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  • 「世界は日本を警戒すべき」…北朝鮮が「いずも」空母化に猛反発する理由

    「世界は日本を警戒すべき」…北朝鮮が「いずも」空母化に猛反発する理由

    北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は14日、日本政府が海上自衛隊の「いずも」型護衛艦を実質的な空母として運用しようとしていることを受けて、「日本はアジア太平洋地域と世界の平和を害する悪性腫瘍」であると非難する論評を掲載した。

    また国営の朝鮮中央通信も12日付の論評で、「日本は中国に対抗するために空母を保有しようとすると公言しているが、それは武力増強、海外膨張に対する日本の野心を示す」ものだとして、「世界は、日本の軽挙妄動に警戒心を高めなければならない」と主張した。

    最近の北朝鮮の対日非難には、大きく2つの流れがある。ひとつは歴史問題に言及し、日本に朝鮮半島支配の過去清算を迫る論調だ。例えば従軍慰安婦問題では、日本軍が慰安婦を虐殺したとされる映像など新資料を提示しながら、謝罪と賠償を迫っている。

    (参考記事:日本軍に虐殺された朝鮮人従軍慰安婦とされる映像について

  • 【写真】北朝鮮の「清純派女優」はこうして金正恩に抹殺された

    【写真】北朝鮮の「清純派女優」はこうして金正恩に抹殺された

    張成沢粛清を振り返る

    「コンピュータに入力してはならない電子ファイル目録」と題された北朝鮮の内部文書を入手した。2015年5月の日付が入ったもので、韓国誌・月刊朝鮮11月号はこれを、北朝鮮の体制に不都合な映像・音楽作品を取り締まるタスクフォース「109常務(サンム)」が作成したものだと断定している。

    内容は視聴が禁止された映像・音楽・ソフト類のリストで、列挙されたタイトルはざっと300以上にもなる。その多くは、体制に「有害」とみなされた俳優の出演しているものだ。

    「喜び組」出身

    その中には、2013年12月に処刑された金正恩朝鮮労働党委員長の叔父・張成沢(チャン・ソンテク)元党行政部長の「関係者」とみなされた俳優たちの出演作が、多数含まれている。

  • 北朝鮮で拘束・死亡の米大学生「歯が不自然にズレた」謎は明かされるか

    北朝鮮で拘束・死亡の米大学生「歯が不自然にズレた」謎は明かされるか

    米財務省は10日、北朝鮮における深刻な人権侵害や言論統制に関与したとして、金正恩朝鮮労働党委員長の側近である崔龍海(チェ・リョンヘ)党副委員長ら3人を制裁対象に指定。同省は声明で、「北朝鮮による米国民のオットー・ワームビア氏に対する非道な扱いを改めて想起させる役割を果たすものでもある」と言及した。

    米バージニア大学生だったワームビアさん(当時22歳)は、北朝鮮を旅行中に同国当局に拘束され、昨年6月に昏睡(こんすい)状態で解放されて間もなくして死亡した。その死因を巡り、ワームビアさんの両親は北朝鮮を相手取って民事訴訟を提起しており、19日にはワシントンDCの連邦地裁に初出廷する。

    米国政府は11日にも、北朝鮮を信教の自由が侵害されている「特定懸念国」に指定したとの声明を発表し、人権問題での圧迫を強めている。そんな中で行われる民事裁判は、米国世論の関心を集める可能性が高い。

    特に注目されるのは、両親の側が「北朝鮮から帰ってきたワームビアさんの歯列が大きく変形していた」と主張していることだ。問題は下の歯列の中央の2本の歯なのだが、北朝鮮に行く前のワームビアさんのエックス線写真では、きれいな歯並びであることがわかる。

    しかし、ワームビアさんな主治医が陳述書に添付して連邦地裁に提出したスキャン写真を見ると、この2本の歯が、不自然に口の内側に移動しているのだ。

    (参考記事:【写真】大きく変形したワームビアさんの歯列

    これについて主治医は、「外部から物理的な力が加えられた可能性がある」と述べている。

  • 金正恩氏「叔父を処刑」の背景に王朝内での「女たちの戦い」

    金正恩氏「叔父を処刑」の背景に王朝内での「女たちの戦い」

    張成沢粛清を振り返る(4)

    韓国の情報機関・国家情報院次長や大統領補佐官を歴任した羅鍾一(ラ・ジョンイル)氏の『張成沢の道』は、2016年2月に韓国で出版された。対北朝鮮諜報のエキスパートらしく、北朝鮮の元高位幹部と思しき脱北者たちの重要証言がちりばめられている。一方、韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使の著書『3階書記室の暗号』は、2018年5月に出版された。こちらは1冊丸ごと、元北朝鮮エリートの証言録である。

    2人は南北の外交官として、同じ時期に欧州で勤務した時期があり、2001年11月にはロンドンで開かれた行事で顔を合わせ、言葉を交わしたこともあったという。

    この2人の著書には、互いに示し合わせたわけではなかろうが、相互の内容を補完するエピソードが含まれている。異なる視点と立場から書かれた本の内容が重なっているということは、そのエピソードが事実である蓋然性が高いことを意味する。

    金正恩朝鮮労働党委員長の叔父・張成沢(チャン・ソンテク)元党行政部長が2013年12月に処刑された事件を巡っても、2人の著書からその遠因を探ることができる。

    まず背景としてあるのは、金正恩氏の父・金正日総書記の複雑な女性遍歴だ。彼は同時に複数の女性と付き合い、子供を産ませて家庭を持ったが、一部は寵愛し、一部は冷たく遠ざけた。

    (参考記事:金正日の女性関係、数知れぬ犠牲者たち

    そしてそんな環境の中にあって、「金正恩は、幼い時から叔父に対して根の深い恨みを抱いていたようだ」と太永浩氏は書いている。理由は、金正日総書記の妹である金慶喜(キム・ギョンヒ)氏とその夫の張成沢氏が、金正恩氏の母・高ヨンヒ氏の望みを阻んだからだろうという。

    高ヨンヒ氏は生前、自分が生んだ子供たちを祖父に当たる金日成主席に会わせ、金王朝の一員として正式に認知を得たがったという。そうしなければいつ、権力闘争により葬られてしまうかわからないからだ。

    ではなぜ、金慶喜氏と張成沢氏は彼女の行動を邪魔したのか。太永浩氏は「高ヨンヒと金慶喜は仲が良くなかったようだ」と書いているが、その理由についてのヒントは、羅鍾一氏の著書に書いてある。本連載では前回、張成沢氏が1970年代の末、金正日氏から「喜び組」パーティーを巡って懲罰を受けたことがあると書いた。

    (参考記事:将軍様の特別な遊戯「喜び組」の実態を徹底解剖

    その際、金慶喜氏の願いを受けて金正日氏に「もう許してあげたら」と囁き、張成沢氏を救い出したのが、金正日氏のもうひとりの妻である成恵琳(ソン・ヘリム)氏だったという。

    金慶喜氏は、夫がハレンチな「喜び組」パーティーを催すのを大いに嫌っていたというが、大学生時代に大恋愛の末にゴールインしたとされる2人である。同じ女性としてその思いを理解してくれる成恵琳氏に、必死の思いですがったようだ。

    (参考記事:【動画あり】ビキニを着て踊る喜び組、庶民は想像もできません

    成恵琳氏は金正日氏の長男・金正男氏の母だ。一時は夫の寵愛を一身に受けたが、高ヨンヒ氏の登場や、一族内の様々な事件が重なり疎んじられ、2002年にモスクワで寂しく客死した。

    (参考記事:「喜び組」を暴露され激怒 「身内殺し」に手を染めた北朝鮮の独裁者

    羅鍾一氏が書いたエピソードが事実ならば、金慶喜氏が成恵琳氏に義理を感じ、高ヨンヒ氏には反感を抱いていたとしても不思議ではない。しかし結局のところ、北朝鮮の独裁権力は高ヨンヒ氏の息子・金正恩氏のものとなり、張成沢氏も金正男氏も抹殺される結果に終わったのだ。(つづく)

  • 【写真】北朝鮮の国民的美少女・洪英姫と「花を売る乙女」

    2007年にカンヌ映画祭でも上映された北朝鮮映画『ある女学生の日記』は、大学入学を控え進路に悩む女子学生スリョンの姿を描いたものだ。

    数学者である彼女の父親は、妻が癌を患っているにもかかわらず、研究所で仕事に没頭し家に戻らない。スリョンは、そんな父親に不信感を抱き、学校でもトラブルを抱える。

    次ページの動画は、父親を侮辱した級友と「ケンカ」する場面。なんともすがすがしい勝負の仕方ではある。

  • 【動画】北朝鮮の女子高生「タイマン」場面…映画『ある女学生の日記』

    2007年にカンヌ映画祭でも上映された北朝鮮映画『ある女学生の日記』は、大学入学を控え進路に悩む女子学生スリョンの姿を描いたものだ。

    数学者である彼女の父親は、妻が癌を患っているにもかかわらず、研究所で仕事に没頭し家に戻らない。スリョンは、そんな父親に不信感を抱き、学校でもトラブルを抱える。

    次ページの動画は、父親を侮辱した級友と「ケンカ」する場面。なんともすがすがしい勝負の仕方ではある。

  • 死者数千人の前例も…北朝鮮で列車事故が多発

    死者数千人の前例も…北朝鮮で列車事故が多発

    今月8日、韓国の江陵(カンヌン)で高速鉄道KTXが脱線する事故が発生した。鉄道を運営する韓国鉄道公社(KORAIL)のオ・ヨンシク社長は11日、相次ぐ事故の責任を取って辞任を表明した。

    オ社長は、李明博政権以降に進められてきた民営化が事故多発の根本原因にあるとしている。KORAILでは前身の鉄道庁時代を含めて、多数の死者を出す事故はこの20年起きていないが、2011年以降で脱線事故が8件、追突・衝突事故が4件起きている。

    軍事境界線の北側の北朝鮮でも今年、複数の鉄道事故が起きており、今月に入りまたもや発生した。幸い大事故には至らなかったが、北朝鮮では世界最悪級の鉄道事故が何度も発生している。1996年には慈江道(チャガンド)で、屋根の上にも乗客が乗るほどのすし詰めの列車が谷底に転落、乗客の多くが死亡した。死者数は5000人に及ぶとの説もある。

    (参考記事:谷底に広がった凄惨な光景…北朝鮮で列車が転落「死者5000人」説も

    咸鏡北道(ハムギョンブクト)の内部情報筋によると、今月3日、富寧(プリョン)郡にある古茂山(コムサン)駅で、食糧を積んでいた貨物列車が脱線した。幸いにして負傷者は発生しなかった。

    この駅は清津(チョンジン)から会寧(フェリョン)を経て羅津(ラジン)に向かう咸北(ハムブク)線にあり、茂山(ムサン)に向かう茂山線が分岐している。

    セメントや鉄鉱石など貨物輸送の要衝で、地域住民が動員され復旧作業が進められているが、装備がなくほぼ人力に頼っている上に、周辺には軍部隊がなく、兵士の投入も困難だ。さらに、大型機械を取り寄せるには鉄道を利用するほど道路事情が劣悪な山間部にあるなど、複合的要因で復旧が遅れ、12日の時点でも列車の運行が再開できていない。

    食糧は一般住民向けのものではなく、保衛員(秘密警察)や保安員(警察官)向けの配給であるとされる。それを知った住民の間からは、「自分のものでもない食糧のためになぜ作業に動員されるのか」と不満の声が上がっているという。このような不満が、様々な形のサボタージュにつながることは言うまでもない。

    保安員が作業状況を点検、人員を監視しているため、おこぼれに預かる、つまりは回収して食糧を横流しすることも難しい。これではますますやる気が出ず、復旧は遅れるばかりだろう。

    事故原因は明らかになっていないが、おそらく老朽化のためだと思われる。この区間は、朝鮮半島が日本の植民地支配下にあった1916年に開通、1950年代から1970年代にかけて広軌化、電化されたが、長年まともな補修が行われておらず、線路状態が劣悪であることが知られている。

    今回は幸いにして大事に至らなかったが、上述した事故以外にも、北朝鮮では未曾有の大飢饉「苦難の行軍」のころを中心に、桁外れの大事故が何度も起きている。

    (参考記事:死者数百人の事故が多発する北朝鮮の「阿鼻叫喚列車」

    咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)では1997年、停車中だった火薬25トンを積んだ貨物列車5両が火災を起こし、大爆発を起こした。到着した通勤列車が巻き込まれ、3000人が死亡し、1万人が負傷したといわれている。

    (参考記事:通勤列車が吹き飛び3000人死亡…北朝鮮「大規模爆発」事故の地獄絵図

  • 金正日の「喜び組」はこうして堕落させられた

    金正日の「喜び組」はこうして堕落させられた

    張成沢粛清を振り返る(3)

    5年前の12月12日、金正恩朝鮮労働党委員長によって処刑された彼の叔父・張成沢(チャン・ソンテク)元党行政部長は生前、何回かの「革命化」を経験したことで知られる。

    革命化は、素行に問題ありとされた幹部らに施される再教育のことだ。数カ月から1年、あるいは数年もの間、農村や工場に労働者として派遣され、苦労を強いられる。北朝鮮における高級幹部と末端労働者の生活水準の格差は、日本のそれよりはるかに大きい。ぜいたくに慣れた幹部らは革命化で塗炭の苦しみを味わい、最高指導者と体制に対する「忠誠」を誓わされるのだ。

    「夜の奉仕」も

    張成沢氏が初めて革命化を経験したのは、金正日総書記の片腕として台頭していた1970年代末のことだった。韓国の情報機関・国家情報院の次長や大統領補佐官を歴任した羅鍾一(ラ・ジョンイル)氏の著書『張成沢の道』によれば、革命化が命じられた理由は、「喜び組」パーティーだった。

    張成沢氏は当時、金正日氏のために「喜び組」パーティーを仕切る役割を担っていたが、自らの権勢が強まるにつれ、毎週のように自分に忠実な人々を集め、独自のパーティーを開くようになっていたのだ。

    「喜び組」パーティーは、諸外国では金王朝の「堕落の象徴」として見られている。

    (参考記事:ビキニを着て踊る喜び組、庶民は想像もできません

    しかし実態としては、この秘密の会合がある程度の政治的機能を持ち合わせていたのも事実だった。1990年代末に欧州から韓国に亡命した脱北外交官は、次のように語っている。

    「パーティーには、政策調整の目的もあったのです。北朝鮮の行政システムは極端な縦割りになっており、部門間の調整がなかなかできない。だから限られた資源の配分を巡って、対立やいさかいがしょっちゅう起きる。そのため金正日は、各部門の長たちに酒を勧めて行政上の問題点を語らせ、『わかった。ではその問題はこのように解決しろ』といった具合に整理していたのです」

    また前述した『張成沢の道』によれば、そもそも「喜び組」は金正日氏が、父・金日成主席のために作ったのであり、その趣旨は「日本の占領期から祖国と民族のため、あらゆる苦労をしてきた首領様に喜びを差し上げる」というものだったという。いかに独裁者といえども、自らの権威を気にすれば、「オレのために美女を連れてこい」とはなかなか言えない。そこで、息子であり側近であった金正日氏が「気を利かせた」というのが、「喜び組」誕生の背景だったのだ。

    (参考記事:将軍様の特別な遊戯「喜び組」の実態を徹底解剖

    もっとも、当初の「喜び組」はマッサージや漫談、音楽などの演芸部門に限られていた。しかし、金正日氏が独裁体制の後継者として足場を固めるに従い、「喜び組」も同氏のためのものに変質。同時に「男性のためのサービス」(前掲書)部門が加わり、われわれの知る「堕落の象徴」と化していったというのだ。ちなみに、「夜の奉仕」のような役割を担ってきたのは、「喜び組」の中でも「木蘭組(モンランジョ)」と呼ばれるグループだったとされる。

    (参考記事:北朝鮮の「喜び組」に新証言…韓国テレビ「最高指導層の夜の奉仕は木蘭組」

    いずれにしても、北朝鮮において「喜び組」パーティーのようなものは、最高権力者のためにのみ催されるべきものだったのだ。それを自分のために開き、処罰された張成沢氏は、後年の粛清を予感させる危うさを、当時から備えていたと見ることもできるだろう。(つづく)

    張成沢粛清を振り返る(4)金正恩氏「叔父を処刑」の背景に王朝内での「女たちの戦い」

    張成沢粛清を振り返る(5)【写真】北朝鮮の「清純派女優」はこうして金正恩に抹殺された

    張成沢粛清を振り返る(6)北朝鮮「幹部が遊びながら殺した女性を焼いた」事件の衝撃

    張成沢粛清を振り返る(7)「下剤を飲ませ水を一滴も与えない拷問」で政敵抹殺…北朝鮮の権力闘争

    張成沢粛清を振り返る(8)金正恩の「肥満」と「処刑」が同時期に始まった必然

  • 北朝鮮が119人を処刑…理由は「宗教活動をしたから」

    北朝鮮が119人を処刑…理由は「宗教活動をしたから」

    ポンペオ米国務長官は11日、北朝鮮や中国、イラン、サウジアラビアなど10カ国を11月28日付で、信教の自由が侵害されている「特定懸念国」に指定したとの声明を発表した。北朝鮮が「特定懸念国」に指定されるのは17年連続となる。

    米国は折に触れて、北朝鮮における宗教――とりわけキリスト教に対する迫害を非難してきた。

    (参考記事:「北朝鮮のキリスト教徒が『冷凍拷問』で殺されている」脱北者が証言

    国務省は1998年に制定された「国際信教の自由法」に基づき、各国の信教の自由を毎年評価している。同省は今年5月29日(現地時間)、ウェブサイト上で発表した2017年版の「信仰の自由に関する国際報告書」で、北朝鮮の政治犯収容所には8~12万人が収監されており、この内の相当数が宗教的な理由によるものであるとして、北朝鮮における信仰の自由の侵害を強く非難した。

    報告書では、北朝鮮では2017年の1年間に、宗教活動をしたという理由から119名が処刑され、770名が収監されたとしている。また、宗教を理由に87名が失踪し、48名が強制移住させられ、44名は身体的に負傷したとした。

    (参考記事:「北朝鮮で自殺誘導目的の性拷問を受けた」米人権運動家

    報告書のこのような内容を踏まえれば、国務省が今年もまた、北朝鮮を「特定懸念国」に指定したのは当然と言える。ただ今回は、財務省が前日に、崔龍海(チェ・リョンヘ)朝鮮労働党副委員長ら3人を人権問題で制裁指定したばかりのタイミングである。

    米国メディアなどはこうした動きに対し、非核化を巡る米朝交渉が滞るなか、米国が人権問題で北朝鮮へのけん制を強めているとの見方を示している。

    金正恩党委員長は人権問題で圧迫されるのを何よりも嫌っているため、米国のこのやり方は北朝鮮に明確なメッセージとなるだろう。ただ、それもさじ加減を間違えると、金正恩氏が本気でへそを曲げ、非核化対話がご破算になる可能性もなくはない。

    (参考記事:金正恩氏が「ブチ切れて拳銃乱射」の仰天情報

    しかしそれでも、人権問題は重要だ。トランプ米大統領の言動には、以前は北朝鮮の人権問題を軽視しているように見える部分があった。米国が再びこの問題に光を当てるのは歓迎すべきことだ。

  • 男たちは真夜中に一家を襲った…北朝鮮の「収容所送り」はこうして行われる

    男たちは真夜中に一家を襲った…北朝鮮の「収容所送り」はこうして行われる

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    世界最悪の人権侵害国家と呼ばれる北朝鮮の中でも最たる暗部と言えるのが管理所、つまり政治犯収容所だ。収容者は8万人とも12万人とも(韓国の統一研究院の推測)とも言われるが、北朝鮮当局はその存在すら認めていない。

    1990年代に起きた大粛清「フルンゼ軍事大学留学組事件」と「第6軍団軍事クーデター未遂事件」、そして「深化組事件」に際しては、一度に千人単位の人々が収容所に送られたという。

    (参考記事:同窓会を襲った「血の粛清」…北朝鮮の「フルンゼ軍事大学留学組」事件

    通常、管理所への連行は夜中に密かに行われ、近所の人達が気づいたころには家はもぬけの殻になっているというが、咸鏡南道(ハムギョンナムド)で先月、連行の噂が広がった事例があった。

    事件が起きたのは、咸鏡南道の炭鉱地帯、端川(タンチョン)市の剣徳(コムドク)地区でのことだ。現地の内部情報筋は、次のように事の顛末を伝えた。

    先月15日の午前2時ごろ、国家保衛省(秘密警察)や炭鉱付属の保衛部の要員ら6人が地区のある民家を急襲した。この家には、炭鉱で信号手(トロッコの運行や坑道の発破などを伝える職種)として勤める女性、美術員(プロパガンダ用の絵を描く職種)として働く弟、そして年老いた父母の4人が暮らしていた。

    この一家は首都・平壌の出身だが、7年前にこの地に追放され、保衛部の厳しい監視のもとに置かれてきた。女性には夫がいたが、追放時に離婚し、弟は未婚だ。

    家に踏み込んだ保衛員らは、家族にすぐに外に出られるように服を着替え、胸に付けられた肖像徽章(金日成主席、金正日総書記のバッジ)を外すよう命じた。そして、一列に正座させ、国家保衛省の逮捕命令書を読み上げた。

    ところが、女性の行動が大騒ぎへと発展した。

    女性は、早々に服を着替えてバッジを外し、寝室から3つの額縁を持ち出した。「将軍様は家族」「将軍様に従い千万里」「忠誠の一本道へ」という毛筆の書が収められたもので、女性はそれらを持っていくと言い出したのだ。

    通常、管理所に連行する場合にはある程度の日常品の携帯が許されるが、この家族にはどういうわけか少量の塩を除いて一切の荷物携帯が許されなかった。保衛員との間でもみ合いとなり、その過程で紙は破れてしまった。

    北朝鮮は、最高指導者の肖像画を事故や災害から守るために命を投げ出すことを美談として取り上げるようなお国柄だ。逆に言うと、それらを毀損することは重大な政治的犯罪だ。

    あまりの事態に当惑した保衛員は女性に殴る蹴るの暴行をふるった上で「どうしてお前の家がこの有様になったのか。お前のせいで家族まで追放されることになった」などと怒鳴り散らしたという。

    ところが、「おまえのせい」と言いつつも、この保衛員も実は、女性が何をしたのか知らずにいたというのだ。

    「この一家が管理所に行くことになった理由は、地域の保衛員も正確には知らずにいる。女性が平壌から追放されたことについて不平不満を言い続け、上の人たちまで非難するので、そうなった(管理所行きになった)と推測していただけだ」(情報筋)

    トラックは一家を乗せて出発しようとしたもののエンジンがかからず夜通し修理をして午前8時になってようやく出発した。そのため、近隣住民に目撃され、噂が一瞬のうちにして広がった。

    荷物運びとして雇われた住民2人は、家族が連れ去られた後に家に残された食べ物、値の張る品物を持ち出したが、政治事件とあって、自分たちに累が及ぶのを恐れ、この一件については語りたがらないという。

    この家族がどの収容所に送り込まれたのかは不明だが、過酷な運命が待ち受けていることは想像に難くない。

    (関連記事:血の粛清「深化組事件」の真実を語る

    この剣徳には、革命化(下放)処分を受けて平壌を追放された幹部が送り込まれることが多いという。金日成総合大学の総長や最高人民会議常任委員会委員長を務めたファン・ジャンヨプ元党書記の韓国亡命、金正恩党委員長の叔父である張成沢(チャン・ソンテク)元党行政部長の粛清など、大きな政治的事件が起きるたびに、親戚や知人という理由で数多くの人々が送り込まれたところだ。

    韓国の中央日報は最近、金正日氏の第4夫人とも言われていた金オク氏が管理所送りになったと報じたが、彼女の行き先ももしかするとこの地かもしれない。

    (参考記事:金正恩氏が「継母」に加えていたひどい仕打ち

  • 「不良幹部」の制裁が金正恩氏に与える大ショック

    「不良幹部」の制裁が金正恩氏に与える大ショック

    [adsense1]米財務省は10日、北朝鮮における深刻な人権侵害や言論統制に関与したとして、金正恩朝鮮労働党委員長の側近である崔龍海(チェ・リョンヘ)党副委員長兼組織指導部長とチョン・ギョンテク国家保衛相、朴光浩(パク・クァンホ)党副委員長兼宣伝扇動部長の3人を制裁対象に指定したと発表した。

    党組織指導部長は北朝鮮の政務と人事を一手に掌握し、秘密警察トップである国家保衛相は政治犯収容所の運営などを担当、党宣伝扇動部長は国民の言論や思想を統制する。制裁指定されて当然と言える面々だ。

    中でも崔龍海氏は、女性に対する変態的な人権侵害で知られる人物だ。今まで制裁対象になっていなかったのが不思議なくらいだ。

    (参考記事:美貌の女性の歯を抜いて…崔龍海の極悪性スキャンダル

    米国はこれまで、2016年7月に金正恩氏を、2017年1月に金正恩氏の妹の金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長を制裁指定するなど、計29人と13機関を人権問題で指定している。金正恩氏は、自分が制裁指定された際にはたいへんな荒れ方だったとされる。

    (参考記事:金正恩氏が「ブチ切れて拳銃乱射」の仰天情報

    しかしもしかしたら、今回の制裁指定は彼にとって、さらに衝撃的だったかもしれない。

    北朝鮮が米国との非核化対話に乗り出した目的は、簡単に言えばこれ以上、人権問題で圧迫を受けたくないからだ。非核化と引き換えに、北朝鮮の内政には口を出さないと米国に約束させることが、すなわち「体制保証」を得るということなのだ。

    北朝鮮はいったん核兵器を放棄しても、天然ウランが国内で採れるから、その気になれば再び作ることができる。しかし、恐怖政治により体制を維持している以上、人権問題で妥協するわけにはいかないのだ。

    (参考記事:抗議する労働者を戦車で轢殺…北朝鮮「黄海製鉄所の虐殺」

    もちろん、核兵器が北朝鮮の国防にとって重要であることも確かだ。それをカードに使うくらいだから、金正恩氏がいかに人権圧力を嫌っているかがわかろうというものだ。

    そんな重要なカードを切ったのに、米国から引き続き人権圧力を受けたのでは、金正恩氏も立つ瀬がなかろう。対抗策は核開発に回帰することだが、そんなことをしたら、米国を対話の場に引っ張り出すのは今まで以上にたいへんになる。それに何より、経済制裁を受け続ければ国内が持たなくなる。

    米国がこのタイミングで人権圧力を強めたのは何故か。「非核化が進まないことに対するけん制だ」というのが大方の見方だ。そうかもしれない。さらにそれに加え、トランプ米大統領の北朝鮮に対する関心が薄れていることがあるのではないか。そしてその間隙を縫う形で、米政府内の人権派が「自分の仕事」を粛々と進めているのかもしれない。

    いずれにせよ、米国でこのような動きが続けば、金正恩氏も何らかの対抗措置を取る必要に駆られるだろう。それがどのような形のものになるかが注目される。

  • そのとき、夫を殺された叔母は金正恩に銃口を向けた

    そのとき、夫を殺された叔母は金正恩に銃口を向けた

    張成沢粛清を振り返る(2)

    2013年12月12日、金正恩朝鮮労働党委員長によって処刑された張成沢(チャン・ソンテク)元党行政部長は、金正恩氏の叔母である金慶喜(キム・ギョンヒ)元党書記の夫、すなわち彼の叔父だった。

    金正恩氏の父・金正日総書記には複数の弟妹がいたが、母を同じくするのは夭逝した弟を除けば金慶喜氏だけだった。肉親への情に加え、金王朝内部での権力闘争を勝ち抜くための必要性もあって、金正日氏は金慶喜氏をことのほか大事にしたとされる。

    金慶喜氏は政治的にも重要なポジションにあった。一部の北朝鮮ウォッチャーの間では、彼女は金正日氏亡き後の一時期、北朝鮮の政務と人事を一手に掌握する党組織指導部長に就いていたと見られている。ちなみに、党組織指導部長の地位はその後、金正恩氏の異母姉である金雪松(キム・ソルソン)氏が継ぎ、現在は崔龍海(チェ・リョンヘ)党副委員長に移ったとされている。

    (参考記事:金正恩氏の「美貌の姉」の素顔…画像を世界初公開

    張成沢氏は生前、北朝鮮国内で隠然たる影響力を誇ったが、その権力の源泉が妻の血統にあったことは言うまでもない。国内無敵の血統と優れた実務能力、如才なく気さくな人柄で多くの人々から慕われ、あるいは畏怖され、金正日氏の死後には金正恩体制を陰で操縦することになると見られたこともあった。しかし結局、その存在感の大きさが仇となり、甥によって葬り去られることになるのだが。

    世間が張成沢氏の処刑に驚いた最大の理由も、妻の血統にあった。まさか金正恩氏がロイヤルファミリーの一員を処刑するとは、粛清はあり得ても死にまで追いやるとは、ほとんど誰も予想できなかったのだ。そしてその驚きは、「金慶喜氏なら夫を救えたのではないか」との疑問にもつながる。

    金慶喜氏はなぜ、夫を救わなかったのか。これについては諸説ある。例えば、脱北者で平壌中枢の人事情報に精通する李潤傑(イ・ユンゴル)北朝鮮戦略情報センター代表は、次のように語っている。

    「もともと病苦の中にあった金慶喜氏は2013年初め、体調が著しく悪化していました。しかしそのとき、張成沢氏は一度も妻を見舞わず7人もの愛人と享楽にふけっていた。それが金慶喜氏にも報告され、彼女を激怒させたのです」

    (参考記事:「幹部が遊びながら殺した女性を焼いた」北朝鮮権力層の猟奇的な実態

    張成沢氏の女性関係に、行き過ぎた部分があったという情報は少なくない。彼が処刑された後、愛人だった元トップ女優が粛清されたとも言われる。

    (参考記事:【写真】女優 キム・ヘギョン――その非業の生涯

    一方、韓国の情報機関・国家情報院の次長や大統領補佐官を歴任した羅鍾一(ラ・ジョンイル)氏の著書『張成沢の道』によれば、金慶喜氏はこの頃、病と麻薬、アルコールによって心身を蝕まれ、もはや夫を窮地から救い出すだけの能力を持ち合わせていなかったという。

    しかし同著は、張成沢氏の処刑を報告に訪れた金正恩氏に対し、金慶喜氏がピストルの銃口を向けたというエピソードも紹介している。ピストルは即座に取り上げられ、大事には至らなかったというが、金正恩氏はほうほうの体で逃げ出したという。

    金慶喜氏と張成沢氏は大恋愛の末にゴールインしたことで知られているが、金慶喜氏の胸中には最後まで、夫への想いが残っていたということだろうか。

    ちなみに、羅鍾一氏の『張成沢の道』には、張成沢氏や金慶喜氏本人から聞いたとしか思えないエピソードが数多く収められているのだが、太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使の著書『3階書記室の暗号』を読むと、羅氏と張氏は本当に会っていたのではないかとの思いが強まる。それについてもいずれ、検証してみることにしたい(つづく)。

    張成沢粛清を振り返る(3)金正日の「喜び組」はこうして堕落させられた

    張成沢粛清を振り返る(4)金正恩氏「叔父を処刑」の背景に王朝内での「女たちの戦い」

    張成沢粛清を振り返る(5)【写真】北朝鮮の「清純派女優」はこうして金正恩に抹殺された

    張成沢粛清を振り返る(6)北朝鮮「幹部が遊びながら殺した女性を焼いた」事件の衝撃

    張成沢粛清を振り返る(7)「下剤を飲ませ水を一滴も与えない拷問」で政敵抹殺…北朝鮮の権力闘争

    張成沢粛清を振り返る(8)金正恩の「肥満」と「処刑」が同時期に始まった必然

  • 秘密の「刺殺組織」結成の動きも…金正恩氏は訪韓して大丈夫か

    秘密の「刺殺組織」結成の動きも…金正恩氏は訪韓して大丈夫か

    北朝鮮の金正恩党委員長の初の訪韓が年内に実現するかどうか話題となるなか、韓国社会では賛否両論が巻き起こっている。一部からは「金正恩を刺殺する」という過激な声まで出ている。

    金正恩氏は9月に平壌で行われた南北首脳会談で、訪韓の意思を表明した。しかし、タイムリミットは目前である。

    北朝鮮にとっては大イベントのひとつである、金正日総書記の命日(12月17日)が控えている。少なくとも17日が過ぎるまで、金正恩氏は訪韓の意思を明らかにできないだろう。加えて人権問題や様々な国際環境に照らせば、年内訪韓は困難に思える。何よりも、北朝鮮側の熱が冷めてきているようにも見える。

    (参考記事:「韓国は正気なのか!?」文在寅政権に北朝鮮から非難

    それにもかかわらず、韓国内では金正恩氏の初訪韓は既定事実のような伝えられ方もしている。たしかに、韓国で文在寅氏の対北政策は概ねを支持されている。とはいえ、韓国社会で北朝鮮、そして金正恩氏に対する抵抗感は根強い。とりわけ3万人いるという脱北者のなかには、激しい人権侵害が常態化している拘禁施設から逃れてきた人もいる。

    (参考記事:北朝鮮、拘禁施設の過酷な実態…「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も

    北朝鮮の人権侵害による被害者らが、金正恩体制に対して怒りと恨みをもつのは当然だろう。一部の脱北者団体や保守団体は金正恩氏を「刺殺」するとして、組織化に乗り出しているとされる。

    朴相学(パク・サンハク)北朝鮮人権団体総連合常任代表は「金正恩は、いまだに22万人を政治犯収容所に閉じ込めて人権を蹂躙している民族の逆賊」とし「脱北者による金正恩刺殺のため、密かに支援を行っている」と明かしている。さらに、「我々は記者会見などせず、実際の行動で示すだろう」と述べるなど、過激な姿勢をアピールしている。

    だが、金正恩氏に対する怒りは理解できるものの、「刺殺」という手段には賛同できない。一部の脱北者団体は過激な言動で世間の目を引こうとする傾向があることから、パフォーマンスに終わるか、単に文在寅政権を揺さぶっているだけかもしれないのだが。

    いずれにせよ、実際に金正恩氏が訪韓すれば、反対デモが起きるのは避けられない。脱北者だけでなく、金正恩体制によって直接、間接的に被害を受けた韓国人は多い。金正恩氏の訪韓には様々なリスクが存在するのである。

    さらに金正恩氏自身にもリスクがある。金正恩氏は北朝鮮国内で視察する際、普通の人と同じトイレを使えない金正恩氏を守るため、特殊な警護態勢を敷いている。そのあたり、韓国ではどうするのだろうか。

    (参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

    脱北者団体の「刺殺」宣言が脅しだったとしても、金正恩氏は黙ってはいられないだろう。金正恩氏の初訪韓には様々なハレーションが伴うということを、文在寅政権はわかっているのだろうか。

  • 杭に縛り付けられ、火炎放射器で灰にされた2人…惨劇は11月に始まった

    杭に縛り付けられ、火炎放射器で灰にされた2人…惨劇は11月に始まった

    張成沢粛清を振り返る(1)

    北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は2013年12月、叔父である張成沢(チャン・ソンテク)元党行政部長を処刑した。その前後に起きた関係者の処刑・粛清も合わせ、一連の「張成沢粛清事件」は、金正恩氏の冷血さを見せつけた出来事だった。それと同時に、その後の核開発強行とその成功で見せた金正恩氏の圧倒的なリーダーシップは、この事件を踏み台にして発揮されたように見えなくもない。

    張成沢氏の失脚が公式化されたのは同月8日の党政治局拡大会議でのことであり、死刑は4日後に執行された。しかし、残酷な粛清劇はその前から始まっていた。

    韓国の国家情報院は同月3日、国会情報委員会に対し「張氏最側近に対する公開処刑が先月下旬に行われた事実が先ごろ確認された」と報告した。処刑された2人は李龍河(リ・リョンハ)党行政部第1部長と張秀吉(チャン・スギル)同副部長だった。

    公開処刑は、平壌郊外にある姜建(カンゴン)軍官学校の練兵場で行われた。衛星写真により、これ以前にも公開処刑の様子が捕捉されていた場所だ。
    (参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認

    韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使の著書『3階書記室の暗号』や、国情院次長や大統領補佐官を歴任した羅鍾一(ラ・ジョンイル)氏の『張成沢の道』などの情報を総合すると、2人に対する公開処刑の様子は次のようなものだった。

  • 北朝鮮の工作員は「神戸ビーフ」の使い方が上手

    主要メディアの報道によれば、千葉県警は今年6月、成田空港で他人名義のクレジットカードを使用し化粧品を大量購入したとして、詐欺の疑いで、北朝鮮の工作員とみられる朝鮮籍の男性(65・埼玉県在住)を書類送検していたという。

    報道によると、この男性は2012年、北朝鮮の故金正日総書記の専属料理人だった藤本健二氏(仮名)に対し、金正恩党委員長のメッセージを伝えていたことも判明。藤本氏による2012年と16年の計3回の訪朝について、自ら同行するなど関与したことを認めた上で、「本国の指示を受けた」と県警に説明しているという。

    さらに、この男性は藤本氏と接触し、訪朝を促す金正恩氏のメッセージを伝える際、大阪府警に摘発された別の工作員が収集した藤本氏に関する情報を利用したとみられるという。

    (参考記事:別の工作員情報を利用か…元専属料理人に接触で

    筆者は、千葉県警が書類送検した男性についてはよく知らない。しかし大阪府警に逮捕された「別の工作員」については、デイリーNKジャパンでも報道している。男性は直撃インタビューに対し、北朝鮮の「エージェント」として活動していたことは認めつつも、コテコテの関西弁で「オレは自分がスパイだなんて認めてへんし、違法な工作活動に手を染めていたわけではないんやで」と語り、工作員と呼ばれることに反発しているのだが。

    しかし、この関西出身のエージェントが、北朝鮮にとって非常に優秀な人材であったのは確かのようだ。前述した「別の工作員が収集した藤本氏に関する情報」というのは、ズバリ言って藤本氏の居所のことだ。

    藤本氏は北朝鮮といったん袂をわかち、金王朝の内幕についてメディアで証言するようになってからは、北朝鮮当局に自分の居場所を悟られぬよう慎重に行動していた。その居場所を割り出したのが、件のエージェントなのだ。

    情報当局の関係者によれば、エージェントはそれをする際、こんな手を使ったという。あるとき、藤本氏が某所で講演を行った際、エージェントは聴衆として参加。講演後、藤本氏に近づいて北朝鮮情勢についてもっと教えてほしいと頼み、藤本氏は快く応じた。エージェントは丁寧に礼を述べ、次のように持ち掛けた。

    「親切に教えてくださってありがとうございます。私はブランド牛の『神戸ビーフ』を手ごろな値段で購入できるので、ささやかなお礼として藤本さんに贈りたい。ついては、送り先の住所を教えていただけませんか」

    なかなかスマートなやり方である。このエージェントはほかにも、日本の学者やジャーナリストとの人脈を作り、日本の大物政治家とのパイプ作りも目指していた。別件で大阪府警に逮捕されなければ、成功していたのではないだろうか。

    (参考記事:北朝鮮工作員が「コテコテの関西弁」で語った政治家の名前

    ときどき思うのは、日本人拉致や破壊工作を狙っているのならともかく、言論の自由に則って合法的に活動する北朝鮮のエージェントを、必ず摘発しなければならないのか、ということだ。もちろん監視は必要だが、別件での逮捕要件が揃ったからといって条件反射的に逮捕し、「大物工作員を捕まえた」と宣伝する外事警察のやり方は、どうも薄っぺらいように思える。

    実際、そのようなやり方が慢性化したせいで、外事警察の対北情報戦能力はむしろ低下したのと指摘もある。

    (参考記事:【対北情報戦の内幕】総連捜査の深層…警察はなぜ公安調査庁に負けたのか

    メディアの側も警察発表に「乗るだけ」にならないよう、慎重な報道が求められる部分だ。

  • 「わが国は人口太陽が3つもあるから仕方ない」災害続発で北朝鮮国民

    「わが国は人口太陽が3つもあるから仕方ない」災害続発で北朝鮮国民

    北朝鮮の人々は毎年、自然災害に苦しめられている。雨期には水害、夏には干ばつ、冬は大雪。とりわけ今の時期、北部の山間地域では最低気温が氷点下30度近くまで下がる。まさに「凍土」という表現がふさわしい。慢性的なエネルギー不足から暖房のための社会的インフラの整備は進んでおらず、「冬になると飢えよりも寒さの方がよっぽどツラい。凍死する住民も多い」との声もある。

    (参考記事:「眠っているうちに」死者数万人、北朝鮮庶民が震える「冬の夜の恐怖」

    韓国のリバティ・コリア・ポスト(LKP)によると、11月22日から北朝鮮北部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)と両江道(リャンガンド)、慈江道(チャガンド)の山間部で大雪被害が起きている。同日から25日の間、清津(チョンジン)市と会寧(フェリョン)市、茂山(ムサン)郡をはじめ、咸鏡北道の北部地域に0.6メートルから1.6メートルまでの大雪が降り、道路一面が凍結したという。

    「中学生までが動員され凍結した道路の修復作業にあたっている。主要道路はなんとか車両の往来ができるようになったが、農村部の道路はまだ手をつけていられない」(LKPの消息筋)

    酷寒に苦しめられているのは庶民だけではない。朝鮮人民軍(北朝鮮軍)は毎年12月から翌年3月末まで、つまり厳冬期の真っ最中にも、まともに食事をすることもできないまま厳しい冬季訓練を行う。空腹に耐えかねた兵士が北朝鮮国内だけでなく、中国側に越境して略奪を働くケースも多い。

    (参考記事:独占入手!中国軍に制圧・連行される「北朝鮮脱走兵」の現場写真

    また、LKPの両江道の消息筋は26日、「大雪によって三池淵(サムジヨン)郡をはじめ北部地域のすべての建設工事が中断された」と伝えている。建設現場に食料を届けるため、鉄道と道路の復旧に全ての人材を投入したためだという。これ自体はまっとうな対処だが、それがさらなる犠牲者を生み出すかもしれない。

    金正恩氏は今、北朝鮮で「革命の聖地」として知られる三池淵郡の観光開発プロジェクトを最重視していると見られる。しかし、三池淵郡の建設現場の安全対策は劣悪で、実際に事故も発生している。

    (参考記事:住民や労働者が次々に逃げ出す酷寒の「恐怖写真」現場

    そうでなくても両江道は、「今年の夏の干ばつによる被害を最も深刻に受けた地域だ」だとLKPの消息筋は語る。

    「夏には干ばつに悩まされ、秋になって一息ついたと思ったら、今度は突然の大雪で大混乱が起きている」

    このように次から次へと自然災害が発生する事態を受けて、北朝鮮国民の間では「人工太陽が三つある国なので、空がおかしくなっている」という話が流行っているという。

    北朝鮮で金日成主席は「民族の太陽」と呼ばれる。誕生日である4月15日にも「太陽節」という名前が付けられてる。金日成氏と金正日総書記の遺体が安置されているのは錦繍山(クムスサン)太陽宮殿だ。さらに、金正日氏が君臨するようになって「民族の太陽」は2つとなり、金正恩時代になってからは「太陽」が3つになってしまった。

    そのため庶民は「太陽が1つ(金日成氏)の時代は災害もなく平穏だったが、2つ(+金正日氏)の時代になって気候がおかしくなった。今は3つ(+金正恩氏)になってしまったので、もうどうしようもない」と、笑えないジョークを飛ばしているというのだ。

    言論の自由がない北朝鮮では不平不満を表だって口にすることはできず、最高指導者の権威を傷つけるようなことを言えば、厳しく罰せられる。

    (参考記事:金正恩命令をほったらかし「愛の行為」にふけった北朝鮮カップルの運命

    そんな状況にあっても、たまにはジョークを言ってうっぷんを晴らさずにはいられないのだ。自然災害の度に、国の無能無策のために苦しめられている庶民が、太陽=最高指導者を揶揄するのも当然だろう。

  • 被害女性9人の連続レイピスト「いつも通りのやり方」で公開銃殺

    北朝鮮では年末を迎え、各機関や職場で総和(総括)が行われている。これは、一年間の生活、仕事を振り返って自己批判するというものだが、同時に行われているのが、犯罪に対する取り締まりの強化だ。

    このところ禁止が伝えられていた公開処刑が、最近になってまた復活したようだ。そんな中で、女性9人に性的暴行を行った男が公開の場で銃殺されたと、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋が伝えてきた。

    (参考記事:謎に包まれた北朝鮮「公開処刑」の実態…元執行人が証言「死刑囚は鬼の形相で息絶えた」

    先月19日午前11時、咸鏡北道の穏城(オンソン)にある江岸(カンアン)高級中学校そばの空き地で、公開裁判が行われた。動員された多くの住民が見守る中で、9人の女性に性的暴行を行った容疑で逮捕、起訴された男性Aに対して死刑判決が言い渡され、即時執行された。「銃殺は以前と変わらぬ方式で行われた」(情報筋)とのことだ。

    (参考記事:機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇

  • ドラマ「処女の射撃手」を見てはならない、たった一つの理由

    ドラマ「処女の射撃手」を見てはならない、たった一つの理由

    前回の本欄記事でも言及したとおり、デイリーNKジャパンは最近、「コンピュータに入力してはならない電子ファイル目録」と題された北朝鮮の内部文書を入手した。2015年5月の日付が入ったもので、韓国誌・月刊朝鮮11月号はこれを、北朝鮮の体制に不都合な映像・音楽作品を取り締まるタスクフォース「109常務(サンム)」が作成したものだと断定している。

    内容は視聴が禁止された映像・音楽・ソフト類のリストで、列挙されたタイトルはざっと300以上にもなる。その中には北朝鮮の国民的女優・洪英姫(ホン・ヨンヒ)の出演作もある。

    (参考記事:【写真】北朝鮮の国民的美少女・洪英姫と映画「花を売る乙女」

    彼女の出演作がなぜ、禁止指定されたのかいまひとつわからないのだが、中には理由が明らかなものもある。映画「大紅湍(テホンダン)責任秘書」やテレビドラマ「処女の射撃手たち」などがそうだ。

  • 【写真】北朝鮮「お札の美少女」国民的女優を処刑か…出演作が視聴禁止

    【写真】北朝鮮「お札の美少女」国民的女優を処刑か…出演作が視聴禁止

    韓国の月刊朝鮮は11月号で、北朝鮮の「109常務」の文書を単独入手したと報道。「これまで一部のメディアを通じ、北朝鮮の住民たちに(視聴が)禁止された映画や歌などの目録が公開されたことはあったが、体系的に作られた総合文書が出てきたのは今回が初めてだ」と伝えた。

    国民的美少女

    北朝鮮の「常務(サンム)」とは、ある特別な任務のために関係各機関が共同で編成したタスクフォースのことを言う。109常務は、韓流をはじめとする外国の映像・音楽作品や、金正恩体制に「有害」とみなされた情報の取り締まりを行っている。

    デイリーNKジャパンも最近、これと同一と見られる文書を入手した。タイトルは「コンピュータに入力してはならない電子ファイル目録」というもので、2015年5月の日付が入っている。そこに列挙された映像・音楽・ソフト類は、ざっと300以上にもなる。その中には以前から禁止指定の情報が伝えられていたものもあるが、ほとんどは初めて見るものだ。

    特に気になったのは、月刊朝鮮の次の指摘だ。

    「金正日が生前、最も寵愛した俳優として知られる洪英姫(ホン・ヨンヒ)と関連する映画も削除・回収リストに含まれた。(中略)洪英姫の(禁止になった)関連作品は「愛の街」「銀のかんざし」などが代表的だ」

    ここで言われているとおり、洪英姫は北朝鮮で知らない人のいないほどの大物女優だ。その代表作は、1955年生まれの彼女が10代の時に主演した映画「花を売る乙女」で、これまた北朝鮮の国民的作品である。当時の写真を見ると、彼女が相当な美少女であったことがわかる。

    (参考記事:【写真】北朝鮮の国民的美少女・洪英姫と「花を売る乙女」

    ちなみに、劇場版の「花を売る乙女」では、金正日総書記の「もうひとりの愛人」と言われるパク・エラも複数いる主演者のひとりに数えられる。

    (参考記事:【写真】パク・エラ…金正日の「もうひとりの女」

    この洪英姫と「花を売る乙女」の人気の絶大さを示しているのが、北朝鮮の旧1ウォン紙幣に、彼女が演じた同作品のヒロイン・コップニの姿が描かれているという事実だ。

    ちなみに韓国銀行はウェブサイトで、同紙幣に描かれたのはコップニの象徴的な姿であり、洪英姫本人ではない、と解説している。最高指導者以外は偶像化が許されない北朝鮮のお国柄を考えれば、この分析は妥当だ。実際、紙幣に描かれたコップニと洪英姫が似ているかと言えば、議論の余地があるだろう。しかしそれにしても、紙幣の制作担当者が、彼女が演じたコップニの姿にまったく影響されなかったということもあり得まい。

    では、それほどの大女優が出演した映画が視聴禁止になった理由は何か。

  • 公開裁判も「氷山の一角」…北朝鮮で進む密輸の組織化

    公開裁判も「氷山の一角」…北朝鮮で進む密輸の組織化

    北朝鮮有数の鉱山、咸鏡南道(ハムギョンナムド)端川(タンチョン)市の剣徳(コムドク)鉱山で、鉛や亜鉛を中国の密輸業者にしていた労働者らの公開裁判が行われ、実刑判決が下された。

    現地の内部情報筋によると、端川市保安所と裁判所は先月12日午前10時から端川市場近くの空き地で今年2回目となる公開裁判を行った。鉱山労働者や市民には3日前から出席するように呼びかけられ、現場は市民で溢れかえったという。

    裁判にかけられたのは、薬物中毒者や農場から穀物を盗んだ窃盗犯、そして中国の密輸業者から前金を受け取り、国の生産物である鉛や亜鉛を定期的に盗み出し、売り渡していた鉱山労働者や協力者など36人だ。

    (参考記事:一家全員、女子中学校までが…北朝鮮の薬物汚染「町内会の前にキメる主婦」

    裁判は、36人を一列に並ばせ、マイクを握った検察員が被告の容疑を読み上げ、その後に現れた裁判官が判決文を読み上げる形で行われた。被告には6ヶ月から2年の労働教化刑(懲役刑)が言い渡された。

    被告らは、咸興市郊外の会陽里(フェヤンリ)にある咸興教化所に収監された。情報筋によると、昨年までは栄光(ヨングァン)の五老(オロ)教化所に収監されていたが、そこが閉鎖されたための措置だという。

    この地域に住んでいた脱北者によると、こうして処罰される人の数は、密輸全体から見れば氷山の一角に過ぎない。この地域の多くの住民が、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころから、鉛や亜鉛の密輸を行っており、中国からトラックでやってきて鉱物を運び出すほど組織化していた。

    最近、党の剣徳鉱山委員会と鉱山の保安署が鉱物の横流しを禁じる布告を繰り返し出していたが、それを考えると、今回捕まった人々は運悪く見せしめにされたものと思われる。

    同様の裁判は今までも複数回行われており、生活苦が解消しない限り根絶は難しいと情報筋は解説した。

    中国商務省は2016年12月、国連の対北朝鮮制裁決議2321号を履行するため、北朝鮮からの亜鉛の輸入を禁止した。それ以降、公式の対中輸出はストップしたままだが、今回の裁判で明らかになったように、密輸は続けられている。

    剣徳同様に、中国に鉱物を輸出していた咸鏡北道(ハムギョンブクト)の茂山(ムサン)鉱山は、今年の7月から操業を停止した。食糧配給も止まり、生活苦に陥った市民は家や子を捨てて逃げ出す惨状となっている。

  • 外国人労働者と大乱闘も…米国が懸念する「奴隷労働」の実態

    外国人労働者と大乱闘も…米国が懸念する「奴隷労働」の実態

    米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると4日(米時間)、米上院外交委員会東アジア太平洋小委員会で「民主主義と人権、法治に関する中国の挑戦」というテーマの聴聞会が開かれた。聴聞会に出席したローラ・ストーン国務省東アジア太平洋副次官補は、中国における北朝鮮労働者の雇用について「賃金をもらうことができず、いかなる自由もないため、中国は多くの北朝鮮労働者を受け入れている」とし、「米国は北朝鮮の労働者たちをslave labors(奴隷労働者)とみなす」と述べた。

    北朝鮮の派遣労働の現場として筆頭にあげられるのが北朝鮮レストラン、通称「北レス」だ。北朝鮮は、外貨稼ぎのために世界各地で北レスを展開しており、多くの若い女性たちが送り込まれている。

    (参考記事:美貌の北朝鮮ウェイトレス、ネットで人気爆発

    その北レスだが、昨年は閉店が相次いだ。北朝鮮の核・ミサイル問題に対して国際社会が圧力を強め、それまでは消極的だった中国も制裁に同調したからだ。苦しい事情に追い込まれた北朝鮮は、新たに美人女子大生まで派遣するなどして糊口をしのいできた。

    (参考記事:【写真】金正恩氏の新たな商売「女子大生派遣ビジネス」の現場

    米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、中国国内のサウナで北朝鮮女性らが働く姿が頻繁に目撃されているという。中国のサウナは、一部で様々な性的サービスが行われていることが広く知られている。北朝鮮女性たちがこうした性的サービスに従事させられていたとしても、決しておかしくはない。

    現場では中国人が完全に仕切っているケースもあるが、派遣しているのはあくまでも北朝鮮当局だ。労働実態に対して「奴隷労働」「強制労働」という非難が集まるのも当然だろう。

    ロシアでも多くの北朝鮮労働者が非常に劣悪な環境で知られている建設現場に派遣されている。なかには北朝鮮当局の関係者とうまく関係を築いて、つまりワイロを渡しながらそれなりに稼ぐ労働者もいるというが、大多数が当局の管理下で厳しい労働を強いられている。劣悪な環境で多大なストレスを募らせているのか、別の国の労働者らと乱闘騒ぎを起こしたりもしてている。

    (参考記事:【動画】北朝鮮労働者とタジキスタン労働者、ロシアで大乱闘

    北朝鮮の6回目の核実験と相次ぐ弾道ミサイル発射実験に対して、国連安全保障理事会(安保理)では昨年10月に対北朝鮮制裁決議2375号が、12月には2397号が採択された。前者はすで派遣された北朝鮮人労働者の労働許可の更新をしないこと、2397号は2019年末までに北朝鮮の労働者をすべて帰国させるよう求めるなど、北朝鮮当局の派遣労働に対して厳しい見方を示した。しかしながら、制裁以降に海外に出た労働者の数は縮小したが、中国とロシアでは大幅には減っていないと見られている。

    人権問題は、米朝関係だけでなく南北関係や日朝関係においても金正恩体制が抱えるアキレス腱である。国内の人権問題についてはシラを切れても、海外に派遣された北朝鮮労働者の過酷な実態までを誤魔化すことは不可能だ。いくら派手な演出の首脳会談で取り繕っても、北朝鮮の人権侵害に対して国際社会の追及が止むことはない。

  • 北朝鮮の権力者男性は「性暴力に無感覚」の疑い

    北朝鮮の権力者男性は「性暴力に無感覚」の疑い

    北朝鮮国営の朝鮮中央通信は5日、「女性の権利が無残に踏みにじられる資本主義社会」と題した論評を配信した。11月25日の「女性に対する暴力撤廃の国際デー」から始まった、世界各地での女性の権利擁護運動などに言及したものだ。

    かねてから女性に対する性暴力の蔓延が非難されている北朝鮮が、国際社会に「反撃」したものと言える。

    (参考記事:「警察官たちは性犯罪の捜査を楽しんでいる」北朝鮮の救われぬ実態

    論評は、日本で起きた財務事務次官による民放テレビ女性記者に対するセクハラ問題にも言及。問題を受けて行われた女性記者たちへのアンケートで、「大多数がセクハラを受けていたと怒りを表した」などとしながら、「これらの事実は、資本主義制度こそ女性の人格と権利が容赦なく踏みつけられる腐って病んだ社会であるということを如実に見せつけている」と述べている。

    論評が指摘するとおり、資本主義社会に女性に対する暴力の深刻な問題があることは否定しない。その事実を指摘する権利は、北朝鮮にもある。しかしそれは、北朝鮮の国家が、自らを省みてこそ行使が許される権利だ。

    国際人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が10月31日に発表した報告書「理由もなく夜に涙が出る 北朝鮮での性暴力の実情」は、金正恩党委員長が政権を継承した2011年以降に脱北した54人と、脱北した北朝鮮の元公務員8人を対象にしたインタビューを元に作成されたものだ。

    その中には、被害女性らの血のにじむような証言のほか、身近で起きた性犯罪の経過を知る第三者の証言などが数多く収められており、読むほどに「そこまで酷いのか」と愕然とさせられる。

    (参考記事:「私たちは性的なおもちゃ」被害女性たちの血のにじむ証言を読む

    これに対して北朝鮮メディアは、証言した被害女性らを冒とくする報道を繰り返している。北朝鮮がそういう行動に出るのはいつものことだから、ここで敢えて言及する意味があるのか、とも思えなくもない。

    しかし、今回のような論評が出るたびに思うのは、北朝鮮で少しでも権力を握る男性たちは皆、本気で自分たちの国が「女性にとってマシな社会」だと思っているのではないか、性暴力の行使に無感覚になっているのではないか、ということだ。

    (参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

    北朝鮮で女性に対する暴力がまん延するのは、当事者である女性たちが人権の概念も知らず、自分が人権侵害の被害者であるということに気づけないことも理由になっている。ということは、男性の側にも加害の意識がまったくないのではないか。

    だとしたら、問題の改善のためには北朝鮮の外部からの働きかけが極めて重要だと言えるのだが、非核化を巡る朝米対話や南北対話に押される形で、北朝鮮の人権問題に対する追及は弱まっている。今月中旬には、国連総会で北朝鮮の人権侵害に対する非難決議が採択される見込みだ。それを機会に、北朝鮮の人権問題が再び見直されることを望む。

  • 消えた北朝鮮の「ピンクレディー」…看板アナウンサーの行方

    消えた北朝鮮の「ピンクレディー」…看板アナウンサーの行方

    英紙・テレグラフ(The Telegraph)が4日、北朝鮮の朝鮮中央テレビのアナウンサーである李春姫(リ・チュニ)氏が引退すると伝えた。李春姫という名前に聞き覚えがなくても、北朝鮮のテレビ報道で独特の抑揚をつけながらニュースを読み上げるアナウンサーといえばおわかりになるだろう。

    李春姫氏のアナウンサー歴は約50年と言われている。半世紀近く北朝鮮のニュースを伝えてきたが、特にこの10年間は北朝鮮にとって重要なニュースを読み上げた。とりわけ伝説となっているのが2011年12月17日、金正日総書記の死去を伝える報道だ。

    スキャンダルで処刑

    実はこの時期、約50日間にわたって李春姫氏の姿がテレビで見られなくなり少し話題になった。

  • 人身売買「自ら望んで売られた」被害女性への理不尽な視線

    人身売買「自ら望んで売られた」被害女性への理不尽な視線

    北朝鮮当局は今月、国境地帯の地域機関に向けて「人身売買を反逆罪として強く処罰せよ」との指示を出した。これに基づき、人身売買団に対する大々的な取り締まりが行われている。しかしその一方、同国社会には人身売買の被害者に対する厳しい視線も存在する。

    米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の両江道(リャンガンド)の情報筋によると、金正淑(キムジョンスク)郡では国家保衛省(保衛部、秘密警察)と人民保安省(警察庁)が合同で人身売買団に対する取り締まりを行った。

    その結果、逮捕された4人に対する裁判が、今月15日に金正淑郡の中心地、新坡(シンパ)で公開で行われた。

    動員された数百人の住民が見守る中で行われた裁判だが、裁判長は判事ではなく保安署(警察署)の幹部だった。この幹部は「人身売買は国を売り払う反逆行為で、到底許されざる犯罪」などと罪状を読み上げた上で、主犯の40代女性に労働教化刑(懲役)15年、ターゲットを物色しブローカーに引き渡した男女3人に12年の刑を言い渡した。

    (参考記事:中国奥地で売られた「少女A」の前に現れた救世主

    今回の裁判では、人身売買とは別に、商売上のことでケンカとなり相手を殴った男性2人に対して、社会秩序びん乱罪で労働教化刑3年が言い渡された。

    閉廷後、保安署幹部は住民に向けて「人身売買に加担したり、中国(人)とグルになって人身売買に介入している者は11月末までに自首せよ」と呼びかけた。また、「他人の人身売買を知りつつも通報せずに黙認した者も、人身売買犯と同様に処罰する」と述べた。

    国際社会は、人身売買を含む北朝鮮の人権問題をついて厳しい批判を続けている。最近は、国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチが、北朝鮮の性暴力をまとめた報告書を発表した。それに対して北朝鮮は激しく反発しているものの、一方の国内では取り締まりを強化するという両面戦術をとっている。

    (参考記事:「警察官たちは性犯罪の捜査を楽しんでいる」北朝鮮の救われぬ実態

    両江道の恵山(ヘサン)の別の情報筋によると、金正恩政権になってから「密輸や携帯電話の使用など違法行為を根絶せよ」との指示が矢継ぎ早に発せられ、地域へ統制が強化されている。地域住民は多かれ少なかれ違法行為に加担していることもあって、気が気でないという。

    この情報筋は人身売買について「1990年代に国が食糧配給をしなくなったため、(自ら望んで被害者が)中国に売られていったのが始まり」「重くなる一方の税金や組織生活(動員)の負担に苦しむ若い女性は、脱北するために自発的に売られていった」などと述べた。

    北朝鮮ではこのように、人身売買や性暴力の被害者に対し、その「落ち度」を責める見方が少なからず存在する。

    (参考記事:「私たちは性的なおもちゃ」被害女性たちの血のにじむ証言を読む

    北朝鮮国民の中に、経済的苦境から逃れるために手段を問わなかった人々がいたのは間違いないが、だからといって、人身売買が正当化されるものではない。人身売買の犠牲となった女性たちを苦しめるのは、直接的な暴力、性暴力であると同時に、被害者に落ち度があったとする社会の視線なのだ。

  • 金正恩氏「親日の血筋」が韓国訪問で暴かれる

    金正恩氏「親日の血筋」が韓国訪問で暴かれる

    北朝鮮の金正恩党委員長の「不都合な出自」が、いよいよ白日の下にさらされるかもしれない。金正恩氏は、9月に平壌で行われた南北首脳会談で訪韓の意思を表明。支持率低下に悩む韓国の文在寅政権は、年内の訪韓実現を目指している。

    タイムリミットは目前である。金正恩氏が12月中に訪韓することは、人権問題や様々な国際環境に照らせば極めて困難に思える。何よりも北朝鮮側の熱が冷めてきているようにも見える。

    (参考記事:「韓国は正気なのか!?」文在寅政権に北朝鮮から非難

    それでも、韓国政府はあきらめが悪い。文在寅氏は先月28日、「金正恩氏が訪韓したら何を見せたいか」という記者の質問に対して「済州島」だと答えたという。だが、これは「地雷」を踏む可能性が高い。

    文在寅氏は9月に訪朝した際、金正恩氏と白頭山に登ったことから、その返礼の意を込めているのだろう。金正恩氏といっしょにヘリコプターで済州島にある韓国の最高峰・漢拏山(ハルラサン)を見物することも議論されているというが、あまりにも脳天気すぎないだろうか。

    金正恩氏の実母は大阪出身の高ヨンヒ氏だ。

    (参考記事:金正日の女性関係、数知れぬ犠牲者たち

    さらに高ヨンヒ氏の父親、つまり金正恩氏の母方の祖父である高京沢(コ・ギョンテク)氏は済州島生まれで、済州島には高京沢氏の記録が残っている。後に日本にわたった高京沢氏は、第二次世界大戦中に旧日本陸軍が管轄する工場で働いていた。北朝鮮の基準からすれば「親日派」というレッテルを貼られてもおかしくないのだ。

    (参考記事:偽造旅券で日本潜入、金正恩一家の行き先は「美空ひばり記念館」

    もちろん、日本の支配下にあった当時の朝鮮人に、仕事を選ぶのに「親日行為に当たるか否か」など考えている余地はなかった。日本に留学した若者の中からも独立運動の闘士が出ていることを考えて見れば、ほとんどナンセンスな議論でもある。

    しかし、北朝鮮は金日成主席に始まる「白頭の血統」の歴史をウソで固め、完全無欠な愛国者に仕立て上げたお国柄である。高京沢氏の経歴は、十分に「ノーサンキュー」に違いないのだ。

    金正恩氏が済州島を訪問、あるいは漢拏山を見物すれば韓国のメディアだけでなく、世界のメディアが「金正恩氏が母のふるさとを訪れた」と報じることは間違いない。祖父が日本軍と関係があったことも大きく報じられ、こうした情報は北朝鮮内部にも密かに流入するだろう。

    (参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…

    北朝鮮当局のプロパガンダに飽き飽きしている庶民は、「元帥様は親日派の血統」「白頭血統ではなく漢拏山血統、いや富士山血統だ」などと揶揄するかもしれない。

    金正恩氏が自ら正当化してきた「白頭の血統」に大きな傷がつくことを、果たして彼自身が望むだろうか。

    文在寅氏の支持率は見る見る下落している。それでも南北関係については一定の評価を得ている。金正恩氏の訪韓によって支持率上昇のきっかけをつかみたいのかもしれない。が、安易な意図が北朝鮮側に読み取られると、金正恩氏によって逆に手玉に取られるかもしれない。

  • 金正恩氏を震え上がらせた「1丁の機関銃」のミステリー

    金正恩氏を震え上がらせた「1丁の機関銃」のミステリー

    韓国の文在寅大統領の支持率が、またもや就任後最低を更新した。韓国の世論調査会社、リアルメーターが3日に発表した支持率は、前週より3.6ポイント低い48.4%となった。これで9週連続の下落である。

    経済の低迷など、内政の行き詰まりが要因とされ、政権はそれを打開すべく、北朝鮮の金正恩党委員長の初訪韓に賭けているように見える。しかしそれは、当局により国民がほぼ完全に統制されている平壌を文在寅氏が訪れるのとは、わけが違う。

    韓国には、北朝鮮の体制により家族や友人を殺された人々が数多くいる。北朝鮮から逃れてきた脱北者の中にもいるし、北朝鮮により撃沈された海軍艦艇の兵士の遺族や、戦友もそうだ。韓国政府がいくら「ソウルに来ても安全だ」と言ったところで、北朝鮮側は簡単には納得すまい。

    何しろ北朝鮮当局はふだんから、普通の人と同じトイレを使えない金正恩氏を守るため、特殊な警護体制を敷いているのである。

    (参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

    実際のところ、金正恩氏は北朝鮮国内においてすら、身辺に不気味なものを感じたことがあったとされる。

    (参考記事:なぜ最高指導者の近くに大量の爆発物が…北朝鮮「暗殺未遂説」のミステリー

    韓国の情報機関・国家情報院(国情院)の次長や大統領補佐官、駐日大使を歴任した羅鍾一(ラ・ジョンイル)氏の著書『張成沢の道』(原題)によれば、2012年の暮れにはこんなことがあった。

    金正恩氏の視察先で、出所不明の1丁の機関銃が見つかったとの噂が広がった。1本の木の下で発見されたその機関銃には、銃弾がフル装填されていた。しかも、どこで製造され、どの部隊に支給されたかを辿るための通し番号が消されていた。そんな特殊な銃が、手違いでそんな場所に置かれるなどあり得ないことだった。

    結局、機関銃の謎は解けないままだったらしいが、一時期は金正恩氏が立ち寄る30カ所以上に装甲車が配置され、物々しい空気が漂ったという。

    さらに2015年10月初め、北朝鮮の葛麻(カルマ)飛行場で、金正恩氏の視察前日に大量の爆薬が見つかったと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

    また父である金正日総書記の時代には、龍川駅の大爆発事故が起きた。

    (参考記事:1500人死傷に8千棟が吹き飛ぶ…北朝鮮「謎の大爆発」事故

    この出来事はいまもって、「暗殺計画」の可能性をはらむミステリーとして語られている。

    こうした経緯もあり、金正恩氏が韓国訪問を決断するのは簡単ではなかろう。確かに、平壌とソウルは近い。その気になれば、日帰りも可能なほどだ。

    しかし、その「近さ」に期待して政権浮揚を賭けるようでは、文在寅政権の足元はいよいよ危うく感じられる。