投稿者: DailyNK Japan

  • 「愚かな決定」「偏狭なミス」米専門家ら文在寅批判の大合唱

    「愚かな決定」「偏狭なミス」米専門家ら文在寅批判の大合唱

    米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)は韓国語版ウェブサイトで18日、米国の元高官や軍人、専門家20人を対象にアンケート調査をした結果、19人が韓国政府による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を批判したと伝えた。

    GSOMIAは韓国政府が破棄の決定を撤回しない限り、22日いっぱいで終了となる。米国政府は韓国政府の説得に全力を傾けているが、文在寅政権は日本側の輸出規制強化措置の撤回が先行すべきとの立場を変えていない。一方、日本政府がこれに応じる兆候はなく、GSOMIAはこのまま終了となる可能性が高い。

    そのような状況下、米政府系のメディアがこうした企画を組むこと自体、韓国に対する圧力の一環であるように思える。実際、VOAの記事には、米専門家たちの遠慮会釈もないコメントが並ぶ。

    「納得いかない」

    たとえば、ワシントンDCの有力シンクタンクのひとつ、アトランティック・カウンシルのロバート・マニング研究員は次のように語る。

  • 「韓国は腹立ちまぎれに自害した」米国から見たGSOMIA問題の本質

    韓国の聯合ニュースによれば、青瓦台(大統領府)のコ・ミンジョン報道官は15日に出演したラジオ番組で、失効期限が迫る韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)について「日本の態度に変化がない限り韓国政府もGSOMIA終了の決定を覆すのは難しい」との立場を明らかにしたという。

    韓国の文在寅政権は、日本が韓国への輸出規制強化措置を取ったことへの報復として、GSOMIAの終了――つまりは破棄を決定した。ところが、北朝鮮だけでなく中国やロシアへの対抗上、日韓にも増してGSOMIAを重要視する米国が猛反発。米韓同盟を揺るがす事態に発展しており、韓国国内では終了決定の撤回を求める声が多く上がっている。

    しかしコ報道官は、「韓日関係に何の変化もない状況の中で、われわれが後先を考えずにGSOMIA終了を覆すことになれば、終了決定が慎重でなかったという話になる」として、終了決定の撤回はあくまで日本の態度変化が前提だと強調したという。

    しかし現状を踏まえれば、この説明自体が、韓国の国益に反していることは誰にでもわかる。

    終了決定を撤回すれば、文在寅政権は強い批判を浴びるだろう。だが少なくとも当面は、米韓同盟の動揺はやわらぐ。つまり、文在寅政権の利害と韓国の国益は矛盾しており、政権は国益よりも自分たちの政治的利益を優先しているということなのだ。

    そもそも、米国は文在寅政権による終了決定前から、韓国にGSOMIA延長を求め続けていた。

    (参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感

    それにもかかわらず終了を決定したのは、GSOMIAを人質に取って米国に日本を説得させるしか、輸出規制強化から逃れる術を思いつかなかったからだろう。その挙句の強行突破が裏目に出ているわけだから、コ報道官が危惧するとおり、文在寅政権の「終了決定が慎重でなかった」わけなのだ。

    こうして生まれた状況についてワシントンDCのシンクタンク、民主主義防衛財団(FDD)のデビッド・マクスウェル主任研究員は韓国紙・中央日報とのインタビューで「GSOMIA中断の決定は(韓国が)腹立ちまぎれに自害した格好(Cutting off the nose to spite the face)だ」と語っている。なかなか絶妙な表現だが、事態はさらに悪くなっている。韓国は今や、文在寅政権と「心中」させられる瀬戸際だ。

    (参考記事:「韓国外交はひどい」「黙っていられない」米国から批判続く

    朝鮮日報によれば、米国政府関係者は「韓国が我々の立場を受け入れていないなら、『パーフェクト・ストーム(最悪の状況)』に見舞われるかもしれない」とまで言って、GSOMIA延長を求めているという。しかし文在寅氏は、このまま「腹立ちまぎれに自害」してしまう可能性が非常に高い。果たしてその後、どんな事態が巻き起こるのだろうか。

  • 国際人権団体も指摘する、文在寅政権「拷問禁止条約」違反の疑い

    北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)のマイケル・カービー元委員長は14日までに、韓国政府が北朝鮮の漁船員2人を北に強制送還したことについて、「憲法的、法律的、行政的な制限があるはずだ」との見解を、米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対して述べた。

    韓国政府は7日、亡命意思を示していた北朝鮮の20代男性2人を、漁船上で同僚16人を殺害した疑いがあるとの理由で板門店(パンムンジョム)から追放し、北朝鮮側に引き渡した。しかし、殺害の容疑は客観的な捜査で立証されたものではない。

    様々な拷問

    また、北朝鮮を正当な国家と見なさず、すべての北朝鮮国民を自国民として扱う韓国の憲法解釈によれば、刑事事件の犯人であろうがなかろうが、韓国政府は本人の意思に反して脱北者を北に送り返すことはできない。

    そのため今回の強制送還については、韓国国内の人権団体のみならず、国際社会からも批判の声が上がっている。

    国際人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は12日付の報道資料で、今回の韓国政府の措置が、国連拷問禁止条約に違反すると指摘した。報道資料は「北朝鮮の司法体系は極度に残忍で、(船員2人が)拷問される可能性があるのに彼らを北朝鮮に送り返したことは国際法上違法」としながら「韓国は2人に対する容疑を徹底的に調査して、彼らが北送されることに十分に異議を提起する機会を与えるべきだった」と指摘している。

    国連拷問禁止条約は第3条において、「締約国は、いずれの者をも、その者に対する拷問が行われるおそれがあると信ずるに足りる実質的な根拠がある他の国へ追放し、送還し又は引き渡してはならない」と定めている。

    北朝鮮国内で、様々な形の拷問が横行しているのは国際社会で広く認識された事実であり、今回の措置は明らかに同条約に違反している。

    (参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

    国連総会第3委員会(人権)は14日、北朝鮮の人権侵害を非難する決議案を議場の総意により無投票で採択した。同趣旨の決議採択は15年連続だ。12月に総会本会議で採択される見通しだが、それまでの議論において、今回の強制送還についても批判的に言及されるべきではないだろうか。

  • 金正恩キモ入り「高級リゾート」で続発する悲劇の背景

    金正恩キモ入り「高級リゾート」で続発する悲劇の背景

    金正恩党委員長が進める、北朝鮮北部の三池淵(サムジヨン)の再開発。「革命の聖地」として知られるとともに、風光明媚な景勝地でもあるが、その中心地に高級リゾート都市を建設するというメガプロジェクトだ。

    現場には多くの兵士や労働者が動員されているが、冬は氷点下20度以下まで下がる厳しい寒さに襲われ、労働環境が悪い、事故が多発しているなどと悪評が立っていて、動員を嫌がる人が多い。あまりに人が集まらないため、当局が美装工を騙して三池淵の現場に連れて行こうとしたが、それに気付いた人々はトラックから飛び降りて逃げてしまったという。最高指導者の権威を傷つけたら、どんなひどい目に遭わされるか、じゅうぶんに理解しているにもかかわらずだ。

    (参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

    ひどい環境を改善することなく、その責任を現場に丸投げする北朝鮮当局の体質が、貴重な人命を奪う結果となった。

    現地の情報筋によると、先月末に、平安南道(ピョンアンナムド)から突撃隊(半強制のタダ働き労働者部隊)として三池淵に派遣されていた労働者1人が、トウモロコシを満載し雲興(ウヌン)郡の白岩嶺(ペガムリョン)を走っていたトラックから転落し、崖から滑落した。

    労働者は、木の幹にぶつかった状態で発見されたが、既に事切れた後だったという。実は、盗みの途中で足を滑らせたことによる悲劇だった。なぜこんなことが起きたのか。

    三池淵はすでに、朝晩は氷点下10度近くまで冷え込んでいる。暖を取るための薪や冬服、充分な食糧があってしかるべきだが、当局は建物の建設に必要な資材の供給は行っても、そこで働く労働者に対する配給はろくすっぽ行っていない。そのため、労働者自らが「自力更生」、つまり現地で自力で調達する必要に迫られた。

    突撃隊の指揮部は各部隊に対して「越冬準備を行え」との指示を下したが、平安南道大隊にはこれといった策がなかった。それでも、各小隊に上からの越冬準備を指示をそのまま丸投げした。

    小隊は、労働者を出身地ごとに割り振って自宅に戻らせ、食糧や現金を入手して戻るように指示した。ただ、それすらままならない小隊は労働者に「自主解決せよ」との指示を下した。

    平安南道出身の労働者2人は、市場に向かったものの食糧や薪を買う現金がなく、途方に暮れてさまよい歩いていた。ちょうどそのとき、峠の向こうからトウモロコシを満載したトラックが走ってくるのが見えた。

    2人はトウモロコシを盗むことにした。トラックが坂道でスピードが落ちているすきに密かに飛び乗り、トウモロコシの入った50キロの袋をいくつか荷台から投げ下ろした。車から飛び降りようとしたところ、1人が足を滑らせて崖から滑落し、死亡したというのだ。

    死亡事故の発生を受け、平安南道の大隊長が更迭されるなど、関係者の処分が行われたが、元はと言えばきちんと配給を行わない当局の責任だ。

    家に返して現金を調達させても、幹部が着服してしまい、末端の隊員の福利厚生に使われることはない。それは人が死んでも変わることはない。

    両江道は平均海抜が1000メートルに達する山間地帯で、道路事情も極めて劣悪で、事故が頻発している。昨年3月には、アイスバーンによる交通事故が多発し、たった1日で300人もの死者を出す凄まじい事態となった。

    (参考記事:北朝鮮で「凄まじい交通事故」が多発する理由

    今回事故が起きた白岩嶺では、鉄道事故も多発している。

    2010年11月初旬に首都・平壌から恵山に向かっていた急行列車が転覆し、客車が山から滑落する事故が起き、数百人の死傷者が発生した模様だと、北朝鮮向けのラジオ局の自由北韓放送が伝えている。また、2008年と2010年にも列車事故が発生し多数の死傷者を出している。

    (参考記事:北朝鮮北部でまた列車事故、16人死亡

  • 米国が繰り返し「ウソ」を指摘…文在寅「国家安保室」の暴走

    米国が繰り返し「ウソ」を指摘…文在寅「国家安保室」の暴走

    韓国政府は7日、北朝鮮の20代男性2人を、南北の軍事境界線にある板門店(パンムンジョム)を通じて北朝鮮に追放した。2人は韓国に亡命する意思を示していたにも関わらず、強制送還したのだ。韓国が脱北者を強制送還したのは、これが初めてのケースだ。

    統一省はその理由について、2人は乗務していたイカ釣り漁船の船上で同僚16人を殺害したと見られており、「重大な犯罪であり、韓国の国民の生命や安全の脅威となる。凶悪犯罪者として、国際法上の難民としても認められないと判断した」と説明している。

    しかし16人殺害の疑いは、客観的な捜査によって立証されたものではない。仮に事実だとしても、強制送還は韓国の憲法や各種の国際法に違反する可能性が高い。ろくに調査も行わず拙速に強制送還を実行した政府の措置には、韓国の国内外から強い批判が出ている。

    ホワイトハウスの怒り

    韓国紙・東亜日報は11日、「北朝鮮への追放決定は、管轄機関である統一部(省)と国家情報院が独自の意見を出さず、国家安保室が職権で決定した」と伝えた。国家安保室は青瓦台(大統領府)に置かれている行政機関で、国家の安全保障に関わる大統領の職務を補佐する。

    東亜日報の報道を受け、統一省は同日、「青瓦台の安保室と関係官庁が緊密に協議し、決定した」と反論するコメントを出した。しかし、国家安保室の単独での決定は否定したものの、同室が主導したことは認めている。

    国家安保室はこのところ、様々な場面で悪名が高い。

    今月初め、同室の鄭義溶(チョン・ウィヨン)室長は国会運営委員会の国政監査で、「北朝鮮が移動式発射台(TEL)で大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射するのは困難」と主張した。これに対し、韓国国内では一気に非難の声が噴出し、米国科学者連盟非常勤シニアフェローのアンキット・パンダ氏もツイッターで「韓国の国家安保室長が『開いた口がふさがらないほどの大うそ』をついた」と批判した。北朝鮮は2017年だけで3回もTELからICBMを発射しているのだから、当然の反応と言える。

    国家安保室長がこのような事実のわい曲を行うのは、南北対話に執着する文在寅大統領の意向に沿い、北朝鮮の脅威を過小評価するためだろう。またこの出来事を考え合わせると、冒頭で言及した脱北者の強制送還も、北朝鮮の顔色をうかがうためだったのではないかと疑わざるを得ない。

    国家安保室は韓国政府による日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を巡っても、米国からの非難の的になっている。韓国紙・朝鮮日報によれば、ホワイトハウスの高位関係者は、同室の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)第2次長がGSOMIA破棄について米国の理解を得ていたと取れるような説明をしていたことについて「嘘だ」と強く否定したという。

    (参考記事:「韓国外交はひどい」「黙っていられない」米国から批判続く

    韓国の安全保障の指令となるべき機関が、逆に国家安保をき損する役割を果たしているわけだ。国家安保室は今後、野党やメディアから集中的な検証を受ける可能性が高い。そこで明らかにされる内幕のあり方によっては、文在寅政権そのものが大きく揺らぐ事態につながるかもしれない。

  • 「そもそも日本に請求できるものはなかった」韓国ベストセラー日本上陸の破壊力

    「そもそも日本に請求できるものはなかった」韓国ベストセラー日本上陸の破壊力

    この夏、韓国の大型書店で軒並みベストセラーを記録した書籍『反日種族主義』の邦訳本が、もうすぐ日本で発売される。

    李栄薫(イ・ヨンフン)元ソウル大学教授ら6人の研究者が執筆した同書は植民地統治下の朝鮮半島で「日本による土地やコメの収奪はなかった」「従軍慰安婦の強制連行はなかった」などと主張し、韓国で大いに物議を醸した。

    韓国の左派からは同書に対し、「日本の公式見解をそのまま引き写したものだ」などという批判が浴びせられたが、一読してみれば、それがまったく的外れであることがわかる。例えば、娘の進学や一族の投資を巡りスキャンダル塗れとなり、就任早々に辞任したチョ・グク法相は、同書を読みもせずに「ゴミ」呼ばわりした。

    しかし、いかに彼らの歴史認識とかけ離れていても、同書は決して「ゴミ」などではない。ていねいに検証すべき立派な論考である。

    それに李栄薫氏らは決して、日本による朝鮮半島支配を美化しているわけではない。その時、何が、どのようにして起きたかを再現することに努めているだけだ。そしてその目的について同氏は、本の序盤で述べている。

    同氏によれば、韓国の歴史家が日本の朝鮮半島支配について事実を誤解したりわい曲したりするのは、「日帝が朝鮮を支配した目的、メカニズム、結果、その歴史的意義を理解できなかった」からだという。たしかにこれらを理解できなければ、歴史論争がまともなものになるはずがない。同書の著者らは、この点についての認識の修正を試みたわけだ。

    それでも、日韓の国交正常化交渉では「そもそも(韓国側が日本に)請求するものなどなかった」などとする同書の主張は、反日に染まった韓国左派には到底、直視できないものかもしれない。しかし、どうしてそのように言えるのかについて目を向けなければ、議論をリードすることはできない。

    恐らく、韓国でベストセラーになった同書を、日韓の歴史問題に関心を持つ多くの日本人が手に取るだろう。そして韓国側との論戦に備え、大いに参考にするかもしれない。同書で理論武装した日本側の論客は、従来にも増して強力になるのではないか。そのような強力な主張と向き合ったとき、同書を読みもせず「ゴミ」呼ばわりした韓国左派は、大いに後悔することになるかもしれない。

    (参考記事:「この国は嘘つきの天国」韓国ベストセラー本の刺激的な中身

  • 北朝鮮軍で兵役中のわが子が謎の死。怒り狂う親たち

    北朝鮮軍で兵役中のわが子が謎の死。怒り狂う親たち

    北朝鮮では徴兵制、すなわち「兵役義務」が課せられている。その期間は、世界的に長いと言われるイスラエルの3年を大幅に上回り世界最長の10年。それですら、一時期の13年よりは短くなったものだ。

    兵役期間中に自宅に戻ることは難しく、連絡を取ることも容易ではない。長い兵役を終えて自宅に戻ったら、両親が亡くなっていたという悲劇的な出来事も起きる。

    (参考記事:北朝鮮で注目「赤い自転車の女」殺人事件の顛末

    そんな中で、北部両江道(リャンガンド)出身の20代の兵士は恵まれた環境にあったと言えよう。皆が羨む首都・平壌の部隊に配属されることとなり、入隊後わずか2年で両親と会えるチャンスが巡ってきた。しかし、家族の再会が叶うことはなかった。

    現地のデイリーNK内部情報筋によると、両江道に住む50代の両親は、平壌に向かった。息子が配属された部隊から洞事務所(末端の行政機関)を通じて「至急来られたし」との通知を受けたからだ。事情がわからないまま、息子に会えると喜び勇んで平壌に向かったが、そんな両親を待ち受けていたものは、戦死証、つまり死亡通知だった。死因についての説明はなく、遺体すら引き渡されなかったという。

    (参考記事:「事故死した98人の遺体をセメント漬け」北朝鮮軍の中で起きていること

    両江道に戻った両親は泣き暮らし、母親は嗚咽と失神を繰り返すほどの状況だったという。

    息子は平壌の北東、三石(サムソク)区域にある朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の91訓練所に配属されていた。訓練所を名乗っているが、実際は平壌防衛司令部だ。息子が平壌の部隊に配属されたというのが、両親の自慢だった。成分(身分階級)がよい者しか平壌勤務は認められないことから、この一家はそれなりの成分に加え、カネとコネを持ち備えていたのだろう。

    脱北者によると、兵士が戦闘、訓練など任務遂行中に死亡すれば、戦死者として処理される。一方で、個人活動中の事故や病気、規則違反の行為で死亡すれば戦死者とみなされない。

    この兵士が戦死扱いされたことを考えると、任務遂行中の何らかの事故で死亡した可能性がある。一方で、部隊は両親に死亡通知を手渡しただけで、死因については一切説明しなかったことは、兵士が病死または指揮官の過失で死亡に至った可能性が考えられる。

    ちなみに、一命をとりとめたが障害を負ってしまった人には「栄誉軍人」の称号が与えられ、職業や配給の面で優遇されていた。おそらく、戦死扱いになった兵士の家族も、様々に優遇されていたのだろう。今でも、公式には社会的地位が高いが、1980年代以降に国の様々なシステムが崩壊して以降は、福祉の恩恵から事実上除外され、苦しい生活を強いられるようになってしまった。

    (参考記事:「革命の道具」として使われる北朝鮮の女性たち

    悲しみと怒りに震える遺族は、朝鮮労働党に対して信訴を行ったとのことだ。信訴とは、中国の「信訪」と同様に、理不尽な目に遭った国民が、そのことを政府機関に直訴するシステムで、一種の「目安箱」のようなものだ。

    信訴が取り上げられれば、調査が行われ、その結果に従って処分が行われるが、加害者から報復されることもあるため、強力なコネがなければ、そうおいそれと訴えるわけにもいかない。

    (参考記事:「訴えた被害者が処罰される」やっぱり北朝鮮はヤバい国

    この両親は、周りの人たちに悔しさを訴え、軍に対して怒りを爆発させている。それを聞いた人たちは「人民の軍隊が、息子を送り出した親にあんな扱いをするなんて、国が無茶苦茶になっている」との反応を示しているという。

    「人間中心の社会主義」を標榜する北朝鮮だが、人の命が軽く扱われている事例は枚挙にいとまがない。

    (参考記事:北朝鮮で「ダム崩壊」の危機…軍兵士らの死亡事故も多発

  • 文在寅政権の破滅を呼ぶ「憲法違反」の重大疑惑

    文在寅政権の破滅を呼ぶ「憲法違反」の重大疑惑

    韓国政府は7日午後、北朝鮮の20代男性2人を、南北の軍事境界線にある板門店(パンムンジョム)を通じて北朝鮮に追放した。

    追放後に韓国統一省が発表したところによれば、2人は今月2日に日本海上で拿捕(だほ)した北朝鮮のイカ釣り漁船の船員で、船内で16人の乗組員を殺害し、逃亡していたものとみられるという。韓国政府が5日、北朝鮮側に2人の追放の意思を伝えたところ、6日に北朝鮮側から引き取るとの返事があったという。

    2人は韓国に亡命する意思を示していたとされ、追放は事実上の強制送還に当たる。韓国政府が亡命意思を持つ北朝鮮国民を強制送還したのは初めてだ。その理由について統一省は、「重大な犯罪であり、韓国の国民の生命や安全の脅威となる。凶悪犯罪者として、国際法上の難民としても認められないと判断した」としている。

    しかし、この措置には韓国の国内外から厳しい批判の声が上がっている。デイリーNKと同一グループの国民統一放送など、韓国と米国の18の人権NGOは11日、共同声明を発表。文在寅政権による強制送還措置の違法性を指摘した。

    では一体、何が問題なのか。

    まず、2人に犯罪の容疑があったならば、十分に時間を割いて、真相を徹底的に究明するのが先決だった。しかし、韓国政府による調査期間はわずか5日であった。送還の翌日、韓国政府はイカ釣り漁船も北朝鮮当局に返還した。犯罪の事実を見極めるための重要な証拠資料を処分したのである。

    次に、統一省は2人が凶悪犯罪者だったことを理由に、また「北朝鮮離脱住民の保護及び定着支援に関する法律」第9条を根拠に強制送還を正当化しているが、これも話にならない。この条項は、脱北者を「保護対象者として決定していないことができる」としているだけで、どこにも追放への言及はないのだ。

    韓国政府が同法に基づいて脱北者を保護対象者として決定した場合、その脱北者は政府から定着支援金や住宅・教育・医療・雇用面での支援を受ける。犯罪の前歴を理由に保護対象にならなかったら、これらの支援を受けられなくなるだけだ。

    そもそも大韓民国の憲法や各種の法律には、同国に入国した北朝鮮国民を、本人の意思に反して強制的に送還できる規定はない。また、北朝鮮との間に犯罪人の引き渡しに関する取り決めもない。それ以前に、朝鮮半島全体を自国の領土としている韓国の憲法によれば、北朝鮮は国家として認められておらず、北朝鮮国民は韓国の国民ということになる。それにもかかわらず、件の2人について適法な司法手続きも行わず、北朝鮮に引き渡してしまったというのは、憲法違反の疑いありということになる。

    実際、韓国に潜入した北朝鮮の武装工作員が、銃撃戦で韓国軍兵士らを殺傷した末に逮捕・収監され、後に転向して亡命の意思を示し、韓国国民として社会生活を送っている例もあるのだ。

    今回の場合、16人殺害が仮に事実であっても、捜査の結果として立証できず、本当は凶悪犯である2人を韓国社会に放ってしまうリスクはあったかも知れない。それに、北で犯した殺人を韓国で裁けるのか、という問題もある。しかしそれとて、事実の見極めがない時点での心配事であり、憲法違反を犯してよい理由にはならない。

    また韓国政府は、2人が北に送還された場合、拷問などの虐待を受ける蓋然性が高いと認識できる立場にある。韓国政府が批准している国連拷問禁止条約は第3条において、「締約国は、いずれの者をも、その者に対する拷問が行われるおそれがあると信ずるに足りる実質的な根拠がある他の国へ追放し、送還し又は引き渡してはならない」と定めており、送還は同条約に違反している。

    (参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

    そしてさらに由々しきは、韓国政府がこの一件を、国民の知らぬ間に処理しようとしていた形跡があることだ。韓国メディアが途中で送還の情報をつかんでいなければ、政府は送還が行われるまで何も発表しないか、あるいはまったく隠ぺいしてしまったかもしれない。

    また、送還の決定は主務官庁であるはずの統一省や国家情報院ではなく、青瓦台(大統領府)の国家安保室が主導している。国家安保室は日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄や北朝鮮の弾道ミサイル能力評価を巡り再三にわたって「ウソ」が指摘されるなど、このところ悪名が高い。

    憲法違反の疑いが絡む事柄だけに、この問題に対する野党やメディアの追及は激しいものになるだろう。もしかしたら、文在寅政権の命取りにもなりかねない。

    それにしても、青瓦台はなぜ、このような敏感な問題で、これほどリスキーな行動に出たのだろうか。

  • 兵士と農民が大乱闘…北朝鮮「食べ物の恨み」で社会に亀裂

    兵士と農民が大乱闘…北朝鮮「食べ物の恨み」で社会に亀裂

    国際社会の制裁に加え、相次ぐ自然災害に苦しめられている北朝鮮。国連世界食糧計画(WFP)の報告書によると、今年の小麦、ジャガイモ、トウモロコシ、コメなどの作物の収穫量は平均以下だった。朝鮮人民軍(北朝鮮軍)は、食糧を確保するために、各地の協同農場に部隊を展開している。

    平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、「道内の肅川(スクチョン)郡の協同農場には農民より兵隊の数の方が多い」状況だと伝えた。兵士たちは、農場の脱穀場や倉庫で監視に当たっており、稲刈りの現場に出て監視するケースすらあるという。

    この軍部隊では、司令官と政治委員から「今年の作況はよくないが、軍糧米は何が何でも確保しなければならない、手段を選ぶな」との指示が下された。それを受けて食料確保担当の糧食参謀は、農民が軍に納める軍糧米をちょろまかさないように、兵士を多数動員して監視に当たらせているというわけだ。

    軍は、食糧の多くを協同農場からの供給に頼っているが、凶作で収穫量が少ないので、確保を指示されたノルマを満たすために、必死になっているということだ。そうせねば、腹をすかせた兵士たちが協同農場や民家を襲撃したり、国境を超えて中国で盗みを働いたりする事態になりかねない。

    (参考記事:北朝鮮からの越境犯罪に激怒か…中国側から「悪口」放送

    しかし、あまりに強引なやり方のせいで、トラブルが続出している。

    別の情報筋によると、道内の平城市の慈山(チャサン)協同農場では、軍糧米の徴収にやってきた糧食参謀と、農場の幹部との間で大げんかが起きた。

    事の発端は、次のようなものだった。

    軍は、脱穀だけして精米もしていない状態で次から次へとコメを運び出していた。それを見かねた農場の作業班長と技術指導員は「米粒に含まれた水分が多いので、よく乾燥してから持っていけ」と糧食参謀に助言した。しかし、「かまわない、このままで持っていく」と糧食参謀が反論したことから、喧嘩になったという。

    農場幹部は、親切心からそんな助言をしたわけではない。軍糧米として奪い取られるコメを少しでも奪い返すチャンスをうかがうために、出荷を遅らせようとしていたのだ。

    最初は口論から始まり、徐々にエスカレート。糧食参謀が技術指導員に殴りかかったことで、周りにいた農民と兵士が加勢して、乱闘騒ぎとなった。事態を収拾するために兵士は空砲を撃った上で、実弾の装填された銃を農民に向けたが、農民は「人民の生命と財産を守るため、農作業に励み、兵士たちが腹をすかせないようにしてきたのに、その農民に銃を向けるなんて」と怒り心頭だ。

    (参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

    本来なら処罰されてもおかしくない行為だが、軍の内部ではむしろ「よくやった」と称賛する空気が濃く、糧食参謀は表彰を受け、昇進する見込みだという。

    (参考記事:金正恩氏「堪忍袋の緒が切れた」ドロボー兵隊集団に厳罰

    コメを巡る軍と農民のトラブルは、農民の間にも亀裂をもたらしている。

    別の情報筋によると、平原(ピョンウォン)郡の大井里(テジョンリ)では、農民と協同農場の統計員との間のトラブルが深刻な事態をもたらした。

    30代中盤の女性の統計員は、軍糧米の徴収にやって来た護衛局旅団の糧食参謀に自分の家を宿として提供して不当に利益を得るだけでなく、軍と一緒になって「コメを出せ」と農民に迫った。

    まるで軍から来た担当者のように横暴に振る舞う統計員に対して、農民の間で不満が高まりつつあったが、何らかのきっかけで小競り合いとなり、頭にきた農民たちは統計員に向かってこんな言葉を吐いた。

    「治安隊のように振る舞うな」

    治安隊とは、朝鮮戦争当時に、韓国軍と国連軍が占領した地域で行政や治安を担当した組織だが、「アカ」の監視・摘発を行い、虐殺に及ぶことも少なくなかったため、北朝鮮ではならず者の代名詞のようになっている。

    朝鮮戦争後の北朝鮮社会では、治安隊に携わった本人はもちろん、その家族も子孫も敵対階層として、様々な社会的不利益をこうむっている。父親が治安隊の隊長であったことを隠し、石材加工工場の支配人の座に登る詰めた男性は、多くの人が見守る中で銃殺刑に処された。

    (参考記事:北朝鮮の工場支配人、身分を偽っただけで公開処刑される

    北朝鮮において、他人を治安隊呼ばわりすることは、相手に非常に強いショックを与える罵倒と受け止められる。

    案の定、この発言が問題となった。統計員が党委員会に信訴(通報)したのだ。彼女を治安隊呼ばわりした農民はことごとく、党委員会と保衛部に呼び出されるはめになった。うち数名は未だに保衛部から釈放されていない。

    (参考記事:「指揮官が遅刻するから戦闘準備できない」金正恩氏のポンコツ軍隊

  • 北朝鮮で「見せしめの刑」の犠牲にされた18才少女の悲劇

    国際社会の制裁により、主力輸出品の石炭、海産物などが禁輸品目となり、外貨が国内に流入しないことから不況となっている北朝鮮。市場で商売して稼ぐなけなしのカネで生計を立てていた庶民は、生活苦にあえいでいる。

    そんな中、売春をしていた容疑で18歳の女子学生が逮捕される事件が起きた。当局者は、犯罪抑止に利用しようと見せしめにしているが、庶民の間からは同情の声が上がっている。

    平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、先月初旬に平城(ピョンソン)で公開裁判が行われた。しょっぴかれて来たのは、18歳の女子学生だ。ただし、高級中学校(高校)に通っているのか、大学に通っているのかは定かでないとのことだ。
    あなたにおススメ:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…

    北朝鮮では刑法249条の1の規定により、売春行為を行っていた者は1年から5年の労働教化刑(懲役刑)が課されることになっている。また、2014年には、刑法60条「国家転覆陰謀罪」に売春も含めた。最高刑は死刑で、実際に適用された事例もある。

    だが、死刑にされるのはよほど運が悪かったケースで、売春なら300ドル(約3万2400円)から500ドル(約5万4000円)のワイロを払えば、軽い処罰で済ませるか、その場で釈放してもらえるというのが、情報筋の説明だ。

    早くに父親を失った彼女は、母親と貧しい暮らしをしてきたが、少しでも生活の足しになればと、放課後に密かに売春を行っていたことが発覚し、逮捕された。

    売買春の取り締まりは、金正恩党委員長が力を入れている政策のひとつだ。摘発強化キャンペーン中にでも引っかかれば、重罰を受けることになる。そしてき北朝鮮では現在、金正恩氏肝いりの風紀取り締まり運動が続いている。

    しかし、この少女が売春を始めたのは、そもそも生活苦が理由だ。それでも、彼女にワイロに大金を積む余裕があるはずもなく、結局教化所(刑務所)に行くことになった。

    (参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

  • 「犯人を死刑に」ある性犯罪に憤る北朝鮮世論の歪んだ背景

    昨今の国際社会の制裁による経済難で北朝鮮の治安が悪化し、犯罪が増加していると伝えられる中、北東部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)で、20代女性が殺害される事件が起きた。

    現地の情報筋によると、事件が起きたのは9月下旬のこと。咸鏡北道の穏城(オンソン)の中心部から江岸里(カンアンリ)を結ぶ道路沿いの貯水池で、近隣住民が体が半分水に浸かった状態の女性の遺体を発見した。

    女性は23歳で、穏城の中心地で教養員養成教育を終えて帰宅途中だった。保安署(警察署)は、現場で確保した証拠と、商店での聞き込み捜査を行った上で、容疑者を特定し、逮捕した。

    逮捕されたのは、在北朝鮮華僑の30代男性。容疑者は、通りで見かけた被害女性に声をかけ、自分が乗っていたバイクに乗せた。途中で道路から外れて人気のないあぜ道に入り、Aさんに性的暴行を加えた上で殺害、遺体を貯水池に遺棄した。二人の間に面識はなかったという。

    情報筋は、保安署関係者の話として、事件の概要を次のように説明した。

    「バイクに乗せて行く途中で商店に立ち寄ってビールとつまみを買って飲みながら数回に渡って性的関係を要求したが、拒否されて逃げられそうになった。それで頭に来て性的暴行を加え殺害した」

    逮捕された容疑者は、北朝鮮で生まれ育った華僑だ。差別される存在である一方で、中国国籍を有していることから北朝鮮と中国を自由に行き来し商売を行い、比較的豊かな暮らしをしてきた。

    容疑者は取り調べで、複数の余罪があると自白し、「金持ちの華僑」であることを見せつけて女性を誘惑し、性的暴行を加えてきたことが明らかになった。

    今回の容疑者が華僑であったことが知れ渡り、現地住民の華僑に対する感情が悪化している。北朝鮮国民の間には、以前からあった偏見、根強い反中感情に加え、比較的自由に北朝鮮と中国を行き来し、商売を行って裕福な暮らしをしてきた華僑に対する妬みが入り混じった感情が存在する。とはいえ、北朝鮮の華僑は決して特権階級ではなく、中朝関係が悪化するたびに「スケープゴート」となり不利益を被ってきた。

    (参考記事:スパイ容疑で北朝鮮に逮捕された男性、変わり果てた姿で家族のもとへ

    今回は、何らかの事件のスピン・コントロール(権力者などの問題を隠すために、別の問題を騒ぎ立て目線をそらさせる行為)とは異なるものの、「手口が残忍で、一度や二度のことではないので死刑にすべきだ」との声が多いという。

    (参考記事:被害者9人の連続レイピスト「いつも通りのやり方」で公開銃殺

    一方で、「親が金持ちなので、なんとかして減刑を試みるだろう」との見方もある。これほどの重大犯罪を犯しても、大枚を叩けば死刑を免れ、教化所(刑務所)送りになっても、さらにカネを積めば病気などを理由に釈放される可能性があるからだ。

    (参考記事:「量刑はワイロで決まる」北朝鮮の常識

  • 金正恩氏の「デリケート情報」が洩れて10人が処刑の危機

    中朝国境に面した北朝鮮の両江道(リャンガンド)一帯では現在、国家保衛省(秘密警察)などが国内情報を外部に流出させる行為に対する大々的な摘発を行っているという。きっかけとなったのは先月中旬、金正恩党委員長が道内の三池淵(サムジヨン)郡を視察したことだ。

    このとき、金正恩氏が直接参加する「1号行事」の情報が事前に外部に漏れたとして、現地で大騒ぎになっているのだ。

    普通のトイレを使えない

    米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が先月末、両江道(リャンガンド)の幹部消息筋の話として伝えたところでは、「1号行事に関する情報の漏えい元を解明するため、国家保衛省が大々的な検閲に乗り出している。その結果、行事の秘密情報が違法携帯電話によって外部に送信された形跡が浮かんだ」という。

    違法携帯電話とは、主として中国キャリアの携帯電話機だ。国境をまたいで中国との通話が可能であるだけでなく、韓国などに国際電話をかけることもできる。そのため北朝鮮当局は従来から厳しく取り締まっており、摘発されればスパイ扱いされて厳罰を受けることもある。

    そして、現地のデイリーNK内部情報筋が今月4日時点の情報として伝えたところでは、これまでに10人余りが保衛省によって逮捕されたという。

    「道保衛部は令状も持たずに家々に踏み込み、捜索を行っている。現場で見つかった中国の携帯電話が多数押収され、韓国の映像ファイルが記録されたUSBメモリもいくつも見つかった」

    また、道保衛部は最高指導者の身辺の安全と直接関わる問題だけに、今回の事案を迅速に処理する姿勢を見せているとのことで、通常なら6カ月程度を要する捜査観察、予審、裁判などの手続きを大幅に短縮する可能性があるという。

    金正恩氏は普通の人と同じトイレを使えない事情もあり、代用品を持ち歩いているとの説もあるが、米国のある軍事専門家が以前、北朝鮮の核兵器開発をけん制するために「金正恩専用トイレを爆撃せよ」と提案したこともあった。それだけに、北朝鮮当局にとって1号行事の情報管理は、何より気を使うデリケートな情報なのだ。

    (参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

    一方、現地の人々の間では「捕まった人たちは外部に情報を流した犯人ではない」との声が上がっているという。それでも、保衛部にとってはその辺の事実関係より、誰かに責任を負わせることを急ぐ雰囲気があるとのことで、逮捕者が処刑されてしまう危険性を危惧しているという。

  • 中朝国境の川で4人射殺…「金正恩命令」実行の一部始終

    中朝国境の川で4人射殺…「金正恩命令」実行の一部始終

    大飢饉「苦難の行軍」により国中が大混乱に陥っていた1990年代後半、金正日総書記は犯罪者を法的手続き抜きでその場で射殺するチームを派遣するという荒っぽい治安対策を行っていた。

    (参考記事:強盗を裁判抜きで銃殺する金正日流の治安対策

    そんな時代を彷彿とさせる事件が、北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)で起きた。現地のデイリーNK内部情報筋によると、今年9月1月の深夜、道内の金亨稷(キムヒョンジク)郡を流れる鴨緑江から、激しい銃声が聞こえた。その詳細が最近になって明らかになった。脱北しようと川を渡っていた4人が射殺されたのだ。

    女性芸能人に「見学」強制

    事件の概要は次のようなものだ。

    脱北ブローカーの女性は前日夜、脱北希望者5人を連れて川を渡るため普天(ポチョン)郡に向かっていた。その途中で今回の脱北に加担していた国境警備隊員から「保衛部(秘密警察)の監視が異様に厳しい」との話を聞いた。

    そこでブローカーは急遽、川を渡る地点を150キロ下流の金亨稷郡に変更。現地に到着し、以前から連携している現地の国境警備隊員に5人を引き渡した。彼らが川に入るのを見て、ブローカーは現場を立ち去った。

    彼らが国境警備隊員に導かれ河原に降り、足を水に浸して対岸に歩き出したとき、銃声が響き渡った。保衛部の要員が彼らに向けて銃を乱射したのだ。

    4人が射殺され、なんとか中国側に逃げおおせたのは1人だけだった。ブローカーはその場で逮捕された。

    逮捕されたブローカーは、普天郡に駐屯する国境警備隊の中隊の政治指導員の妻だったが、実は保衛部のスパイだった。

    「警備隊指導員の妻は既に人身売買容疑で保衛部に逮捕されていて、スパイとなることを強制された。今回の計画は準備段階から保衛部に筒抜けだった」(情報筋)

    つまり、妻は保衛部から命じられるままに計画を進め、脱北希望者らを罠にかけたということだ。

    夫の指導員も逮捕され、二人とも保衛部の取り調べを受けた上で、2ヶ月に渡って予審(捜査終了後起訴までの追加捜査、取り調べ)を受けているという。2人がその後、どのような処遇を受けているかについては詳らかでない。

    (参考記事:北朝鮮、脱北女性を拷問した将校を厳重処分…人権問題を意識か

    事前警告も行わずにいきなり銃撃、射殺した今回の事件を知った地元民は怯えきっている。

    「当局は国境地帯で(わざと)銃声を鳴り響かせ、脱北する気が失せるようにしたようだ。国境を超える者は射殺しても良いという指示があった可能性がある」(情報筋)

    実際、金正恩党委員長は、脱北に対して射殺を含めた厳しい対処を取るように指示しており、今年5月には朝鮮労働党の大紅湍(テホンダン)郡副委員長の30代の息子と、同行していた2人の3人が脱北に失敗し、射殺されている。

    こうした残忍さにおいて、金正恩氏が父親に勝るとも劣らないことは、すでに国際社会でも広く知られている。自分が気に入らない部下たちを処刑する際、その場面を女性芸能人らに無理やり「見学」させた前科まである。

    (参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

    また、彼らが見せしめで殺されたことについて情報筋は、最終目的地が韓国だったことが影響した可能性があると指摘した。先に脱北して韓国に定住し、残りの家族を北朝鮮から呼び寄せる形の脱北が多いことを考えると、今回の件で亡くなった4人も家族だった可能性が考えられる。

    川の両側は中朝ともに人口希薄地帯が広がっており、手荒なことをしても、北朝鮮の人権状況を批判している国際社会に知られることはあまりない。実際の犠牲者は、知られているより遥かに多いだろう。

    (参考記事:脱北に失敗した家族を待つ過酷な運命

  • 金正恩氏を悩ませる新手の「ドロボー軍団」犯罪手口

    1980年代以前の北朝鮮は、非常に犯罪の少ない国だったと言われている。勤め先でもらえる月給が少ない代わりに、衣食住すべてを国から配給してもらえ、現金がさほど必要なかったこともあり、犯罪を起こす要因が少なかったのだ。ところが、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」で一変した。

    国の配給システムが崩壊したことで、今までもらえていた配給が途絶えたことで、生き抜くすべを持たない人々が次々に餓死していった。市場で商売ができる人はそれで生き延びることができたが、それすらできない人は犯罪に手を染めるしかなかった。治安の悪化に、金正日総書記は即決で処刑する荒っぽい手法で対処したが、さほど効果はなかった模様だ。

    (参考記事:強盗を裁判抜きで銃殺する金正日流の治安対策

    それから20年あまり。大量に餓死者を出すような状況ではないが、国際社会の制裁による生活苦で犯罪に手を出す人が後を立たず、治安の悪化に金正恩体制も頭を悩ませている。最近では、平壌郊外の平城(ピョンソン)で窃盗団に対する公開裁判が行われたと現地のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

    平城の市場の前で行われた裁判では、窃盗団4人に対して教化刑(懲役刑)14年が言い渡された。これは量刑の相場を超えるもので、情報筋は「見せしめで重い刑となった」と伝えているが、裁判官へのワイロが払えなかった可能性もあるだろう。今後は同種の犯罪でも、死刑が宣告される例が出てくるかもしれない。

    (参考記事:美女2人は「ある物」を盗み銃殺された…北朝鮮が公開処刑を再開

    4人の手口は次のようなものだった。

    自家用車に乗って郊外の道路を走り、ターゲットを定めた上で追跡、深夜になるまで待ち、ドアをこじ開けて車を移動させてから部品を取り外す。犯行は合計で7回に及んだ。

    部品の中でもエンジン、変速機などの主要部品を狙うため、車体はそのままでも単なる鉄の塊と化してしまう。

    4人の犯行はそれだけにとどまらない。ドライバーに麻酔薬をかがせ失神させた後に、部品を奪う手法も使った。不意をつかれたドライバーは、抵抗できないままやられ放題で、気を取り戻しても犯人の顔を思い出せない。麻酔薬を使った犯行は非常に危険なもので、ついに死者が出てしまった。4人は裁判で、人が死んだことは知らなかったと答えている。

    平城の窃盗団は逮捕されたが、中朝貿易の中心地の新義州(シニジュ)、東海岸の交通の要衝の咸興(ハムン)などでも同様の窃盗事件が相次いでおり、当局は盗難品の写真の写真入りの布告文を出すなど、対応にあたっているが、今のところ犯人は捕まっていない。

  • 「日韓の関係改善など容認できない」ついに出た金正恩のホンネ

    北朝鮮の対韓国宣伝サイトである「ウリミンジョクキリ(わが民族同士)」は5日、韓国が日本との対立解消に向けて動き出したことを非難する論評を掲載した。これこそは、韓国の孤立を望む北朝鮮、そして金正恩党委員長のホンネと言える。論評はまず、次のように主張している。

    安倍政権は高みの見物

    「少し前、南朝鮮(韓国)当局は外交・安全保障関係者を日本に派遣し、『国務総理』を倭王(天皇)即位式に送り、『未来志向的な「韓」日関係構築』だの、『「韓」日関係の膠着を打開するための疎通と交流の推進』だのと言った卑屈な醜態をさらした。

    これは「韓日軍事情報保護協定(GSOMIA)」終了の決定を撤回し、日本との対立を解消するよう求める、米国の圧力に屈した事大屈従行為に他ならない。

    その後も米国が圧力を加えてくるからと言って、罪に罪を重ねている日本を許すことなどできるだろうか」

    ここに出てくる日本の「罪」とは、いわゆる過去の歴史問題のことだ。論評はその事例を列挙した後、次のように断言する。

    「このような日本との関係改善を云々すること自体が、容認しがたいことだ」

    そして、日本との関係改善を図る行為は、「親日積弊清算」を求める民心に対する裏切り行為だと強調している。

    北朝鮮メディアはこれまでにも、GSOMIA問題を巡って多数の論評を出している。例えば9月2日には、同サイトはGSOMIA破棄に関する記事を3本も公開している。そのうちの1本は、「反日闘争の火柱も高く、親日積弊残滓を徹底的に清算してしまうことで、屈することを知らぬ民族の気概を大きく示すべきだ」などとして、GSOMIA破棄を支持する韓国民衆を煽る内容だ。

    もう1本は、韓国政府のGSOMIA破棄の決定に対して「憂慮と失望」を表明し、日米韓の3国協調の維持を主張する米国の態度は不当な干渉であると排撃する内容である。そして残る1本は米国に対し。日本の韓国への「経済報復」に対しては見て見ぬふりをしながら、韓国の決定に激怒するのは「二重的な態度」であると断罪するものだ。

    このように見ると、これらの記事の趣旨は韓国の文在寅政権にエールを送るものであるようにもみも思えるだろうが、実はその正反対なのである。記事の目的はあくまで米韓同盟に依存する文在寅政権を非難しつつ、左派の支持勢力を離反させることにあるのだ。

    事実、文在寅政権はGSOMIA問題で袋小路に入り込んでしまった。協定は22日いっぱいで失効するが、その前に破棄を撤回せねば、米国がどんな圧力を加えてくるかわからない。日本の輸出規制措置の緩和を撤回の交換条件として掲げているものの、安倍政権は気にする風もなく高みの見物を決め込んでいる。ここで安易にGSOMIA破棄を撤回すれば、反日に染まった文政権の支持勢力の反発を食う。

    北朝鮮は、こうした文政権の支持派にガスを送り込んでいるわけだが、左派政権下で公然と親北朝鮮集会を開くグループが台頭した韓国社会の現状を考えると、北朝鮮メディアの心理工作の影響力も、侮るべきものではないのである。

    (参考記事:「韓国外交はひどい」「黙っていられない」米国から批判続く

  • 金正恩激怒「温泉支配人」を公開処刑から救った救世主

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信は昨年7月17日、金正恩党委員長が咸鏡北道(ハムギョンブクト)の温堡(オンポ)休養所を現地指導したと伝えた。休養所とは、北朝鮮全土に100ヶ所ほど存在する労働者が利用する総合レジャー施設だが、その状態を見た金正恩氏は次のように指摘した。

    最高指導者は、休養所の風呂場を見て回りながら、管理をよくしていないので温泉治療の浴槽が汚く、薄暗くて非衛生的だ、このような環境で治療になるのか、本当に汚いと指摘した。

    金日成主席と金正日総書記の指導の業績が宿っている事績建物という看板を掛けてこのようにずさんに管理、運営して人民の好評ではなく批評を受けるようになれば、四季にわたって温泉水が干上がることなく湧き出る景色のよい所に人民のための休養所から建設するようにした主席と総書記の業績を台無しにし、罪を犯すことになると厳しく言い聞かせた。

    金正恩氏は3年前、スッポン養殖場をした際に「管理がなっていない」と幹部を激しく叱責したことがある。支配人は銃殺されたが、この休養所の担当者も生きた心地がしなかったことだろう。

    (参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導

    ところが、最近に休養所の担当者は胸をなでおろしていると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

    この休養所からほど近いところに、北朝鮮が誇る名勝地、七宝山(チルボサン)がそびえ立つ。昨今、急増する中国人観光客も多く訪れているのだが、もはやキャパシティを超えているようだ。

    (参考記事:急増する外国人観光客に「キャパ限界」…北朝鮮が受け入れ制限

    宿泊施設が不足したため、七宝山観光総局は、北朝鮮国民しか受け入れていなかったこの休養所を外国人観光客にも開放することにした。このような休養所はどこも施設や食事が貧弱極まりないのだが、当局は物資を優先的に供給するようになり、食事のレベルが向上したという。情報筋の言及はないものの、施設面でも何らかの向上があったものと思われる。

    休養所の管理者は、突然降って湧いた状況にとても喜んでいるという。施設を改善しようにも予算を自力更生(自己調達)することを求められるのが北朝鮮の常だが、中国人観光客が押し寄せてきたことで、状況が改善し、クビがつながったというわけだ。

    金正日総書記は生前に「この世で全知全能の存在があるとするならば、それは人民大衆だ」「人民が望むならば岩の上にも花を咲かせなければならない」などと説いているが、北朝鮮の一般国民が、外国人より冷遇されていることは、この休養所への供給を見るとよくわかる。

    一般国民より厚遇されているのは、外国人だけではない。幹部も同じだ。

    別の情報筋が伝えたのは、両江道(リャンガンド)の金正淑(キムジョンスク)郡にある施設の実態だ。

    金日成主席の夫人の名前が付けられたこの地域は、金正淑氏が抗日パルチザン活動を行っていた当時にアジトや軍事物資の倉庫と使用していたと言われる建物が残されており、それらは新坡(シンパ)革命事跡地として指定されている。

    金日成氏、金正淑氏の抗日パルチザン活動の足跡をめぐる聖地巡礼のことを「踏事」(タプサ)と言うが、金正淑郡にも踏事にやってきた人々を収容する宿泊施設が存在する。

    そのうちの一つが、人民保安省(警察庁)の踏事宿営所だ。缶詰に入った食用油、魚などを他の奉仕機関より優先的に中央から配給を受けている。一方で、革命史跡を徒歩で周る大学生や一般労働者が泊まる宿営所には物資の供給がまともに行われていない。両江道にはすでに初冬だが、薪すらない場合もあり、暖を取ることすらままならない。

    不足した食料品は、地元の機関が優先的に供給せよとの指示が下されている。

    「力のある機関が利用する施設は、どこでも優遇される。幹部が主に利用する施設に供給される味噌ですら、材料や保管がきちんとなされている質の良いものだ」

    しかし、一般国民の宿泊施設は、副業地(自営の畑)で育てた野菜をおかずにして出すしかない有様だ。

    一方で金正恩氏は、南北交流の一環として韓国側が建設した金剛山(クムガンサン)の施設を「見ただけでも気分が悪くなる、ごたごたした」などとこき下ろした上で、再建設を命じている。

    (参考記事:「見ただけで気分が悪くなる」金正恩氏、金剛山の韓国施設を罵倒

  • 「米国は韓国の味方をしない」文在寅政権の進退きわまる

    今後の対米・対日関係の成り行きに、韓国が緊張している。

    保守系全国紙の東亜日報、朝鮮日報、中央日報は揃って、日本経済新聞(2日付)が掲載したマーク・ナッパー米国務省副次官補(韓国・日本担当)のインタビューと、読売新聞(同)のジョセフ・ヤング駐日米国臨時代理大使のインタビューに言及した。

    両氏のインタビューはともに、韓国政府が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了(破棄)を宣言したことについて、撤回を求める内容だ。GSOMIAは今月22日いっぱいで期限切れとなる。

    特に朝鮮日報は、「GSOMIA問題を直接扱う米政府の中心的官僚2人が別の日本の新聞とのインタビューで『GSOMIA維持』を強調したのは、『米国は韓国の味方をしない』というメッセージと解釈できる」とまで分析している。

    そもそも、米国が日韓のGSOMIAが維持されるのを熱望していたことは、当初からわかっていたことだった。それを振り切って韓国の文在寅政権がGSOMIA破棄を宣言したのは、GSOMIAを人質に取り、歴史問題への報復として発動した輸出規制措置を日本が撤回するよう、米国に説得させようと思ったからだ。

    しかし、それが裏目に出たことは早々に判明した。米国が異例に強い表現で、繰り返し韓国に抗議したのだ。もはや文在寅政権としては、早めにGSOMIA破棄を撤回する口実を見つけ、米国との対立を終わらせるのが得策と言える。

    ところがだ。東亜日報によると、青瓦台(韓国大統領府)は「日本が韓日対立の解決に消極的な態度であるため、輸出規制強化の解決がないGSOMIA延長は『絶対不可』の方針を固めている」という。日本と韓国のどちらが正しいかを棚に上げて論じたとしても、これほどの愚策はない。

    なぜなら日本としては、韓国がGSOMIA破棄に固執してくれるほど、米国を自分の側に引き寄せることができるからだ。

    結局、文在寅政権がGSOMIA破棄を撤回できないのは、国内の支持者に対して説明がつかないからであり、つまりは与党の再選を優先する党利党略なのだ。国民の利益も日米との安保協調も二の次、三の次だ。予定通りGSOMIAが破棄され、それが浮き彫りになった場合、米国が韓国に対してどのような圧力を行使するかは、過去の猛烈な非難を振り返ればおのずと想像がつく。

    (参考記事:「韓国外交はひどい」「黙っていられない」米国から批判続く

  • 「自滅を招く」金正恩氏の“タブー破り”に北朝鮮で動揺広がる

    北朝鮮の金剛山(クムガンサン)観光地区。韓国現代グループの故鄭周永(チョン・ジュヨン)会長が、南北交流の一環として、故郷にほど近いこの地に莫大な資金を投資、建設した観光施設に、韓国内外の観光客を多数送り込むというもので、金大中政権下の1998年11月18日に始まった。

    当時、大飢饉「苦難の行軍」で青息吐息だった北朝鮮はここから得られる莫大な外貨で延命に成功した。そのことは、北朝鮮人なら誰でも知っているという。

    ところが、2008年7月11日に観光で訪れた韓国人女性が、警備にあたっていた朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士に射殺される事件が起き、その2日後には観光が中断されてしまった。このことは、北朝鮮国民にも強い衝撃を与えた。

    (参考記事:北朝鮮国民「金剛山射殺事件に衝撃」

    それから10年。金剛山観光地区を視察した金正恩党委員長は、施設をけちょんけちょんにけなした。

    「建築物が民族性というものが全く見られず寄せ集め式だ、建物をまるで被災地の仮設テントや隔離病棟のように配置した、建築美学的にひどく立ち後れているばかりか、それさえ管理されていないので非常にみすぼらしい」

    「以前に建設関係者らが観光サービス建物を見るにもきまり悪く建設して自然景観に損害を与えたが、容易く観光地を明け渡して何もせず利を得ようとした先任者らの間違った政策によって金剛山が10余年間放置されて傷が残った、土地が惜しい、国力が弱い時に他人に依存しようとした先任者らの依存政策が非常に間違っていた」

    (参考記事:「見ただけで気分が悪くなる」金正恩氏、金剛山の韓国施設を罵倒

    この発言を巡り、北朝鮮国内では大きな波紋が広がっていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

    国営メディアを通じて金正恩氏の発言を聞いたという平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)の情報筋は、「最高尊厳(金正恩氏)の前任者と言えば、神格化されている金日成主席(祖父)、金正日総書記(父)を指したものではないのか」として、市民が戸惑いを見せていることを伝えた。

    北朝鮮は、最高指導者の命令や指示を不変のものとする「遺訓統治」が国是であるため、いくら時代遅れで間違った政策であっても、異を唱えることは決して許されない。金正恩氏とてそこから自由ではない。そのため、従来の政策に不都合が見つかっても、表向きは先代のやり方を踏襲した上で、中身を変える方式が取られる。ところが今回の発言は、そうした「禁忌(タブー)」を破ったものと読み取れるため、動揺が広がっているのだ。

    (参考記事:愛人女優を「ズタズタにして処刑」した父親への金正恩の反感

    平安南道(ピョンアンナムド)の別の情報筋は、金正恩氏の先代批判をそのまま報じたのは、北朝鮮メディア史上初めてのことで、多くの市民が首を傾げているとし、その理由を次のように推測した。

    「深刻な生活苦で餓死者まで出ている状況で、党中央に対する世論が極度に悪化するや、不安がった最高指導部が生活苦の責任を先代の首領になすりつけているのではないか」

    また、建物の撤去を命じたことについても「見せつけるための業績づくりの建設に投入した資金があれば、食糧難はとっくに解消していたはず」と批判した。

    (参考記事:「15万人の血と涙」で建設が進む金正恩氏の「ブラック・リゾート」

    金正恩氏が、新築やまだまだ使える建物を「気に入らない」との理由で建て替えさせた例は一度や二度ではないが、今回はその規模や意味合いが異なることから、さらなる動揺が広がっているようだ。

    (参考記事:金正恩氏視察先の工事現場が崩壊…死傷者多数

    平安北道の貿易関係者は、同僚らもこの建物の撤去命令に非常に驚いているとし、金正恩氏が自ら「なんの前提条件や対価もなしに、開城工業地区と金剛山観光を再開する用意があります」とした今年の新年の辞での言葉を、いとも簡単に翻したと批判した。

    また、中国からの支援を頼りに蛮勇を振るっているが、莫大な外貨を投入して作った観光地区をあっさりと捨ててしまうようでは、中国にも信頼されないとして、金正恩氏のやり方に「自滅を招くのではないか」と懸念を示した。

  • 金正恩氏が「粛清9000件」の衝撃情報…公開処刑と連動か

    韓国のニュースサイト、リバティ・コリア・ポスト(LKP)は10月28日付で、北朝鮮国内では今年9月までに、「反国家犯罪」の捜査が9千件も行われていると伝えた。反国家犯罪の容疑者はほぼ間違いなく、何らかの形で粛清される。1件につき、数人が粛清の対象になることもある。

    LKPは8月の時点で、平壌では秘密警察である国家保衛省と軍の保衛司令部が1200人余りの幹部クラスを拘束し、反国家行為の容疑で調査を行っていると伝えていた。また、拘束された容疑者の急増に伴い、隔離監房が不足し、西平壌駅の近くにある護衛司令部81旅団6大隊の兵舎を保衛司令部に移管する措置も取られたとしていた。

    女性芸能人の「処刑見学」

    こうした動きが、平壌だけでなく地方においても見られるということだろうか。

    LKPの情報が事実ならば、1990年代の「深化組事件」や「フルンゼ「フルンゼ軍事大学留学組事件」、2013年からの「張成沢一派粛清事件」と並ぶ、大々的な粛清が進行していることになる。

    (参考記事:同窓会を襲った「血の粛清」…北朝鮮の「フルンゼ軍事大学留学組」事件

    これらの中でも、2万5千人が犠牲になったとされる深化組事件は、時代背景が現在と似た部分がある。同事件は、「苦難の行軍」と呼ばれた未曽有の食糧危機のさなか、民衆の不満が体制に向かわないようにするために、金正日総書記がでっち上げた大規模なスパイ事件である。

    (参考記事:「幹部が遊びながら殺した女性を焼いた」北朝鮮権力層の猟奇的な実態

    一方、食糧危機により犯罪が多発し、国全体が混乱に陥ったこの時代、北朝鮮の各地で公開処刑が繰り返された。その理由は極めてシンプルだ。見せしめのためだ。衆人環視の中で犯罪者を残忍に殺害することで恐怖を与え、秩序の維持を図るという、「死刑には犯罪抑止効果がある」との考えに基づいた行為なのである。

    もっとも最近では、国際社会からの人権問題に対する批判を意識してか、かつては公開で行っていた処刑を非公開で行う傾向にあった。金正恩党委員長は2016年、全国の司法機関に「群衆を集めて死刑を行う『群衆審判』『公開銃殺』を禁じる」との指示を下している。それ以降、公開処刑は影を潜めていたのだが、北朝鮮当局は最近になって再開させつつあるようだ。

    理由は明らかではないが、気になるのは経済制裁の影響だ。経済難による社会の動揺が、金正恩体制の足元を揺さぶる危険性を感じ取ったからではないだろうか。

    こうした1990年代と現在の一致点を見るとき、LKPの情報を素通りすることはできない。そして金正恩氏は、自分が気に入らない部下たちを残酷な処刑させる際、その様子を女性芸能人らに無理やり「見学」させた「前科」の持ち主でるということも、忘れてはなるまい。

    (参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

  • 「わが国にエイズはない」と豪語する北朝鮮で強化されるエイズ検査

    ◯モンゴルでエイズ被害
    ◯南アフリカでエイズ蔓延
    ◯イスラエルでエイズ蔓延
    ◯昨年エイズによる世界的死亡者数は77万人

    これらは北朝鮮国営の朝鮮中央通信が、今年に入ってから報じたエイズ関連の記事の見出しの一部だ。そのほとんどが「他国でエイズが蔓延している」というものだ。

    一方で北朝鮮政府関係者と世界保健機関(WHO)の関係者は、昨年12月1日の「世界エイズデー」に、北朝鮮におけるHIV感染事例は一件もなかったと発表している。

    (参考記事:北朝鮮、「我が国にエイズ患者はいない」と豪語…性感染症拡大との調査結果も

    北朝鮮は毎年、同様の主張を繰り返しているが、最近に入って北朝鮮国内では、HIV感染リスクの高まりから検査が強化されていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

    咸鏡南道(ハムギョンナムド)咸興(ハムン)の情報筋は、中国の延吉に行って会寧税関を経て先週帰国した際、入国時にHIVウイルスや性病の検査を受けさせられたと証言した。対象は男女を問わずすべての入国者だ。従来は口頭での質問だけだったが、検査を行うようになり、入国後は地域の衛生防疫所で性病検査を改めて受けるように通告されるようになった。

    しかし、現実は異なる。衛生防疫所はワイロを受け取って検査は行わず、もし性病の症状が出ていても書類を廃棄して上部に報告すらしていないという。

    (参考記事:北朝鮮「アフリカ豚コレラ検疫所」が風俗業に変身した理由

    平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)の別の情報筋は、新義州税関を通る若い女性は全員HIV検査を受けさせられる。以前は、中国でキリスト教関係者や、韓国人などに接触していないかなど政治的な尋問が優先されていたが、今ではHIVや性病の検査に重きを置くようになっている。

    双方の情報筋とも「統計は発表されていない」としつつも、異口同音に「性病に苦しむ人は増えている」と述べた。

    しかし、米国の学術誌サイエンスの今年6月号は、北朝鮮と米国の研究者の報告を元に、北朝鮮のHIV陽性者の数を8362人とし、初の感染報告は1999年1月で、ここ数年で感染者が急増していると明らかにしている。

    また、米ニューヨークに本部を置くNGO「ドダウム」のキム・テフン事務局長は、今年7月のRFAの取材に、米国の製薬会社から寄贈された治療薬を使い、北朝鮮の保健当局と共同で約3000人の病状が進んだHIV陽性者のケアをしていると明らかにしている。

    一方、北朝鮮では国際社会の制裁下での生活苦から、性風俗産業に従事する女性が増えていると伝えられている。例えば、平壌郊外の間里(カルリ)駅周辺は一大風俗街となっている。また、中国に近い新義州や龍川(リョンチョン)では中国人をターゲットとした風俗店が多数存在する。

    (参考記事:金正恩氏の目を盗んで進む「北朝鮮風俗」の組織化

    しかし、そうした女性らを対象にした検査はろくに行われておらず、北朝鮮が誇る無償医療体系も崩壊して久しい。それどころか、当局は「わが国には売春は存在しない」との建前から、コンドームの輸入も販売も認めていない。

    (参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

    また、上述のとおり、北朝鮮はHIVを「資本主義国に対するネガキャン」のネタとして利用している。HIV陽性者への偏見、社会からの排除が高まることは火を見るより明らかだが、そのような状況では誰も検査を受けようとしないだろう。もちろん、これは北朝鮮に限ったことではないが。

  • 「機密事案、韓国にわたさない」米国が文在寅政権に冷たい視線

    「機密事案、韓国にわたさない」米国が文在寅政権に冷たい視線

    原潜や空母を欲しがるのは、それらを持つことで周辺国に対して立場を強めたいという、民族派政治家たちの「危険な遊び」に見える。
    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    韓国では近年、原子力潜水艦を保有すべきとの主張が台頭している。北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の開発に力を入れており、これを搭載した潜水艦が実戦配備された場合、常時監視と即応体制の強化のため、長期間にわたり水中活動が可能な原潜が必要である、との理屈だ。

    文在寅大統領も大統領選挙の候補者だったとき、原潜の必要性に言及している。

    韓国左翼の「危険な遊び」

    だがどうやら、こうした構想に対する米国の視線は冷たいようだ。

  • 金正恩氏につぶされた「ある風俗店」の悲しい話

    金正恩氏につぶされた「ある風俗店」の悲しい話

    やや旧聞に属する話となるが、今年の7月8日の夜、北朝鮮・平安南道(ピョンアンナムド)の某所で騒ぎがあったと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。そしてこの騒ぎの背景には、現代北朝鮮における、ある「悲しい話」があった。

    7月8日と言えば、金正恩党委員長の祖父・金日成主席の命日である。そのため北朝鮮では、毎年6月末から7月上旬にかけて「哀悼期間」が設定され、金日成氏を偲ぶ様々な政治イベントが行われる。2011年12月17日に死亡した金正日総書記に対しても同様だ。

    そしてこの期間中は、歌舞音曲など賑やかなことは徹底的に禁止され、事件・事故の類も一切許されない。些細な犯罪でも加重処罰される。

    ところがそんな大事な時期に、冒頭で触れた某所では、地元民や司法当局の間で「隠れ売春宿」として知られていたある建物に対する一斉摘発が行われ、多数の女性が「思想犯罪者」として保安員(警察官)に連行されたという。

  • 金正恩の「極秘情報」漏えいで恐怖に震える北朝鮮

    金正恩の「極秘情報」漏えいで恐怖に震える北朝鮮

    北朝鮮メディアは10月16日付で、金正恩党委員長が中朝国境にまたがる朝鮮半島の最高峰・白頭山(ペクトゥサン)に登頂したことと、その麓にある三池淵(サムジヨン)郡の再開発現場を視察したことを報じた。登頂と視察の日時は明らかにされていないが、直前の数日間の出来事と見てまず間違いない。

    北朝鮮メディアは通常、金正恩氏の地方視察などの動静について日時を明かすことはない。たまに例外もあるが、中朝国境や軍事境界線付近などに出向く際には、秘密保持の徹底に特に気を使っているようだ。

    「妻のスキャンダル」で処刑

    理由は言うまでもない、身辺の安全を図るためである。金正恩氏は普通の人と同じトイレを使えない事情もあり、代用品を持ち歩いているとの説もあるが、米国のある軍事専門家が以前、北朝鮮の核兵器開発をけん制するために「金正恩専用トイレを爆撃せよ」と提案したこともあった。

    (参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

    北朝鮮当局が金正恩氏の動静、とくに彼が直接参加する「1号行事」のスケジュールを秘密にするのは、それなりの理由があるということだ。

  • 米国が韓国に「最後通牒」…日本との安保対立めぐり

    米国が韓国に「最後通牒」…日本との安保対立めぐり

    デビッド・スティルウェル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は26日、都内の在日米国大使館でメディアの取材に応じ、韓国が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を宣言したことを巡り、文在寅政権に決定の撤回を求める考えを示した。

    米「韓国に致命的な結果」

    スティルウェル氏は同時に、「日韓双方に2国間の摩擦解消に向けて働きかける」と述べており、韓国だけを圧迫したわけではない。

    しかし、GSOMIAは11月22日いっぱいで失効する。こうしたタイムリミットがあるだけに、韓国メディアの受け止め方は深刻だ。

  • 金正恩の様子が変だ…「焦り」が「暴走」につながる恐れ

    金正恩党委員長の様子がおかしい。北朝鮮国営の朝鮮中央通信は27日、金正恩氏が妙香山(ミョヒャンサン)医療器具工場を現地指導したと伝えた。金正恩氏は、同工場について一定の評価をしつつ、「一部の欠陥もある」とし、「一部建物の外壁タイル面の平坦度がよく保障されず、継ぎ目も合っていない、ある部分は壁塗りの面も均等でない」と、不満を述べた。

    金正恩氏は現地指導でたびたび不満を述べたり、時には怒りを露わにしたりする。3年前にスッポン養殖工場をした際、管理不備に激怒。支配人を銃殺させ、その視察時の動画をテレビで放映させたことがある。ただ、今回の現地指導では肯定的な評価をしている部分もあり、大事には至らないかもしれない。

    (参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導】

    気になるのは、金正恩氏が現地指導で2回連続して不満を述べていることである。朝鮮中央通信は24日に、金正恩氏が金剛山観光地区を現地指導したことを報じた。今回の現地指導と合わせて日時は不明だが、数日前と思われる。

    金剛山観光地区の現地指導で金正恩氏は、「見ただけでも気分が悪くなるごたごたした南側(韓国)の施設」と韓国側が建設した施設を罵倒し、撤去まで指示した。金剛山観光事業を南北和解の象徴にしたい韓国の文在寅大統領に対して冷や水を浴びせた形だ。

    さらに、金正恩氏は「容易く観光地を明け渡して何もせず利を得ようとした先任者らの間違った政策」「政策的指導を担当した党中央委員会の当該部署が金剛山観光地区の敷地をむやみに明け渡し(後略)」などと述べた。金剛山観光事業は、故・金正日総書記と金大中元韓国大統領との間で合意されたものだ。「先任者」「党中央委員会の当該部署」などと表現しているが、父である金正日氏の過去の政策を批判したわけで、北朝鮮の最高指導者としては異例の発言と言える。

    (参考記事:愛人女優を「ズタズタにして処刑」した父親への金正恩の反感

    金正恩氏が医療工場を現地指導した同じ日には、金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長が、米国に対して対北政策の転換を求める談話を発表した。

    金正恩氏はこの数日のうちに、父の時代の政策を否定しながら韓国を罵倒し、米国に対して不満をぶつけた。米朝関係、南北関係が膠着状態に入りそうな雰囲気を見せるなか、金正恩氏は相当、苛立ちを募らせているようだ。この状態を打開できなければ、金正恩氏はまたもや北朝鮮国内で、恐怖政治の暴走を始めるかもしれない。

  • 「石炭密輸で稼いだ外貨、軍に流入」北朝鮮内部から証言

    「石炭密輸で稼いだ外貨、軍に流入」北朝鮮内部から証言

    北朝鮮が、国連安全保障理事会が主導する経済制裁をかいくぐり、石炭を密輸している状況が継続的に捕捉されている中で、当局がこうして稼いだ外貨の一部が朝鮮人民軍(北朝鮮軍)に流れ込んでいるもようだとする証言が出た。

    「骨と皮だけ」女性兵士の暴走

    平壌の情報筋はデイリーNKの電話取材に対し、「国内産の石炭を積んだトラックが続々と南浦(ナムポ)港に向かっている。本来なら石炭の輸出はできないが、密輸が行われているのは事実だ」と述べた。

    情報筋はまた、「石炭は中国に行っている」とし「人民軍の被服費を調達するために、党が石炭輸出を許可した」と付け加えた。

    朝鮮人民軍は従来、各種の鉱山や炭鉱を傘下に収めて管理し、石炭や鉄鉱石、銅、ニッケル、亜鉛などの鉱物資源の輸出により巨額の外貨を稼いでいた。ところが2017年、国連安保理で対北朝鮮制裁2397号採択されたことにより、石炭の輸出が全面禁止され、北朝鮮人民軍の外貨収入が急減したことが知られている。

    北朝鮮が最近、石炭密輸で稼いだ外貨を実際に人民軍の軍服作りに当てているかは明確でないが、一定部分が軍の体制維持費に使用されているのは確かだと思われる。

    北朝鮮の内部事情に明るいある脱北者は「石炭の密輸で稼いだ外貨を人民軍の軍服作りに使うというのは名目に過ぎないはずだ。人民軍が対北制裁により、独自の外貨稼ぎをできずにいる状況であるため、軍服以外にもカネを必要としている部門はいくらでもある」と述べた。

    実際、制裁下に置かれながら、北朝鮮が何故ああも頻繁に短距離弾道ミサイルの発射実験をできるのか不思議なくらいだ。しかも旧式を消化しているわけでもなく、発射されているのはいずれも新開発のものばかりだ。

    金正恩党委員長が、少ない資源を弾道ミサイル類に集中投資する戦略を取っているのは明らかだが、密輸により得た外貨を回さない限りは不可能であると思われる。その一方、軍の末端兵士らは相変わらず、飢えや虐待に苦しんでいるもようだ。ほとんど「骨と皮」だけになった女性兵士が軍の禁忌を破り、大問題になったとの情報もある。

    (参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

    いくら新型の弾道ミサイルを揃えたところで、軍紀が崩壊してしまっては、国防は成り立たないと思うのだが。