投稿者: DailyNK Japan

  • 北朝鮮が「男女の不倫関係」を摘発…あるジャガイモ農場での出来事

    北朝鮮が「男女の不倫関係」を摘発…あるジャガイモ農場での出来事

    北朝鮮当局は昨年初めから、非社会主義的行為の取り締まり――要するに風紀取り締まりに力を入れているが、その対象は男女の不倫関係にも及んでいる。

    最近、取り締まりの舞台となったのは、北朝鮮の北部山間地にある両江道(リャンガンド)の白岩(ペガム)郡だ。平均海抜は1550メートルで朝鮮半島全体で最も高く、冬は極寒の地だ。農耕に適しておらず、住民は長らく極貧生活を強いられていた。

    そんな地を大きく変えたのは、金正日総書記が提唱した「ジャガイモ革命」だ。ジャガイモの一大産地となった両江道(リャンガンド)大紅湍(テホンダン)だ。稲作ができない荒れた土地が広がっていたこの地を開墾、ジャガイモ農場を作らせ、大成功させたというものだ。

    (参考記事:ジャガイモ大豊作も浮かない表情の北朝鮮の農民

    国際社会の制裁で食糧不足が伝えられ、ジャガイモの重要性が増す中、北朝鮮当局は高級幹部を農場に送り込んだ。ジャガイモ栽培の陣頭指揮を取るのが目的だ。農業のことを農民に任せず、中央の官僚が指揮を取るのは、ソ連型の計画経済システムの名残りだが、幹部は仕事そっちのけで贅沢三昧にひたり、挙句の果てには不倫をしていたことが判明し問題になっていると、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

    高級幹部らが農場にやってきたのは今年春のことだ。当局は、農場に負担がかからないようにと彼らに食糧を配給したが、幹部らは農場に豚肉、魚、卵を出せと要求した。そればかりか、宿舎には管理人を置き、掃除と洗濯をさせろとの要求も突きつけた。

    情報筋は詳細に触れていないが、仕事そっちのけで毎晩毎晩宴会を繰り広げていたのだろう。農場はあいつぐ台風の襲来で被害を受けているが、その復旧で忙しいのに幹部の接待に農民を動員せざるを得ない状況だったという。

    (参考記事:「ある母子の貧しさゆえの悲劇」台風18号、北朝鮮でも洪水被害

    仕事もせずに農場に迷惑をかけるばかりの幹部に対して当然のことながら批判の声が上がったが、そんな中で中央党(朝鮮労働党中央委員会)による調査が始まった。それも、身内からの密告によるものだった。

    農場に派遣されたある幹部は、半年に及ぶ派遣期間の間、一度たりとも平壌の自宅に戻らず、電話一本入れなかった。やがて不倫をしているのではないかという噂が立ち始めた。それを聞きつけた妻は、離婚を決心した上で、中央党に信訴(通報)の手紙を送ったという。

    調査の結果、この幹部は農場で働く20代女性と不倫関係にあることが判明した。北朝鮮当局は、「家族は革命的であれ」などと言った高邁な理想を掲げてはいるものの、実際には不倫や、上下関係を利用して女性に性上納を強いる行為などが横行している。

    (参考記事:北朝鮮で「サウナ不倫」が流行、格差社会が浮き彫りに

    中央党は訴えを受けて、現地で幹部の行動を調査した上で、批判書の作成を指示した。今後、思想闘争(集団批判を受けるなどの厳しい思想教育)を受けるものと思われる。また、近日中に更迭されるとのことだ。

    平壌の機関に勤める幹部が問題を起こした場合、更迭された上で平壌から追放され、山奥の農場などの閑職に追いやられる。問題が政治的なものであれば、収容所に入れられることもある。妻は、自分自身や子ども、実家に累が及ぶのを避けて離婚するのが一般的だ。中には、当局から離婚を勧められることもあるという。

    (参考記事:男たちは真夜中に一家を襲った…北朝鮮の「収容所送り」はこうして行われる

  • 「言動を違えれば排斥されて当然」北朝鮮、文在寅氏を説教

    「言動を違えれば排斥されて当然」北朝鮮、文在寅氏を説教

    北朝鮮の対韓国宣伝サイトである「ウリミンジョクキリ(わが民族同士)」は8日、2本の論評で韓国の文在寅大統領を事実上「名指し」して非難した。

    まず、「言動を違えれば排斥されて当然」という説教調のタイトルの論評は次のように述べ、文在寅氏の国連演説を槍玉にあげた。

    米国から「大目玉」

    「南朝鮮当局が国際舞台で『非武装地帯の国際平和地帯』を云々したのは、米国との北侵戦争演習と侵略兵器購入策動で朝鮮半島の平和を蹂躙してきた犯罪的正体を隠し、民族分裂の悲劇的産物である軍事境界線の非武装地帯を国際化することにその目的がある」

    これは、文在寅氏が9月24日の国連演説で提唱した「非武装地帯内に南北に駐在中の国連機構と平和、生態、文化と関連する機構などが居を構え、平和研究、平和維持(PKO)、軍備統制、信頼構築などの活動の中心地となるならば名実ともに国際的な平和地帯となる」との構想を、冷たく突き放したものと言える。

    もう一本の論評はさらに辛らつだ。9月の米韓首脳会談に非難の矛先を向けた。

    「北南合意への容認できない裏切り行為」と題された論評は、「先日、米国を行脚した南朝鮮執権者(文在寅氏)が米国製兵器購入を強いる主人(米国)の要求を甘受する卑屈な醜態をさらした。(中略)主の要求であれば、心臓も胆嚢も謹んで差し出す南朝鮮当局の親米屈従行為に、驚愕を禁じ得ない」と述べている。

    論評は続けて、「同族を狙った侵略兵器を大々的に購入しようとしている南朝鮮当局の無分別な処置は、北南合意の容認できない裏切り行為」であると非難。「米国製兵器購入によってもたらされるのは、北南関係破綻と朝鮮半島情勢の悪化であり、取り返しのつかない後悔と破滅だけだ」と強調した。

    実際のところ、北朝鮮でなくとも、「文在寅の本音は『平和』なのか『軍拡』なのかどっちなんだ」と思う向きはいるかもしれない。韓国では最近になって、日本に刺激を受けたのか、軽空母導入構想などが持ち上がっている。

    結局のところ、文在寅氏のこうした言動は、政権が「ナショナリズム」と「ポピュリズム」に依存しなければ立ち行かないことを示しているものと言える。そして、これらに偏重する政権は無原則になりがちで自らが犯している逸脱にも鈍感だ。

    日本に報復するつもりで軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を決め、米国から大目玉を食らい右往左往する文在寅政権が、その典型的な姿だ。

    (参考記事:「韓国は腹立ちまぎれに自害した」米国から絶妙な指摘

    実際、GSOMIA破棄で米国の不興を買わなければ、大規模な兵器購入でトランプ氏のご機嫌を取る必要もなければ、そのことで北朝鮮から猛反発を食うこともなかったのではないだろうか。

    (参考記事:「韓国外交はひどい」「黙っていられない」米国から批判続く

  • 金正恩氏が「処刑した叔父」を懐かしむ声が聞こえてきた

    張成沢(チャン・ソンテク)。金正日総書記の妹、金敬姫(キム・ギョンヒ)氏の夫で、かつては絶大な権力を誇っていた。ところが2013年12月、金正恩党委員長により処刑された。

    彼氏の粛清に際しては、愛人の元トップ女優をはじめ、一説に1万人もの人々が連座させられた。

    (参考記事:【写真】女優 キム・ヘギョン――その非業の生涯

    それから6年。平壌の高位幹部の間ではこんな話が漏れ聞こえてくるという。

    「張成沢がいた頃は、カネをバラマキながら事業を進める者が多かったのに」
    「張成沢が経済政策を主導し続けていたらどうなっていただろう」

    かつては粛清に巻き込まれることを恐れ、その名前を口に出すことすらはばかられた張成沢氏のことを、親しい間柄での会話に限られるとはいえ、懐かしむ声が上がっていると、北朝鮮の高位幹部がデイリーNKの取材に語った。

    (参考記事:「幹部が遊びながら殺した女性を焼いた」北朝鮮権力層の猟奇的な実態

    張成沢氏が進めていた経済特区、外資の誘致、中朝貿易の拡大などが続けられていたら、経済状況は今よりずっとマシになっていただろう、という趣旨である。

    張成沢氏が進めていた経済特区には、平安北道(ピョンアンブクト)の新義州(シニジュ)市郊外にある黄金坪(ファングムピョン)や威化島(ウィファド)がある。中国に食い込んだ中洲という地の利を生かし、開発が進められようとしていたが、その矢先に張成沢氏が処刑され、計画が頓挫してしまっている。

    (参考記事:【写真レポート】田植え戦闘真っ盛りの北朝鮮経済特区「黄金坪」

    別の平壌の情報筋は、高位幹部のみならず商人の間でも張成沢氏を懐かしむ声が上がっていると伝えた。

    「張成沢の存在は大きかった」
    「当時はカネのある人がドル札を気前よくばらまいていたが、今では商売上がったりだ」

    国際社会の経済制裁により、主力輸出品だった鉱物資源や海産物の輸出ができなくなったことで、北朝鮮に流入する外貨が減っていると伝えられているが、国全体のカネのめぐりが悪くなり、深刻な不況として現れている。かつては賑わっていた市場も、商人の数が激減、食べ物などの日常品以外は売れないという。

    (参考記事:北朝鮮の市場に異変「商人の数が激減している」

    そんな中で上がる張成沢氏を懐かしむ声。一般庶民は、彼の具体的な経済政策については知らなくとも、市場経済の進展については肯定的な役割を果たしたと認識しているようだ。

    「一般庶民は経済がなぜよくないのが詳しいことはわかっていないが、それなりの人なら外貨が減ったことが(経済難の)最も大きい理由だと見ている。そのため、張成沢に繋がっていた人々が外国からカネを引っ張ってきて、市場にばらまいたおかげで当時は景気がよかったと考えている」(情報筋)

    当局は、現在の経済的苦境が国際社会の制裁によるものだと宣伝している。それは決して間違っていないが、それのみならず外資の誘致や経済特区に対する消極的態度が経済をより悪化させていると見方をしているということだ。

    韓国のNGO・脱北者同志会の徐宰平(ソ・ジェピョン)事務局長はデイリーNKの取材に対し「北朝鮮で商売がうまくいっていないという話があちこちから聞こえるのは事実」とし、「ただし、張成沢氏がどんな役割を果たしていたのか知っているのは一部の高位幹部に限られていることを考えると、このような話は権力を持った党幹部または資本を持ったトンジュ(金主、新興富裕層)など上層部から出た話だろう」と分析した。

  • 「公開処刑」でも止められない北朝鮮国民の占い中毒

    北朝鮮の刑法には、こんな条項がある。

    第256条(迷信行為罪)

    金または物を受け取って迷信行為をした者は、1年以下の労働鍛錬刑に処す。前項の罪状が重い場合には、3年以下の労働強化刑に処す。

    この「迷信」とは占いのことを指す。さらに、刑法附則11条は、罪状が非常に重い者、全く悔悛してしない者に対しては、無期労働刑(無期懲役刑)か死刑を適用できると定めている。占いをしたからという理由だけで死刑になりうるということだ。終末論を流し人心を惑わせるなど、占い師は北朝鮮の体制を脅かす要素と見られているためだ。

    実際、北朝鮮当局はごく最近にも、占いを行った女性らを公開処刑している。

    (参考記事:北朝鮮でまた公開処刑…女性2人を銃殺「占いしたから」

    それでも、国際社会の制裁で経済が苦しくなり、未来が不透明になる中、占いにすがろうとする人が後をたたない。デイリーNKは、平壌市民2人とインタビューを行い、最新の「占い事情」について聞いた。

    首都平壌でも占いをする人がいるが、平壌居住者ではなく、地方からやって来て一時的に平壌の知人宅などに滞在し、占いをする人もいる。一方、地方に住む占い師にとって、可処分所得の多い平壌市民を顧客にするのは魅力だが、リスキーであるため、長期間は滞在しないようだ。

    顧客には一般庶民もいるが、幹部やその妻が多いとのことだ。経済的に余裕がある上に、政治情勢に地位が大きく左右されることから、不安感を少しでも解消するためと思われる。

    (参考記事:【動画】北朝鮮国内で密かに行われている「占い」の現場

    ー迷信行為をする人は多い?

    平壌市民A「迷信をする人は平壌にも多い。チュチェ(主体)思想なんて信じても何にもならない。天から何かが降りてきて話をするらしいが、平壌には占い師はおらず、地方から平壌にやって来る。自分の住んでいるところではやらず、よそに行ってやる。咸鏡道(ハムギョンド)からも来るし、いろんな所からやって来る」

    平壌市民B「よそから平壌に来た人が占っている。平壌に友人、親戚、知人がいれば、そこで占いをする」

    ー迷信行為に対する取り締まりが厳しくなっているというが?

    平壌市民A「親しい人には占い師が来たと知らせるが、知らない人に話すと信訴(通報)される。もちろん取り締まりにひっかかる人もいる。しかし、保安員(警察官)は占い師を取り調べているうちに、占い師の言葉に惹かれて信じるようになってしまう。占い師が保安員に『何か起こるから家内安全で』と告げたらしいが、それが噂になってついには所長の耳に入り、連れてこさせて運勢を見たらしい。そうやってだんだん信じるようになる」

    ー見てもらったことは?

    平壌市民A「先日、友人から『早く家に来てみろ』と言われ行ってみたら占い師がいた。初めて会う人だったが『占うなら10万北朝鮮ウォン(約1300円)を払え』と言われたので、友人が『その程度なら』とカネを払った。言われたとおりに名前と生年月日を書いて渡したところ、本当によく当たった。(友人の)家族は『10月にどこか他の場所に行くことになるだろう』と言われたが、本当に11月にそうなった」

    平壌市民B「運勢を見てくれるところが多い。庶民は『食べるものがない、死んでしまいたい』と言いながらも、運勢を見てもらい、それがよく当たるのでビックリしている。その占い師は、幹部が持ってきたカネを火にくべて占っていた」

    (参考記事:ある北朝鮮の「占い師」が辿った数奇な運命

    ー占ってもらうのは主にどんな人?

    平壌市民A「幹部やその妻が多い。私達のような一般庶民は毎日平凡な暮らしをしているが、幹部は発展のある(置かれた状況の変化が大きい)人たちだから。心の中は苦しいのではないか。平壌には(粛清の風が吹き荒れれば)あっという間にクビが飛ぶような人が多いから、未来のことが気がかりで占いをするのではないか。『うちの夫はクビにならないか』『これからも豊かな暮らしができるか』ということを聞くらしい。ある幹部の妻は、夫の写真を持ってきて名前と生年月日を告げて、占い師にすがるように話を聞いていた」

    平壌市民B「若い人たち、商人、出世するかもしれない幹部やその妻がよく来る。未来のことが気がかりなのは幹部だから。幹部は今後が不安で、経済も苦しく、カネもどんどんなくなり、締め付けが厳しくなる中で、どうすれば出世できるかを聞きに来る」

    (参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

  • 福島への態度と矛盾…韓国政府「被ばく調査結果」隠ぺいの疑い

    韓国政府が、脱北者の放射線被ばくを隠していたのではないか、との疑いが浮上している。

    韓国紙・朝鮮日報が2日付で伝えたところでは、韓国統一省が昨年9月、北朝鮮の核実験場がある咸鏡北道(ハムギョンブクト)の豊渓里(プンゲリ)周辺出身の脱北者10人を対象に被ばく線量の調査を行ったところ、5人の被ばくの痕跡が「染色体異常」の判断基準に当たる250ミリシーベルトを上回ったという。中でも48歳の女性は、「発がん確率の急上昇」に該当する1386ミリシーベルトという結果が出たという。

    この結果について、同紙にコメントしたKAIST(韓国科学技術院)のチョン・ヨンフン教授は「数百ミリシーベルト以上の数値は、日常生活では絶対に出ることはあり得ない」「かつて米国ネバダ州などで核実験を行っていた当時も、これほど高い数値は報告されなかった」などと指摘している。

    それにもかかわらず、統一省はこの結果を公表してこなかった。同紙は「韓国政府が、ソウルと同水準(年間1ミリシーベルト)の福島の放射能問題を絶えず取り上げているのとは相反する態度だ」と批判している。

    今回明らかになったのは、野党・正しい未来党のチョン・ビョングク議員の事務所が、統一省に提出させた資料に基づいて発表したためだ。

    統一省関係者は、前々回の2017年に検査を行ったときに、「放射線被ばくと核実験との因果関係はない」との結論に達し、今回も同様の結果に達したので発表しなかったと説明しているとのことだが、前述したチョン教授の指摘を考えれば苦しい言い訳に聞こえる。

    豊渓里は、福島よりもよほど韓国に近い。国民の安全を考えるなら、韓国政府は当然、北朝鮮に対して放射能漏れなどの調査を要求すべきだ。それをしないのは、南北対話を何が何でも進展させたい文在寅政権の「政策」が優先だということではないのか。

    ちなみに豊渓里近くには、悪名高き政治犯収容所「16号管理所」(化成〈ファソン〉収容所)が存在し、ここに収容された政治犯が、核実験施設で防護服なしで強制労働させられていたという情報があるのだ。収容所の警備兵出身で脱北者の安明哲(アン・ミョンチョル)氏は、「若くて元気な政治犯たちがトラックに乗せられ、『大建設』という名目で核実験施設に連れて行かれた」と証言している。

    北朝鮮の拘禁施設では人権侵害が横行しており、人命が信じられないほど軽く扱われている。

    (参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

    だが、現政権の「政策」を優先するあまり国民の安全を顧みず、放射能汚染について韓国政府が矛盾した態度を取り続けるならば、北朝鮮のやっていることと本質的にどれほどの差があると言えるだろうか。

  • 北朝鮮軍「モラル崩壊」でドロボー軍隊化が止まらない

    北朝鮮軍「モラル崩壊」でドロボー軍隊化が止まらない

    全世界で最も長いと言われている北朝鮮の兵役。その期間は10年にも及ぶ。それだけあって、兵士の数も桁外れに多い。米国務省の報告書によると、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の2006年から2016年までの年平均の兵員数は116万人で、総人口(2500万人)に占める兵士の割合も4.8%と世界で最も高い。

    そして毎年、数多くの兵士が兵役を終えて民間に戻っていくが、北朝鮮当局はこれと言った手当を支給していない。それが、民間人に大きな被害をもたらす結果を生んでいることを、 咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

    その場所は、北朝鮮北東部にある咸鏡北道の清津(チョンジン)。郊外には、数多くの副業地が存在する。副業地とは、不足する国からの食糧配給を補うために、軍部隊が独自に開墾した畑だ。ところが、その周辺にある協同農場で働く農民が切り開いた畑が荒らされ、作物が盗まれる事件が相次いでいる。

    協同農場では、任された土地を責任を持って管理し、収穫の一部を国に納め、残りを自分のものにできるという「圃田担当制」が施行されているが、これがうまく働かず暮らしていけない。そのため、個人用の畑を作って作物を市場で売ることで現金収入を得ている。

    (参考記事:北朝鮮の協同農場、農民に土地を有料で貸し与える

    そんな畑に、副業地で働く兵士たち、とりわけ除隊を控えた兵士たちが、農作業の合間を縫って、あるいは夜中に忍び込み、トウモロコシやトウガラシを大量に盗んでいくのだ。それも、牛車に積んで行くほど大量にだ。

    「除隊を控えた兵士たちは何も恐れず、畑をすべてひっくり返してトウモロコシを盗んでいく」(情報筋)

    彼らは、盗んだ作物を市場で売り払って現金化し、除隊後の生活資金としてためておく。中には、高く売れるからと、盗んだトウモロコシを茹ででから売りに出す者もいるほどだ。

    (参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

    作物を盗まれ貴重な現金収入源を失った農民たちだが、兵士の盗みを目撃しても何も言えず、黙っているしかない。

    北朝鮮では、兵士の犯した犯罪は保安署(警察署)ではなく、警務隊(憲兵隊)が処理する。兵士に作物を盗まれたからと保安署に通報しても、権限がないために何もできない。だからといって、警務隊に押しかけていっても門前払いされるだけだ。

    兵士らは、個人の畑だけをターゲットにし、協同農場は狙わない。かつては、協同農場も同様の大量窃盗の被害に悩まされていた。しかし、今では上級機関に信訴(不正行為の告発)することで対処している。下手をすれば処罰されかねない。もちろん、個人でも信訴することは可能だが、コネや権力がなければ訴えを取り上げてもらうのは容易ではない。そういうこともあって、個人の畑を狙うほうがより安全なのだ。

    (参考記事:経済制裁に苦しむ北朝鮮で「牛泥棒」が横行する理由

    軍当局は、兵士の窃盗を防ぐために、副業地の近隣では軍服を来て行動すること、銃器の携帯や勝手な行動はしないこと、などの指針を下してはいるが、現場の兵士たちが気に欠ける様子は一向にない。それどころか、窃盗に罪悪感など全く持たず、「除隊の準備はうまく行っているか」「どこそこに行けば儲けがあるぞ」などといった会話を交わす有様だという。

    窃盗は犯罪だが、兵士たちにも他人様のものに手を出さざるを得ないそれなりの事情がある。

    朝鮮人民軍は、兵士の除隊に際していくばくかの食糧を渡すだけで、退職金の類は一切支給しない。その貴重なコメを両親に食べさせようと空腹をガマンし、乗っていた列車の立ち往生で到着が遅れ、餓死した兵士もいるほどだから、その量は推して知るべしだ。

    (参考記事:北朝鮮「列車に乗っていたら飢え死に」その理由は

    国境警備隊に配属になれば、脱北や密輸をする人から受け取るワイロを溜め込んで、除隊後の生活資金にできる。また、大都会の近くに駐屯する部隊に配属されたら、市場で何らかの商売ができる。ところが、兵士のほとんどが送り込まれる部隊は山奥にあり、現金収入のチャンスはないに等しい。

    農民の畑で盗みを働き、生活資金を工面しておかなければ、豊かな生活はおろか、生きていくことすら難しいのだ。

    (参考記事:30代男性にガソリンをかぶらせた北朝鮮の「貧困と絶望」

  • 「革命の道具」として使われる北朝鮮の女性たち

    提綱「女盟員たちが社会公衆道徳を自覚的に守ることについて」(画像:デイリーNK)
    提綱「女盟員たちが社会公衆道徳を自覚的に守ることについて」(画像:デイリーNK)

    かつては女性政策が進んでいると言われていた北朝鮮。現在の北朝鮮政府の前身にあたる北朝鮮臨時人民委員会は、1946年7月に女性の選挙権、被選挙権の保障、強制結婚の反対、離婚の自由、養育費訴訟権の認定、一夫多妻制の否定などを謳った「朝鮮男女平等権法についての法令」を発表した。またその後、女性をジェンダーロールから解放するための様々な施策を行った。養育や家事の社会化がその一つだ。

    それから70数年。女性の地位は向上した部分もある一方で、依然として改善されていない部分もある。そんな現状が、北朝鮮の思想教育にも反映されている。

    (参考記事:「私たちは性的なおもちゃ」被害女性たちの血のにじむ証言を読む

    デイリーNKは、平安南道(ピョンアンナムド)の内部情報筋を通じて、朝鮮社会主義女性連盟(女盟)がメンバーを対象にして行った講演会の提綱(レジュメ)を入手した。題名は「女盟員たちが社会公衆道徳を自覚的に守ることについて」だ。

    「女性の社会主義道徳確立の必要性を説き、資本主義の弊害が生活に浸透することを防ぐ」ことを目的としたこの講演会だが、言い換えれば風紀取り締まりだ。提綱の内容は次のようなものだ。

    「女性がいくら容姿が美しく、知識レベルが高くとも、公共の場で分別のない行動を行い、自分が楽するだけならば、文明的でない行動だ」

    「道徳的に低劣な軍隊が闘いで勝てないように、道徳が欠如した社会は脆弱なものだ」

    「社会に道徳規律を確立するための思想を強調し、社会主義文明建設を推し進めていくことは、社会主義の本来の姿を守り、革命隊伍の一心団結を盤石に固めるために重要な要求」

    これは、昨年から始まった非社会主義、反社会主義現象の取り締まりの一環として行われているようだ。北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞が今年5月25日に掲載した社説「全社会に美しく高尚な道徳気風を徹底して確立しよう」には、一連のキャンペーンを行うに当たっての、北朝鮮当局の現状認識がわかりやすく現れている。

    「今、帝国主義者どもはわが共和国を中から崩すために悪辣に策動している。制裁封鎖の度数を高めることと同時に、腐ったブルジョア道徳と生活様式を突きつけ、人々の精神状態を壊し、わが国内部に不和の種を蒔こうとしているのが敵どもの凶心だ。道徳紀綱が弱まれば、社会主義の本来の姿が乱され、さらには血と汗で勝ち取った革命の戦勝物すらも失うということが、過去の社会主義建設の歴史が刻んできた血の教訓だ」

    つまり、韓流など外部からの文化を受け入れることは、思想の乱れを招き、それは1980年代後半の旧共産圏崩壊のような事態に繋がりかねないと危惧しているということだ。

    この20年で進んだ市場経済化は、家庭における女性の地位を大きく変化させた。かつては夫の後ろをついて歩く存在だったが、今では経済的な主導権を握っている。女性は男性と違って、国から割り当てられた職場に所属する必要がないため、市場で自由に商売をし、一家の生計を担うことになった。

    (参考記事:妻に優しくなった北朝鮮の夫たち…亭主関白の末路は「餓死の恐怖」

    そんな女性が自由にファッションや韓流を楽しむことは、社会によからぬ影響を与える(と、当局は考える)。また、提綱で言及されていないが、女性たちの間では思想教育用の講演会の欠、飲酒、喫煙、幹部への抗議、悪口などが以前に比べて増加していると情報筋は伝えている。

    逆に、経済的な力を持ち、自由に社会活動を行う女性を抑えつければ、男性にも「良い影響」を与えるだろうと、当局が見ているため、女性をターゲットにした思想教育を行っているというのが情報筋の見方だ。伝統的な女性への蔑視と、現代女性への認識が複雑に入り混じっている。

    もちろん、当局の考える「国や党、首領、革命のために黙々と働き、身を捧げる」という女性像と、現実の女性の行動は乖離している。それを元に戻そうという流れが、当局の行動の根底にあることは言うまでもない。

    前述の労働新聞の社説は、また、女性に対しては次のような要求を突きつけている。

    親を失った子どもたちを育てた降仙(カンソン)の地の「乙女の母」のように、戦争老兵(朝鮮戦争参戦者)、栄誉軍人(傷痍軍人)の生活を肉親の心情で世話をする多くの美風先駆者たちのように、助け合い導く集団主義的気風がどこでも高く発揮されなければならない。

    しかし、口では高尚なことを言っているが、実態は伴っていない。例えば、美風先ここで言う「美風先駆者」の選抜においては、カネが飛び交っているのが実情だという。

    参考記事:北朝鮮、カネまみれの「品行方正」大会・・・表彰も献金次第

    また、栄誉軍人との結婚は半ば強いられたもので、それを巡ってトラブルも発生している。女性が「革命の道具」として使われているということだ。

    (参考記事:体はボロボロで家庭も崩壊…北朝鮮「負傷兵」たちの悲惨な末路

  • 「自分を棚に上げ責任を転嫁するな」北朝鮮が文在寅政権を非難

    「自分を棚に上げ責任を転嫁するな」北朝鮮が文在寅政権を非難

    北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は2日、南北対話が膠着状態に陥っている責任を、韓国政府が北側に転嫁していると非難する論評を掲載した。米国との実務協議再開を目前に控えたタイミングだけに、その意図が注目される。

    論評は「先日、統一部当局者は北南の対話が開かれないのが、まるでわれわれのためであるかのように言い触らした。南朝鮮国防部長官も、われわれの自衛的な国防力強化措置に言い掛かりをつけて、『北が緊張を高調』させているとの妄言を並べ立てた」と指摘。

    そのうえで「北南関係が膠着状態に陥るようになった根本原因は一言で言って、南朝鮮当局の背信的行為にある」としながら、韓国政府が米韓合同軍事演習で「相手を脅かし、緊張をあおり立てる挑発行為を引き続き働きながら、『対話』と『信頼』についてうんぬんするのは、常識外れの欺瞞(ぎまん)行為である」と非難した。

    さらに続けて、「自分のすべきことはせず、むしろ盗人猛々しく北南関係膠着の責任をわれわれに転嫁しようとずうずうしく振る舞っているのは、万人の驚愕をそそるだけである」と強調した。

    内容的には、北朝鮮がこのところ一貫して主張してきたのと同様のものである。韓国の文在寅政権が、約束したはずの南北経済協力に踏み出さず、一方で米韓合同軍事演習を続けていることをなじっているわけだが、過去には文在寅大統領を「ほぼ名指し」してもっとヒドイ言い方をしていることを考えれば、非難の程度は低いと言えるかもしれない。

    (参考記事:「奇怪な醜態」金正恩氏が文在寅氏を罵倒した理由

    このタイミングでこうした論評を出したのは、先月、トランプ米大統領と会談するなどして米朝の「仲介者」としての役割を捨てようとしない文在寅氏を、けん制するためかもしれない。北朝鮮はかねて、「(韓国の)仲介など必要ない」と言明している。

    経済協力を実行し、米韓合同軍事演習を中止しない限りは、文在寅政権にはいかなる「得点」も与えない。おそらくはこれが、金正恩党委員長の韓国政府に対する立場だと思われる。

  • 「韓国のやり方は日米に対してフェアじゃない」米元高官が直言

    日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は、日本にとってより必要なのか、あるいは韓国にとってより重要なものなのか――この点を巡り、双方の主張がメディアで入り乱れている。

    北朝鮮が2日に潜水艦発射弾道ミサイルの試射を行った後、韓国はまだ有効なGSOMIAに基づき、日本に対して情報提供を要請した。日本はこれに応じる方針だというが、日本から韓国への情報提供の要請は行われていない。

    これについて読売新聞3日付は「早期警戒衛星を持つ米軍からの情報が入るため、韓国側の情報は特段、必要ではない」とする防衛省幹部のコメントを伝えている。

    一方、共同通信によると、先月28日までにソウルで海外メディアと会見した韓国政府高官は、「日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)は、北朝鮮のミサイル発射探知のため韓国以上に日本が必要としていると強調した」という。

    どちらの主張が正しいかは、そのときの状況によって変わってくるものなのではないか。それよりも重要なのは、北朝鮮の脅威にどのように対処すべきかという観点と立場の問題であるような気がする。

    長年、米国の外交と国防政策を担ってきたリチャード・アーミテージ元米国務副長官はこの点について、米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)韓国語版のインタビューで次のように語っている。

    「韓国が歴史問題や日本の政策に不満があるからと言って、それを理由にGSOMIAを(駆け引き道具に)使うのは同盟である米国に対してフェアではないし、韓国自身や日本に対してもフェアではない」

    つまり、危機に対処するのに同盟を軸として考えているかどうか、ということだろう。日本も韓国も、米国とだけ組んでいれば十分と考えているのだろうが、米国は違うということだ。だからこそ、GSOMIAを破棄するとした韓国の決定について、米国はにほんよりも怒っているわけだ。

    (参考記事:「韓国外交はひどい」「黙っていられない」米国から批判続く

    もちろん、北朝鮮だけでなく中国やロシアを向こうに回す米国の世界戦略に唯々諾々と従うのは必ずしも得策ではない。しかし、北朝鮮が核戦力を着々と充実させている今、米国の大量報復能力なしには、日本も韓国も独自に抑止力を維持するには限界がある。

    それを知ってか知らずか、GSOMIAを破棄しようとする韓国の姿勢は、やはり韓国の国益にとっても得策ではないだろう。

  • 北朝鮮の女子大生が「ある要求」に耐えきれず選んだ道とは…

    北朝鮮の女子大生が「ある要求」に耐えきれず選んだ道とは…

    北朝鮮ではご法度の韓流ドラマやK-POP。刑法は183条で「退廃的、色情的、醜雑な内容を反映した絵、写真、図書、録画物、電子媒体などを許可なく他国より輸入、制作、流布、保管した者は1年以下の労働鍛錬刑(懲役)に処する」と定めている。また、184条では視聴も禁じている。実際はこれ以上の量刑になることも少なくない。

    それでも見る人が後を立たないのだが、最近、ある女子大生が韓流ドラマを見ていたといたところを摘発され、悲惨な運命を辿る事件が起きたと、平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

    平壌に住んでいたある女子大生は、自宅で韓流ドラマや映画などを見ていたところを、韓流取り締まりを担当するタスクフォース「109常務」に逮捕された。

    109常務は、女子大生の両親に対してこんな要求を突きつけてきた。

    「娘の罪をチャラにしたいなら、ワイロとして5000ドル(約54万円)を上納せよ」

    北朝鮮の一般庶民や下級幹部にとって、5000ドルは天文学的な数字と言っても過言ではないだろう。それでも、娘を救いたい一心で両親は金策に走った。しかし、集められたのは要求額の半分にも満たない2300ドル(約24万8000円)。

    取り締まりに関係のある幹部に渡そうとしたが、「俺をバカにしているのか!」と逆上され、暴言を吐かれたという。

    この幹部が額が少ないことに怒ったのか、あるいは「ワイロの仲介などしない」という意味だったのかは不明だ。いずれにせよ、そのことを知った娘は「私にやましいことはない。死んで証明する。カネは取り戻してください」との遺書を残し、裏山で自ら命を断った。

    (参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…

    この女性は、医大の卒業を控えた優秀な人物だったとのことで、そんな彼女がたかが韓流ドラマを見たくらいで死に追いやられたことに、近所の人たちは涙を流して怒りに震えているという。

    情報筋は、「韓流ドラマを見るには本当に注意が必要だ」として、ワイロの額が上がっていることを指摘した。

    「最近、109常務は5000ドルくらいでは動かない、1万ドル(約108万円)を払わなければならない」

    このように、韓流の取り締まりをネタにして、ワイロをゆすりとろうとする事件が報告されている。

    両江道(リャンガンド)の情報筋によると、今年5月に三水(サムス)郡の協同農場の7世帯が、韓流ドラマを見ていたところを109常務に踏み込まれた。彼らは「14歳以上は教化所(刑務所)に行くことになる」と脅迫した上で、1000元から2000元(約1万5000円〜3万円)のワイロを要求した。

    農民と顔見知りという取締官は「面倒を見るべき甥が3人いる。ノルマもある。500元や1000元では見逃してやれない、少なくとも1500元(約2万2700円)が必要だ」と、使いみちの内訳まで明らかにした上で、ワイロを要求した。

    109常務は通常、保衛部(秘密警察)、保安署(警察署)、検察所などの人員からなるが、協同農場に現れた人員は、パソコンの専門家と地元の青年同盟(金日成金正日主義青年同盟)のメンバーだった。地元の事情をよく知る青年同盟のメンバーが、生活苦を打開するために、隣人を売ったものと考えられる。

    しかし、いくら取り締まりが厳しくとも、一度韓流にハマった北朝鮮の人たちは、あの手この手を尽くして韓流を見ようとする。特に、外の世界の情報に飢えている若者はなおさらだ。

    「大学生たちは、外国映画などを見ているのがバレたら処罰を受けることを知りながら、好奇心を抑えられずに見てしまう。それを防ぐ方法はない」(情報筋)

    大学生たちは、スマートフォンに韓流ドラマなどのファイルを暗号化するアプリを仕込んでいて取り締まりを逃れようとしている。それも機種別にアプリが用意されている。機種別にセキュリティレベルが異なるからだが、これなら109常務がパスワードを解かない限りは、証拠を押さえることができない。

    しかし、デイリーNK取材班で確認した結果、北朝鮮製スマホの最新機種である「平壌2423」には、このアプリがインストールできないことが判明した。つまり、当局もこのアプリへの対策に乗り出しているということだ。

    (参考記事:北朝鮮スマホ最新機種は「韓流拡散防止」装置付き

  • 文在寅「GSOMIA破棄」で在韓米軍が“巻き添え”の大問題

    北朝鮮が2日、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)と見られる飛翔体1発を日本海で発射したことを受けて、韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相は同日の国会国防委員会による国政監査で、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に基づき、日本に関連情報の共有を要請したことを明らかにした。

    米国の「怒り」増幅

    韓国政府はすでに、日本とのGSOMIAを破棄する決定を下しているが、協定が失効するのは11月下旬だから、それまではこの取り決めに基づいた情報交換はできる。だが、問題はその後だ。北朝鮮がSLBMを搭載した新型潜水艦を日本海に配備した場合、韓国が対応に苦慮することになるのは明らかだ。

    その現実を示す出来事が、少し前にあった。

    7月25日、北朝鮮は新型の短距離弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射した。韓国軍の合同参謀本部は当初、これらの飛行距離を430キロとしていたが、後に2発のミサイルはそれぞれ430キロ、690キロ飛行したと修正。さらに26日になって、2発はいずれも飛行距離が600キロであったと再修正した。

    このように分析結果が二転三転した原因は主として2つある。第1に、ロシアの短距離弾道ミサイル「イスカンデル」を模倣したとされる北朝鮮のミサイルが、上昇後に下降して水平飛行するという、特異な動きをしたためだ。

    そして第2に、日本海に向けて発射された北朝鮮のミサイルが、南から北方を監視する韓国の早期警戒レーダーの死角へ抜けて行ってしまったからだろう。

    それでも韓国軍がミサイルの飛行距離を把握できたのは、「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に基づき日本側から提供を受けた情報が影響を及ぼしたといわれている」と、韓国紙・朝鮮日報は伝えている。

    これはつまり、朝鮮半島有事において北朝鮮が韓国へ向けて日本海からSLBMを発射した場合、韓国軍は探知に手間取り、迎撃のための対応が遅れてしまう可能性を示唆している。北朝鮮は、飛行特性の異なる新型の短距離ミサイルを何種類も開発することで、韓国の防空網の攪乱を狙っていると見られている。そこにSLBMまでが加わったら、韓国が直面する脅威は相当なものになるだろう。核弾頭が搭載されていれば、まさに国家存亡の危機だ。

    もちろん、その脅威にさらされるのは韓国軍だけではない。在韓米軍もまた、同じリスクを負うことになる。

    韓国の文在寅政権が日本政府による輸出規制措置への報復として、GSOMIAの破棄を示唆し始めた当初から、米国は繰り返し「それや止めとけ」との警告を発してきた。今後、米国の「怒り」はいっそう増幅されることだろう。

    (参考記事:「韓国外交はひどい」「黙っていられない」米国から批判続く

    GSOMIA破棄は、文在寅政権に2重のリスクをもたらすことになった。文大統領はその意味するところを、十分に理解しているのだろうか。

  • 中朝国境で暗躍する「20代の女性スパイ」の正体

    北朝鮮から脱北を試みた女性たちが、密告者による通報で逮捕される事件が発生したと、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

    今月初め、中国との国境に面した咸鏡北道の会寧(フェリョン)に住む女性3人が、脱北ブローカーの手引きで国境の川を越えて中国に向かおうとしたが、川岸に降りようとした瞬間、潜伏していた保衛部(秘密警察)の要員に取り押さえられた。

    「ニオイ拷問」が横行

    2人はおとなしく逮捕に応じたが、1人は川に向かって走り出し逃走を図った。保衛部は警告を発した後、拳銃を発射するなどし、結局逮捕した。

    情報筋が保衛部の協力者から聞いた話によると、今回の逮捕劇は、元々一緒に脱北することにしていた女性の密告によるものだった。

    脱北ブローカーは、現地で脱北希望者を募っていた。それに名乗り出たのはいずれも20代の女性だった。ところが、うち1人が途中で脱北を取りやめた。この女性が密告者だったのだ。

    「脱北を諦めた女性は最初から保衛部の指示を受けて接近したスパイだった。彼女らの脱北計画は最初から保衛部に報告されていた」(情報筋)

    保衛部は最近、脱北の計画を事前に察知するために、若い男女を抱き込み、脱北を試みる人やブローカーに接近させ、一網打尽にするおとり捜査を積極的に行っている。

    それは、脱北事件が起きた場合に、当事者だけでなく警備担当者にも責任を問うる風潮が高まりつつあるため、脱北を未然に防ごうと、このようなスパイを活用しているというわけだ。地域住民は「これでは誰が信頼できるブローカーか見分けがつかない」とささやきあっているという。

    以前は、脱北に失敗したり、成功したものの中国で逮捕され強制送還された場合には、過酷な刑罰が待ち構えていた。恐怖のあまり自ら命を断つ人もいた。

    (参考記事:脱北に失敗した北朝鮮人夫婦の「究極の選択」

    ところが、最近になって強制送還された脱北者に対する処罰は多少緩和され、一般の犯罪と同じ扱いにしているというのが情報筋の話だ。とは言え、北朝鮮の教化所(刑務所)の状況は、劣悪極まりないことには変わらない。施設内ではたとえば、若い女性を「ニオイ拷問」で死に至らしめるなどの行為が横行している。

    (参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

    国境地域への訪問も規制が強化されている。

    咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)に住む米政府系のラジオフリーアジア(RFA)の情報筋は、秋夕(チュソク、旧盆)に合わせて国境に近いところにあるお墓参りをしようと旅行証(国内用パスポート)を申請しても、ほとんど発行されない状態だと述べた。その理由は脱北や違法な携帯電話の使用が増えることを恐れてのことだという。

    とりわけ、家族の中に脱北者がいる場合には、理由の如何を問わずに完全に不許可となっている。

    会寧の情報筋は、国境警備隊、保安署、保衛部など、国境地域を警備する人員が2倍に増やされたと述べた。旅行証の確認や荷物検査、身体検査を行うほど厳重な警戒を行っている。地域住民ですら移動が困難となっており、公式に抗議したが黙殺されているという。

    (参考記事:金正恩氏の「風紀取り締まり」に北朝鮮庶民が強く反発

  • 「独島が韓国の領土であるとの証拠は何もない」韓国ベストセラー書、衝撃の内容

    「独島が韓国の領土であるとの証拠は何もない」韓国ベストセラー書、衝撃の内容

    韓国外務省のイ・サンリョル・アジア太平洋局長代理は9月27日、日本政府が同日の閣議で了承した2019年版の防衛白書は日本の周辺国の軍事動向を説明する部分で、前年版と同じく「わが国固有の領土である北方領土や竹島の領土問題が依然として未解決のまま存在する」と記したことを受け、在韓日本大使館の実生泰介公使(総括公使代理)を呼び抗議した。

    「不快でも仕方ない」

    また、韓国国防省も同様に、在韓日本大使館の武官を呼んで抗議している。

    韓国において「独島(竹島)問題」は、他の歴史問題と同じく非常に敏感なイシューだ。他の歴史問題については「もう過去のことだから」という見方も出来るが、領土問題は現在進行形であるだけに、いっそう難しいとも言える。

    もっとも、韓国は島を実効支配しているのだから、日本からの抗議に「聞こえないふり」を決め込む方が得策ではないかとも思えるが、韓国国民としては、「また日本に国を取られる」との恐怖感があるのかもしれない。

    そんな敏感な問題にもかかわらず、韓国のベストセラー書籍『反日種族主義』は、「独島問題」について、韓国における定説を覆す主張を展開している。

    李栄薫(イ・ヨンフン)元ソウル大学教授ら6人の研究者が執筆した同書は植民地統治下の朝鮮半島で「日本による土地やコメの収奪はなかった」「従軍慰安婦の強制連行はなかった」などと主張し、韓国で物議を醸している。

    同書に書かれている「独島問題」に対する見解の詳細は、おそらく日本では数多く論じられてきた内容であると思われるため省略するが、李栄薫氏の次の記述は韓国国民にとっては衝撃的だろう。

    「今日、韓国政府が独島問題を国際司法裁判所に持ち込もうという日本政府の主張を受け入れられない境遇にあることは、皆がよく知る事実です。率直に言って、韓国政府が、独島が歴史的にその固有の領土であることを証明するために、国際社会に提示できる証拠はひとつも存在しないのが実情です。読者の皆さんは不快に思うかも知れませんが、国際司法裁判所の公平な法官たちは、そのように判断するはずです。私はひとりの知識人として、その点を指摘せずにはいられません」

    もちろん、同書に対しては韓国国内で様々な反論が出ており、これがかならずしも日韓の歴史の「決定版」とは言えない。ただ、「独島問題」が同国内で論争になったこと自体、これが初めてだろう。

    (参考記事:「この国は嘘つきの天国」韓国ベストセラー本の刺激的な中身

    しかしだからと言って、韓国世論がこの問題で日本の見方に歩み寄ることはないだろう。今後、ほかの歴史問題が解決することがあるのかないのかもわからないが、仮に解決していくにしても、「独島問題」は最後の最後まで残り続けるように思える。

  • 「GSOMIA破棄で損害を被るのは韓国」米有力者が断言

    共同通信によれば、28日までにソウルで海外メディアと会見した韓国政府高官は、「日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)は、北朝鮮のミサイル発射探知のため韓国以上に日本が必要としていると強調した」という。

    GSOMIAの破棄を宣言し、米国から繰り返し不満を表明されるなど外交的な立場がいっそう苦しくなっている韓国だが、この高官の弁は、苦し紛れの強がりにしか聞こえない。

    実際のところ、日韓のGSOMIAが締結された2016年当時、この協定締結をより望んでいたのは韓国側なのだ。韓国国防省は当時、GSOMIA締結の必要性について次のように強調していた。

    「高度化、加速化、現実化している北の核・ミサイルの脅威などに対し、日本の情報能力を活用することで、われわれの安保利益を高めることができる。北の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に関連する情報を得るのに実質的に役立つと期待される」

    現在建造中とされる北朝鮮の弾道ミサイル潜水艦は、東海岸の海軍基地に配備されると見られている。ということは、朝鮮半島有事には日本海に出撃してミサイルを発射する可能性が高いわけだが、そうなると、韓国は自軍レーダーの探知範囲の外から撃たれる形になる。だから、日本海を常時監視している日本の情報が必要だということだ。

    そのような経緯を忘れたのか忘れた「ふり」でもしているのか、件の高官の発言はあまりに軽薄だ。

    そんな具合だから、米国から韓国への警告の声も止まない。

    (参考記事:「そんなの嘘だ」…米国政府「文在寅」名指しして不満爆発

    米ヘリテージ財団の創設者で、トランプ米大統領とも近いとされるエドウィン・フールナー氏は27日、韓国紙・朝鮮日報とのインタビューで、「GSOMIAを破棄し、対立する状況が続けば、最終的に損害を被るのは韓国だ」と断言している。同紙によれば、フールナー氏は人差し指、中指、薬指を立て「韓米日はこのように緊密な関係を維持すべきだ。中国とロシアの面前で韓日が歴史問題で引き続き争うよりも、南シナ海問題など共同の利害がある分野で協力できることを見いだしてほしい」と述べたという。

    これは翻して言うと、韓国が歴史問題を理由にGSOMIAに象徴される3国の協力を傷つければ、それは「南シナ海問題など共同の利害」に対するダメージにつながり、韓国がその責任を問われかねないという意味の警告と言える。

    GSOMIAを維持しても破棄しても、歴史問題を巡る日韓対立で、どちらかが有利になったり不利になったりすることはない。いや、米国の機嫌を損ねた分だけ、韓国の方が不利だ。文在寅政権は早くそのことを認め、破棄の決定を撤回した方が身のためなのだが、そのことを文大統領は果たして理解しているのだろうか。

    (参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感

  • 「性的虐待を受けた女性兵士が男性宅に押しかけて…」北朝鮮軍の闇

    「性的虐待を受けた女性兵士が男性宅に押しかけて…」北朝鮮軍の闇

    北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)市に駐屯する高射砲部隊で、男性将校が女性兵士と「不適切」な関係を持ち、生活除隊(不名誉除隊)になる出来事があったと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

    北朝鮮の高射砲部隊は主に女性兵士で編成された部隊が多い。金正恩党委員長の祖父・

    北朝鮮では1962年 12月 10日,朝鮮労働党中央委員会第4期5次全員会議で「4大軍事路線」という方針が打ち出された。「全人民の武装化」「全国土の要塞化」「全軍幹部化」「全軍現代化」を目指そうというもので、これに基づき、女性兵士による高射砲部隊が数多く編成された。

    ただ、これらの部隊も指揮官は男性将校である場合が多い。そして、女性兵士の人権が軽んじられる風潮の中、高射砲部隊は性的虐待の温床にもなっているとされる。

    (参考記事:ひとりで女性兵士30人を暴行した北朝鮮軍の中隊長

    韓国の北韓人権情報センター(NKDB)2017年、「軍服を着た収監者~北朝鮮軍の人権実態報告書」と題した報告書を発表している。北朝鮮軍に勤務した経験を持つ脱北者70人を対象に調査したものだ。この調査では軍隊内での性暴力について、24人が経験したか、目撃したか、あるいは話を聞いたことがあると答えた。パーセンテージでは約34パーセントということになる。

    NKDBの調査に応じたある脱北女性は、次のように話している。

    「女性の中には妊娠して、自殺してしまう人も多い。旅団長や旅団政治委員に妊娠させられたとか、そういった噂が広がるんです。旅団内で、私が副分隊長への昇進を控えて士官学校に行ったとき、女性兵士が自殺した話を聞きました。妊娠してお腹が大きくなるのに、誰にも言えず悩んでいたらしいです」

    このような場合においても、性的虐待を加えた本人は、何ら制裁を受けないことがほとんどだという。

    (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

    ただ、冒頭で触れた今回の事件では、女性は自殺も泣き寝入りもしていない。男性将校は既婚者でありながら独身を騙っていたとのことで、女性は妊娠するや男性の家庭に押しかけ、妻に離婚を要求したという。

    そのようにして騒ぎが大きくなったことで、上層部としても男性将校を処分しないわけには行かなかったのだろう。

    (参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

    最近ではほかに、平安南道(ピョンアンナムド)の部隊で、性的虐待に耐えかねた女性兵士らの脱走が相次いでいるとの話もある。金正恩党委員長は、軍隊内における女性兵士の地位向上を厳命しているとされる。それが本当ならば、金正恩氏はこうした現象に目を配り、現状の抜本的な改善に取り組むべきだ。

  • 「死んだのは孤児だから…」金正恩体制支える奴隷労働の生々しい現場

    国連人権理事会の第42回定期会合(スイス・ジュネーブ)で20日、北朝鮮の人権状況に対する普遍的定期審査(UPR)報告書が採択された。同報告書には、北朝鮮の人権状況を改善するための262の勧告が盛り込まれている。

    北朝鮮はそのうち、国際労働機関(ILO)への加盟を求める勧告について、即座に受け入れないが拒絶でもない「留意」するとの反応を示している。しかし、表現としては「留意」であっても、本音では拒絶だろう。世界でも最悪の「奴隷労働」国家である北朝鮮が、ILOの基準に従って国家経済を運営することなど不可能だからだ。

    そのような現実を示す例は、枚挙に暇がない。

    韓国の北韓人権情報センター(NKDB)は昨年3月、脱北者からの聞き取り調査を元にして、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士が工事に動員され事故に遭っても、まともに補償をしてもらえない実態を告発した。

    (参考記事:「事故死した98人の遺体をセメント漬け」北朝鮮軍の恐るべき人権侵害

    また、声があげられない立場の弱い人ほど、扱いがひどくなる。当局は、両江道(リャンガンド)の白頭山観光鉄道の建設現場に、コチェビ(ストリート・チルドレン)を多く動員し、事故で亡くなっても「死んだのは孤児だから何事もなかったかのような扱い」(現場の声)をしている。

    (参考記事:コチェビ出身の労働者ら「見殺し」…北朝鮮の鉄道建設現場で土砂崩れ

    当局が責任を認め、謝罪した例もあるにはあるが、それは被害者に特権層などがからんでいる場合に限られる。

    (参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故

    最近ではあるガラス工場で、大型のガラス板を貨物列車に積み込む作業中に事故が起き、3人が死傷した。ところが、工場は遺族に補償をしないばかりか、「騒ぐな」と脅かす始末だと、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

    事故が起きたのは今月初め、南浦(ナムポ)にある南浦ガラス連合企業所でのことだ。

    北朝鮮を代表するガラス生産工場である同企業所は、黄海南道(ファンヘナムド)夢金浦(モングムポ)の豊富な良質の砂などを使い、板ガラスなど1000種類の製品を生産している。

    この日、労働者は貨物列車に工場で生産した大型のガラス板を貨物列車に積み込む作業を行っていた。本来、ガラス製品を荷積みする際には、フォークリフトや移動式クレーンを使用する。しかしこの日は何らかの理由で機械を使えず、出荷を急ぐ企業所は、列車1両あたり北朝鮮としては破格の100ドルから200ドル(約1万800円〜2万1600円)の報酬で地元の若者を雇い、作業に当たらせていた。

    四隅に木の台座をはめたガラス板を4人で持ち上げ、列車に積み込んでいたところ、ガラス板が急に倒れてきて、3人が下敷きになり、死傷した。

    事故の知らせを聞いて死傷者の家族が現場に駆けつけてきた。3人は若くて誠実な労働者で、幼い子どもを抱えていた。ところが、ガラス工場は家族に対し、次の要求を突き付けた。

    「ガラス破損を弁償しろ。騒ぐな」

    家族は激しく抗議したが、工場側は「労働者が国家的損失をもたらした」との主張を繰り返したという。遺族は一切の補償を受けられないまま、遺体を収拾し、静かに葬儀を終えるしかなかったという。

    このガラス板がどこに使われるか情報筋は明らかにしていないが、国家的プロジェクトに使われるもののようだ。そのような仕事をしていて事故で死傷した場合、当局は通常、手厚い補償はしなくても、見舞金と葬儀代くらいは出すのが一般的だと情報筋は説明した。不平不満が吹き出したり、噂が立つことを恐れてのことだ。

    「ところが、彼ら3人に対しては『カネ儲けをしようとして死んだ』とひどい言葉を投げつけ、あれこれ言うなら責任を取らせると言われ、結局静かに葬儀を済ませた」(情報筋)

    「人間中心の主体(チュチェ)思想」を掲げる北朝鮮だが、事故に巻き込まれ亡くなったり怪我をした人に対する扱いを見ると、到底人間を大切にしているとは思えない。

  • 「ナチス旗と同じ戦犯旗」北朝鮮が“旭日旗論争”に参戦

    「ナチス旗と同じ戦犯旗」北朝鮮が“旭日旗論争”に参戦

    北朝鮮の内閣などの総合機関紙・民主朝鮮は23日、東京五輪・パラリンピックでの旭日旗の持ち込み問題をめぐり、「戦犯旗である『旭日旗』を『平和の象徴』に変身させてみようと企んでいる」と日本を非難する署名入りの論評を掲載した。

    「レーダー照射」問題でも

    日本と韓国が対立している旭日旗の持ち込みをめぐっては、韓国政府が国際オリンピック委員会(IOC)に旭日旗禁止を要請。IOCは明確な態度を示していない。一方、東京五輪・パラリンピック組織委員会は、持ち込みを禁止しない方針を示した。

    論評は、「『旭日旗』は第2次世界大戦当時、『卍』が刻まれたナチス旗とともに世界人民の胸に永遠に癒せない傷を残した戦犯旗である」と指摘した。

    また、朝鮮労働党機関紙の労働新聞も24日、日本が東京五輪・パラリンピックで「侵略戦争の象徴である『旭日旗』を使用しようと画策している」とする論評を掲載。

    こちらの論評は、旭日旗の五輪会場などへの持ち込みを認めるのは「日帝の侵略で不幸と苦痛を強いられたアジア諸国人民に対する我慢できない冒とくであり、平和と友好を志向するオリンピック理念に対する愚弄である」と強調した。

    このように、北朝鮮が日韓の「対立案件」に参戦するのは珍しいことではない。昨年、韓国海軍と海上自衛隊の間で起きた「レーダー照射問題」に際しても、北朝鮮は口をはさんでいる。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    むしろ気になるのは、北朝鮮の東京五輪・パラリンピックに対する姿勢だ。

    8月、東京都内で20~22日に開かれた東京五輪の参加予定国・地域を対象とした団長会議に、当初出席予定だった北朝鮮の元吉友(ウォン・ギル)体育次官ら3人が、直前になって来日を見送った出来事があった。理由は不明とされる。日本政府は独自制裁で北朝鮮国籍保有者の入国を原則禁止しているが、スポーツ関連の例外扱いとして入国を認める方針だった。

    また同月、東京で行われた柔道の世界選手権も、北朝鮮は直前になって出場を取り消している。

    韓国と北朝鮮は今年2月、国際オリンピック委員会(IOC)との間で、東京五輪にホッケーの女子、バスケットボールの女子、ボートの6種目、柔道の混合団体――以上の4競技で南北合同チームを出場させることで合意していた。しかしこのうちのホッケー女子については、国際ホッケー連盟(FIH)が期限としてた9日の予選抽選会までに南北からの参加申請がなく、事実上、立ち消えとなった。

    ほかの3競技についても、このところの南北対話の断絶のために、調整はまったく進んでいない状況だ。

    北朝鮮の真意は見通せないが、旭日旗の問題だけでなく、本大会の前後に何らかの波乱があるかもしれない。

  • 金正恩氏「女性への性的虐待やめよ」国連勧告を拒否

    国連人権理事会の第42回定期会合(スイス・ジュネーブ)で20日、北朝鮮の人権状況に対する普遍的定期審査(UPR)報告書が採択された。同報告書には、北朝鮮の人権状況を改善するための262の勧告が盛り込まれている。

    米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、北朝鮮は事前に提出した同報告書に対する答弁書で、南北離散家族問題解決のため韓国と協力すべきなどとする132の勧告については受容している。

    女性芸能人を処刑場に

    その一方、国際労働機関(ILO)への登録など56の勧告については留意するにとどめ、国際刑事裁判所(ICC)と関連するものや、性的暴行・人身売買・家庭内暴力など女性に対する暴力に関わるものなど11の勧告については拒否する意思を表明している。残る数十の勧告に対する態度は詳らかでない。

    (参考記事:北朝鮮女性、性的被害の生々しい証言「ひと月に5~6回も襲われた」

    米朝対話のラインが紆余曲折を経ながらも保たれ、トランプ米大統領が金正恩党委員長との「良好な関係」をアピールする現在、なんだか遠い昔のことのように思われるが、北朝鮮は少し前まで、米国をはじめとする国際社会から激しい人権攻勢を受けていた。そして、金正恩氏はそのことを最も苦々しく思っていた。人権こそは、恐怖政治で維持されている金正恩体制の根幹を揺さぶりかねないものだからだ。

    核実験や弾道ミサル実験の連発で国際世論の目を引きつけ、人権攻勢の波を弱めた一点だけをもってしても、金正恩氏の「核戦略」は大成功だと言えるかもしれない。

    それにしても、北朝鮮が百数十の勧告は受容しながら、女性に対する暴力に関する勧告を頑として拒否しているのは、金正恩氏が人権攻勢のどの部分を最も嫌っているかを如実に見せているように思える。

    金正恩氏は、米国との非核化交渉を自国に有利な形で乗り切った後は、世界でも有力な国家指導者として国際社会に地位を占めたいのだ。確かに、あの若さである。大国を向こうに回した外交戦で勝利し、20~30年も国家指導者として君臨し続ければ、それも夢ではないかもしれない。

    しかし国際社会は、女性への暴力の横行を許すような国家の指導者には、そのような地位を決して認めないだろう。

    金正恩氏はそのことを良く分かっているから、国内で女性への暴力が横行する現実そのものを認めないのだろう。だが百歩譲って、仮に北朝鮮国内の現実が変わるなら、国際社会に対して現状を認めなくても構わない。

    (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

    金正恩政権は、女性官僚の活躍が目立っているのが最大の特徴のひとつだ。金正恩氏が祖父や父親と比べてマシな女性観を持っているなら、それはそれで結構なことだ。

    しかし北朝鮮社会の現実を考えると、状況の改善は生易しい課題ではない。公開処刑を女性芸能人たちに「強制見学」させるような金正恩氏の人権感覚に、大きな期待は持てないというのが正直なところだ。

    (参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

  • 「客の大半は韓国人」中国の“ネット性売買”で北朝鮮女性が被害に

    米ニューヨーク・タイムズは13日、中国で脱北した北朝鮮の女性たちが望まないセックスワークを強要され苦しんでいる実態を報じた。これに対し国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が「中国国内の脱北女性たちがうけている残酷な人権侵害の一例だ」と指摘したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

    ニューヨーク・タイムズによると、イ・ジニ(仮名)という脱北女性は中国東北部地域のアパートの一室で一週間、PCの前に座り、正午から翌日午前5時までビデオカメラの前で淫らな行為をさせられ、その様子をネットを通じて客に見せることを強要された。いわゆる「アダルトビデオチャット」だ。

    北朝鮮から中国に逃げ出した脱北女性が、人身売買の犠牲となりセックスワークや「アダルトビデオチャット」を強いられる事例はこれまでも多数報告されている。

    イさんは2年前、中国でレストランの従業員として働くと聞いて脱北したが、中国人のブローカーに引っかかり人身売買の犠牲となってしまった。同紙に証言したもう一人の女性、キム・エナ(仮名)さんは中国でマツタケを採る仕事と聞いて越境したが、中国人のブローカーに引っかかってしまった。

    彼女たちには一定額のノルマが与えられ、それを達成しない限り、食事も取られず体調が悪くてもPCの前で、淫らな行為を行わなければならないと明かす。顧客の大半は同じ言語を使う韓国人男性だという。

    (参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち

    これまで多くの人権団体が、毎年何千人もの北朝鮮女性たちが人身売買の犠牲となり、中国の田舎で結婚していない中国人男性に売られたり、売春やサイバーセックスを強要されていると指摘している。HRWアジア人権擁護局長のジョン・シフトン氏はRFAに対して次のように述べた。

    「北朝鮮の女性たちは自ら望んで中国に来たとしても、人身売買の犠牲となって人権侵害を受けるという非常に不安定な状況におかれている。(ニューヨーク・タイムズ)の記事は、この恐ろしい事実を示している」

    ニューヨークタイムズに紹介された2人の脱北女性は、セックスワークを強要されていたが、北朝鮮へ帰ることは考えたことがなかったという。韓国へ行ってお金を稼ぎ、北朝鮮に残っている家族を脱北させることが彼女たちの目的だったからだ。

    彼女たちは、運良く韓国のキリスト教の牧師に助けられ、ブローカーから逃れて韓国に入国することができ、自分たちの悲惨な体験を証言した。しかし多くの女性の心の傷は深い。韓国に在住する脱北女性のキム・ジヘさん(仮名)は、次のように述べた。

    「中国に脱北した女性たちはパスポートはおろか身分証を持てない。だから、否が応でも中国にいなければならない。頼る人もおらず、その境遇から抜け出すこともできない。生きていかなければならないので仕方がなく、そうする(セックスワークに従事)しかない。私にもそのような境遇にいた知人がいるが、そうした話は口にしたがらない。女性だからその気持ちがわかる」

    こうしている間にも、多くの脱北女性たちが中国で人権を侵害されている。運良く韓国に入国できたとしても、女性らは中国でうけた深い傷を背負って生きていかなければならない。

    韓国の文在寅政権は金正恩体制との対話には積極的だが、脱北者らの人権問題については及び腰だ。それが事実でないと反論したいならば、こうしたビデオチャットへの韓国からの接続を徹底的に遮断することから、具体的な行動を始めてはどうだろうか。

  • 傷つけたら「公開処刑」も…金正恩一家「聖なる木」のトンデモ伝説

    北朝鮮の山には「スローガンの木」と呼ばれるものがある。日本の植民地支配に抵抗し抗日パルチザン活動を繰り広げていた人々が、森の中の木に祖国独立への想いを込めたスローガンを刻んだとされるものだ。

    1986年、金日成氏が白頭山密営を訪れ、スローガンが刻まれた木を探せとの指示を下した。それをきっかけに、全国的にスローガンの木を探す活動が全国で展開された。発見されたスローガンには朝鮮独立を求めたものもあれば、金日成氏を指導者として称えるものや、金正日氏の生誕を祝うスローガンが刻まれた木まで存在し、金氏ファミリー神格化の材料として使われている。

    そのほとんどは当局がプロパガンダ目的でねつ造したものだとされるが、北朝鮮では文化財同然の扱いを受けている。アルゴンガスを注入したガラスケースに覆われ、メンテナンス費用は1本あたり年間数千ドルとも数万ドルとも言われている。

    故意にせよ事故にせよ、この木を傷つけることは重大な政治的犯罪とされ、犯人が公開処刑された事例もある。

    (参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

    最近では、ある鉱山労働者が木を傷つけたことで懲役判決を受けたと、咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

    端川(タンチョン)市の検徳(コムドク)鉱業連合企業所に勤める労働者Aは、鉱山のそばの住宅地に暮らしていた。そこから2キロ離れたところには、スローガンの刻まれたカラマツの木がある。

    Aは先月初め、その区域に忍び込み、あろうことかスローガンの木を切り倒してしまったのだ。

    切り株を見つけた山林監督員は、すぐさま保衛員(秘密警察)、保安員(警察官)に知らせ、犯人探しを行った。犯行当時は雨がやんだ直後で地面が濡れており、切った木を引きずった跡が残っていた。それが住宅地の方に続いていた。それをたどったところ、Aの家にたどり着いた。庭からスローガンの木が発見されたため、お縄となった。Aは、切ったスローガンの木を薪として利用していたという。

    実はこのような「不敬事件」は度々発生しているが、「犯行」は木を切る音が聞こえない大雨の中など行われるため、捜査を行っても犯人はなかなか捕まらないという。未解決事件となれば、全責任を警備員と山林監督員が負わされる。

    Aには強化刑(懲役)5年の判決が言い渡された。それも「見せしめとして重罰に処した」とのことだ。かつては「3代が滅ぼされる」(脱北者)と言われるほどの重罪だったスローガンの木の破損だが、理由は不明ながら以前ほどは厳しい処分にならないようだ。

    2010年の9月と12月に、両江道の金正淑(キムジョンスク)郡で、新坡(シンパ)革命史跡館のスローガンの木十数本が放火で焼失し、郡の朝鮮労働党責任書紀、革命戦跡地管理総局長、保衛部(秘密警察)、保安署(警察署)の幹部らが逮捕される事件が起きている。

    (参考記事:北朝鮮でスローガンの木十数本が放火で焼失、地方幹部らが逮捕

    2007年7月には、咸鏡北道の延社(ヨンサ)郡で、スローガンの木を伐採して中国に売り払い、その利益で別荘を建て女性をはべらせてベンツを乗り回すなど、贅沢三昧の暮らしをしていた外貨稼ぎ機関の地方責任者が、公開処刑されている。

    (参考記事:北朝鮮「スローガンの木」を切った幹部を公開銃殺

    一方で、木を守るために命を投げ出した人々は称賛される。

    1998年、咸鏡南道(ハムギョンナムド)にあるムジェボンという山で、山火事が起き、スローガンの木が危機に瀕した。消火活動に投入された海軍兵士のうち、17人が死亡、3人が大やけどを負う大惨事となったが、当局はこの出来事を忠誠心を高めるためのキャンペーンとして利用した。

    (参考記事:人命より「革命の聖なる木」を大切にする北朝鮮

  • 「責任回避ばかりするな」北朝鮮が“新ネタ”で文在寅政権に攻勢

    北朝鮮の対韓国宣伝サイトである「ウリミンジョクキリ(わが民族同士)」は20日、「12人のわが女性たちはどこに」と題した記事を掲載。韓国に亡命した北朝鮮レストラン従業員らの送還を要求するとともに、文在寅政権の対応を非難した。

    この事件は2016年4月、中国の北朝鮮レストラン「柳京食堂」の支配人と女性従業員ら計12人が集団で脱走、韓国に亡命した出来事で、北朝鮮は当初から「集団拉致された」と主張。また韓国国内においても、朴槿恵前政権下において国家情報院が介入した「企画脱北」ではないかとの疑惑が持ち上がっていた。

    そして今月9日、韓国の政府機関である国家人権委員会は、この事件に関する調査結果を明らかにしている。それによると、脱北の過程で韓国政府の違法・不当な介入があったとする主張については、「客観的な証拠を確認できない」とする一方、一部の従業員が支配人の懐柔と脅迫によって入国を決めた蓋然(がいぜん)性を排除できないとした。

    また、外国の法律家でつくる真相調査団は4日に発表した訪朝調査結果の中間報告書で「12人の女性従業員は欺瞞(ぎまん)により韓国に強制移送された」とし、この事件は「拉致・人権侵害」であると結論付けている。

    事態がこうなった以上、北朝鮮が黙っているわけはない。前述の記事は「朴槿恵保守逆賊一味が敢行した前代未聞の反人権犯罪」であると指摘する一方、文在寅政権にも非難の矛先を向けている。

    「現当局の執権後も変わった点はなく、ただ責任回避にのみ汲々している」としながら、「現南朝鮮当局は、我々の女性たちを強制抑留して戻さずに置きながら、『離散家族の痛み』とやらを論じてはならない」として、従業員らの送還を、文在寅大統領が重視する朝鮮戦争などで生き別れになった南北離散家族の再会事業の前提条件とする姿勢を見せている。

    他の北朝鮮メディアも、これと同様の記事を掲載しているが、こんなものはまだまだ序の口である。しばらくすれば、北朝鮮当局者が公式に、従業員らの送還を韓国政府に要求するかもしれない。また、国連人権委員会などで、北朝鮮にいる従業員らの家族が、娘の送還を訴えることもあり得る。

    金正恩党委員長はまたひとつ、文在寅政権を窮地に追いやる「ネタ」を握ったと言えるのだ。

    (参考記事:「奇怪な醜態」金正恩氏が文在寅氏を罵倒した理由

  • 日本より徹底的…金正恩氏の文在寅政権に対する「無視」戦術

    北朝鮮の金正恩党委員長と韓国の文在寅大統領が首脳会談を行い、「平壌共同宣言」に署名してから19日で丸1年となったが、この節目の日に北朝鮮メディアはいっさい、このことに触れなかった。

    今年2月にベトナム・ハノイでの米朝首脳会談が決裂して以降、北朝鮮は南北経済協力などの約束を履行せず、米韓合同軍事演習を続ける文在寅政権への非難を強めてきた。それでも、昨年4月の南北首脳会談で採択された「板門店宣言」から1周年のときは、対韓国窓口機関・祖国平和統一委員会が備忘録を発表している。韓国を非難する内容ではあったが、宣言の重要性に対する認識は示していた。

    米国から不快感

    それを考えると、共同宣言から1周年を迎えながらまるで言及がないとは、なかなか驚くべきことと言える。

  • 北朝鮮の要人らを襲う「謎の交通事故」に暗殺計画の疑い

    北朝鮮の要人らを襲う「謎の交通事故」に暗殺計画の疑い

    北朝鮮の国境警備隊の保衛部長(秘密警察のトップ)が交通事故で死亡した。その後、数々の疑問点が浮上、「事故を装った殺人ではないか」との噂が立ち、当局が調査に乗り出したと、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

    亡くなったのは、国境警備隊25旅団の50代の保衛部長だ。彼は、25旅団の252連隊の保衛部長を勤めてきたが、先月初めに25旅団の保衛部長への栄転が決まった。15日ほどの引き継ぎ作業を終え、25旅団の指揮部(本部)がある恵山(ヘサン)に向かっていた途中で、交通事故に遭い、死亡した。

    「走り屋」金正恩氏の危険度

    北朝鮮は非常に道路事情が悪い上に、ドライバーの運転マナーもいいとは言えず、各地で事故が多発している。特に、山間地の両江道では事故が多い。

    (参考記事:母親思いの一家を飲み込んだ「魔の道路」…数百人死傷も

    しかし、今回の事件はどうも様子が異なるようだ。車には保衛部長以外にも運転兵など3人が同乗していたが、いずれも怪我すらしていないというのだ。

    旅団と連隊の指揮部は、単純な事故ではなく「誰かの陰謀により意図的に殺害された可能性がある」と見て、事故当日に車を運転していた運転兵、その他同乗者、側近に至るまで取り調べを行っているが、今のところ何もわかっていないと情報筋は伝えた。

    「交通事故を装った暗殺」という噂は、北朝鮮で非常によくあることだ。

    例えば、官僚機構のトップに君臨する朝鮮労働党組織指導部の第1副部長ら3人が、2010年から2011年にかけての9ヶ月間に相次いで死亡したが、そのうちの一人、2010年6月に交通事故で亡くなった李済鋼(リ・ジェガン)氏を巡っては、後に処刑された張成沢(チャン・ソンテク)元党行政部長の政敵だったこともあり、「交通事故を装った暗殺ではないか」との噂が立った。

    (参考記事:北朝鮮、9ヶ月間で労働党幹部3人死亡のミステリー

    その張成沢氏も2006年9月に交通事故に遭い、5ヶ月の入院生活を余儀なくされている。それ以外にも、金養建(キム・ヤンゴン)氏、金容淳(キム・ヨンスン)氏など、要人が交通事故で死亡した例は枚挙に暇がない。前述の通り、劣悪な道路事情や乱暴な運転などによる単純な交通事故であった可能性もあるが、このような交通事故の多発が「実は暗殺だった」説の根拠になっている。

    (参考記事:2005年の張成沢氏の交通事故は暗殺未遂だったのか

    ちなみに、金正恩党委員長は「クルマ好き」として知られ、「走り屋」であるとの噂も聞こえる。前述した幹部らが暗殺されたのではなく、本当に事故死だったとしても、金正恩氏は彼らと同様のリスクの中にいるとも言える。

    (参考記事:金正恩氏の「高級ベンツ」を追い越した北朝鮮軍人の悲惨な末路

  • 「韓国は腹立ちまぎれに自害した」米国から絶妙な指摘

    韓国の文在寅大統領は米ニューヨークで開かれる国連総会に出席するため22日から訪米し、現地でトランプ米大統領と首脳会談を行うという。

    韓国紙・東亜日報などの報道によれば、当初、今年の国連総会には大統領ではなく、李洛淵首相や康京和外相の参加が検討されていた。それが変更になったのは、米国と北朝鮮の実務協議が9月下旬に見込まれるなど、非核化などを巡る米朝対話がにわかに動き出したからだ。

    米朝は非核化の進め方を巡って対立しながらも、トランプ氏と金正恩氏の個人的な信頼関係を軸に対話のラインを保ってきた。最近、北朝鮮が忌み嫌う強硬派のボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)をトランプ氏が解任したことで、こうした米朝対話の形はいっそう強固なものになっていく可能性が高い。

    こうした米朝関係と対照的に、見るも無残な状態にあるのが南北関係だ。

  • 韓国バカ売れ本「反日種族主義」に北朝鮮が猛反発

    韓国バカ売れ本「反日種族主義」に北朝鮮が猛反発

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信は13日、韓国のベストセラー書籍『反日種族主義』を「売国的詭弁だ」などと猛非難する論評を配信した。北朝鮮メディアが、韓国の民間人が執筆した書籍に食って掛かるのは珍しい。

    李栄薫(イ・ヨンフン)元ソウル大学教授ら6人の研究者が執筆した同書は植民地統治下の朝鮮半島で「日本による土地やコメの収奪はなかった」「従軍慰安婦の強制連行はなかった」などと主張し、韓国で物議を醸している。

    1965年に国交正常化し、請求権協定が結ばれた日韓と異なり、北朝鮮と日本の間では何ら過去清算はなされていない。

  • AVウラ販売がバレた金正恩「拷問部隊」の絶体絶命

    AVウラ販売がバレた金正恩「拷問部隊」の絶体絶命

    北朝鮮社会に大きな影響を及ぼしている韓流ドラマ。平壌マダムの間では高級韓国製化粧品が流行、若者の間では韓国式の誕生日会が流行している。さらに韓流ドラマは、北朝鮮のマンションの構造すら韓国式に変えつつある

    当局は、韓流が体制を揺るがしかねない違法な映像であると見なして取り締まりを続けているが、一向に根絶される気配はない。それどころか、取り締まる側が、韓流に加えてアダルトビデオ(AV)を大々的に流布させていたことが発覚し、街全体が大騒ぎになっていると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

    事の発端は今年7月末のことだ。清津に住む保安員(警察官)は、AVがコピーされたUSBを手に入れ、友人を呼んで鑑賞会を行っていたところを摘発された。

    これだけでも大問題だが、多数の保衛員(秘密警察)が見ていたことも発覚し、事態を重く見た当局は大々的な検閲(監査)に乗り出した。保衛員は、管理所(政治犯収容所)の運営や公開処刑を担当する、金正恩党委員長の「拷問部隊」とも言える面々である。

    検閲の結果、保安員と保衛員は市民から没収したUSBを処分せずに持ち帰り、鑑賞した後で密売していたことが明らかになった。その数は数十人に及ぶ。

    彼らは、市内のある建物の地下室で取り調べを受けている。施設の詳細は明らかでないが、「そこに入れば無条件で管理所送りになる」(情報筋)と噂されているいわくつきの建物だ。

    (参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

    2012年に改正された北朝鮮の刑法183条で「退廃的、色情的で醜い内容を反映した海外、写真、図書、録画物、電子媒体などを許可なく外国から持ち込んだり制作したり違法に保管している者は1年以下の労働鍛錬刑に処す」と定めている。

    ただ、取締官が市民から没収した韓流ドラマを見るのは、今までもあったことだが、今回は少し事情が違うようだ。

    (参考記事:北朝鮮 取締官が韓流ドラマにハマる「夜通し見て昼は眠い」

    当局は韓流よりもAVをより有害なものとみなす。韓流でも、見せしめとして収容所送りになったり、死刑にされることすらあるのに、両方を持っていたとなれば極刑を免れないだろう。

    (参考記事:北朝鮮で「韓流」にまた死刑判決…14歳も「吊し上げ」

    今回の事件は、ある特殊な技術が使われたこと特徴でもある。

    「USBに保存されたファイルは最初は読み取れなかったが、電子製品に強い調査官がデータを復旧させ、別のUSBやCDにコピーした」(情報筋)

    破損または削除されたファイルを復旧させたように思えるが、実際は「ステルスUSB」が使われていたようだ。

    韓国の聯合ニュースは2011年2月、脱北したIT技術者が、検査の際には何もデータが記録されていないことを意味する「0バイト」と表示されるが、設定した時間の経過後には、自動的にコンテンツが見られるようになる「ステルスUSB」を開発し、北朝鮮に送り出したと報じた。

    今回使われたものがこれと同一のものかは不明だが、別の情報筋は「使い始めて数日が経つと、ファイルが見られるようになるUSBメモリが問題になり、当局が取り締まりをしている」と述べたことから、少なくとも似たような技術が使われているものと思われる。

    ちなみに、前述のステルスUSB技術の場合は、通常のやり方でデータを削除しても、必ず保存されて、また復活させられるとのことだ。つまり、北朝鮮に一度持ち込まれたデータは、コピーを繰り返されながら、しぶとく生き続けることになる。