過激化するデモ、セウォル号の遺族たちは何に憤っているのか…「子供が消えた街」からのレポート

私も取材の手掛かりを求めてこの報告書を入手したが、あまりに内容が幅広く、全容を把握するのに数日を要したほどだ。

しかも、前掲書で提起された疑惑の多くは、この報告書がまとめられた後、新たに提起されたものなのである。その様を見守る遺族たちは、疑惑の渦に飲み込まれるような気持ちだったに違いない。

街全体から犠牲者が……

2014年8月中旬、韓国・安山市を訪れた。セウォル号に修学旅行のために乗り込み、260人以上の生徒・教師らが犠牲となった檀園高校の地元だ。そこで聞いた遺族団体関係者の言葉に、私は思わず耳を疑った。

「産経新聞は、あの記事をよく書いたと思いますよ」

産経の“あの記事”とは、同年8月3日付の同紙電子版に掲載されたソウル支局長のコラムのことだ。沈没事故の当日、朴槿恵大統領が7時間にわたり所在不明となり、その間に「男性と密会していたのでは」と匂わせたことが問題視された。その後、同支局長が韓国検察により刑事訴追されているのは周知の通りである。

韓国人の間でも、検察の行き過ぎを指摘する声は少なくない。それでも、「記事の内容は別として」などと前置きするのが普通だ。産経に対する手放しの「称賛」は、政府に対する強烈な不信感の表れに他ならない。

「あの団地では、同じ棟の20人近い子供たちが亡くなりました。あっちの町内でも、同じぐらいの犠牲者が出ています……」