寅氏を説教

    「言動を違えれば排斥されて当然」北朝鮮、文在寅氏を説教

    北朝鮮の対韓国宣伝サイトである「ウリミンジョクキリ(わが民族同士)」は8日、2本の論評で韓国の文在寅大統領を事実上「名指し」して非難した。

    まず、「言動を違えれば排斥されて当然」という説教調のタイトルの論評は次のように述べ、文在寅氏の国連演説を槍玉にあげた。

    米国から「大目玉」

    「南朝鮮当局が国際舞台で『非武装地帯の国際平和地帯』を云々したのは、米国との北侵戦争演習と侵略兵器購入策動で朝鮮半島の平和を蹂躙してきた犯罪的正体を隠し、民族分裂の悲劇的産物である軍事境界線の非武装地帯を国際化することにその目的がある」

    これは、文在寅氏が9月24日の国連演説で提唱した「非武装地帯内に南北に駐在中の国連機構と平和、生態、文化と関連する機構などが居を構え、平和研究、平和維持(PKO)、軍備統制、信頼構築などの活動の中心地となるならば名実ともに国際的な平和地帯となる」との構想を、冷たく突き放したものと言える。

    もう一本の論評はさらに辛らつだ。9月の米韓首脳会談に非難の矛先を向けた。

    「北南合意への容認できない裏切り行為」と題された論評は、「先日、米国を行脚した南朝鮮執権者(文在寅氏)が米国製兵器購入を強いる主人(米国)の要求を甘受する卑屈な醜態をさらした。(中略)主の要求であれば、心臓も胆嚢も謹んで差し出す南朝鮮当局の親米屈従行為に、驚愕を禁じ得ない」と述べている。

    論評は続けて、「同族を狙った侵略兵器を大々的に購入しようとしている南朝鮮当局の無分別な処置は、北南合意の容認できない裏切り行為」であると非難。「米国製兵器購入によってもたらされるのは、北南関係破綻と朝鮮半島情勢の悪化であり、取り返しのつかない後悔と破滅だけだ」と強調した。

    実際のところ、北朝鮮でなくとも、「文在寅の本音は『平和』なのか『軍拡』なのかどっちなんだ」と思う向きはいるかもしれない。韓国では最近になって、日本に刺激を受けたのか、軽空母導入構想などが持ち上がっている。

    結局のところ、文在寅氏のこうした言動は、政権が「ナショナリズム」と「ポピュリズム」に依存しなければ立ち行かないことを示しているものと言える。そして、これらに偏重する政権は無原則になりがちで自らが犯している逸脱にも鈍感だ。

    日本に報復するつもりで軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を決め、米国から大目玉を食らい右往左往する文在寅政権が、その典型的な姿だ。

    (参考記事:「韓国は腹立ちまぎれに自害した」米国から絶妙な指摘

    実際、GSOMIA破棄で米国の不興を買わなければ、大規模な兵器購入でトランプ氏のご機嫌を取る必要もなければ、そのことで北朝鮮から猛反発を食うこともなかったのではないだろうか。

    (参考記事:「韓国外交はひどい」「黙っていられない」米国から批判続く

  • 金正恩氏が「処刑した叔父」を懐かしむ声が聞こえてきた

    張成沢(チャン・ソンテク)。金正日総書記の妹、金敬姫(キム・ギョンヒ)氏の夫で、かつては絶大な権力を誇っていた。ところが2013年12月、金正恩党委員長により処刑された。

    彼氏の粛清に際しては、愛人の元トップ女優をはじめ、一説に1万人もの人々が連座させられた。

    (参考記事:【写真】女優 キム・ヘギョン――その非業の生涯

    それから6年。平壌の高位幹部の間ではこんな話が漏れ聞こえてくるという。

    「張成沢がいた頃は、カネをバラマキながら事業を進める者が多かったのに」
    「張成沢が経済政策を主導し続けていたらどうなっていただろう」

    かつては粛清に巻き込まれることを恐れ、その名前を口に出すことすらはばかられた張成沢氏のことを、親しい間柄での会話に限られるとはいえ、懐かしむ声が上がっていると、北朝鮮の高位幹部がデイリーNKの取材に語った。

    (参考記事:「幹部が遊びながら殺した女性を焼いた」北朝鮮権力層の猟奇的な実態

    張成沢氏が進めていた経済特区、外資の誘致、中朝貿易の拡大などが続けられていたら、経済状況は今よりずっとマシになっていただろう、という趣旨である。

    張成沢氏が進めていた経済特区には、平安北道(ピョンアンブクト)の新義州(シニジュ)市郊外にある黄金坪(ファングムピョン)や威化島(ウィファド)がある。中国に食い込んだ中洲という地の利を生かし、開発が進められようとしていたが、その矢先に張成沢氏が処刑され、計画が頓挫してしまっている。

    (参考記事:【写真レポート】田植え戦闘真っ盛りの北朝鮮経済特区「黄金坪」

    別の平壌の情報筋は、高位幹部のみならず商人の間でも張成沢氏を懐かしむ声が上がっていると伝えた。

    「張成沢の存在は大きかった」
    「当時はカネのある人がドル札を気前よくばらまいていたが、今では商売上がったりだ」

    国際社会の経済制裁により、主力輸出品だった鉱物資源や海産物の輸出ができなくなったことで、北朝鮮に流入する外貨が減っていると伝えられているが、国全体のカネのめぐりが悪くなり、深刻な不況として現れている。かつては賑わっていた市場も、商人の数が激減、食べ物などの日常品以外は売れないという。

    (参考記事:北朝鮮の市場に異変「商人の数が激減している」

    そんな中で上がる張成沢氏を懐かしむ声。一般庶民は、彼の具体的な経済政策については知らなくとも、市場経済の進展については肯定的な役割を果たしたと認識しているようだ。

    「一般庶民は経済がなぜよくないのが詳しいことはわかっていないが、それなりの人なら外貨が減ったことが(経済難の)最も大きい理由だと見ている。そのため、張成沢に繋がっていた人々が外国からカネを引っ張ってきて、市場にばらまいたおかげで当時は景気がよかったと考えている」(情報筋)

    当局は、現在の経済的苦境が国際社会の制裁によるものだと宣伝している。それは決して間違っていないが、それのみならず外資の誘致や経済特区に対する消極的態度が経済をより悪化させていると見方をしているということだ。

    韓国のNGO・脱北者同志会の徐宰平(ソ・ジェピョン)事務局長はデイリーNKの取材に対し「北朝鮮で商売がうまくいっていないという話があちこちから聞こえるのは事実」とし、「ただし、張成沢氏がどんな役割を果たしていたのか知っているのは一部の高位幹部に限られていることを考えると、このような話は権力を持った党幹部または資本を持ったトンジュ(金主、新興富裕層)など上層部から出た話だろう」と分析した。

  • 北朝鮮漁民「100年前の船」で無謀な出漁…日本の漁師から同情の声も

    北朝鮮漁民「100年前の船」で無謀な出漁…日本の漁師から同情の声も

    海上保安庁によると、7日午前9時10分頃、日本海の好漁場・大和堆の周辺海域で、水産庁の漁業取締船「おおくに」(約1300トン)と、北朝鮮の漁船が衝突した。現場は、石川県・能登半島から約360キロ北西の日本の排他的経済水域(EEZ)とみられる。

    漁船は衝突から間もなく沈没。漁船の乗員約20人が海上に投げ出され、一部は救助されたもようだが、なお全員の安否が気にかかる。

    大和堆周辺では近年、北朝鮮漁船や中国漁船による違法操業が問題となっていた。その一方、遭難した北朝鮮船と見られる木造船や、北朝鮮の漁民と見られる遺体が相次いで日本の海岸に漂着した。

    遭難の最大の原因は、「日本なら100年前のシロモノ」と言われる粗末な木造船による強引な出漁にあると見られている。サイズが小さすぎ、構造的にも沖合での漁業に向かない木造船は、大波に遭うと簡単に転覆する。海に放り出され命を落とした北朝鮮漁民の数は、漂着が多かった2017年の1年間だけで1000人を下らないと見られる。

    米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は昨年3月、かつて北朝鮮でイカ漁に従事したことのある脱北男性のインタビューを掲載した。男性はその中で、木の葉のように大波にもてあそばれる木造船の様子を描写。「あの時の恐怖は言葉では言い表せません」と語っている。

    (参考記事:「あの恐怖は言い表せない」北朝鮮の元漁師が体験した「生死の境目」

    また韓国のデイリーNK本社とデイリーNKジャパンは昨年5月、石川・山形・秋田の各県を訪れ、イカ釣り漁師や漂着木造船を取材した。石川県漁協小木支所で行ったインタビューでは、漁師たちから北朝鮮船の漁の実態や、日朝の民間漁業協定が結ばれていた1980年代に北朝鮮の港に避難した体験談も聞いた。漁師たちは北朝鮮の違法操業を批判する一方で、無謀な出漁をせざるを得ない北朝鮮漁民の境遇について、「かわいそうや。あの人らも帰れば妻や子がおるのに」と同情の声を漏らした。

    石川県での取材では、北國新聞の連載記事「戦場の大和堆」取材班からの手厚いサポートを得ることができた。タイトルの通り、日本の国益が脅かされる海の最前線を精力的に追った企画だが、徹底的な取材に基づいた、次のような指摘も見られる。

    「『協調的安全保障』という考え方がある。多国間で幅広い交流を持ち、信頼関係を醸成することで、安全保障上の危機の高まりを予防しようというものだ。もしも漁業協定が結べれば、その一部として機能しうるのではないか。(中略)北風も冷たいばかりではない。大陸から吹き寄せる季節風を、能登人は「あえの風」と呼び、恵みをもたらす吉兆とした。かつて朝鮮半島から人と文化を運んだ風でもある」(同紙2018年2月9日付朝刊)

    まずは今回の事故での北朝鮮漁民の全員の無事を祈り、この出来事が、日朝になんらかの肯定的な結果をもたらすことを期待したい。

  • 「公開処刑」でも止められない北朝鮮国民の占い中毒

    北朝鮮の刑法には、こんな条項がある。

    第256条(迷信行為罪)

    金または物を受け取って迷信行為をした者は、1年以下の労働鍛錬刑に処す。前項の罪状が重い場合には、3年以下の労働強化刑に処す。

    この「迷信」とは占いのことを指す。さらに、刑法附則11条は、罪状が非常に重い者、全く悔悛してしない者に対しては、無期労働刑(無期懲役刑)か死刑を適用できると定めている。占いをしたからという理由だけで死刑になりうるということだ。終末論を流し人心を惑わせるなど、占い師は北朝鮮の体制を脅かす要素と見られているためだ。

    実際、北朝鮮当局はごく最近にも、占いを行った女性らを公開処刑している。

    (参考記事:北朝鮮でまた公開処刑…女性2人を銃殺「占いしたから」

    それでも、国際社会の制裁で経済が苦しくなり、未来が不透明になる中、占いにすがろうとする人が後をたたない。デイリーNKは、平壌市民2人とインタビューを行い、最新の「占い事情」について聞いた。

    首都平壌でも占いをする人がいるが、平壌居住者ではなく、地方からやって来て一時的に平壌の知人宅などに滞在し、占いをする人もいる。一方、地方に住む占い師にとって、可処分所得の多い平壌市民を顧客にするのは魅力だが、リスキーであるため、長期間は滞在しないようだ。

    顧客には一般庶民もいるが、幹部やその妻が多いとのことだ。経済的に余裕がある上に、政治情勢に地位が大きく左右されることから、不安感を少しでも解消するためと思われる。

    (参考記事:【動画】北朝鮮国内で密かに行われている「占い」の現場

    ー迷信行為をする人は多い?

    平壌市民A「迷信をする人は平壌にも多い。チュチェ(主体)思想なんて信じても何にもならない。天から何かが降りてきて話をするらしいが、平壌には占い師はおらず、地方から平壌にやって来る。自分の住んでいるところではやらず、よそに行ってやる。咸鏡道(ハムギョンド)からも来るし、いろんな所からやって来る」

    平壌市民B「よそから平壌に来た人が占っている。平壌に友人、親戚、知人がいれば、そこで占いをする」

    ー迷信行為に対する取り締まりが厳しくなっているというが?

    平壌市民A「親しい人には占い師が来たと知らせるが、知らない人に話すと信訴(通報)される。もちろん取り締まりにひっかかる人もいる。しかし、保安員(警察官)は占い師を取り調べているうちに、占い師の言葉に惹かれて信じるようになってしまう。占い師が保安員に『何か起こるから家内安全で』と告げたらしいが、それが噂になってついには所長の耳に入り、連れてこさせて運勢を見たらしい。そうやってだんだん信じるようになる」

    ー見てもらったことは?

    平壌市民A「先日、友人から『早く家に来てみろ』と言われ行ってみたら占い師がいた。初めて会う人だったが『占うなら10万北朝鮮ウォン(約1300円)を払え』と言われたので、友人が『その程度なら』とカネを払った。言われたとおりに名前と生年月日を書いて渡したところ、本当によく当たった。(友人の)家族は『10月にどこか他の場所に行くことになるだろう』と言われたが、本当に11月にそうなった」

    平壌市民B「運勢を見てくれるところが多い。庶民は『食べるものがない、死んでしまいたい』と言いながらも、運勢を見てもらい、それがよく当たるのでビックリしている。その占い師は、幹部が持ってきたカネを火にくべて占っていた」

    (参考記事:ある北朝鮮の「占い師」が辿った数奇な運命

    ー占ってもらうのは主にどんな人?

    平壌市民A「幹部やその妻が多い。私達のような一般庶民は毎日平凡な暮らしをしているが、幹部は発展のある(置かれた状況の変化が大きい)人たちだから。心の中は苦しいのではないか。平壌には(粛清の風が吹き荒れれば)あっという間にクビが飛ぶような人が多いから、未来のことが気がかりで占いをするのではないか。『うちの夫はクビにならないか』『これからも豊かな暮らしができるか』ということを聞くらしい。ある幹部の妻は、夫の写真を持ってきて名前と生年月日を告げて、占い師にすがるように話を聞いていた」

    平壌市民B「若い人たち、商人、出世するかもしれない幹部やその妻がよく来る。未来のことが気がかりなのは幹部だから。幹部は今後が不安で、経済も苦しく、カネもどんどんなくなり、締め付けが厳しくなる中で、どうすれば出世できるかを聞きに来る」

    (参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

  • 福島への態度と矛盾…韓国政府「被ばく調査結果」隠ぺいの疑い

    韓国政府が、脱北者の放射線被ばくを隠していたのではないか、との疑いが浮上している。

    韓国紙・朝鮮日報が2日付で伝えたところでは、韓国統一省が昨年9月、北朝鮮の核実験場がある咸鏡北道(ハムギョンブクト)の豊渓里(プンゲリ)周辺出身の脱北者10人を対象に被ばく線量の調査を行ったところ、5人の被ばくの痕跡が「染色体異常」の判断基準に当たる250ミリシーベルトを上回ったという。中でも48歳の女性は、「発がん確率の急上昇」に該当する1386ミリシーベルトという結果が出たという。

    この結果について、同紙にコメントしたKAIST(韓国科学技術院)のチョン・ヨンフン教授は「数百ミリシーベルト以上の数値は、日常生活では絶対に出ることはあり得ない」「かつて米国ネバダ州などで核実験を行っていた当時も、これほど高い数値は報告されなかった」などと指摘している。

    それにもかかわらず、統一省はこの結果を公表してこなかった。同紙は「韓国政府が、ソウルと同水準(年間1ミリシーベルト)の福島の放射能問題を絶えず取り上げているのとは相反する態度だ」と批判している。

    今回明らかになったのは、野党・正しい未来党のチョン・ビョングク議員の事務所が、統一省に提出させた資料に基づいて発表したためだ。

    統一省関係者は、前々回の2017年に検査を行ったときに、「放射線被ばくと核実験との因果関係はない」との結論に達し、今回も同様の結果に達したので発表しなかったと説明しているとのことだが、前述したチョン教授の指摘を考えれば苦しい言い訳に聞こえる。

    豊渓里は、福島よりもよほど韓国に近い。国民の安全を考えるなら、韓国政府は当然、北朝鮮に対して放射能漏れなどの調査を要求すべきだ。それをしないのは、南北対話を何が何でも進展させたい文在寅政権の「政策」が優先だということではないのか。

    ちなみに豊渓里近くには、悪名高き政治犯収容所「16号管理所」(化成〈ファソン〉収容所)が存在し、ここに収容された政治犯が、核実験施設で防護服なしで強制労働させられていたという情報があるのだ。収容所の警備兵出身で脱北者の安明哲(アン・ミョンチョル)氏は、「若くて元気な政治犯たちがトラックに乗せられ、『大建設』という名目で核実験施設に連れて行かれた」と証言している。

    北朝鮮の拘禁施設では人権侵害が横行しており、人命が信じられないほど軽く扱われている。

    (参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

    だが、現政権の「政策」を優先するあまり国民の安全を顧みず、放射能汚染について韓国政府が矛盾した態度を取り続けるならば、北朝鮮のやっていることと本質的にどれほどの差があると言えるだろうか。

  • 北朝鮮軍「モラル崩壊」でドロボー軍隊化が止まらない

    北朝鮮軍「モラル崩壊」でドロボー軍隊化が止まらない

    全世界で最も長いと言われている北朝鮮の兵役。その期間は10年にも及ぶ。それだけあって、兵士の数も桁外れに多い。米国務省の報告書によると、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の2006年から2016年までの年平均の兵員数は116万人で、総人口(2500万人)に占める兵士の割合も4.8%と世界で最も高い。

    そして毎年、数多くの兵士が兵役を終えて民間に戻っていくが、北朝鮮当局はこれと言った手当を支給していない。それが、民間人に大きな被害をもたらす結果を生んでいることを、 咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

    その場所は、北朝鮮北東部にある咸鏡北道の清津(チョンジン)。郊外には、数多くの副業地が存在する。副業地とは、不足する国からの食糧配給を補うために、軍部隊が独自に開墾した畑だ。ところが、その周辺にある協同農場で働く農民が切り開いた畑が荒らされ、作物が盗まれる事件が相次いでいる。

    協同農場では、任された土地を責任を持って管理し、収穫の一部を国に納め、残りを自分のものにできるという「圃田担当制」が施行されているが、これがうまく働かず暮らしていけない。そのため、個人用の畑を作って作物を市場で売ることで現金収入を得ている。

    (参考記事:北朝鮮の協同農場、農民に土地を有料で貸し与える

    そんな畑に、副業地で働く兵士たち、とりわけ除隊を控えた兵士たちが、農作業の合間を縫って、あるいは夜中に忍び込み、トウモロコシやトウガラシを大量に盗んでいくのだ。それも、牛車に積んで行くほど大量にだ。

    「除隊を控えた兵士たちは何も恐れず、畑をすべてひっくり返してトウモロコシを盗んでいく」(情報筋)

    彼らは、盗んだ作物を市場で売り払って現金化し、除隊後の生活資金としてためておく。中には、高く売れるからと、盗んだトウモロコシを茹ででから売りに出す者もいるほどだ。

    (参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

    作物を盗まれ貴重な現金収入源を失った農民たちだが、兵士の盗みを目撃しても何も言えず、黙っているしかない。

    北朝鮮では、兵士の犯した犯罪は保安署(警察署)ではなく、警務隊(憲兵隊)が処理する。兵士に作物を盗まれたからと保安署に通報しても、権限がないために何もできない。だからといって、警務隊に押しかけていっても門前払いされるだけだ。

    兵士らは、個人の畑だけをターゲットにし、協同農場は狙わない。かつては、協同農場も同様の大量窃盗の被害に悩まされていた。しかし、今では上級機関に信訴(不正行為の告発)することで対処している。下手をすれば処罰されかねない。もちろん、個人でも信訴することは可能だが、コネや権力がなければ訴えを取り上げてもらうのは容易ではない。そういうこともあって、個人の畑を狙うほうがより安全なのだ。

    (参考記事:経済制裁に苦しむ北朝鮮で「牛泥棒」が横行する理由

    軍当局は、兵士の窃盗を防ぐために、副業地の近隣では軍服を来て行動すること、銃器の携帯や勝手な行動はしないこと、などの指針を下してはいるが、現場の兵士たちが気に欠ける様子は一向にない。それどころか、窃盗に罪悪感など全く持たず、「除隊の準備はうまく行っているか」「どこそこに行けば儲けがあるぞ」などといった会話を交わす有様だという。

    窃盗は犯罪だが、兵士たちにも他人様のものに手を出さざるを得ないそれなりの事情がある。

    朝鮮人民軍は、兵士の除隊に際していくばくかの食糧を渡すだけで、退職金の類は一切支給しない。その貴重なコメを両親に食べさせようと空腹をガマンし、乗っていた列車の立ち往生で到着が遅れ、餓死した兵士もいるほどだから、その量は推して知るべしだ。

    (参考記事:北朝鮮「列車に乗っていたら飢え死に」その理由は

    国境警備隊に配属になれば、脱北や密輸をする人から受け取るワイロを溜め込んで、除隊後の生活資金にできる。また、大都会の近くに駐屯する部隊に配属されたら、市場で何らかの商売ができる。ところが、兵士のほとんどが送り込まれる部隊は山奥にあり、現金収入のチャンスはないに等しい。

    農民の畑で盗みを働き、生活資金を工面しておかなければ、豊かな生活はおろか、生きていくことすら難しいのだ。

    (参考記事:30代男性にガソリンをかぶらせた北朝鮮の「貧困と絶望」

  • 「革命の道具」として使われる北朝鮮の女性たち

    提綱「女盟員たちが社会公衆道徳を自覚的に守ることについて」(画像:デイリーNK)
    提綱「女盟員たちが社会公衆道徳を自覚的に守ることについて」(画像:デイリーNK)

    かつては女性政策が進んでいると言われていた北朝鮮。現在の北朝鮮政府の前身にあたる北朝鮮臨時人民委員会は、1946年7月に女性の選挙権、被選挙権の保障、強制結婚の反対、離婚の自由、養育費訴訟権の認定、一夫多妻制の否定などを謳った「朝鮮男女平等権法についての法令」を発表した。またその後、女性をジェンダーロールから解放するための様々な施策を行った。養育や家事の社会化がその一つだ。

    それから70数年。女性の地位は向上した部分もある一方で、依然として改善されていない部分もある。そんな現状が、北朝鮮の思想教育にも反映されている。

    (参考記事:「私たちは性的なおもちゃ」被害女性たちの血のにじむ証言を読む

    デイリーNKは、平安南道(ピョンアンナムド)の内部情報筋を通じて、朝鮮社会主義女性連盟(女盟)がメンバーを対象にして行った講演会の提綱(レジュメ)を入手した。題名は「女盟員たちが社会公衆道徳を自覚的に守ることについて」だ。

    「女性の社会主義道徳確立の必要性を説き、資本主義の弊害が生活に浸透することを防ぐ」ことを目的としたこの講演会だが、言い換えれば風紀取り締まりだ。提綱の内容は次のようなものだ。

    「女性がいくら容姿が美しく、知識レベルが高くとも、公共の場で分別のない行動を行い、自分が楽するだけならば、文明的でない行動だ」

    「道徳的に低劣な軍隊が闘いで勝てないように、道徳が欠如した社会は脆弱なものだ」

    「社会に道徳規律を確立するための思想を強調し、社会主義文明建設を推し進めていくことは、社会主義の本来の姿を守り、革命隊伍の一心団結を盤石に固めるために重要な要求」

    これは、昨年から始まった非社会主義、反社会主義現象の取り締まりの一環として行われているようだ。北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞が今年5月25日に掲載した社説「全社会に美しく高尚な道徳気風を徹底して確立しよう」には、一連のキャンペーンを行うに当たっての、北朝鮮当局の現状認識がわかりやすく現れている。

    「今、帝国主義者どもはわが共和国を中から崩すために悪辣に策動している。制裁封鎖の度数を高めることと同時に、腐ったブルジョア道徳と生活様式を突きつけ、人々の精神状態を壊し、わが国内部に不和の種を蒔こうとしているのが敵どもの凶心だ。道徳紀綱が弱まれば、社会主義の本来の姿が乱され、さらには血と汗で勝ち取った革命の戦勝物すらも失うということが、過去の社会主義建設の歴史が刻んできた血の教訓だ」

    つまり、韓流など外部からの文化を受け入れることは、思想の乱れを招き、それは1980年代後半の旧共産圏崩壊のような事態に繋がりかねないと危惧しているということだ。

    この20年で進んだ市場経済化は、家庭における女性の地位を大きく変化させた。かつては夫の後ろをついて歩く存在だったが、今では経済的な主導権を握っている。女性は男性と違って、国から割り当てられた職場に所属する必要がないため、市場で自由に商売をし、一家の生計を担うことになった。

    (参考記事:妻に優しくなった北朝鮮の夫たち…亭主関白の末路は「餓死の恐怖」

    そんな女性が自由にファッションや韓流を楽しむことは、社会によからぬ影響を与える(と、当局は考える)。また、提綱で言及されていないが、女性たちの間では思想教育用の講演会の欠、飲酒、喫煙、幹部への抗議、悪口などが以前に比べて増加していると情報筋は伝えている。

    逆に、経済的な力を持ち、自由に社会活動を行う女性を抑えつければ、男性にも「良い影響」を与えるだろうと、当局が見ているため、女性をターゲットにした思想教育を行っているというのが情報筋の見方だ。伝統的な女性への蔑視と、現代女性への認識が複雑に入り混じっている。

    もちろん、当局の考える「国や党、首領、革命のために黙々と働き、身を捧げる」という女性像と、現実の女性の行動は乖離している。それを元に戻そうという流れが、当局の行動の根底にあることは言うまでもない。

    前述の労働新聞の社説は、また、女性に対しては次のような要求を突きつけている。

    親を失った子どもたちを育てた降仙(カンソン)の地の「乙女の母」のように、戦争老兵(朝鮮戦争参戦者)、栄誉軍人(傷痍軍人)の生活を肉親の心情で世話をする多くの美風先駆者たちのように、助け合い導く集団主義的気風がどこでも高く発揮されなければならない。

    しかし、口では高尚なことを言っているが、実態は伴っていない。例えば、美風先ここで言う「美風先駆者」の選抜においては、カネが飛び交っているのが実情だという。

    参考記事:北朝鮮、カネまみれの「品行方正」大会・・・表彰も献金次第

    また、栄誉軍人との結婚は半ば強いられたもので、それを巡ってトラブルも発生している。女性が「革命の道具」として使われているということだ。

    (参考記事:体はボロボロで家庭も崩壊…北朝鮮「負傷兵」たちの悲惨な末路

  • 「自分を棚に上げ責任を転嫁するな」北朝鮮が文在寅政権を非難

    「自分を棚に上げ責任を転嫁するな」北朝鮮が文在寅政権を非難

    北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は2日、南北対話が膠着状態に陥っている責任を、韓国政府が北側に転嫁していると非難する論評を掲載した。米国との実務協議再開を目前に控えたタイミングだけに、その意図が注目される。

    論評は「先日、統一部当局者は北南の対話が開かれないのが、まるでわれわれのためであるかのように言い触らした。南朝鮮国防部長官も、われわれの自衛的な国防力強化措置に言い掛かりをつけて、『北が緊張を高調』させているとの妄言を並べ立てた」と指摘。

    そのうえで「北南関係が膠着状態に陥るようになった根本原因は一言で言って、南朝鮮当局の背信的行為にある」としながら、韓国政府が米韓合同軍事演習で「相手を脅かし、緊張をあおり立てる挑発行為を引き続き働きながら、『対話』と『信頼』についてうんぬんするのは、常識外れの欺瞞(ぎまん)行為である」と非難した。

    さらに続けて、「自分のすべきことはせず、むしろ盗人猛々しく北南関係膠着の責任をわれわれに転嫁しようとずうずうしく振る舞っているのは、万人の驚愕をそそるだけである」と強調した。

    内容的には、北朝鮮がこのところ一貫して主張してきたのと同様のものである。韓国の文在寅政権が、約束したはずの南北経済協力に踏み出さず、一方で米韓合同軍事演習を続けていることをなじっているわけだが、過去には文在寅大統領を「ほぼ名指し」してもっとヒドイ言い方をしていることを考えれば、非難の程度は低いと言えるかもしれない。

    (参考記事:「奇怪な醜態」金正恩氏が文在寅氏を罵倒した理由

    このタイミングでこうした論評を出したのは、先月、トランプ米大統領と会談するなどして米朝の「仲介者」としての役割を捨てようとしない文在寅氏を、けん制するためかもしれない。北朝鮮はかねて、「(韓国の)仲介など必要ない」と言明している。

    経済協力を実行し、米韓合同軍事演習を中止しない限りは、文在寅政権にはいかなる「得点」も与えない。おそらくはこれが、金正恩党委員長の韓国政府に対する立場だと思われる。

  • 「韓国のやり方は日米に対してフェアじゃない」米元高官が直言

    日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は、日本にとってより必要なのか、あるいは韓国にとってより重要なものなのか――この点を巡り、双方の主張がメディアで入り乱れている。

    北朝鮮が2日に潜水艦発射弾道ミサイルの試射を行った後、韓国はまだ有効なGSOMIAに基づき、日本に対して情報提供を要請した。日本はこれに応じる方針だというが、日本から韓国への情報提供の要請は行われていない。

    これについて読売新聞3日付は「早期警戒衛星を持つ米軍からの情報が入るため、韓国側の情報は特段、必要ではない」とする防衛省幹部のコメントを伝えている。

    一方、共同通信によると、先月28日までにソウルで海外メディアと会見した韓国政府高官は、「日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)は、北朝鮮のミサイル発射探知のため韓国以上に日本が必要としていると強調した」という。

    どちらの主張が正しいかは、そのときの状況によって変わってくるものなのではないか。それよりも重要なのは、北朝鮮の脅威にどのように対処すべきかという観点と立場の問題であるような気がする。

    長年、米国の外交と国防政策を担ってきたリチャード・アーミテージ元米国務副長官はこの点について、米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)韓国語版のインタビューで次のように語っている。

    「韓国が歴史問題や日本の政策に不満があるからと言って、それを理由にGSOMIAを(駆け引き道具に)使うのは同盟である米国に対してフェアではないし、韓国自身や日本に対してもフェアではない」

    つまり、危機に対処するのに同盟を軸として考えているかどうか、ということだろう。日本も韓国も、米国とだけ組んでいれば十分と考えているのだろうが、米国は違うということだ。だからこそ、GSOMIAを破棄するとした韓国の決定について、米国はにほんよりも怒っているわけだ。

    (参考記事:「韓国外交はひどい」「黙っていられない」米国から批判続く

    もちろん、北朝鮮だけでなく中国やロシアを向こうに回す米国の世界戦略に唯々諾々と従うのは必ずしも得策ではない。しかし、北朝鮮が核戦力を着々と充実させている今、米国の大量報復能力なしには、日本も韓国も独自に抑止力を維持するには限界がある。

    それを知ってか知らずか、GSOMIAを破棄しようとする韓国の姿勢は、やはり韓国の国益にとっても得策ではないだろう。

  • 北朝鮮の女子大生が「ある要求」に耐えきれず選んだ道とは…

    北朝鮮の女子大生が「ある要求」に耐えきれず選んだ道とは…

    北朝鮮ではご法度の韓流ドラマやK-POP。刑法は183条で「退廃的、色情的、醜雑な内容を反映した絵、写真、図書、録画物、電子媒体などを許可なく他国より輸入、制作、流布、保管した者は1年以下の労働鍛錬刑(懲役)に処する」と定めている。また、184条では視聴も禁じている。実際はこれ以上の量刑になることも少なくない。

    それでも見る人が後を立たないのだが、最近、ある女子大生が韓流ドラマを見ていたといたところを摘発され、悲惨な運命を辿る事件が起きたと、平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

    平壌に住んでいたある女子大生は、自宅で韓流ドラマや映画などを見ていたところを、韓流取り締まりを担当するタスクフォース「109常務」に逮捕された。

    109常務は、女子大生の両親に対してこんな要求を突きつけてきた。

    「娘の罪をチャラにしたいなら、ワイロとして5000ドル(約54万円)を上納せよ」

    北朝鮮の一般庶民や下級幹部にとって、5000ドルは天文学的な数字と言っても過言ではないだろう。それでも、娘を救いたい一心で両親は金策に走った。しかし、集められたのは要求額の半分にも満たない2300ドル(約24万8000円)。

    取り締まりに関係のある幹部に渡そうとしたが、「俺をバカにしているのか!」と逆上され、暴言を吐かれたという。

    この幹部が額が少ないことに怒ったのか、あるいは「ワイロの仲介などしない」という意味だったのかは不明だ。いずれにせよ、そのことを知った娘は「私にやましいことはない。死んで証明する。カネは取り戻してください」との遺書を残し、裏山で自ら命を断った。

    (参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…

    この女性は、医大の卒業を控えた優秀な人物だったとのことで、そんな彼女がたかが韓流ドラマを見たくらいで死に追いやられたことに、近所の人たちは涙を流して怒りに震えているという。

    情報筋は、「韓流ドラマを見るには本当に注意が必要だ」として、ワイロの額が上がっていることを指摘した。

    「最近、109常務は5000ドルくらいでは動かない、1万ドル(約108万円)を払わなければならない」

    このように、韓流の取り締まりをネタにして、ワイロをゆすりとろうとする事件が報告されている。

    両江道(リャンガンド)の情報筋によると、今年5月に三水(サムス)郡の協同農場の7世帯が、韓流ドラマを見ていたところを109常務に踏み込まれた。彼らは「14歳以上は教化所(刑務所)に行くことになる」と脅迫した上で、1000元から2000元(約1万5000円〜3万円)のワイロを要求した。

    農民と顔見知りという取締官は「面倒を見るべき甥が3人いる。ノルマもある。500元や1000元では見逃してやれない、少なくとも1500元(約2万2700円)が必要だ」と、使いみちの内訳まで明らかにした上で、ワイロを要求した。

    109常務は通常、保衛部(秘密警察)、保安署(警察署)、検察所などの人員からなるが、協同農場に現れた人員は、パソコンの専門家と地元の青年同盟(金日成金正日主義青年同盟)のメンバーだった。地元の事情をよく知る青年同盟のメンバーが、生活苦を打開するために、隣人を売ったものと考えられる。

    しかし、いくら取り締まりが厳しくとも、一度韓流にハマった北朝鮮の人たちは、あの手この手を尽くして韓流を見ようとする。特に、外の世界の情報に飢えている若者はなおさらだ。

    「大学生たちは、外国映画などを見ているのがバレたら処罰を受けることを知りながら、好奇心を抑えられずに見てしまう。それを防ぐ方法はない」(情報筋)

    大学生たちは、スマートフォンに韓流ドラマなどのファイルを暗号化するアプリを仕込んでいて取り締まりを逃れようとしている。それも機種別にアプリが用意されている。機種別にセキュリティレベルが異なるからだが、これなら109常務がパスワードを解かない限りは、証拠を押さえることができない。

    しかし、デイリーNK取材班で確認した結果、北朝鮮製スマホの最新機種である「平壌2423」には、このアプリがインストールできないことが判明した。つまり、当局もこのアプリへの対策に乗り出しているということだ。

    (参考記事:北朝鮮スマホ最新機種は「韓流拡散防止」装置付き

  • 文在寅「GSOMIA破棄」で在韓米軍が“巻き添え”の大問題

    北朝鮮が2日、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)と見られる飛翔体1発を日本海で発射したことを受けて、韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相は同日の国会国防委員会による国政監査で、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に基づき、日本に関連情報の共有を要請したことを明らかにした。

    米国の「怒り」増幅

    韓国政府はすでに、日本とのGSOMIAを破棄する決定を下しているが、協定が失効するのは11月下旬だから、それまではこの取り決めに基づいた情報交換はできる。だが、問題はその後だ。北朝鮮がSLBMを搭載した新型潜水艦を日本海に配備した場合、韓国が対応に苦慮することになるのは明らかだ。

    その現実を示す出来事が、少し前にあった。

    7月25日、北朝鮮は新型の短距離弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射した。韓国軍の合同参謀本部は当初、これらの飛行距離を430キロとしていたが、後に2発のミサイルはそれぞれ430キロ、690キロ飛行したと修正。さらに26日になって、2発はいずれも飛行距離が600キロであったと再修正した。

    このように分析結果が二転三転した原因は主として2つある。第1に、ロシアの短距離弾道ミサイル「イスカンデル」を模倣したとされる北朝鮮のミサイルが、上昇後に下降して水平飛行するという、特異な動きをしたためだ。

    そして第2に、日本海に向けて発射された北朝鮮のミサイルが、南から北方を監視する韓国の早期警戒レーダーの死角へ抜けて行ってしまったからだろう。

    それでも韓国軍がミサイルの飛行距離を把握できたのは、「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に基づき日本側から提供を受けた情報が影響を及ぼしたといわれている」と、韓国紙・朝鮮日報は伝えている。

    これはつまり、朝鮮半島有事において北朝鮮が韓国へ向けて日本海からSLBMを発射した場合、韓国軍は探知に手間取り、迎撃のための対応が遅れてしまう可能性を示唆している。北朝鮮は、飛行特性の異なる新型の短距離ミサイルを何種類も開発することで、韓国の防空網の攪乱を狙っていると見られている。そこにSLBMまでが加わったら、韓国が直面する脅威は相当なものになるだろう。核弾頭が搭載されていれば、まさに国家存亡の危機だ。

    もちろん、その脅威にさらされるのは韓国軍だけではない。在韓米軍もまた、同じリスクを負うことになる。

    韓国の文在寅政権が日本政府による輸出規制措置への報復として、GSOMIAの破棄を示唆し始めた当初から、米国は繰り返し「それや止めとけ」との警告を発してきた。今後、米国の「怒り」はいっそう増幅されることだろう。

    (参考記事:「韓国外交はひどい」「黙っていられない」米国から批判続く

    GSOMIA破棄は、文在寅政権に2重のリスクをもたらすことになった。文大統領はその意味するところを、十分に理解しているのだろうか。

  • 中朝国境で暗躍する「20代の女性スパイ」の正体

    北朝鮮から脱北を試みた女性たちが、密告者による通報で逮捕される事件が発生したと、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

    今月初め、中国との国境に面した咸鏡北道の会寧(フェリョン)に住む女性3人が、脱北ブローカーの手引きで国境の川を越えて中国に向かおうとしたが、川岸に降りようとした瞬間、潜伏していた保衛部(秘密警察)の要員に取り押さえられた。

    「ニオイ拷問」が横行

    2人はおとなしく逮捕に応じたが、1人は川に向かって走り出し逃走を図った。保衛部は警告を発した後、拳銃を発射するなどし、結局逮捕した。

    情報筋が保衛部の協力者から聞いた話によると、今回の逮捕劇は、元々一緒に脱北することにしていた女性の密告によるものだった。

    脱北ブローカーは、現地で脱北希望者を募っていた。それに名乗り出たのはいずれも20代の女性だった。ところが、うち1人が途中で脱北を取りやめた。この女性が密告者だったのだ。

    「脱北を諦めた女性は最初から保衛部の指示を受けて接近したスパイだった。彼女らの脱北計画は最初から保衛部に報告されていた」(情報筋)

    保衛部は最近、脱北の計画を事前に察知するために、若い男女を抱き込み、脱北を試みる人やブローカーに接近させ、一網打尽にするおとり捜査を積極的に行っている。

    それは、脱北事件が起きた場合に、当事者だけでなく警備担当者にも責任を問うる風潮が高まりつつあるため、脱北を未然に防ごうと、このようなスパイを活用しているというわけだ。地域住民は「これでは誰が信頼できるブローカーか見分けがつかない」とささやきあっているという。

    以前は、脱北に失敗したり、成功したものの中国で逮捕され強制送還された場合には、過酷な刑罰が待ち構えていた。恐怖のあまり自ら命を断つ人もいた。

    (参考記事:脱北に失敗した北朝鮮人夫婦の「究極の選択」

    ところが、最近になって強制送還された脱北者に対する処罰は多少緩和され、一般の犯罪と同じ扱いにしているというのが情報筋の話だ。とは言え、北朝鮮の教化所(刑務所)の状況は、劣悪極まりないことには変わらない。施設内ではたとえば、若い女性を「ニオイ拷問」で死に至らしめるなどの行為が横行している。

    (参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

    国境地域への訪問も規制が強化されている。

    咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)に住む米政府系のラジオフリーアジア(RFA)の情報筋は、秋夕(チュソク、旧盆)に合わせて国境に近いところにあるお墓参りをしようと旅行証(国内用パスポート)を申請しても、ほとんど発行されない状態だと述べた。その理由は脱北や違法な携帯電話の使用が増えることを恐れてのことだという。

    とりわけ、家族の中に脱北者がいる場合には、理由の如何を問わずに完全に不許可となっている。

    会寧の情報筋は、国境警備隊、保安署、保衛部など、国境地域を警備する人員が2倍に増やされたと述べた。旅行証の確認や荷物検査、身体検査を行うほど厳重な警戒を行っている。地域住民ですら移動が困難となっており、公式に抗議したが黙殺されているという。

    (参考記事:金正恩氏の「風紀取り締まり」に北朝鮮庶民が強く反発

  • 「韓国は米国に本当のことを教えろ」米専門家が厳しい指摘

    ダニエル・ラッセル元米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は9月28日、米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)のインタビューで、北朝鮮の非核化を巡る米朝対話における韓国の役割について、強い不満を表明した。

    同氏は、韓国政府は具体的にどのような役割を果たすべきか、とする記者の質問に対し、次のように答えている。

    「韓国政府は、北朝鮮が何をしているのか、動機は何なのか、事実そのままの評価を提供してトランプ政権を助けなければなりません。北朝鮮の行動と脅威、戦略について率直に評価しなければならないということです」

    これはつまり、韓国の文在寅政権がこれまで、現実から乖離した見方で北朝鮮を評価し、米国が必要とする事実に基づいた情報を提供してこなかったという意味だ。

    北朝鮮の「変化」に過度に期待する文在寅政権の姿勢は、すでに誰もが認識しているものだ。しかしそのことを、米国の元当局者がこれほど明白に指摘したのも珍しいかもしれない。

    文在寅氏の過度な前のめり姿勢が端的に表れたのが、「南北の平和経済の実現で日本に追いつく」と宣言した8月15日の演説である。日本政府による輸出規制措置に対抗して語ったものだが、そのあまりの現実離れぶりに韓国の世論もあきれ返った。

    現に、北朝鮮の対韓国窓口機関である祖国平和統一委員会は演説の翌日、報道官談話を発表し、「わが軍隊の主力を90日内に『壊滅』させ、大量殺りく兵器の除去と『住民生活の安定』などを骨子とする戦争シナリオを実戦に移すための合同軍事演習が猛烈に行われており、いわゆる反撃訓練なるものまで始まっている中で公然と北南間の『対話』をうんぬんする人物の思考は果たして健全なのか。まれに見る図々しい人だ」と文在寅氏を非難。

    「(韓国当局者と)これ以上話すこともないし、再び対座する考えもない」と宣言し、同氏の平和経済構想を拒絶している。

    ラッセル氏はVOAのインタビューで、次のように続けている。

    「韓国の情報当局と軍当局、専門家たちは、現在の米国政府に不足している、北朝鮮に対する深い理解を持っているので、(トランプ政権の)大きな助けになるはずです。バラ色の眼鏡をかけて、北朝鮮を眺めることはとても危険です。韓国、米国、日本の間の調整は、北朝鮮問題の進展に不可欠な前提条件です。現在の韓日の葛藤と敵愾心は、北朝鮮を利するだけで、私たちの共同の利益に重要な課題を提起しています」

    北朝鮮と同じ民族であり、同じ言語を使う韓国のリソースを駆使することなくして、北朝鮮を理解し、非核化へと誘導することは難しい。しかし現在の韓国政府は、その役割を果たせなくなっている。北朝鮮の変化を期待するより先に、韓国政府の変化を待望せざるを得ないのが、現在の状況なのである。

    (参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感

  • 「独島が韓国の領土であるとの証拠は何もない」韓国ベストセラー書、衝撃の内容

    「独島が韓国の領土であるとの証拠は何もない」韓国ベストセラー書、衝撃の内容

    韓国外務省のイ・サンリョル・アジア太平洋局長代理は9月27日、日本政府が同日の閣議で了承した2019年版の防衛白書は日本の周辺国の軍事動向を説明する部分で、前年版と同じく「わが国固有の領土である北方領土や竹島の領土問題が依然として未解決のまま存在する」と記したことを受け、在韓日本大使館の実生泰介公使(総括公使代理)を呼び抗議した。

    「不快でも仕方ない」

    また、韓国国防省も同様に、在韓日本大使館の武官を呼んで抗議している。

    韓国において「独島(竹島)問題」は、他の歴史問題と同じく非常に敏感なイシューだ。他の歴史問題については「もう過去のことだから」という見方も出来るが、領土問題は現在進行形であるだけに、いっそう難しいとも言える。

    もっとも、韓国は島を実効支配しているのだから、日本からの抗議に「聞こえないふり」を決め込む方が得策ではないかとも思えるが、韓国国民としては、「また日本に国を取られる」との恐怖感があるのかもしれない。

    そんな敏感な問題にもかかわらず、韓国のベストセラー書籍『反日種族主義』は、「独島問題」について、韓国における定説を覆す主張を展開している。

    李栄薫(イ・ヨンフン)元ソウル大学教授ら6人の研究者が執筆した同書は植民地統治下の朝鮮半島で「日本による土地やコメの収奪はなかった」「従軍慰安婦の強制連行はなかった」などと主張し、韓国で物議を醸している。

    同書に書かれている「独島問題」に対する見解の詳細は、おそらく日本では数多く論じられてきた内容であると思われるため省略するが、李栄薫氏の次の記述は韓国国民にとっては衝撃的だろう。

    「今日、韓国政府が独島問題を国際司法裁判所に持ち込もうという日本政府の主張を受け入れられない境遇にあることは、皆がよく知る事実です。率直に言って、韓国政府が、独島が歴史的にその固有の領土であることを証明するために、国際社会に提示できる証拠はひとつも存在しないのが実情です。読者の皆さんは不快に思うかも知れませんが、国際司法裁判所の公平な法官たちは、そのように判断するはずです。私はひとりの知識人として、その点を指摘せずにはいられません」

    もちろん、同書に対しては韓国国内で様々な反論が出ており、これがかならずしも日韓の歴史の「決定版」とは言えない。ただ、「独島問題」が同国内で論争になったこと自体、これが初めてだろう。

    (参考記事:「この国は嘘つきの天国」韓国ベストセラー本の刺激的な中身

    しかしだからと言って、韓国世論がこの問題で日本の見方に歩み寄ることはないだろう。今後、ほかの歴史問題が解決することがあるのかないのかもわからないが、仮に解決していくにしても、「独島問題」は最後の最後まで残り続けるように思える。

  • 「GSOMIA破棄で損害を被るのは韓国」米有力者が断言

    共同通信によれば、28日までにソウルで海外メディアと会見した韓国政府高官は、「日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)は、北朝鮮のミサイル発射探知のため韓国以上に日本が必要としていると強調した」という。

    GSOMIAの破棄を宣言し、米国から繰り返し不満を表明されるなど外交的な立場がいっそう苦しくなっている韓国だが、この高官の弁は、苦し紛れの強がりにしか聞こえない。

    実際のところ、日韓のGSOMIAが締結された2016年当時、この協定締結をより望んでいたのは韓国側なのだ。韓国国防省は当時、GSOMIA締結の必要性について次のように強調していた。

    「高度化、加速化、現実化している北の核・ミサイルの脅威などに対し、日本の情報能力を活用することで、われわれの安保利益を高めることができる。北の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に関連する情報を得るのに実質的に役立つと期待される」

    現在建造中とされる北朝鮮の弾道ミサイル潜水艦は、東海岸の海軍基地に配備されると見られている。ということは、朝鮮半島有事には日本海に出撃してミサイルを発射する可能性が高いわけだが、そうなると、韓国は自軍レーダーの探知範囲の外から撃たれる形になる。だから、日本海を常時監視している日本の情報が必要だということだ。

    そのような経緯を忘れたのか忘れた「ふり」でもしているのか、件の高官の発言はあまりに軽薄だ。

    そんな具合だから、米国から韓国への警告の声も止まない。

    (参考記事:「そんなの嘘だ」…米国政府「文在寅」名指しして不満爆発

    米ヘリテージ財団の創設者で、トランプ米大統領とも近いとされるエドウィン・フールナー氏は27日、韓国紙・朝鮮日報とのインタビューで、「GSOMIAを破棄し、対立する状況が続けば、最終的に損害を被るのは韓国だ」と断言している。同紙によれば、フールナー氏は人差し指、中指、薬指を立て「韓米日はこのように緊密な関係を維持すべきだ。中国とロシアの面前で韓日が歴史問題で引き続き争うよりも、南シナ海問題など共同の利害がある分野で協力できることを見いだしてほしい」と述べたという。

    これは翻して言うと、韓国が歴史問題を理由にGSOMIAに象徴される3国の協力を傷つければ、それは「南シナ海問題など共同の利害」に対するダメージにつながり、韓国がその責任を問われかねないという意味の警告と言える。

    GSOMIAを維持しても破棄しても、歴史問題を巡る日韓対立で、どちらかが有利になったり不利になったりすることはない。いや、米国の機嫌を損ねた分だけ、韓国の方が不利だ。文在寅政権は早くそのことを認め、破棄の決定を撤回した方が身のためなのだが、そのことを文大統領は果たして理解しているのだろうか。

    (参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感