カテゴリー: 北朝鮮

  • 「間抜けな行為は止めろ」北朝鮮が文在寅政権にキビシイ指摘

    韓国紙・東亜日報(日本語版)は27日、「GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)破棄により北東アジアで米国が負う安全保障費用が増加したと判断された場合、トランプ政権が軍事演習の縮小だけでなく来年度の在韓米軍駐留経費負担交渉で韓国に負担増大を迫ることが憂慮される」と伝えた。

    これは、トランプ米大統領がフランスで25日(現地時間)に行われた日米首脳会談前の冒頭発言で、米韓合同軍事演習について「必要とは考えない」「私は完全な金の無駄遣いと考える」と話したことを受けてのものだ。

    青瓦台(韓国大統領府)の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長は23日、GSOMIAの破棄と関連して開いた記者会見で、「重要なのは、この機会が韓米同盟関係をさらに一段階アップグレードできるきっかけになることだ」と強調。また、「防衛費の増額と軍事衛星など戦略兵器の購入により、わが国の防衛力を積極的に高めていく」ことで、北朝鮮の監視強化につなげていくと表明した。

    米国との同盟関係を「一段階アップグレード」するためには、常識的に考えれば米韓合同軍事演習を維持しなければならない。しかしトランプ氏の主張を踏まえるなら、韓国は演習費用の負担や在韓米軍の駐留経費増額要求を、相当な範囲で飲む必要が出てくる可能性が高い。東亜日報の指摘はもっともなものだ。

    (参考記事:米国政府「文在寅」名指しして不満爆発…北は軍事挑発

    また、そうした流れが現実となったとき、文在寅政権は別の面でも困難にぶち当たる可能性がある。

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信は22日、米国が韓国に対して防衛費分担金の大幅増額を求めている問題で、韓国政府は「対米屈従姿勢を捨てるべきだ」とする論評を配信した。

    論評は、「米軍の南朝鮮駐屯はいわゆる南朝鮮を守ってやるためではなく、国の分裂を永久化し、世界を制覇しようとする戦略的目的によるものである」と主張。「侵略的な外部勢力に断固と立ち向かう代わりに、頭を下げて譲歩すれば、民衆に多大な不幸と苦痛、災難だけをもたらすことになる」などと述べた。

    さらに、「問題は、南朝鮮当局が『防衛費分担金』に対する『正確な基準』『支給方式の改善』などと言って、米国の強盗さながらの要求を受け入れる兆しを見せている事実」だと指摘し、「これこそ、間抜けな行為だと言わざるを得ない」として、文在寅政権を痛罵している。

    北朝鮮はそうでなくとも、米韓合同軍事演習を理由に韓国との対話を拒絶している。韓国が米国の要求に応じれば、より強硬な態度を示すのは必至だ。南北の関係改善に賭けてきた文在寅政権には、多難な前途が待ち受けている。

    (参考記事:韓国は「自滅の道を歩むだろう」…北朝鮮がシビアに予言

  • 北朝鮮カップルを殺意に狂わせた「韓流AV不倫」の罪と罰

    北朝鮮カップルを殺意に狂わせた「韓流AV不倫」の罪と罰

    朝鮮民主主義人民共和国家族法は社会主義的結婚、家族制度を強固に発展させ、全社会を仲睦まじく、団結した社会主義大家庭にするのに貢献する(結婚法第1条)

    朝鮮労働党や北朝鮮の政府は、結婚を個人の結びつきではなく、革命を達成するための末端の細胞(組織)と見て、革命的に出会い、革命的に結婚し、革命的な家庭を作ることを求めている。

    しかし、北朝鮮に限った話ではないが、理想はあくまで理想に過ぎず、現実はかけ離れたところにある。

    (参考記事:北朝鮮で「サウナ不倫」が流行、格差社会が浮き彫りに

    革命とは縁もゆかりもない男女の不倫関係も当たり前に存在し、それが悲惨な結末を迎えることもある。北朝鮮北東部の清津(チョンジン)では最近、不倫関係にあったカップルが、女性の夫を殺害する事件が発生した。

    現地の情報筋によると、事件が起きたのは6月中旬のことだ。

    清津市保安署(警察署)所属の保安員(警察官)は、ある女性と不倫関係に陥った。

    女性の夫は穏やかな性格で知られ、二人の不倫関係について街の噂で知っていた。しかし、相手が保安員である上に、一家の生計を担っていたのは妻だったため、ひたすら耐えて暮らしていた。

    北朝鮮の一般男性は、国から割り当てられた企業などに籍を置く義務がある一方で、女性にはそれがない。その「自由」を利用して、女性は市場で商売に精を出す。ということで、女性は一家の財布の紐を握ることになる。

    (参考記事:妻に優しくなった北朝鮮の夫たち…亭主関白の末路は「餓死の恐怖」

    ある日のこと。夫が家に戻ったところ、カップルは情事の真っ最中だった。さすがの夫も激怒し、2人が見ていた韓国製のアダルトビデオを持って保安署に訴えると言い出した。北朝鮮では、韓流ドラマ・映画はご禁制の品だが、それ以上にアダルトビデオは厳しく取り締まられる。

    保安員は「許して欲しい」と許しを請い、妻も泣きながら謝ったが、夫は首を縦に振らない。そこで保安員は、夫を鈍器で殴り殺害してしまった。

    2人は夫の遺体を山に埋めた。妻は翌日、人民班長(町内会長)に「夫が帰ってこない」と伝えた。何日経っても夫が帰ってこないことから、町内では「不倫関係にあった2人が夫を殺した」という噂が立ち始めた。それを聞きつけたのか、夫の弟が保安署に通報し、保安署は職場、家の周辺、山で捜索を行った。しかし、保安署は「証拠がない」として、それ以上の捜査を行おうとしなかった。

    ところがやがて、噂は近隣地域にまで広がった。

    夫の兄弟たちは、平壌で1号飛行士(金正恩党委員長が乗る飛行機を操縦するパイロット)を務める兄に電話で事件のことを伝えた。それを聞いたパイロットは党に訴え、検察所による捜査が始まった。

    「パイロットの兄は、弟が『行方不明』として処理され、脱北した疑いなどがかけられたら成分(身分)に問題が生じ、パイロットをやめざるを得なくなる。党組織も1号飛行士のこととあり、無視できずに事件を処理することにした」(情報筋)

    平壌からの指示を受けた清津市検察所は、保安員と女性を逮捕した。当初は容疑を否認し、「(女性の)夫が理性を失い、襲いかかってきたので偶発的に殺害した、女性も夫を抑え込もうとして加勢した」と述べていたが、結局「韓流アダルトビデオを見ていたことを通報される」ことを恐れ、計画的に殺害したことを認めた。

    情報筋は言及していないが、取り調べの過程で暴言、暴行、拷問を受けたことは、想像に難くない。

    (参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…

    今回の事件を受けて、清津では韓流や外国の映像に対する取り締まりがより一層強化されたと情報筋は伝えている。

    ちなみに北朝鮮で不倫は、次のような法律で取り締まられる違法行為だ。

    行政処罰法第221条(不当な離婚、浮華放蕩な行為) 不当な目的と動機で離婚したり、常習的に浮華放蕩なな生活をしたり、結婚登録、離婚手続きを行わずに他の対象と夫婦関係を行った者には、罰金または3ヶ月以下の労働教養処罰を与える。罪状の重い場合には3ヶ月以上の労働教養処罰を与える。

  • ミサイル開発どころじゃない…北朝鮮「ドロボー軍隊」悲惨な内情

    一般的に社会問題のしわ寄せは、その国の最も弱い階層のところに行く。ところが、奇妙なことに北朝鮮では、強者であるはずの朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士が、そのしわ寄せに苦しめられている。彼らにとって喫緊の課題は、新型ミサイルの開発でもなければ、軍事訓練でもない。いかにして食べ物にありつくかということだ。

    両江道(リャンガンド)のデイリーNK情報筋は、朝鮮人民軍兵士によるこんな事件を伝えた。

    事件が起きたのは今月7日のこと。朝鮮人民軍252旅団3大隊1中隊1小隊2分隊に所属する兵士が、金正淑(キムジョンスク)郡新上里(シンサンリ)にある農場の畑に忍び込み、トウモロコシを盗もうとしていた。

    しかし、折しも多発するトウモロコシ泥棒に備え、警戒にあたっていた農場の警備員に取り押さえられ、あえなく御用となった。

    連行された兵士はその窮状を訴えた。

    「部隊ではトウモロコシの皮を取らないままに粉にしたもの以外、食べ物をもらえない。それすらも決められた量が配給されず、腹が減って夜も眠れない」

    (参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

    中隊の士官長は、民間人の家を訪ね歩き、こうしたトウモロコシ粉を食べるのに適したトウモロコシ飯と交換してもらうのだが、その比率は3対2なので、量が目減りしてしまう。ちなみに、トウモロコシ粉は酒の醸造に使われるという。

    ひもじい思いをしているのは、軍官(将校)とてさほど変わりないようだ。

    「軍官の食事は、食事当番が毎日何としてでもコメを入手するが、副食用の味噌がなく民間人の家を訪ね歩いて借りている」

    社会的地位が高い上に、豊富な配給を得られた軍官も、極めて厳しい生活を強いられているようだ。

    (参考記事:燃料がなく落ち葉を…北朝鮮軍人の「貧乏トーク」に国民もショック

    取り調べは、犯行の動機に及んだ。

    「新兵訓練を終えて配属されたばかりの新人は、中隊で出される食事を食べるが、入隊から2〜3年もすれば、8割はもうこんなものは食べられないと言い、民間人の家で食べるようになるが、秋になるとその対価として、農場から盗んできたトウモロコシを渡す」

    つまり、軍隊で出される食事ではひもじさに耐えきれないため、基地の近隣住民の家で「ツケ」で食事をさせてもらい、盗んだトウモロコシで精算するというものだ。

    食糧事情がこの有様なのに、この兵士が所属している中隊では毎朝、金正恩党委員長のマルスム(お言葉)、主体(チュチェ)思想、先軍政治に関する学習をやらされているという。

    「そのせいか、依然として社会主義の優越性などを語る兵士もいるが、裏ではカネ儲けのことをばかり考えている。朝鮮労働党への入党や大学入学への推薦を受けるには、ワイロを渡さなければならないからだ」

    (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

    なぜこんなに食べ物がないのか。食糧の供給源となっているのは非効率極まりない協同農場だが、輸送過程での横流しなどで目減りし、質も粗末なものに入れ替わってしまう。そんなものを食べていては栄養失調になりかねないので、子どもを軍隊に送り出した親は、子どもを餓死から救うために仕送りをするのだ。旧日本軍を彷彿とさせる、補給の軽視ぶりだ。

    (参考記事:北朝鮮が中国からコメ大量輸入「兵士の餓死を防ぐため」

    一方で、非常に優遇されていた炭鉱労働者の苦しい立場に立たされていると、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

    道内の順川(スンチョン)にある李寿福(リ・スボク)青年協同農場、江浦(カンポ)協同農場ですでに多くのトウモロコシ泥棒の被害が発生している。犯人は主に近隣の炭鉱で働く労働者やその家族たちで、農民が内部で手引するケースもあるという。

    順川周辺は、炭鉱から産出される石炭の対中輸出のみならず、石炭を利用した軽工業が発達するなど、北朝鮮の中でもかなり裕福な町として知られていた。ところが、国連安全保障理事会での制裁決議で石炭の輸出ができなくなり、苦境に立たされるようになったのだ。

    (参考記事:経済制裁に苦しむ北朝鮮「炭鉱の町」

    トウモロコシが完全に熟すにはもう少し時間がかかるのだが、泥棒はそんなことは関係なく持ち去り、「秋の収穫の時期には何も残っていないだろう」(情報筋)という嘆きの声が聞かれるという。

    ただ、食べ物を狙った泥棒は以前から頻発しているため、以前と比較して食糧事情が全国的に悪化したと断言することはできない。

  • 文在寅政権の「前後不覚」に北朝鮮から笑えない指摘

    青瓦台(韓国大統領府)の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長は23日、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄と関連して記者会見し、「米国がわれわれにGSOMIAの延長を希望してきたことは事実だ」としながら「米国が表明した失望感は米国の希望が実現しなかったことによるもので、失望するのは当然だ」と説明した。

    そして、「しかし重要なのは、この機会が韓米同盟関係をさらに一段階アップグレードできるきっかけになることだ」と強調。また、「防衛費の増額と軍事衛星など戦略兵器の購入により、わが国の防衛力を積極的に高めていく」ことで、北朝鮮の監視強化につなげていく考えを明らかにした。

    ハッキリ言って、取ってつけたような説明である。GSOMIA破棄の表明を受け、文在寅政権に対して異例の「名指し」批判を行った米国政府の激怒ぶりに慌てたものと見られる。

    (参考記事:米国政府「文在寅」名指しして不満爆発…北は軍事挑発

    実際、この局面で米韓同盟の強化や軍備増強を強調することは、文在寅政権のこれまでの姿勢と矛盾して見える。

    同政権が対話再開を切望する北朝鮮は最近、米韓合同軍事演習を繰り返し非難。昨年の南北首脳会談で結ばれた緊張緩和の約束に違反するとして、韓国との対話を拒絶する姿勢を鮮明にしている。

    それでも、文在寅政権の活路は南北対話にしか見いだすことが出来ないのが現状だ。日本からの輸出規制措置を受け、文在寅氏が8月15日の演説で「南北の平和経済の実現で日本に追いつく」と宣言したのは記憶に新しい。ところがこれも、北朝鮮当局者から次のように言われて拒絶されてしまった。

    「わが軍隊の主力を90日内に『壊滅』させ、大量殺りく兵器の除去と『住民生活の安定』などを骨子とする戦争シナリオを実戦に移すための合同軍事演習が猛烈に行われており、いわゆる反撃訓練なるものまで始まっている中で公然と北南間の『対話』をうんぬんする人物の思考は果たして健全なのか。まれに見る図々しい人だ」

    つまり、米韓同盟と南北対話の「板挟み」に苦しんでいるのが文在寅政権の現状なのだ。この窮地から抜け出したければ、米韓同盟を洗練化させ、北朝鮮に少しずつ理解を求める道しかないだろう。

    しかし文在寅政権は、日本との対立というもうひとつの難問を抱え込んでしまったことで、政策判断の均衡を失いつつあるようにも見える。北朝鮮からの「思考は健全なのか?」との意地の悪い問いかけも、素通りできないものになりつつある。

    (参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感

  • 「強制学習」で児童が死亡…金正恩氏が主導「孤児政策」の闇

    「強制学習」で児童が死亡…金正恩氏が主導「孤児政策」の闇

    北朝鮮の金正恩党委員長が掲げる「愛民政策」の一環として、2016年に再建された孤児養育施設で最近、児童が死亡する事件が発生したことが分かった。

    無理な強制学習が死亡の直接的な原因とされるが、児童たちの栄養状態もひどいという証言が出ている。施設側が児童に供給されるはずの食料を横流し、現金を得る不正腐敗が横行しているようだ。

    平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は16日、「今月初め、平城(ピョンソン)中等学院で児童ら無理な強制学習をさせられ、学生1人が死亡する事件が起きた」と伝えてきた。

    情報筋によれば、「教師らが、基礎学力が不足している児童らに体罰を加えたところ、1人がめまいで倒れ、病院に運ばれたが息を引き取った」という。どのような体罰であったかは詳らかにされていないが、孤児たちの栄養状態が悪すぎたために、耐えることができなかったというのが情報筋の説明だ。

    情報筋はさらに、「平城市の教育当局は最近、中等学校の生徒をすべて最優等生にせよとの指示を出した。これを貫徹するという理由で、施設側は児童らにろくに睡眠もとらせず、毎日のように夜間強制学習をさせた」と説明する。担任教師が出す試験に合格した児童は寄宿舎に帰って眠ることができるが、そうでない児童は夜間学習への参加を強制されるという。

    北朝鮮の孤児養育施設を巡っては、性的虐待や暴力の横行などが報告されてきたが、強制学習で児童が死亡したという情報は初のケースだ。

    (関連記事:北朝鮮で孤児院教師が少女17人を性的虐待、怒る市民たち「厳罰を」

    そもそも近年、孤児養育施設の環境は改善されているとの情報も少なくなかった。改善の旗振り役となったのが、金正恩氏だ。

    金正恩氏は執権初期、孤児養育施設である育児園(1~4歳)、愛育園(5~6歳)、中等学校(6歳以の初中等教育)を複数回訪問。2015年に元山(ウォンサン)育児園を訪問した際には、「すべての園児たちを国の優れた担い手として育てようというのが私たちの党の確固たる決意だ」表明。同氏はその後、全国の20カ所の孤児教育施設の再建を指示した。

    これを受け、2016年に再建された平城中等学院はプール、芝生運動場、浴場、各種実習施設を備えた豪華で近代的な孤児総合学校として知られている。しかし、施設側は再建費用のために負債を抱え込み、借金を返すために行政から提供される食料を横流し、現金を調達しなければならなくなったという。

    こうした実情を知るある脱北者は、「孤児のための養育・教育施策を人気取りのためショーケースと化したことで、結局、子どもたちがツケを負わされる羽目になった。見てくれ重視で無理な事業を推進すれば、ボロが出るのは時間の問題だ」と嘆いた。

  • 韓国は周辺国の打撃目標になる」予言していた北朝鮮

    韓国が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を宣言した。驚愕すべき事態と言える。韓国でも、安全保障や外交の専門家の多くは驚きのあまりひっくり返っていると聞く。

    米国の専門家たちはかねてから、韓国がGSOMIAを破棄したら日米韓の協調体制に甚大な悪影響を及ぼすと警告してきた。より正確に言うならば、破棄により打撃を受けるのは日本よりも米国の国益であり、米韓関係だろう。

    (参考記事:「韓国に致命的な結果もたらす」米国から厳しい警告

    文氏を罵倒する理由

    一方、韓国はいずれ孤立し、「周辺国の打撃目標になる」と予言した国がある。ほかならぬ北朝鮮だ。

  • 米国政府「文在寅」名指しして不満爆発…北は軍事挑発

    米国政府「文在寅」名指しして不満爆発…北は軍事挑発

    米国務省の報道官は22日、韓国政府が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定したことについて、「米政権は文在寅政権(Moon administration)に対し、協定を破棄すれば米国および同盟諸国の国益に悪影響を及ぼすと繰り返し明確にしてきた」と指摘。その上で、破棄決定は「文政権が北東アジアで私たちが直面する深刻な懸案を正しく理解していないことの表れだ」と批判した。

    また、米国防総省も同日、「韓国の文政権(Moon administration)の決定に強い懸念と失望を表明する」との声明を発表。さらに、「日韓関係の中で摩擦のある分野があったとしても、私たちの相互防衛と安全保障上の連携は、持続しなければいけない」とした。

    韓国紙・朝鮮日報によれば、米国がこのようなケースで公式に韓国政府について言及する場合、「ROK(Republic Of Korea)」とするのが普通だという。米国はこうした慣例を破って文在寅政権を名指しし、強烈な不満を表したわけだ。

    このところ文在寅政権への批判を強めている北朝鮮ですら、「南朝鮮当局者」「南朝鮮執権者」と呼ぶに止め、文在寅氏への名指しまではしていない。このことからも、米国の不満がいかに強いかがわかる。

    米国はまた、青瓦台(韓国大統領府)の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長が、GSOMIA破棄の決定過程について「政府は各レベルで米国と緊密に意思疎通・協議し、われわれの立場を説明した」としていることにも不満を抱いているようだ。

    朝鮮日報によれば、トランプ政権の高位関係者は、文在寅政権がGSOMIA破棄について米国の理解を得ていたと取れるような説明をしていることについて「嘘だ」と強く否定したという。

    (参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感

    一方、日本政府は韓国のGSOMIA破棄について懸念と失望を表明しながらも、特段の行動を示していない。「無視」する戦術を取っているのは明らかだ。

    そんな最中、北朝鮮は24日午前、北東部・咸鏡南道(ハムギョンナムド)の宣徳(ソンドク)付近から朝鮮半島東側の海上に向け、飛翔体を2発発射した。飛翔体が東の日本海へ抜けていく軌道の追跡は、韓国軍が苦手とする部分であり、タイミングを狙いすました軍事挑発である可能性が高い。

    韓国の行動を起点とした同盟の不協和音は、北朝鮮により確実に狙い打たれている。

  • 北朝鮮で相次ぐ「無念の死」…金正恩氏「やめろ」命令も素通り

    北朝鮮で相次ぐ「無念の死」…金正恩氏「やめろ」命令も素通り

    北朝鮮ではよく、「速度戦」と呼ばれる突貫工事キャンペーンが行われる。指導者の記念日などに完成日を設定し、無理やり工事を進めて成果だけを追求する。そのせいで、手抜き工事や事故が相次いでいる。

    金正恩党委員長も、速度戦のやりすぎには警告を発している。2014年6月20日の北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、金正恩氏が当時建設中だったタワーマンション団地の現地指導を行った場で、「建設においては一にも二にも質の保証に優先的な関心を置くべき」「千年責任、万年保証のスローガンの元に、建築物を百点満点で完成させよ」と指示したと報じている。

    しかし、長年の習慣からはそう簡単に抜け出せないようで、またもや速度戦の犠牲者が発生してしまった。

    (参考記事:「事故死した98人の遺体をセメント漬け」北朝鮮軍の中で起きていること

    デイリーNKの内部情報筋によると、先月中旬に平壌と南浦を結ぶ高速道路の補修工事中に死亡事故が発生した。夜間作業にあたっていた人民武力省の道路局所属の兵士2人がセメントと水を混ぜた容器を運んでいたところ、橋の欄干の隙間に渡した板の上の歩いていた際に足を踏み外し、川に転落した。

    (参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故

    周囲にいた兵士たちは悲鳴を聞きつけ、救助に乗り出そうとしたが、辺りは真っ暗でどこにいるのか見当すらつけられなかった。夜が明けてからようやく本格的な捜索が始まり、数百メートル離れた川岸で2人を見つけたが、すでに事切れた後だった。

    夜間作業なのになぜ真っ暗なのか。それは照明設備がないからだ。

    一時は好天の兆しを見せていた北朝鮮の電力事情だが、国際社会の制裁で再び悪化し、首都・平壌ですらまともに電力が供給されなくなっている。

    (参考記事:長引く制裁で首都・平壌も電力難「一日に1時間しか電気来ない」

    そんな状況にもかかわらず、補修工事を請け負った人民武力省は、工期短縮のために作業時間を午前5時から午前0時まで行うことにした。つまり、速度戦だ。

    照明もなく真っ暗な状態で兵士は1日16時間も働かされていた。1日3回の食事に加え、夜食まで提供するなど、飲まず食わずの別の作業場に比べれば厚遇されていたようだが、照明設備が整っていたとしても無理がある長時間労働で、「夜になると居眠りしながら働く兵士が多い」(情報筋)状況となっており、事故は予見されていたも同然だった。

    (参考記事:「15万人の血と涙」で建設が進む金正恩氏の「ブラック・リゾート」

    また、情報筋は安全設備に問題があったことも指摘している。工事現場を覆う「安全膜」が、理由は定かでないが撤去されていたというのだ。これでは、危険な箇所がどこなのかもわからない。

    (参考記事:金正恩氏の背後に「死亡事故を予感」させる恐怖写真

    道路局は、安全規定を守らなかった2人の責任だと、責任回避に汲々としている。

    このような無責任体制は、北朝鮮全般に蔓延している。正直に責任を認めれば関係者の重罰は避けられない。また、連座制でどこまで累が及ぶかわからない。「死人に口なし」で亡くなった人をなすりつけておけば、生きている人が助かるという北朝鮮なりの「人を生かす」方法なのだ。

    (参考記事:「死人を処刑」して生きている人を救う北朝鮮の独特な人命尊重

    しかし、おそらくまともに補償を受けられないであろう兵士の遺族からするとたまったものではない。本当に人を生かすのは、国の体面や工期よりも、人の命を何よりも重要視する体制だ。「人間中心の主体(チュチェ)思想」はどこに行ったのか。

    (参考記事:金正恩氏、日本を超えるタワーマンション建設…でもトイレ最悪で死者続出

  • 壁に血で「死のメッセージ」…制裁不況の北朝鮮で治安悪化

    制裁不況にあえぐ北朝鮮内部から、治安悪化を伝える情報がもたらされている。

    両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、先月25日に金正淑(キムジョンスク)郡の龍河(リョンハ)労働者区で、商店を営んでいた老夫婦と孫娘の3人が、親戚に刺されて死亡する事件が起きた。犯人は遠い親戚の男だった。

    この老夫婦は長年に渡り店を営み、それなりの財産を持っていた。それを知った親戚の男は、カネを奪う目的で犯行を計画した。

    彼は事件当日、何食わぬ顔で店に入りビールを飲んでいたが、突如として3人に斬りかかり、カネを奪って逃げた。襲われた3人は現場で死亡したが、妻は最後の力を振り絞って「ダイイング・メッセージ」を残そうとした。血で犯人の名前を壁に書こうとしたが、「ソ」「ヨ」の2文字を書いたところで事切れた。

    翌朝、店を訪れた老夫婦の息子の妻が遺体を発見し、すぐに保安署(警察署)に通報した。3人が殺されるという重大事件の発生を受け、保安署は大々的な捜査に乗り出した。

    「夜に男が店に入っていくのを見たが、老夫婦は男が遠い親戚であることを知っていたため、気にしなかった」という目撃者の証言と、壁に残されたダイイング・メッセージを元に捜査を進めた。

    捜査班がまず逮捕したのは、第一発見者の息子の妻だった。しかし後日、真犯人ソ・ヨンチョルが逮捕された。妻は潔白が証明され、晴れて自由の身となった。

    (参考記事:美女2人は「ある物」を盗み銃殺された…北朝鮮が公開処刑を再開

    一方、首都・平壌の郊外でも人質殺人事件が起きていた。

    事件が起きたのは先月25日、船橋(ソンギョ)区域将忠洞(チャンチュンドン)でのことだ。

    平壌の情報筋によると、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)工兵局1旅団3大隊所属のチェ(24歳)は、平壌と両江道の恵山(ヘサン)を行き来しつつ送金業を営んでいたキムさん(29歳)の店を利用していた。両親からの仕送りを受け取るためだ。食糧事情が極めて悪い朝鮮人民軍では、兵士と言えども親のすねをかじらなければ生きていけないのだ。

    (参考記事:核兵器より「親の仕送り」が頼みという北朝鮮軍の凋落

    チェは、今年2月と5月に店を利用した際に、キムさんがかなりの財産を持っていることを知り、カネ目当てで犯行を計画した。

    チェは犯行当日、送金を受け取るためにキムさんの家に向かった。カネを受け取ったがすぐに帰らず「水が1杯飲みたい」と伝え、家の台所に上がりこんだ。チェはそこにあった包丁を持ち、キムさんの生後6ヶ月の娘を人質に取り、「ありったけのカネを出せ」と脅した。

    そして、キムさんとチェがもみ合いとなる中で娘が刺されて亡くなり、キムさんも怪我を負ったという。

    当局は捜査に乗り出したが、チェは部隊から逃亡し、今月14日の事件でも逮捕できていない。人民保安省(警察庁)と軍の保衛司令部はチェを指名手配し、行方を追っている。

    (参考記事:格差拡大の北朝鮮で増加する「ドル持ち老人」殺人事件

  • 「韓流狩り」終わらぬ攻防…あの手この手で摘発逃れ

    北朝鮮との国境に面した中国吉林省延辺朝鮮族自治州の州都・延吉の市場には、主に韓流ドラマを収めたVCDを売る店が多く存在した。ある店の主は、「夜に韓国で放送されたドラマが、次の日の朝にはVCDになって売られる」と豪語していた。街の規模に似つかわしくないほど大量のVCDが、北朝鮮に向けて出荷されていたのは公然の秘密だ。

    時代が変わりVCDの店は姿を消したが、北朝鮮での韓流人気はとどまることを知らない。ご禁制の韓流コンテンツを取り締まろうとする当局と、なんとかして見ようとする人々の間でのイタチごっこが20年にもわたって繰り広げられている。

    取り締まりを避けてVCDからDVD、USBメモリ、SDカードと韓流コンテンツを保存するメディアが徐々に変化したが、再生機器にも変化が現れつつある。

    かつては隆盛を誇っていた中国製の携帯メディアプレイヤー「ノートテル」だが、平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、ノートテル人気は下火にあり、今では液晶テレビにUSBメモリを挿して韓流コンテンツを楽しむ人が多いと伝えた。

    韓流取り締まり班の「109常務」が家に乗り込んできた場合、VCDやDVD、ノートテルは隠すのが難しい。見つかったら、運が良くても見逃しの代償として高額のワイロを取られ、運が悪ければ命さえ危ぶまれる。その点、液晶テレビとUSBメモリなら、すぐに隠せて比較的安全というわけだ。

    (参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…

    今までノートテルは、取り締まりを避けるのに最適として北朝鮮の人々の間で高い人気を誇ってきた。

    韓国の北朝鮮向け放送局「国民統一放送」が6月に発表した「北朝鮮住民のメディア利用環境と外部コンテンツ」という報告書によると、脱北者200人のうち76.5%がノートテルを利用した経験を持つと答えた。小さいものは6インチ(15.24センチ)、最も売れ筋は9インチ(22.86センチ)で、それ以上のサイズも存在し、北朝鮮と国境を接する中国丹東の家電量販店では、様々な種類のノートテルが売られていた。

    メッセンジャーアプリを使って、動画を見たりシェアしたりする若者も現れている。

    別の平安北道の情報筋は、若者の間で中国のメッセンジャーアプリのWechatが広がりつつあると伝えた。中国のSIMカードを入れたスマートフォンにこのアプリを入れればUSBやSMカードを使うよりも安全に動画が見れる。ただし、動画ファイルの容量が100MBに制限されているため、映画やドラマよりも短い動画を使うのに使われている。

    当局は、取り締まりに力を入れているが、以前のように摘発するのは難しくなっているようだ。

    「109常務は夜中に人民班長(町内会長)と共に検閲(取り締まり)にやってくるが、中にはあらかじめ取り締まりがあることを知らせてくれる人民班長もいる」(情報筋)

    (参考記事:北朝鮮で「町内会長」への支持が高まっている

    また、最近は以前のようにいきなり玄関を開けて踏み込んでくることができなくなったとのことだ。窃盗犯の増加により、玄関のドアをより頑丈なものに変える家が多いことに加え、権利意識の高まりから「捜索令状」の提示を求めるケースも増えているからだというのが情報筋の説明だ。韓流コンテンツを隠すための時間稼ぎができるようになったということだ。

    (参考記事:「ガサ入れするなら令状を見せろ!」金正恩体制に抗議を始めた北朝鮮市民

    一方、首都の平壌では、韓流コンテンツに加えてUSBメモリに保存されたアダルトビデオが大流行している。

    平壌と中国を行き来して商売をしている華僑は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に、109常務のみならず、保安員(警察官)、保衛員(秘密警察)、検察員(検事)まで動員されてアダルトビデオの取り締まりに乗り出していると答えた。

    それによると、日本人、中国人、西洋人が登場する 16GBのUSBメモリに保存したアダルトビデオが50ドル(約5400円)で売られているという。平壌の4人家族1ヶ月の食費にあたるほど高価だが、飛ぶように売れているとのことだ。

    ゴム製やプラスティック製の人形の中にUSBメモリを隠して街なかでやり取りするなど巧妙な手口で取引されている。アダルトビデオの流行で取り締まりが強化されており、人民班長にも知らせず抜き打ちで検査することが多いとのことだ。

    別の平安北道の住民によると、アダルトビデオの所持が摘発されると、韓流コンテンツより重い罰を受けることになるが、取締官はここぞとばかりに多額のワイロを要求するという。また、街なかでの持ち物検査で女性に対してセクシャルハラスメントを行い、トラブルになることもしばしばあるそうだ。

    (参考記事:美貌の女性らが主導…北朝鮮芸術家「ポルノ撮影」事件の真相

  • 「現実が見えてない」平壌市民、金正恩氏のミサイル連射に反発

    「現実が見えてない」平壌市民、金正恩氏のミサイル連射に反発

    「最高指導者の言うことに文句も言わず、黙々と従うロボット」

    北朝鮮の人々に対してはかつて、このようなイメージが強かった。だが実際には、表向きは金正恩党委員長を褒め称えながらも、裏では毒を吐き、官憲の横暴にも様々な形で抵抗する「面従腹背」が、北朝鮮の人々の真の姿なのだ。

    (参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

    ただ、思想的に問題がないとされた「選ばれし者」だけが居住を許される首都・平壌の状況は少し違う。他の地方とは比べ物にならないほど優遇され、それなりの生活レベルを保証されていることもあり、政権への不満が出にくい土地柄なのだ。しかしそれも、最近は少し様子が異なるようだ。

    女性芸能人ら「失禁」

    平壌のデイリーNK内部情報筋によると、昨年までは父親(金正日総書記)より息子(金正恩氏)の方がマシで、北朝鮮のために「国際社会でがんばっている」という、金正恩氏を評価する意見が多かった。

    だが、今年に入ってから急激に食糧事情が悪化し、平壌市民ですら配給が受け取れなくなり、期待していた制裁の解除も行われなかったことから、不安が広がり世論が悪化したという。

    「栄誉軍人(傷痍軍人)、党機関の幹部など、何があっても配給をもらえた階層すら、今年初めから配給が全く受け取れていない」(情報筋)

    同様に優遇されていた軍需工場の労働者、保安員(警察官)、保衛員(秘密警察)に 対する配給も滞っていると伝えられている。

    (参考記事:北朝鮮、軍需工場の稼働を一部停止か

    また、最近相次いでいる短距離弾道ミサイルの発射についても世論は否定的だ。国営メディアは新型ミサイルの打ち上げに成功したと報じているが、人民の暮らしをないがしろにして、兵器の開発にばかりカネをつぎ込んでいるという意見が多いという。

    (参考記事:北朝鮮国民の7割「核開発に否定的」米研究所が世論調査

    平壌市民は、金正恩氏の政治スタイルも批判するようになった。

    「住民は元帥様(金正恩氏)が父親より暴虐な政治をしていると話している。自分が気に入らなければ、誰であろうと亡き者にするという話をする人もいる」(情報筋)

    実際、金正恩氏は気に入らない人物をことごく銃殺しており、その様子を見ることを強制された女性芸能人らは誰もが失禁してしまったという。

    (参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

    別の平壌の情報筋は、膠着状態にある米朝間の交渉を巡り、平壌市民の世論が悪化していると伝えた。

    今年6月30日に板門店で3度目となる米朝首脳会談が行われた。トランプ大統領が米国の大統領として初めて北朝鮮側に入るなど、世界の耳目が集中したが、その映像を見た平壌市民は酷評しているというのだ。

    「今年だけでも北南と朝米の首脳会談が複数回行われたが、何の成果もなかった。住民は、元帥様が外国の首脳と10回会談しても20回会談しても何も変わらず、人民の暮らしは苦しいままだと嘆いている」(情報筋)

    そんな世論の悪化を、当局はプロパガンダで抑え込もうとするばかりだ。人民班(町内会)の会議や政治講演会で「自力更生で頑張ろう」などと訴えるだけで、住民からは「現実を認識できていない」との批判の声が上がる。

    また、情報筋は「元帥様が外国の首脳と会談しても交渉しても構わないから、商売をして食べていけるように取り締まりをやめてほしい」との声も多く上がっていると伝えた。

    (参考記事:韓国製品を買ったら拷問…世界一厳しい北朝鮮の規制

    世論悪化について北朝鮮で高官を勤めたことのある脱北者は、金正恩氏の支持基盤と言える平壌市民からこのような批判の声が上がっていることについて「核心階層が動揺している」と指摘し、金正恩氏が批判を汲み取り、米朝交渉で制裁緩和や解除をより積極的に要求するだろうと分析した。

    労働党の高級幹部の間では「今年秋にも金正恩氏が訪米する」との噂が流れているとのことだが、この脱北幹部は、中央党(朝鮮労働党中央委員会)が住民の不満を抑えるために意図的に流したと見ている。

    (参考記事:北朝鮮、フェイクニュースで国内世論を誘導

  • 「低レベルで残念だ」文在寅批判ににじむ北朝鮮のホンネ

    韓国統一省の金銀漢(キム・ウンハン)副報道官は16日の定例会見で、北朝鮮の対韓国機関である祖国平和統一委員会が報道官談話で文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領の15日の演説を激しく非難したことについて、「南北首脳間で合意した板門店宣言や平壌共同宣言の精神に合致しないだけでなく、南北関係の発展にも全く役立たない」と反発した。

    北朝鮮側の談話は、文在寅氏が演説で朝鮮半島の平和構築などを訴えたことを非難し、「(韓国当局者と)これ以上話すこともないし、再び対座する考えもない」と宣言。さらには文氏のことを「まれに見る図々しい人だ」などとして、辛辣に批判した。

    (参考記事:「思考と精神がマヒしている」文在寅批判を強める金正恩氏

    韓国側はこれまで、北朝鮮からのこうした非難に対して、あくまで対話で解決するという原則的なコメントに終始していたのだが、さすがに大統領を「個人攻撃」されたとあって、言い返さざるを得なくなったのだろう。

    しかし実際のところ、韓国側のこうした「ソフトな対応」が、北朝鮮を増長させてきた部分も否定できない。例えば、北朝鮮が11日に発表した外務省局長の談話は、短距離弾道ミサイル発射を韓国が非難したことを巡り、次のように言っている。

    「普通の時でもなく、われわれに反対する戦争演習を公然と行っている渦中でわれわれを痛罵しようと自分の方からむしろ奔走していることこそ、盗人猛々しい、図々しい振る舞いだと言わざるを得ない。

    われわれの相手がこれ程に低レベルなことが残念だ。(中略)

    軍事演習での概念的な敵が明白にわれわれとなっている状況で、今後、そのような軍事演習をあらかじめ中止するか、軍事演習を行ったことに対してせめてもっともらしい弁解や解明でも誠意をこめてする前には、北南間の接触自体が難しいということを考えなければならない」

    北朝鮮が言いたいのはつまり、「南北合意を踏みにじってまで米韓合同軍事演習をしやがって。そのうえこちらの自衛権を否定するとはどういうことか。自分を正当化できるなら何か言ってみろ」ということだ。これは見方によっては、韓国に対して「論戦」を挑んでいるのだとも言える。

    しかし韓国側は、木で鼻をくくったようなコメントを出すだけで、説得力とインパクトのある主張は何も出していない。この点が、トランプ米大統領とは圧倒的に違う。

    (参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感

    結局のところ、文在寅政権は「統一の未来」を語りつつ、そこへ至る現実的かつ論理的な戦略など持ち合わせていないのだ。あるいは、北朝鮮が論戦を挑んでいること自体に気づかなかったか、このいずれかだろう。

  • 北朝鮮で「金正恩住宅」大売り出し…資金不足で苦肉の策

    北朝鮮で「金正恩住宅」大売り出し…資金不足で苦肉の策

    北朝鮮の金正恩党委員長は、国際社会の厳しい制裁を受ける中、国内で2つのメガプロジェクトを進めている。

    ひとつは、「元山葛麻(ウォンサン・カルマ)海岸観光地区」の開発だ。今年4月に行った建設現場の視察で金正恩氏は、「工事期間を6カ月間延長して来年の太陽節(金日成主席の誕生日)まで完璧に完成しよう」と延べ、工期延長を認めた。

    (参考記事:金正恩氏、観光リゾートの建設現場を相次ぎ視察

    一方で、もうひとつのメガプロジェクト、「革命の聖地」である両江道(リャンガンド)の三池淵(サムジヨン)郡の建設工事について金正恩氏は、当初設定した工期の通り来年10月の朝鮮労働党創建75周年までの完成を命じているが、どうも進んでいないようなのだ。制裁による外貨不足で資材を充分に調達できないことが原因となっているもようだ。

    それを解決するために、三池淵建設部門指揮部は完成前の住宅を売りに出して資金調達をすることにしたと、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

    立ち退き対象の家に住む住民と除隊軍人への住宅工事はすでに完了し、先月末までに供給が終わったが、郡の中心地である三池淵邑(サムジヨンウプ)の線路の周辺で行われている住宅工事は、あまり進んでおらず、基礎と壁が完成した程度だ。

    (参考記事:金正恩氏が「贈り物の大盤振る舞い」を準備中。その中身は…

    この状態で4000元(約6万300円)で売りに出し、資金をかき集めた上で建設を続行しようというのが指揮部の考えのようで、道庁所在地の恵山(ヘサン)まで出張して、「これも一種の自力更生」などと言ってマンションの売り込みを行っているとのことだ。最高指導者肝いりの、いわば「金正恩住宅」の大売り出しである。

    (参考記事:金正恩氏、日本を超えるタワーマンション建設…でもトイレ最悪で死者続出

    通常、北朝鮮でマンションを建設する際には、当局がトンジュ(金主、新興富裕層)に投資を呼びかける。建設資金が不足しているからだ。資金を集めた上で建設を行い、完成した部屋の一部をトンジュに分譲。トンジュはその部屋を売り払って利益を得る仕組みだ。平壌のタワーマンション団地、黎明(リョミョン)通りや未来科学者通りもこのような方式で建設された。

    一方、三池淵の建設工事は、住民に勤労動員や食糧などの供出を求める一方で、現場に「自力更生」を求めるばかりで、充分な資金援助を行ってこなかった。現場はついに万策尽きて、トンジュの力を借りざるを得なくなったというのが実情だろう。

    地方中小都市の郊外にある住宅は70ドル(約7430円)前後で取引されていることを考えると、三池淵の新築住宅が4000元で買えるのはお得だ。しかし、夏は涼しいものの冬は猛烈な寒さに襲われ、観光収入が見込めず、当局が豪語するように電気や水道の供給がまともになされるかわからない。さらに、この地域の商業の中心地の恵山までの距離が遠いため、主顧客層であるトンジュが手を出すかはわからない。

    (参考記事:大成功か大失敗か、金正恩氏の肝いり「最北の観光地の」の運命は…

    また、制裁による不況と供給過剰で不動産価格が暴落、トンジュが投資を手控えしていることに売れ行きに影響を及ぼす可能性がある。

    (参考記事:下落が止まらない北朝鮮の住宅価格、最盛期の3分の1に

  • 「思考はまともなのか?」北朝鮮が文在寅氏への猛攻撃を開始

    北朝鮮の対韓国窓口機関である祖国平和統一委員会は16日、報道官(スポークスマン)談話を発表し、韓国の文在寅大統領が「光復節」(15日)に際して行った演説で朝鮮半島の平和構築などを訴えたことを非難、「(韓国当局者と)これ以上話すこともないし、再び対座する考えもない」と宣言した。

    談話は、文在寅氏を極めて辛らつに批判している。例えば、次のような具合だ。

    「わが軍隊の主力を90日内に『壊滅』させ、大量殺りく兵器の除去と『住民生活の安定』などを骨子とする戦争シナリオを実戦に移すための合同軍事演習が猛烈に行われており、いわゆる反撃訓練なるものまで始まっている中で公然と北南間の『対話』をうんぬんする人物の思考は果たして健全なのか。まれに見る図々しい人だ」

    「部下らが書いてくれたものをそのまま読み下す南朝鮮当局者(文在寅氏)が、とても笑わせる人であることだけは間違いない」

    そして談話は、「北南対話の動力が喪失されたのは全的に南朝鮮当局者の恣行の所産であり、自業自得である」としながら、演習が終われば対話局面が訪れると期待するのは「妄想」だと切り捨てている。

    北朝鮮メディアは以前にも、文在寅氏への個人攻撃を行っていた。対韓国宣伝サイトである「ウリミンジョクキリ(わが民族同士)」は6月28日付の記事で、南朝鮮の執権者――つまりは文在寅氏を「奇怪な醜態」などと罵倒していた。このときは名指しこそ避けたが、北朝鮮メディアが実名を挙げて罵詈雑言を並べるようになるのは時間の問題と思われた。

    (参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感

    その後、こうした文在寅攻撃は一時的に収まるが、その理由は他でもない、6月末に金正恩氏とトランプ米大統領との「板門店対話」が電撃的に実現し、場所を提供した文在寅氏も加え、3者で仲良く写真に収まる一幕があったからだ。

    ところが、北朝鮮が繰り返し米韓合同軍事演習の中止を求めたのに対し、韓国は検討するそぶりも見せなかった。これを受けて、金正恩氏は堪忍袋の緒が切れたのだろう。

    ただ、今回の談話も6月の記事も、対外向けメディアでのみ発信されたもので、北朝鮮の一般国民の目には触れていない。その点で、金正恩氏と文在寅氏の関係が修復する可能性もゼロとは言えない。しかしそのためには、文在寅氏が何らか形で外交手腕を発揮せねばならないわけだが、最近の対米・対日外交の現実を見るとき、それもまた期待薄なような気がしてならない。

    (参考記事:「思考と精神がマヒしている」文在寅氏への攻撃を強める北朝鮮

  • 「日本は代が変わっても過去清算せよ」金正恩氏が安倍首相に要求すること

    「日本は代が変わっても過去清算せよ」金正恩氏が安倍首相に要求すること

    北朝鮮の「朝鮮人強制連行被害者、遺族協会」のスポークスマンは15日、朝鮮半島が日本の支配から解放されて74年となったのに際して談話を発表し、日本政府に対して過去の清算を要求した。

    談話は「日本帝国主義が大陸侵略のためにおおよそ840万人余りに及ぶ朝鮮の青壮年を海外侵略戦場と死の苦役場に強制連行し、20万人の朝鮮女性を日本軍性奴隷に連れて行って悲惨な運命を強要し、100余万人を無残に虐殺した」と主張。

    続けて「現実がこうであるにもかかわらず、日本政府は朝鮮人民に働いた全ての罪科に対して誠実に認めて反省する代わりに、過去清算の責任から逃れようとあらゆる卑劣な行為をはばかることなく強行している」と非難した。

    さらに「日本の過去清算はしてもしなくても良い問題ではなく、日本政府が負っている国際法的、道徳的義務であり、代が変わっても必ず履行しなければならない歴史的、国家的責任である」と強調している。

    日本の安倍晋三首相は北朝鮮の金正恩氏との日朝首脳会談について、前提条件なしに実現を模索する考えを表明している。しかしその後も、北朝鮮メディアはこうした対日非難を繰り広げている。それを見ると、北朝鮮の側はどうも、「前提条件なし」で首脳会談に応じる気はなさそうだ。

    北朝鮮側の「前提条件」とするのは言うまでもなく、過去清算である。

    日朝が国交正常化に向けて本格的な対話に入れば、必然的に過去清算について話し合われることになる。だが、安倍氏が言っているのは「前提条件なしで会う」というだけのことであり、その後どうするかについては言及していない。

    金正恩氏とすれば、日本側が「前提条件なしに国交正常化交渉を始める」とでも言えばウェルカムなのだろうが、そのような展開はあり得ようはずもない。

    さらに北朝鮮は、両国間での踏み込んだ形での安保対話を「前提条件」にするかもしれない。北朝鮮は、護衛艦「いずも」の空母化やステルス戦闘機の導入など、日本の軍備強化に神経を尖らせている。それはそうだろう。仮に米国との非核化対話が進展し、「虎の子」である核ミサイルを全廃するようなことになれば、北朝鮮の防衛力は一気に空洞化する。そのとき、強大となった自衛隊がすぐ隣に存在することは、脅威と言えば脅威である。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    日本と韓国の間には1965年の請求権協定があるが、日朝間にはそういったものは何もない。仮に、安倍氏と金正恩氏の会談が実現したとしても、そこで何らかの大きな進展が生まれる可能性はゼロに近いのだ。

    (参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感

  • 韓国は「自滅の道を歩むだろう」…北朝鮮がシビアに予言

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信は14日、韓国が、米国の中距離ミサイルの自国配備を許せば、「自ら(米国の)弾除けになって自滅の道を歩む」ことになるとする論評を配信した。

    論評はまず、米国の高高度迎撃システム「THAAD」(サード)の韓国配備に伴って起きた混乱に言及。「『THAAD』の配置によって南朝鮮の人民が得たものは戦争に対する不安と経済的被害、肉体的苦痛だけである。生の基盤を奪われた慶尚北道星州住民の恨みの声は日増しに高まっている」と指摘した。

    (参考記事:日韓「レーダー照射問題」の背後にある韓国政治の闇

    「米国の殺気」の犠牲に

    ここで「経済的被害」とあるのは、THAADの強力なレーダーが北朝鮮ではなく自国に向けたものだと反発した中国が、韓国に経済制裁を加えたことを指している。実際、これにより韓国経済が被った「実害」は、最近の日本による輸出規制の比ではない。

  • 「理不尽な処罰」の横行が暗示する金正恩の残念な未来

    北朝鮮の物価はすべて国が決めることになっている。いわゆる国定価格というものだ。かつて、生活必需品から住宅に至るまで生活に関わるほぼすべてのものを無償、または極めて低価格で国が配給していた時代には意味のある数字だった。

    しかし、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の発生と前後して、配給システムが崩壊してからは、ほとんどのものを市場で実勢価格で購入しなければならなくなった。国定価格は未だに発表され続けてはいるが、ほとんど有名無実と化している。

    その中で、数少ない国定価格が適用され続けているのが、公共交通機関の運賃だ。

    1962年5月に開通した平壌のトロリーバス。現在は6路線、56.7キロが平壌市旅客運輸連合企業所の無軌道電車(トロリーバス)事業所により運営されている。古い型のトロリーバスに乗って、市内をめぐるツアーも外国人に人気だ。

    (参考記事:北朝鮮ツアー、実は近くて普通に行ける北朝鮮旅行

    トロリーバスの料金は、わずか5北朝鮮ウォン(約0.06円)。1円にはるかに及ばない金額だ。コメ1キロが5000北朝鮮ウォン(約65円、平壌の市場での7月の価格)で取引されていることを考えると、ほとんどタダ同然と言える。

    ちなみに、「ソビ車」と呼ばれる民間人が営む営業車両の場合は4キロあたり2000北朝鮮ウォン(約26円)、タクシーの初乗り料金は2ドル(約112円)だ。

    安いからと言って、必ずしも便利なわけではない。電力難に加え、車体の老朽化が激しく、電力消費量と故障が非常に多く、運転見合わせが相次いでいる。

    金正恩党委員長は、李雪主夫人とともにトロリーバスの新型車両に試乗したが、平壌市内を走るトロリーバスがすべて新車に切り替わったわけではない模様で、当局は、メンテナンス費用を支給することなく、責任を事業所の職員に押し付けるばかりだった。

    (参考記事:金正恩氏、李雪主夫人と「新型トロリーバス」に試乗

    そんな状況を打開するために、ある現場責任者が改善策を発案して実行したのだが、表彰されるどころか、解任されてしまった。

    平壌のデイリーNK内部情報筋によると、無軌道電車事業所牡丹峰(モランボン)区域の職場長は、ラッシュアワーを除き、運賃を5北朝鮮ウォンから20北朝鮮ウォン(約0.24円)に値上げした。

    事業長は、当局の自力更生という政策にも符合し、収益を財源にして乗客へのサービス向上も図れるとして、値上げに踏み切った。4倍に値上げしても極めて安価なため、乗客の反応は「20北朝鮮ウォンは、生活が苦しい人でもさほど負担になる金額ではない」「まともに運行されるのなら20北朝鮮ウォン払ってもほとんど不満は出ない」(情報筋)といったものだった。

    ところが、当局はこれを問題視し、職場長を解任した上で、事業所の検閲(監査)を行う事態となった。それ以上の処罰がされたのかなど、詳しい状況はわかっていない。どうやらクレームを入れた乗客がいたようだ。

    「平壌では地方とは異なり、市民からの信訴(苦情)に当局が敏感に反応する。元帥様(金正恩氏)の身近で仕える平壌市民に不便を強いることは、党と大衆を仲違いさせる深刻な行為だと深刻にとらえるからだ」(情報筋)

    当局はクレームを取り上げて、不満の種になりうることを摘み取ったということだ。

    (参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

    一方、多くの住民からは今回の措置に残念だとの声が上がっている。

    「住民の出勤を保証するために料金を値上げしたのであり、私腹を肥やすためにしたわけではない。そのため、住民からは職場長に対する処罰を残念がる声が上がっている」(情報筋)

    職場長は解任され、料金の値上げは撤回されたが、事業所の収入が減ったことで、せっかく改善の兆しを見せていたトロリーバスのサービスは、悪化が避けられない見通しだ。

    実は、同じようにトロリーバスの運賃を値上げしたところがある。平壌郊外の平城(ピョンソン)では、トロリーバスの運行正常化と共に、料金を実際の物価水準に合わせた1000北朝鮮ウォン(約13円)に200倍値上げしたが、こちらは「高すぎる」として不満の声が上がった。これでも、事業所の儲けは決して多くない。こちらに関しては、電力難が再び悪化したことで、運行が止まってしまったようだ。

    (参考記事:北朝鮮のトロリーバス運賃「200倍値上げ」の背景

    極端に安いのは交通費だけではない。月々の一般的な電気料金は33北朝鮮ウォンで、これも1円に満たない。それを何千円もするメーターを買わせて、従量制料金に変更することにした。こちらは負担が大きいとして不満の声が上がっている。

    (参考記事:電気料金「2900倍値上げ」に静かに抵抗する北朝鮮庶民

    このような創意工夫が、処罰の対象となることはしばしばある。

    昨年、東大院(トンデウォン)区域のある洞事務所(末端の行政機関)が、マンションの下水管の詰まりを解消するために、上下水道事業所の労働者を動員することにしたが、彼らの昼食代を住民から集めたことが問題になり、事務長が問責された事件があった。

    せっかく出したアイディアが身を滅ぼすことにつながるのなら、革新も改善も一切期待できないだろう。

  • 北朝鮮で注目「赤い自転車の女」殺人事件の顛末

    北朝鮮で20代女性を殺害し、現金と持ち物を奪った容疑で逮捕された朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の元兵士に判決が下された。

    言い渡された刑は、一般的な量刑の相場より軽いものだった。このような場合には、市民の間から不満の声が上がるものだが、今回に関してはそうなっていないと、デイリーNKの内部情報筋が伝えた。

    情報筋によると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)に在住する元兵士は、25歳の女性を殺害し、自転車と現金を奪ったが、後に逮捕された。先月中旬に公開裁判が行われ、そこで言い渡されたのは教化刑(懲役)10年の刑だった。それに対して市民の大多数が「死刑になると思ったのに」と驚きを示しているという。

    大幅な減刑となった理由は、その不幸な身の上にある。

    この元兵士は、10年にも及ぶ兵役を終えて昨年、故郷の清津に戻ってきたが、家はもぬけの殻になっていた。兵役中に両親ともに亡くなっていたのだ。生まれ育った家で一人暮らしを始めた元兵士だが、食べものをいかに確保するかという問題にぶち当たった。

    兵役を終える前の兵士は、商売に手を出したり違法行為に手を染めたりして、今後の生活資金を稼いでから除隊する。除隊時に所属部隊から受け取るのは、わずかばかりの食べ物だけだからだ。

    (参考記事:北朝鮮「列車に乗っていたら飢え死に」その理由は

    しかし、充分な生活資金を準備できるのは、密輸や脱北を見逃す代わりに多額のワイロが受け取れる国境警備隊や、市場がある都市や近郊に駐屯している部隊の兵士くらいで、後はほぼ、着の身着のままの状態で軍隊から投げ出される。

    (参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

    この兵士は、清津市人民委員会(市役所)を訪ねて、就職口の斡旋と食料の配給を求めたが、うまく行かなかったようで、市場に出て物売りをしてその日暮らしをするようになった。

    彼は、輸城川(スソンチョン)の渡し船に乗って市場に出勤していたが、船で赤い自転車を持った20代の子連れの女性を見かけた。自転車を持っているくらいなのだから、ある程度財産があるだろうと思ったのか、元兵士は船から降りた女性の後をつけて襲いかかり、現金と自転車を奪おうとした。ところが、女性が叫び声を下げて激しく抵抗したため、顔と鼻を手で強く押さえつけて窒息死させてしまったという。

    通報を受けた清津市保安署(警察署)は捜査に乗り出し、被害女性のものと思われる赤い自転車に乗っていた元兵士がいるとのとの通報を受けて逮捕した。

    元兵士は取調べに素直に応じた。また、隣人たちも彼の普段の生活態度や気の毒な事情を語り減刑を求めた。

    予審(捜査終了後起訴までの追加捜査、取り調べ)を終えた保安署は、生い立ちや兵役、両親が亡くなったこと、生活苦の中にあったことを踏まえ、偶発的な犯行だとの報告を上げたようだ。その結果、大幅に減刑された懲役10年が言い渡されたというわけだ。

    通常、量刑相場から大きく外れた判決が出た場合、何らかの裏取引があると考えるのが一般的だが、今回の場合は、元兵士の苦しいながらも誠実な生活態度が反映された裁判結果だとして、市民は驚きつつも、不満の声は上げていないと情報筋は伝えた。もちろん、被害女性の遺族は別だが。

    (参考記事:わいろの額で「拷問メニュー」が変わる…北朝鮮「虐待収容所」の内幕

    この兵士は、咸鏡北道会寧(フェリョン)にある全巨里(チョンゴリ)教化所(刑務所)に移送され、現在服役中だ。減刑はされたものの、人権侵害の温床で衛生状態が極めて悪い上に、食べ物を差し入れする家族がいない彼が、生きて出所できるかは誰にもわからない。

    (参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

  • 「情勢緊張の主犯だ」金正恩氏が文在寅政権を猛非難する理由

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信は10日、韓国こそが「情勢緊張の主犯、平和と安定の破壊者である」であるなどと猛非難する論評を配信した。

    論評は、韓国が最近「『多様な安保脅威』をうんぬんして軽空母級の大型輸送艦と3隻の新型イージス艦など艦船の建造計画を推し進めている中、F35A戦闘機と空中目標打撃のための迎撃手段、高高度無人偵察機グローバルホークをはじめとする先端武装装備の搬入もエスカレートしている」と指摘。「朝鮮半島の情勢を軍事的緊張激化へと導く危険極まりない行為である」と非難。

    また、「F35A戦闘機の搬入問題だけを見ても、それが朴槿恵執権時代に軍部好戦狂らが『対北先制攻撃システム「キル・チェイン」』を構築するために立てた」ものであるなどとして強く反発した。

    論評が指摘する通り、韓国の文在寅政権が推進する軍備増強策の多くは、朴槿恵前政権で定められたものだ。「軽空母級の大型輸送艦」構想は日本の護衛艦「いずも」の空母化に対抗して最近浮上したものだが、これは今のところ実現性が乏しい。

    (参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は

    北朝鮮が最も神経質になっているのはやはり、論評も言及しているステルス戦闘機の導入ではないだろうか。なぜなら、朴槿恵前政権は金正恩党委員長に対する「斬首作戦」の推進を検討した経緯があり、ステルス戦闘機こそは、それを実行するための必須の兵器と言えるからだ。

    (参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

    論評はこうした前提の下、「(韓国の)対決狂らは自分らの武力増強策動について『防衛のためのこと』だの、『南北合意に違反しない』だのという詭弁(きべん)を並べ立てている」と反発。続けて「諸般の事実は、対話の相手を狙った武力増強に狂奔する南朝鮮当局こそ朝鮮半島の情勢緊張の主犯、平和と安定の破壊者であることをはっきり示している」と非難している。

    北朝鮮の反発の裏には、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)内部の混乱により、韓国側との通常兵器での戦力差がいっそう拡大することへの危惧もあるだろう。

    (参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

    とはいえ、北朝鮮の非核化の見通しが立っていない以上、文在寅政権としても一方的な軍縮に動く選択肢はない。昨年、朝鮮半島は対話と緊張緩和の雰囲気に包まれたが、それも実際には、こうした現実的課題から目を背けた上での一時的なものだったと言えるかもしれない。

  • 「盗人猛々しい」金正恩氏、文在寅政権との対話を拒絶

    北朝鮮は11日、米韓両軍が同日から合同指揮所演習を開始したことを受けて外務省局長の談話を発表し、米韓合同軍事演習を即時中止するか韓国が演習について誠意ある釈明を行うまでは「南北の接触自体が難しい」と表明した。

    一方、トランプ米大統領は10日、ツイッターで「北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が米韓合同軍事演習後に会い、(非核化)協議を始めたいと手紙で書いてきた」と明かした。金正恩氏はまた、7月下旬から続ける短距離ミサイル発射について「演習が終われば発射実験をやめる」と伝えてきたという。

    金正恩氏は、合同軍事演習を行ってはいても米国とは対話するが、韓国との対話は拒絶するという、あからさまな2重基準を持ち出してきたわけだ。なぜ、そんなことをするのか。北朝鮮の言い分にもう少し耳を傾けてみよう。

    談話は「演習の名称を変えたからといって訓練の侵略的性格が変わったり、またわれわれが難なく見過ごすと考えたりするなら誤算である」と主張した。

    また、最近のミサイル発射について「米大統領までがわれわれの通常兵器開発試験について、どの国でも行うたいへん小さなミサイル試験だと言って、事実上、主権国家としてのわれわれの自衛権を認めた」と指摘。対北朝鮮を想定して米軍との合同演習を進める韓国が発射の中止を求めていることについて「盗人猛々しい」と反発している。

    そして、「今後、対話に向かう良い気流が生じてわれわれが対話に出るとしても、徹底的にそのような対話は朝米間で開かれることであって、北南対話ではないということをはっきり知っておく方がよかろう」と強調しているのだ。

    このように展開された北朝鮮の主張を平たく解釈すると、金正恩氏は韓国に対し、「お前ら自分のことだけ棚に上げるなよ」と言っているのだ。韓国は北朝鮮に非核化を求め、ミサイル発射の中止を要求しているが、米軍との合同軍事演習を止めようとしない。ならば自衛のための兵器開発は当然必要であり、それに難癖をつける文在寅政権はけしからんと言いたいわけだ。

    とはいえ、北朝鮮側のこうした主張をまともに受け入れるのは間違いだ。北朝鮮は核武装しており、非核化も進展していない。まだまだ韓国が気を抜ける状況ではないのだ。

    問題は、文在寅大統領が持ち前の極端な楽観主義により、金正恩氏との間で軍事的緊張緩和のための安易な約束をしてしまったことにある。もちろん、その約束には北の非核化も含まれるはずなのだが、北朝鮮は核問題については米国とだけ話し合う態度を貫き、韓国に対しては「約束したものは守ってもらおうか」と圧迫しているのである。

    (参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感

    自らまいた種とは言え、文在寅政権は苦しい状況に追い込まれている。果たしてこの局面を打開し、北朝鮮を対話の場に引っ張り出す妙案をひねり出せるだろうか。

  • 文在寅には「脅迫状」を、トランプには「美しい書簡」を送った金正恩

    トランプ米大統領は9日、北朝鮮の金正恩党委員長から前日に「非常に美しい書簡」を受け取ったとホワイトハウスで記者団に明かした。書簡の中身については「(トランプ氏)個人に向けたもの」であり、「非常に前向き」と説明したが、詳細については言及していない。

    ただ、金正恩氏が書簡の中で5日から始まった米韓合同軍事演習への「不快感」を表明したことを明らかにしつつ、「私も(合同演習を)一度も好きだったことはない。なぜなら米国が費用を支払うのが気に入らないから」と述べ、金正恩氏に同調して見せた。

    さらには、「韓国は米国に(演習の経費を)返済すべきで、韓国にもそう伝達した」とまで言っている。

    韓国の文在寅大統領にとっては、たまった話ではないだろう。おそらく今、世界で最も金正恩氏に「同調したい」と思っているのは文在寅氏だろう。日本との関係悪化の中、「南北の経済協力で平和経済を実現すれば、(日本経済に)一気に追いつくことができる」と語っているくらいだから、北朝鮮との関係改善に大統領としてのすべてを賭けていると言って過言ではなかろう。

    しかし一方、金正恩氏は文在寅氏にしびれを切らしている。昨年の首脳会談で合意した南北経済協力に韓国が踏み出そうとせず、また重ねて「やめてくれ」と主張してきた米韓合同軍事演習を続けているからだ。

    文在寅氏としても、開城工業団地や金剛山観光の再開など、南北経済協力を開始したいのは山々なのだ。それでも出来ないのは、米国から「非核化まではダメ」と止められているからだ。それなのに、当の米国大統領が「オレも合同演習なんかイヤなんだ」と好き勝手なことを言っているのである。

    金正恩氏はもちろん、こうした状況をすべて承知している。それなのに、米韓合同軍事演習を巡って対韓国機関の祖国平和統一委員会に発表させた「真相公開状」では、米国には非難の矛先を向けず、ただ韓国だけを槍玉にあげ、「疲弊するほど高価な代償を払わせる」と脅迫している。

    金正恩氏がこうした態度を取る目的は、米韓の離間にあることはもちろんだが、韓国に無理難題を押し付けて、当事者能力を奪ってしまうことにあるのではないか。

    今や南北対話は、北朝鮮が望むとおりにしか動かなくなっている。北朝鮮は言いたいことを何でも言うが、韓国は言うべきことも耐えねばならない関係になっている。金正恩氏の残忍な人権侵害に言及すらできないのが端的な例だ。

    (参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

    金正恩氏はこれからもしばらく、韓国に対してこうした揺さぶりを続けるはずだ。違った動きを見せるようになるのは、2022年に予定される次期韓国大統領選に向け、主要な候補者たちの顔ぶれが出そろう頃ではないかと思われる。

  • 「同族への信義を捨てた」金正恩氏、文在寅氏の“排除”加速か

    北朝鮮の対韓国機関、祖国平和統一委員会の統一宣伝局は8日、米韓合同軍事演習を巡り韓国政府を非難する真相公開状を発表した。

    公開状はまず、「南朝鮮当局は、対話の場ではわれわれと『和解と平和』の握手をし、後ろでは『軍事的備え態勢においては抜かりがあってはならない』と力説し、外部勢力と共に同族に反対する合同軍事演習を引き続き強行している」と指摘している。

    そして、韓国政府が昨年から今年にかけて推進してきた米国との軍事協力や、軍備増強の事例を列挙しながら、「同族に対する信義を捨てて米国の対朝鮮圧殺策動に便乗してきた南朝鮮当局は、われわれをして国家安全の潜在的・直接的脅威を取り除くための対応措置を取らざるを得なくした責任から逃れられず、疲弊するほど高価な代償を払うことになるであろう」と警告している。

    注目すべきは、この公開状が米国には非難の矛先を向けず、ただ韓国だけを槍玉にあげている点だ。

    金正恩党委員長は今後もトランプ米大統領との対話を維持することを望む一方、韓国の文在寅大統領との個人的関係は「切る」腹を決めているのではないか。

    北朝鮮の対韓国宣伝サイトである「ウリミンジョクキリ(わが民族同士)」は6月28日付の記事で、南朝鮮の執権者――つまりは文在寅氏を「思考と精神がマヒしている」などとして、けちょんけちょんに罵っている。普通、何か気に食わないことがあっても、そのうち再会することを前提とするならば、ここまで口汚い言葉は使わないものだ。

    金正恩氏の中では文在寅氏に対し、「もう十分だ」との感情があるのではないか。

    しかしこのような状況が続くと、文在寅氏としても言われっぱなしではいられない。韓国側はこれまで、北朝鮮に配慮して、様々な問題に目をつぶってきた。特に、北朝鮮の人権問題からは意図的に目を逸らしており、そのせいで国内外の批判を浴びてきた。

    (参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

    南北対話がとん挫し、北から引き続き悪罵が飛んでくるようなら、文在寅政権としてもこれ以上、北朝鮮を大目に見れなくなるだろう。だが、それにより南北が完全に決裂すれば、文在寅氏にとって最大にして唯一のセールスポイントがなくなる。

    果たして文在寅氏はこの袋小路から、どのようにして抜け出すのだろうか。

  • 「米国の利益に深刻な被害」文在寅氏の“感覚のズレ”に募る警戒感

    訪日したエスパー米国防長官は7日、岩屋毅防衛相、安倍晋三首相と相次いで会談し、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が維持されることを「心の底から願う」と強調したという。

    エスパー氏は8日から訪韓しており、鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相らとの会談でも同様の意向を伝えると見られる。

    日韓関係が悪化の一途を辿る中、韓国政府は日本による半導体関連材料の輸出規制措置に対抗し、GSOMIAを破棄する可能性をチラつかせている。7日には世論調査会社のリアルメーターが、GSOMIA破棄の賛否を問う世論調査の結果を発表。賛成(47.7%)が反対(39.3%)を上回っており、雰囲気的にも破棄が現実味を帯びてきている。

    しかし、冒頭のエスパー氏の発言にもあるように、米国は絶対反対の立場だ。

  • 金正恩氏「最愛の妹」が幹部らを無慈悲に処罰…権力中枢で何が

    金正恩氏「最愛の妹」が幹部らを無慈悲に処罰…権力中枢で何が

    北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の妹・金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長が最近、複数の幹部に無慈悲な処罰を下す事件があったという。

    平壌の消息筋は7日、デイリーNKに対し、「首領様(金日成主席)逝去25周年の記念行事で、平壌市党委員会名義で寄せられた弔花の花かごの中に発泡スチロールが仕込まれていたことが発覚した。温室栽培の生花が足りず、発泡スチロールの詰め物でかさを増やしていたようだ」と伝えた。

    消息筋によると、発泡スチロールの詰め物は追悼行事の現場で、党宣伝扇動部の幹部によって見破られた。そして、ことはここで終わらず上層部にまで報告され、関係者の処罰に至ったというわけだ。そして、処罰を決済したのが、金与正氏だったという。

  • 「奇怪な醜態」金正恩氏が文在寅氏を罵倒した理由

    北朝鮮は6日、またもや短距離弾道ミサイル(あるいは大口径操縦ロケット砲)と見られる飛翔体を日本海へ向けて発射するとともに、米韓を激しく非難する外務省報道官の談話を発表した。

    米韓合同軍事演習が前日から開始されたことを受けて出された談話は、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の再開を示唆しながら「(米韓に)疲弊するほどの代価を払わせる」と警告している。

    韓国の文在寅大統領はこの前日、対立が深まる日韓関係を巡り「南北の経済協力で平和経済を実現すれば、一気に(日本に)追いつくことができる」と強調したばかりだった。金正恩党委員長は文在寅氏からの「平和のメッセージ」にまったく配慮することなく、無慈悲な「核の警告」で応じたわけだ。

    金正恩氏はそもそも、文在寅氏を個人的に見切っているフシがある。

  • 「南北平和経済で日本に追いつく」文在寅発言を北がミサイルで撃破

    韓国軍合同参謀本部は6日、「北朝鮮が今日未明、黄海南道(ファンヘナムド)一帯から東海(日本海)上に2回、未詳の発射体を発射した」と明らかにした。韓国の文在寅大統領が前日の首席秘書官・補佐官会議で、「日本の経済がわれわれの経済に比べて優位にあるのは経済規模や内需市場で、南北の経済協力で平和経済を実現すれば、一気に追いつくことができる」と強調した矢先のことだ。

    国際社会による対北制裁が解かれ、韓国と北朝鮮の全面的な経済協力が実現した場合、どれくらいの効果を生むかには様々な見方がある。最も理想的な展開が生まれれば、文在寅氏が語るような「バラ色の未来」ももしかしたら描けるかもしれない。

    しかしそれはあくまでも、文在寅氏が語る平和経済なるものが「実現したら」の話だ。現実は、全面的な経済協力どころか、開城工業団地の再開など限定的な経済協力する思うに任せない状況にある。

    文在寅氏はこのように、物事を都合よく解釈し、過度に楽天的な物言いをする癖がある。それによって世人を呆れさせた例も1度や2度ではない。

    (参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感

    現実をもう少し整理してみよう。北朝鮮の今回の発射は明らかに、5日から始まった米韓合同軍事演習に対する示威行為だ。昨年こそ、金正恩党委員長との蜜月を誇った文在寅氏だが、今や北から無視されるようになって久しい。

    北朝鮮が韓国との対話再開の条件として示しているのが、開城工業団地や金剛山観光再開などの南北経済協力の推進と、米韓合同軍事演習の中止、ステルス戦闘機導入など韓国軍の軍備増強の中止である。

    これらはすべて、米韓関係と深く関連している。北朝鮮の非核化が進展していない状況での南北経済協力には米国が反対しているし、米韓合同軍事演習や米国からの先端兵器導入は、韓国の安全保障の基礎とも言えるものだ。

    それに、文在寅政権は対日関係について米国に仲裁を頼むくらいだから、米韓関係がどれほど重要か、身に染みてわかっているはずだ。金正恩氏は、その重要な関係を韓国がなげうたない限り、南北関係発展の未来はないと言っているのである。

    これでは、南北の平和経済とやらを構築する道筋の、入り口に立つことすら難しい。それとも文在寅氏は、南北関係と引き換えに米韓同盟を放棄する覚悟でも決めたのだろうか。とうていそのようには見えないが、仮にわずかでも、文在寅氏の胸中にそのような考えが芽生えたとすれば、それは北朝鮮の独裁者たちが3代にわたり望んできたことが、実現に向けて大きく動き出したことを意味するだけだ。